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第二章
第9話「やっぱあれだ。今すぐ警察に通報しよう」
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午前の講義も終わり、現在正午を過ぎた頃──電車に乗って即帰宅、することはなく、オレは大学近くのゲームセンターに立ち寄っていた。
さすがに平日の昼過ぎということも相まってか、お店の中はほぼ無人状態。居たとしてもスタッフや年層の高い人達ばかり。まぁさすがにこんな時間からゲームセンターに立ち寄ってる子どもが居たら不審に思われるだろうし、それにオレは敢えてこの時間を狙って立ち寄った。
顧客層が少なく、かつ新作ゲームが店頭に並び出すこの時間に。
そう、オレは新作ゲームを買いにここへ立ち寄ったのだ。
もちろん、オンラインがサブ要素のアクションゲーム。以前プレイしていたゲームの続編として発売されたが、全世界通じてもかなりの高評価だった。その続編という形になれば、それはもう是非プレイしたいと思うに決まってる。
ショートPVが公開されたのが約半年前。そして本PVが公開され、ネット界隈では『あの神ゲーが復活!!』という声で溢れかえったのが1ヵ月前。
情報公開された部分で考察を練る者も多数存在し、期待値も存分にある。
……本当、これを手に入れるためだけにどれだけの苦労があったことか。今日の授業時間がいつもの倍以上に感じたし、今朝は変なストーカーに付けられるし。そう考えたら、碌な1日じゃなかったな……。
オレは期待と胸の高鳴りを鎮めつつ、商品棚へと手を伸ばし、お目当てのゲームパッケージを手に取る。
「──あっ! それ知ってるよ! まだ中学生だった頃に人気が高かったやつだよね。クラスの男子全員がやってたよ。それで毎日毎日寝不足の子が増えてさ~。大変だったんだよね」
「…………」
「けど僕、こういうゲームってあんまりやったことなかったから自分のプレイスタイルに合ってのかなぁ……って試行錯誤してて、結局買わずに友達から情報だけ聞いてたな~」
「………………」
「あ、でも、こうして続編が出たってことはそれだけ人気だって証拠だよね。まぁそりゃ、若者の間じゃ新感覚みたいなとこあったみたいだし。長年ローカルゲームばっかしてきたユーザーからも、そういった対処がきちんとされてたみたいで好評だったみたいだね。だってほら! ゲームレビューの客幅なんだけどかなりバラけてるでしょ? きっとこういう、ストレスフリーでしかもやり込み要素が強いゲームって、長く愛されるんだろうね~」
「…………………………んで」
「う~ん、僕もやってみよっかな。君もハマってるみたいでここに来るまでの間もずっとソワソワしてたし、それだけ楽しみにしてたってことだろうし。よしっ! 買ってみよう!」
「────何でお前がここにいるんだっ!!」
終始無言状態だったオレを気にもせず、意気揚々と隣では同じ棚に並ぶストーカーの姿が。
……やっぱあれだ。今すぐ警察に通報しよう。
この際だ、男にストーカーが付いたしかも同じ男みたいな全面記事に載る覚悟でこいつを刑務所送りにする必要がある間違いないそうしよう今すぐしよう──。
「待って待って! そんなあからさまに警戒してスマホ準備しないで! 怪しくないから!」
「いやいやいや……それはさすがに無理があるだろ。お前、絶対オレのことつけ回してただろ! 今の言い回しからも状況証拠はバッチリだ」
「うんうん、そんなガチガチになってスマホ構えてもどこにも電話繋がらないよ?」
そう言うと、ストーカーY(仮)はオレの方へと向き直る。
お互いの距離間は僅か数十センチ。自身のテリトリー内に他人を入れたことが無く、どうしてと事情を問いただすよりも、先に動いたのは『精神』だった。
「……んで、ここにいる」
「特に何も。ただ、校門から勢いよく帰る君を見つけて、追いかけてきただけ! だからそうだね。状況だけで述べるなら、ただの好奇心かな?」
「……っ、……わ、悪いけど、もうやめてください」
オレはまた、知らずのうちに他人を拒絶した。
精神が勝手に動く。もう嫌だと壁を形成する。これ以上……踏み込んできてほしくないと。そうやって、数日前恩を売った人にまで牽制する。
「……じゃ、じゃあ、そういうことなんで」
「…………」
詰められているわけじゃないのに、どうしてかこいつから距離を取りたい。脳内が処理を終える前にそんな結論が先に飛び出した。……けどこの感じ、何か違和感がある。
