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第七部
第55話「幼馴染は、僕の隠し事を知らない①」
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◆凪宮 晴斗◆
鞄の中に仕舞ってあった、1枚の手紙。
中身には1枚の紙が入っており、そこには一生懸命書き記したのかスゴく気持ちが代弁されたような内容が記してあった。
おそらくこれは、ラブレターだ。
陰キャで、存在感が薄い“根暗ぼっち”である僕にラブレターが届くというのも変な話だが、実のところ──こういう事例は以前にもあった。
告白してくる女子達はみんな、突発的な容姿はしていない。どこか、僕と似たような空気を醸し出している子達ばかりだった。おそらく、読書家仲間だろう。見覚えがまったくないというわけでもなかったし。
ま、過去に渚みたいな“学園一の美少女”と崇められる存在に告白をされたという出来事が、そもそもの力量を超えていたと思う。
では、一通りの説明をしたとことで先日のことをお話するとしよう。
──そもそものことの発端は、つい先日のこと。
隣の家に住むわがままでトップカーストを占領する幼馴染──一之瀬渚と校門前までのイレギュラーな登校が日課となりつつあった、そんな朝の登校日。
そのときに僕は目撃してしまった。……いや、発見してしまったのだ。
学校でも目立つ行動は避けてきたはずの僕の元に届くはずのないブツ――即ち、ラブレターが僕の下駄箱から発見されるまでは。
✻
「おーっす!」
「……おはよ」
「おいおい、いつも通りに冴えない顔してるなぁ!」
「侮辱にするにも言葉を選べよ言葉を」
「他の奴には言わねぇよ! お前だから言ってんの。中学からの付き合いだからこそ言えることじゃねぇか!」
「……ったく」
幼馴染である渚と校門前で解散した後、周りに「おはよう!」と挨拶され続けていた渚のことを若干哀れに思いつつ校舎へと入った。
昇降口に上がり靴を履き替えようとした途端、いきなり肩を叩かれた。
肩に体重がのしかかり僕は前倒れに成りつつある。その元凶はクラスメイトで中学からのラノベ仲間──藤崎透だった。
陽キャラとして男子内のトップカーストに君臨するこいつは、僕のような“根暗ぼっち”を始め、多種多様なクラスメイトと友達という『輪』を広げている。……僕にはよくわからん世界だな。
「あれ? お前1人なのか?」
「そうだけど。……何かおかしいところでもあったか?」
「いや、一之瀬がいないだろうが。お前ら最近、一緒に登校して来てるだろ?」
「……校門後まで一緒なわけないだろうが。僕のスタンスは基本的に『1人でいること』だ。そこを忘れるな」
「なるほど。可愛い恋人ちゃんを置いてきたわけか、最低だな」
「どんな理解能力してるんだお前! ──ってか、誰が誰の恋人だ!?」
確かにあいつに告白はされた。自分の気持ちにも、最近気づき始めている。けれど……その伝え方を避けてきた僕は、どうすればいいのか、わからない。
「何だよ。違うのか?」
「観点がおかしいだろ。……ったく」
朝から疲れるクラスメイトへの対応に、僕は思わずため息を吐き、重い腰を上げて靴箱を開ける。
すると開けた途端、僕の上履きの上に一通の手紙が置かれていることに気づいた。
……何だこれ。果たし状か?
と、最近読んでいたラノベにそんな展開あったなと思いつつ、その手紙を取り出した。
見覚えのない字。それと、やたら綺麗な状態だった。
こんなの、昨日帰った頃には無かったはずなんだが……。
「おーい。まだ上履き履いてんのか──って、何持ってんの?」
「これか?」
「寧ろそれ以外に指すものないだろ!」
「……さぁ? 開けたらお出迎え状態に置いてあった」
「何だそりゃ……ってそうじゃねぇ!!」
駆け足で僕の元へと帰還してくる透。今日はやけにテンション高いなこいつ。
僕の手元から問題の手紙を奪うと、透は封筒の表から裏までを真剣な目つきで確認する。
「……これ、間違いねぇよ」
「何が」
「鈍い奴だな! ──『ラブレター』に決まってんじゃねぇか!?」
「………………………………はっ?」
透からの言葉に、僕は5秒間の時が止まってしまった。しかしすぐに再生し、改めて僕の手元に返された手紙に視線を配った。
ラブレターって……いわゆる、ラブコメ作品に出てくる『自分の想い』を綴った手紙のことだろ? 何でそんなのが僕の靴箱に入れられてたわけ? 入れる相手絶っっ対間違えてるって。
そうじゃなく、もし本当のことだとしたら……悪いがこの子は、男運がないと思う。
……んん? ……そっか、男運か。
僕は手紙が入った封筒を再度確認する。
差出人、宛先共に不明。ならば――僕のこの直感が当たっているとしか思えない。
そう思い、僕は手紙を透へとすっと差し出した。
いきなりの行動に困惑したのか、透はただただ僕のことをきょとんとした顔で見つめてくるのみだった。
「…………えっ?」
「僕の下駄箱に入っていた。そして、僕は男子の中だと一番透との付き合いが長い。それを知っている人間は、クラスメイト以外にまで及ぶ。ということは──即ち、お前に渡してほしいということだろ?」
「違うだろ!! 何がどうしてそうなったのか、そっちの方が知りたいわ!! 仲がいいからって普通、お前みたいなぼっちに頼むはずないだろ。どう考えたってお前への手紙だろうが!!」
