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出会い
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鮮やかな青い空、遠く太陽に照らされて白く輝く雲。蝉の声が響き渡る。あの日も、こんな空だった。
そう。あの10年前の1週間。10年経った今でも鮮明に覚えている。10年前、俺は1週間祖父母の家に中学生で初めて一人で遊びに行った。別に、友達がいるわけではない。ただ単に、田舎に一人旅という大人びたことがしたかったんだ。
「へぇー!じゃあ君は一人で京都まで行くの!?」
「はい!おばあちゃん家まで一人旅です!」
「まあ、偉いわねえ。うちの馬鹿息子に見習わせたいわ~」
俺の隣にいる恰幅のいいおばさんがしきりにえらいえらいというからつい照れてしまう。東京から新大阪までの長い道のりで、俺は隣にいたおばさんとずっと話をしていた。ゲームを持ってきていたが、このおしゃべりなおばさんの話は面白く、必要なかった。
「それでね、この前うちの息子なんて……」
どうやら俺と同い年の息子がいるらしい。おばさんは従兄弟の結婚式で東京まで来ていて、その帰り道だ。
「そういえば、君はなんで一人で京都まで行くの?」
「いや、特に理由なんてないんですけど……」
本当に理由などなかった。ただ、大人びたかっただけなのだ。しかし、そんなこと言えるわけでもなく意味深な形で言葉を濁してしまった。
「まあ、人には一つや二つ言いたくないことだってあるわよね!私だって夫にすら言ってないことがあるのよ~」
やはり勘違いされてしまった。まあいいか。
「それってどんなことなんですか?」
「あら!そんなこと聞いちゃうのね~。君は大人だから教えてあげちゃおうかしら」
俺はおばさんの言った"大人だから"という部分に密かに喜んでいた。
「実は私、今回のこれ、結婚式なんかじゃないのよ~。私が好きなアーティストの人が来日してたのよ~」
来日……となると、恐らく韓流スターであろう。そこを突っ込むと話が長くなるから会えて突っ込むのはやめておこう。
「それがね、前にヨン様っていたでしょ?ヨン様に似てるんだけど~~~」
おばさんのマシンガントークが炸裂してしまった。突っ込んでいなかったが勝手に火がついてしまった。そんなこんなで、あっという間に新大阪まで着いた。どの線に乗ってどこで降りればいいか詳しくおばさんが教えてくれたおかげで迷うことはなさそうだな。選別にくれた冷凍みかんが冷たくて美味しい。
「おばあちゃーん!ただいまー!」
おばさんの的確な説明のおかげで予想以上に早く着いてしまった。出かけてしまっているのだろうか、誰もいない。とりあえず、荷物を玄関に置いておくか……。あ、あれは……。
俺は、一つの小さなお墓が目に留まった。お墓には、汚い字で"ひめこのはか"と書いてあった。懐かしいな。
あれは確か小学校低学年の時にここに来た時の……。
「おーい!京太!もうきてたのかい」
「あ、おばあちゃん!どこ行ってたんだよー」
「いやぁ、思ったよりも野菜が取れたからね、お隣におすそ分けしてたんだよ。すまんねぇ」
おばあちゃんは、よく来たね。とねぎらってくれながら、家の中へと連れてってくれた。
「それで、京太は何日いるんだい?何かきめてあるのかい?」
「うーん。一週間いるつもりだけど、何も考えてないや。じいちゃんは?」
おやまぁ、とおばあちゃんはいいながら冷たい麦茶を入れてくれた。
「喉乾いたろ?飲みなさい。おじいちゃんは日がくれた頃に帰ってくるよ」
「そっか。じゃあ俺適当に散歩がてらじいちゃんのところに行ってくるよ!」
「そうかい、気をつけるんだよ」
おばあちゃんの入れてくれた麦茶で俺の体力はみなぎっているようだ。いろんなところを回りながらじいちゃんの元へ行く。
この辺りはもう畑だらけで家なんかないなあ。いい天気だし、とってもいい匂いだなあ。すこし、寝っ転がるか。