今まで拒絶してきた“何か”を受け入れていたかのような。そんな……言葉では語れない、不思議な感覚があった。
だがオレが行う行動は1つ。──この場を離れる、それだけだった。
さすがに平日の昼過ぎということも相まってか、お店の中はほぼ無人状態。居たとしてもスタッフや年層の高い人達ばかり。まぁさすがにこんな時間からゲームセンターに立ち寄ってる子どもが居たら不審に思われるだろうし、それにオレは敢えてこの時間を狙って立ち寄った。
顧客層が少なく、かつ新作ゲームが店頭に並び出すこの時間に。
そう、オレは新作ゲームを買いにここへ立ち寄ったのだ。
もちろん、オンラインがサブ要素のアクションゲーム。以前プレイしていたゲームの続編として発売されたが、全世界通じてもかなりの高評価だった。その続編という形になれば、それはもう是非プレイしたいと思うに決まってる。
ショートPVが公開されたのが約半年前。そして本PVが公開され、ネット界隈では『あの神ゲーが復活!!』という声で溢れかえったのが1ヵ月前。
情報公開された部分で考察を練る者も多数存在し、期待値も存分にある。
……本当、これを手に入れるためだけにどれだけの苦労があったことか。今日の授業時間がいつもの倍以上に感じたし、今朝は変なストーカーに付けられるし。そう考えたら、碌な1日じゃなかったな……。
オレは期待と胸の高鳴りを鎮めつつ、商品棚へと手を伸ばし、お目当てのゲームパッケージを手に取る。
「──あっ! それ知ってるよ! まだ中学生だった頃に人気が高かったやつだよね。クラスの男子全員がやってたよ。それで毎日毎日寝不足の子が増えてさ~。大変だったんだよね」
「…………」
「けど僕、こういうゲームってあんまりやったことなかったから自分のプレイスタイルに合ってのかなぁ……って試行錯誤してて、結局買わずに友達から情報だけ聞いてたな~」
「………………」
「あ、でも、こうして続編が出たってことはそれだけ人気だって証拠だよね。まぁそりゃ、若者の間じゃ新感覚みたいなとこあったみたいだし。長年ローカルゲームばっかしてきたユーザーからも、そういった対処がきちんとされてたみたいで好評だったみたいだね。だってほら! ゲームレビューの客幅なんだけどかなりバラけてるでしょ? きっとこういう、ストレスフリーでしかもやり込み要素が強いゲームって、長く愛されるんだろうね~」
「…………………………んで」
「う~ん、僕もやってみよっかな。君もハマってるみたいでここに来るまでの間もずっとソワソワしてたし、それだけ楽しみにしてたってことだろうし。よしっ! 買ってみよう!」
「────何でお前がここにいるんだっ!!」
終始無言状態だったオレを気にもせず、意気揚々と隣では同じ棚に並ぶストーカーの姿が。
……やっぱあれだ。今すぐ警察に通報しよう。
この際だ、男にストーカーが付いたしかも同じ男みたいな全面記事に載る覚悟でこいつを刑務所送りにする必要がある間違いないそうしよう今すぐしよう──。
「待って待って! そんなあからさまに警戒してスマホ準備しないで! 怪しくないから!」
「いやいやいや……それはさすがに無理があるだろ。お前、絶対オレのことつけ回してただろ! 今の言い回しからも状況証拠はバッチリだ」
「うんうん、そんなガチガチになってスマホ構えてもどこにも電話繋がらないよ?」
そう言うと、ストーカーY(仮)はオレの方へと向き直る。
お互いの距離間は僅か数十センチ。自身のテリトリー内に他人を入れたことが無く、どうしてと事情を問いただすよりも、先に動いたのは『精神』だった。
「……んで、ここにいる」
「特に何も。ただ、校門から勢いよく帰る君を見つけて、追いかけてきただけ! だからそうだね。状況だけで述べるなら、ただの好奇心かな?」
「……っ、……わ、悪いけど、もうやめてください」
オレはまた、知らずのうちに他人を拒絶した。
精神が勝手に動く。もう嫌だと壁を形成する。これ以上……踏み込んできてほしくないと。そうやって、数日前恩を売った人にまで牽制する。
「……じゃ、じゃあ、そういうことなんで」
「…………」
詰められているわけじゃないのに、どうしてかこいつから距離を取りたい。脳内が処理を終える前にそんな結論が先に飛び出した。……けどこの感じ、何か違和感がある。
今まで拒絶してきた“何か”を受け入れていたかのような。そんな……言葉では語れない、不思議な感覚があった。
だがオレが行う行動は1つ。──この場を離れる、それだけだった。
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