「……せっかくこの手紙の差出人をしがない男運から救ってあげようとしてたってのに、何してくれてんだ」
「差出人の想いを勝手に解釈してんじゃねぇよ!! それをまずは詫びれや!!」
鞄の中に仕舞ってあった、1枚の手紙。
中身には1枚の紙が入っており、そこには一生懸命書き記したのかスゴく気持ちが代弁されたような内容が記してあった。
おそらくこれは、ラブレターだ。
陰キャで、存在感が薄い“根暗ぼっち”である僕にラブレターが届くというのも変な話だが、実のところ──こういう事例は以前にもあった。
告白してくる女子達はみんな、突発的な容姿はしていない。どこか、僕と似たような空気を醸し出している子達ばかりだった。おそらく、読書家仲間だろう。見覚えがまったくないというわけでもなかったし。
ま、過去に渚みたいな“学園一の美少女”と崇められる存在に告白をされたという出来事が、そもそもの力量を超えていたと思う。
では、一通りの説明をしたとことで先日のことをお話するとしよう。
──そもそものことの発端は、つい先日のこと。
隣の家に住むわがままでトップカーストを占領する幼馴染──一之瀬渚と校門前までのイレギュラーな登校が日課となりつつあった、そんな朝の登校日。
そのときに僕は目撃してしまった。……いや、発見してしまったのだ。
学校でも目立つ行動は避けてきたはずの僕の元に届くはずのないブツ――即ち、ラブレターが僕の下駄箱から発見されるまでは。
✻
「おーっす!」
「……おはよ」
「おいおい、いつも通りに冴えない顔してるなぁ!」
「侮辱にするにも言葉を選べよ言葉を」
「他の奴には言わねぇよ! お前だから言ってんの。中学からの付き合いだからこそ言えることじゃねぇか!」
「……ったく」
幼馴染である渚と校門前で解散した後、周りに「おはよう!」と挨拶され続けていた渚のことを若干哀れに思いつつ校舎へと入った。
昇降口に上がり靴を履き替えようとした途端、いきなり肩を叩かれた。
肩に体重がのしかかり僕は前倒れに成りつつある。その元凶はクラスメイトで中学からのラノベ仲間──藤崎透だった。
陽キャラとして男子内のトップカーストに君臨するこいつは、僕のような“根暗ぼっち”を始め、多種多様なクラスメイトと友達という『輪』を広げている。……僕にはよくわからん世界だな。
「あれ? お前1人なのか?」
「そうだけど。……何かおかしいところでもあったか?」
「いや、一之瀬がいないだろうが。お前ら最近、一緒に登校して来てるだろ?」
「……校門後まで一緒なわけないだろうが。僕のスタンスは基本的に『1人でいること』だ。そこを忘れるな」
「なるほど。可愛い恋人ちゃんを置いてきたわけか、最低だな」
「どんな理解能力してるんだお前! ──ってか、誰が誰の恋人だ!?」
確かにあいつに告白はされた。自分の気持ちにも、最近気づき始めている。けれど……その伝え方を避けてきた僕は、どうすればいいのか、わからない。
「何だよ。違うのか?」
「観点がおかしいだろ。……ったく」
朝から疲れるクラスメイトへの対応に、僕は思わずため息を吐き、重い腰を上げて靴箱を開ける。
すると開けた途端、僕の上履きの上に一通の手紙が置かれていることに気づいた。
……何だこれ。果たし状か?
と、最近読んでいたラノベにそんな展開あったなと思いつつ、その手紙を取り出した。
見覚えのない字。それと、やたら綺麗な状態だった。
こんなの、昨日帰った頃には無かったはずなんだが……。
「おーい。まだ上履き履いてんのか──って、何持ってんの?」
「これか?」
「寧ろそれ以外に指すものないだろ!」
「……さぁ? 開けたらお出迎え状態に置いてあった」
「何だそりゃ……ってそうじゃねぇ!!」
駆け足で僕の元へと帰還してくる透。今日はやけにテンション高いなこいつ。
僕の手元から問題の手紙を奪うと、透は封筒の表から裏までを真剣な目つきで確認する。
「……これ、間違いねぇよ」
「何が」
「鈍い奴だな! ──『ラブレター』に決まってんじゃねぇか!?」
「………………………………はっ?」
透からの言葉に、僕は5秒間の時が止まってしまった。しかしすぐに再生し、改めて僕の手元に返された手紙に視線を配った。
ラブレターって……いわゆる、ラブコメ作品に出てくる『自分の想い』を綴った手紙のことだろ? 何でそんなのが僕の靴箱に入れられてたわけ? 入れる相手絶っっ対間違えてるって。
そうじゃなく、もし本当のことだとしたら……悪いがこの子は、男運がないと思う。
……んん? ……そっか、男運か。
僕は手紙が入った封筒を再度確認する。
差出人、宛先共に不明。ならば――僕のこの直感が当たっているとしか思えない。
そう思い、僕は手紙を透へとすっと差し出した。
いきなりの行動に困惑したのか、透はただただ僕のことをきょとんとした顔で見つめてくるのみだった。
「…………えっ?」
「僕の下駄箱に入っていた。そして、僕は男子の中だと一番透との付き合いが長い。それを知っている人間は、クラスメイト以外にまで及ぶ。ということは──即ち、お前に渡してほしいということだろ?」
「違うだろ!! 何がどうしてそうなったのか、そっちの方が知りたいわ!! 仲がいいからって普通、お前みたいなぼっちに頼むはずないだろ。どう考えたってお前への手紙だろうが!!」
「……せっかくこの手紙の差出人をしがない男運から救ってあげようとしてたってのに、何してくれてんだ」
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