ふと、視界の端に丸いものが現れた。
ん?麦わら帽子だ。誰か飛ばしちゃったのか?俺は、起きて麦わら帽子を拾って汚れを払う。
「あの、その帽子……」
「ああ、いま飛んできたやつなんだ。君の?」
か、かわいい。こんな可愛い子がいたなんて……。
「はい!どっかに行かなくてよかったあ……。ありがとうございます!」
俺が麦わら帽子を持ったままほうけてしまったから女の子は不思議そうにこっちを眺めている。
「あ!ごめんごめん。はい、これ」
しかし、かわいいな。すごく綺麗な髪だな。真っ黒の髪と真っ白のワンピースの色の映え方がすごく綺麗だ。
「あの……私、姫春歌菜といいます!あなたのお名前は?」
「えっ?名前?名前って?ああ!名前か、内田京太っていうんだ、よろしくね。」
「京太くんね!よろしく!私のことは歌菜って呼んでね!帽子を拾ってくれたしお礼もしたいからお家にこない?」
「じゃあ、行こうかな……。あ、俺これからじいちゃんのところ行かなきゃいけないんだった。だから、明日なら」
じいちゃんごめん。一瞬忘れてた。
「そっかあ、残念。じゃあ、明日の13時頃にここで待ち合わせね!」
「はいよ。じゃあまた明日なー」
俺はできる限り平静を装いクールに対応した。歌菜ちゃんはタタタっと走り去ってしまった。
「じいちゃん久しぶりー!」
俺はじいちゃんの元まで行き、久しぶりに顔を合わせた。
「おお、京太か!ひさしぶりだなぁ!」
おっきくなったなぁ。と目を細めながら俺の頭を撫でる。母さんとか父さんにだと恥ずかしがってしまうが、じいちゃんにされるとなんだか心地いい。
「じいちゃん今なにやってんの?俺手伝うよ!」
「そうかそうか、助かるよ。それじゃあ、こいつらを向こうまで運んでくれんか?」
俺は威勢良く任せとけ!と言って張り切って運び始めた。しかし重いな。じいちゃんは毎日こんなことしてるのか。やっぱじいちゃんはすごいな。
俺はそれから1時間ほど何かを運んだりじいちゃんと無駄話をしながら手伝いをしていた。
「それでさ、そのおばさん本当は韓流スターに会いに行ってたんだぜ?おもしろいだろー?」
「お前はすごい秘密を教えてもらったなぁ。よし、そろそろばあさんのところに帰るか」
俺はまだ暗くなる前だったから驚いた。
「京太が手伝ってくれたからもう終わったんだよ。ありがとなぁ」
俺は照れ笑いしながらじいちゃんと一緒に家に帰る。
「あ、じいちゃん。この辺に俺と同い年くらいの女の子いる?」
「さて、どうだっかなぁ。この辺はじーさんばーさんばっかだからなぁ」
京太みたいに遊びに来たんじゃないか?とじいちゃんは付け足した。
「そっかー。姫春さんて知ってる?」
「うーん。知らんなぁ。そんなに気にしてどうしたんだ?そうか、さてはお前、その子に惚れたなー?」
じいちゃんが楽しそうに俺を見る。
「そっ、そんなことないよ!何言ってんのさ全く……」
明日遊ぶけど……。とごにょごにょと続けた。
「もうデートの約束までしたのか。お前もやるなあ」
「だっ、だからそんなじゃないよ!」
じいちゃんはこうなったら止められない。早く家に着いてくれ……。
「ただいまー!」
「あら、はやかったねえ」
おばあちゃんが時計を見ながら言っている。
「京太が手伝ってくれたからなあ。京太のおかげだよ」
じいちゃんが俺を褒めてくれる。じいちゃんとおばあちゃんはいつも俺に甘いからなんだかくすぐったい気持ちだ。
「でももうヘトヘトだよ。おばあちゃん今日のご飯は?」
「もうご飯かい?まだ途中までしか作ってないからまっててちょうだい」
おばあちゃんは台所に行き料理のしたくを始めた。
「そういえば京太はよく一人でここまで来たなあ。遠かっただろうに」
「結構遠かったけどね、行き慣れた場所だし楽しかったよ。ちょっと一人旅に憧れててさ」
じいちゃんはそうか。と呟き、昔のことを思い出しているような顔をして遠くを眺めていた。
「おじいさんはね、昔突然一人で旅に出て行ったんだよ。それはもう本当に突然でねぇ」
