隣の家の幼馴染は学園一の美少女だが、ぼっちの僕が好きらしい

四乃森ゆいな

文字の大きさ
上 下
25 / 87
第三部

第24話「幼馴染の妹に、私達はプレゼントを渡す」

しおりを挟む
「「ハッピーバースデー!!」」

 その夜──私は宣言通りにハル君の家へとお邪魔し、一緒に優衣ちゃんの誕生日を祝うことにした。

 帰宅し、準備をしてから優衣ちゃんをリビングに呼び、私とハル君は同時にクラッカーを鳴らす。狭いリビング内に響くクラッカーの強烈な音と紙吹雪、更に少し火薬の匂いが混じり合う。
 私はともかく、ハル君は少し後悔したような顔をしてたけど、まぁいっか。

 それよりも問題なのは優衣ちゃんの反応の方。
 リビングに入ってきてからというもの、優衣ちゃんはその場で立ち尽くし呆然としていた。さすがにここまでのことは予想してなかったのか、少し気の抜けた顔をしてるし──というかこれ、まさかとは思うけど、自分の誕生日忘れてたとか……そういうオチじゃないよね? だって、しっかりケーキの確認とかしたはずだし……!

「……っは!! そっか。今日私の誕生日か……」

 やっぱりハル君の妹だ……。
 この兄妹、どこまでも似すぎてて怖さを感じる。

「さっきメッセージ送っただろ。ケーキ何がいいって」

「いや~、普通にデザート気分で買ってくるのかと思ってたからさ~。そっかぁ。だったらちゃんと注文付けとけばよかったなぁ……」

「今頃後悔すんなって。見苦しいから」

「それ実の妹に言う台詞かなぁ?」

「実の妹だから言えるんだろ」

 そういうもんなんだろうか。きっと優衣ちゃんもそう思っているに違いない。

「優衣ちゃん。はい! これ、私から。お誕生日おめでとう!」

 私は机の上に置いてあったプレゼントの包みを手に取り、それを差し出した。
 完全に独断で決めちゃったプレゼントだし、余計なお世話……にはならないか。ハル君と違って、この子は性格歪んでないもんね。……時々、腹黒い一面はあるけど。

「あ、ありがとうございます! 開けてもいいですか?」

「どうぞ!」

「……これ、ピアス?」

「高校生にもなる前からは早いかなぁーとは思うんだけど、それ穴開ける必要がないやつだから、それだったら日常使い出来るかな? と思ってね」

「で、でもこれ、高かったんじゃ……」

「そんなでもないよ。一般的なアクセサリーショップで買ったやつだから。それに、今日は高校生に向けての第1歩だからね。遠慮しないで!」

「あ、ありがとうございます! 大切にしますね!」

 にこっと、まるで天使が微笑んだかのような表情で笑顔を見せる優衣ちゃん。
 血筋なんだし、ハル君も笑えば天使のような笑みを浮かべられるんだろうけど……おがむには、まだまだ掛かりそうかな。本人がこれだから。

「それと──ハル君から」

「えっ……晴兄からもあるの?」

「……何だその目は」

 私からのプレゼントを貰うときとは格別に違う、兄に対してのこの信用の無さよ。
 まぁ、去年が去年なだけに、信用性が失われてしまっていても何も言えないけど……。
 優衣ちゃんは「いやいやいや」と手を真横に大きく振りながら言った。