おばあちゃんとじいちゃんは小さい頃からの仲らしく、たまにじいちゃんの子供時代のことを懐かしそうに話してくれる。いま、年を取ってもう頭は白髪が目立ちシワもあるじいちゃんやおばあちゃんにも今の俺のような時代があったんだな。面白いなぁ。
「どうした京太、突然ニヤニヤして」
「じいちゃんやおばあちゃんにも、俺みたいな時があったんだなぁって思うと面白くってさ」
「そうだよ。わしにもお前みたいな時があったのさ。もちろんテレビなどないぞ。あったのはラジオくらいさ。金持ちの家にだけ、白黒のテレビがあるような時代だったんだよ。あの頃はわしも若かったなぁ」
じいちゃんはなんだか、とてもノスタルジックな雰囲気になっている。ちょっと放っておくか。
「はいはい。ご飯ができましたよ。ほら、おじいさん準備してください」
「お、おうそうだな。はいはい」
じいちゃんはふと我に返って椅子に座る。俺はいつの間にかあたりも薄暗くなっているので居間の電気をつける。
「さて、ばあさんの手料理を食べるか。京太、働いた後のご飯はうまいぞー!」
みんなで揃って"いただきます"といって、作ってくれたおばあちゃんに、食材に感謝の気持ちを表し食べ始める。
「本当にうまい!おばあちゃんの料理本当に美味しいよ!去年よりもなんか美味しく感じる」
「ありがとねぇ京太。それはね、きっとおじいさんと一緒にお仕事がんばったからだよ」
じいちゃんの手伝いをしただけで二人はすごく褒めてくれる。照れ臭いけど、すごくいい気持ちだ。
「ごちそうさまでしたー」
ああ、もう今日は風呂に入ったらすぐ寝よう。もう限界だ……。今日はいろいろあったなあ。あの電車のおばさんは面白くていい人で、すごく綺麗で可愛い歌菜ちゃんにであって、じいちゃんとおばあちゃんはすごく優しくて、仕事手伝ったり、楽しかったなぁ。明日は歌菜ちゃんに会うからな。楽しみだ。もう、寝よう……。おやすみ。
そう。あの10年前の1週間。10年経った今でも鮮明に覚えている。10年前、俺は1週間祖父母の家に中学生で初めて一人で遊びに行った。別に、友達がいるわけではない。ただ単に、田舎に一人旅という大人びたことがしたかったんだ。
「へぇー!じゃあ君は一人で京都まで行くの!?」
「はい!おばあちゃん家まで一人旅です!」
「まあ、偉いわねえ。うちの馬鹿息子に見習わせたいわ~」
俺の隣にいる恰幅のいいおばさんがしきりにえらいえらいというからつい照れてしまう。東京から新大阪までの長い道のりで、俺は隣にいたおばさんとずっと話をしていた。ゲームを持ってきていたが、このおしゃべりなおばさんの話は面白く、必要なかった。
「それでね、この前うちの息子なんて……」
どうやら俺と同い年の息子がいるらしい。おばさんは従兄弟の結婚式で東京まで来ていて、その帰り道だ。
「そういえば、君はなんで一人で京都まで行くの?」
「いや、特に理由なんてないんですけど……」
本当に理由などなかった。ただ、大人びたかっただけなのだ。しかし、そんなこと言えるわけでもなく意味深な形で言葉を濁してしまった。
「まあ、人には一つや二つ言いたくないことだってあるわよね!私だって夫にすら言ってないことがあるのよ~」
やはり勘違いされてしまった。まあいいか。
「それってどんなことなんですか?」
「あら!そんなこと聞いちゃうのね~。君は大人だから教えてあげちゃおうかしら」
俺はおばさんの言った"大人だから"という部分に密かに喜んでいた。
「実は私、今回のこれ、結婚式なんかじゃないのよ~。私が好きなアーティストの人が来日してたのよ~」
来日……となると、恐らく韓流スターであろう。そこを突っ込むと話が長くなるから会えて突っ込むのはやめておこう。
「それがね、前にヨン様っていたでしょ?ヨン様に似てるんだけど~~~」