「だって、去年貰ったプレゼントとか活用的すぎて思わず叫んだもん。絶対また活用的しかないものでしょ……」

「実の兄に言う台詞か、それ」

「実の兄だから言えるのよ!」

 ……何だかこのやり取り、スゴいデジャヴ感があるなぁー。
 やっぱり本質は兄妹だと改めて実感した。

「……安心しろ。人間は学ぶ生き物だ、同じ失敗を繰り返さないために日々努力し、実践する人間だっている」

「何の話よ……」

「……とにかく、とりあえず受け取れ」

「なに、これ?」

 ハル君が優衣ちゃんに渡したのは、リボンで包装された小さな紙袋だった。

「いいから、開けてみろ」

 ハル君に促された優衣ちゃんは、少し困惑しながらも紙袋を開封した。
 その中身は──鈴のついた小さなキーホルダーだった。

 去年のようなものだと期待していなかった優衣ちゃんにとっては意外な中身だったらしく、腰を抜かしていた。この兄妹、本当に見てて飽きないなぁ。

「キーホルダー……しかもこれ、勉学の祈願譲受のやつじゃん」

「その……今どきの女子中学生が欲しそうなものとか、僕にはわからなかったから。去年のこともあるし、まともなものを試行錯誤してたら、祈願譲受ならいいかと思って……」

 そう──帰る間際に『寄りたいところがある』とハル君に言われて行ったところ。それが小物系を売っていたお店で、そのキーホルダーはそこで購入したもの。
 ……何か、才色兼備なハル君らしいと思ったのは内緒。

 そんな私とは裏腹に、去年との格差が激しかったのか、優衣ちゃんは数秒間停止した。

 気持ちはわかるよ。私も、ハル君がキーホルダーを買いに小物屋に入ったときなんか──『な、何を買う気なんだろう……』って心配になったし。だってそうじゃない? あの1時間、まともな案が出てこなかったくせに帰り際になった途端にあれだよ? ……さすがに、少し心配したよね。

 そして、時が止まった優衣ちゃんは動き出した。

「……へ、へぇ~。本当に意外なものが出てきたね。今年はシャーペンかと思ってたよ」

 それは、心の片隅に置いていた私にも同感だった。

「んなに信用ないか。だったら明日、ご所望通りに買ってくるが?」

「い、いい! 要らないから!」

 いつもであればハル君を扱き使う優衣ちゃんだけど。今は、元の兄妹関係が戻ってる気がする。でも本来であれば、この図が当たり前なんだけど。
 すると、改めて貰ったキーホルダーに視線を落とし、口元を緩めた。

「……ありがとう、お兄ちゃん!」

「……誕生日、おめでとう。優衣」

 ──羨ましいと思う。
 こうやって、兄妹関係にある異性ならば、普通に会話出来て、不自然なく名前を言い合えるのだから。

 決意はしたつもりだったけど……やっぱり、少し寂しいかな──。

「さっ! 早くご飯食べよ! ケーキ、ハル君が選んだんだから!」

「えっ、晴兄が選んだの? ……おかしいよ。晴兄、やっぱどっか頭打ったんじゃないの? 病院に行った方がいいよ!」

「実の兄に言う台詞か、それ」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)

チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。 主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。 ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。 しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。 その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。 「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」 これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

如月さんは なびかない。~クラスで一番の美少女に、何故か告白された件~

八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」  ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。  蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。  これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。  一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた

久野真一
青春
 最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、  幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。  堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。  猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。  百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。    そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。  男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。  とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。  そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から 「修二は私と恋人になりたい?」  なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。  百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。 「なれたらいいと思ってる」    少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。  食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。  恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。  そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。  夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと  新婚生活も満喫中。  これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、  新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

かつて僕を振った幼馴染に、お月見をしながら「月が綺麗ですね」と言われた件。それって告白?

久野真一
青春
 2021年5月26日。「スーパームーン」と呼ばれる、満月としては1年で最も地球に近づく日。  同時に皆既月食が重なった稀有な日でもある。  社会人一年目の僕、荒木遊真(あらきゆうま)は、  実家のマンションの屋上で物思いにふけっていた。  それもそのはず。かつて、僕を振った、一生の親友を、お月見に誘ってみたのだ。  「せっかくの夜だし、マンションの屋上で、思い出話でもしない?」って。  僕を振った一生の親友の名前は、矢崎久遠(やざきくおん)。  亡くなった彼女のお母さんが、つけた大切な名前。  あの時の告白は応えてもらえなかったけど、今なら、あるいは。  そんな思いを抱えつつ、久遠と共に、かつての僕らについて語りあうことに。  そして、皆既月食の中で、僕は彼女から言われた。「月が綺麗だね」と。  夏目漱石が、I love youの和訳として「月が綺麗ですね」と言ったという逸話は有名だ。  とにかく、月が見えないその中で彼女は僕にそう言ったのだった。  これは、家族愛が強すぎて、恋愛を諦めざるを得なかった、「一生の親友」な久遠。  そして、彼女と一緒に生きてきた僕の一夜の物語。

処理中です...