おばさんのマシンガントークが炸裂してしまった。突っ込んでいなかったが勝手に火がついてしまった。そんなこんなで、あっという間に新大阪まで着いた。どの線に乗ってどこで降りればいいか詳しくおばさんが教えてくれたおかげで迷うことはなさそうだな。選別にくれた冷凍みかんが冷たくて美味しい。
「おばあちゃーん!ただいまー!」
おばさんの的確な説明のおかげで予想以上に早く着いてしまった。出かけてしまっているのだろうか、誰もいない。とりあえず、荷物を玄関に置いておくか……。あ、あれは……。
俺は、一つの小さなお墓が目に留まった。お墓には、汚い字で"ひめこのはか"と書いてあった。懐かしいな。
あれは確か小学校低学年の時にここに来た時の……。
「おーい!京太!もうきてたのかい」
「あ、おばあちゃん!どこ行ってたんだよー」
「いやぁ、思ったよりも野菜が取れたからね、お隣におすそ分けしてたんだよ。すまんねぇ」
おばあちゃんは、よく来たね。とねぎらってくれながら、家の中へと連れてってくれた。
「それで、京太は何日いるんだい?何かきめてあるのかい?」
「うーん。一週間いるつもりだけど、何も考えてないや。じいちゃんは?」
おやまぁ、とおばあちゃんはいいながら冷たい麦茶を入れてくれた。
「喉乾いたろ?飲みなさい。おじいちゃんは日がくれた頃に帰ってくるよ」
「そっか。じゃあ俺適当に散歩がてらじいちゃんのところに行ってくるよ!」
「そうかい、気をつけるんだよ」
おばあちゃんの入れてくれた麦茶で俺の体力はみなぎっているようだ。いろんなところを回りながらじいちゃんの元へ行く。
この辺りはもう畑だらけで家なんかないなあ。いい天気だし、とってもいい匂いだなあ。すこし、寝っ転がるか。
ふと、視界の端に丸いものが現れた。
ん?麦わら帽子だ。誰か飛ばしちゃったのか?俺は、起きて麦わら帽子を拾って汚れを払う。
「あの、その帽子……」
「ああ、いま飛んできたやつなんだ。君の?」
か、かわいい。こんな可愛い子がいたなんて……。
「はい!どっかに行かなくてよかったあ……。ありがとうございます!」
俺が麦わら帽子を持ったままほうけてしまったから女の子は不思議そうにこっちを眺めている。
「あ!ごめんごめん。はい、これ」
しかし、かわいいな。すごく綺麗な髪だな。真っ黒の髪と真っ白のワンピースの色の映え方がすごく綺麗だ。
「あの……私、姫春歌菜といいます!あなたのお名前は?」
「えっ?名前?名前って?ああ!名前か、内田京太っていうんだ、よろしくね。」
「京太くんね!よろしく!私のことは歌菜って呼んでね!帽子を拾ってくれたしお礼もしたいからお家にこない?」
「じゃあ、行こうかな……。あ、俺これからじいちゃんのところ行かなきゃいけないんだった。だから、明日なら」
じいちゃんごめん。一瞬忘れてた。
「そっかあ、残念。じゃあ、明日の13時頃にここで待ち合わせね!」
「はいよ。じゃあまた明日なー」
俺はできる限り平静を装いクールに対応した。歌菜ちゃんはタタタっと走り去ってしまった。
「じいちゃん久しぶりー!」
俺はじいちゃんの元まで行き、久しぶりに顔を合わせた。
「おお、京太か!ひさしぶりだなぁ!」
おっきくなったなぁ。と目を細めながら俺の頭を撫でる。母さんとか父さんにだと恥ずかしがってしまうが、じいちゃんにされるとなんだか心地いい。
「じいちゃん今なにやってんの?俺手伝うよ!」
「そうかそうか、助かるよ。それじゃあ、こいつらを向こうまで運んでくれんか?」
俺は威勢良く任せとけ!と言って張り切って運び始めた。しかし重いな。じいちゃんは毎日こんなことしてるのか。やっぱじいちゃんはすごいな。
俺はそれから1時間ほど何かを運んだりじいちゃんと無駄話をしながら手伝いをしていた。
「それでさ、そのおばさん本当は韓流スターに会いに行ってたんだぜ?おもしろいだろー?」
「お前はすごい秘密を教えてもらったなぁ。よし、そろそろばあさんのところに帰るか」
俺はまだ暗くなる前だったから驚いた。
「京太が手伝ってくれたからもう終わったんだよ。ありがとなぁ」
俺は照れ笑いしながらじいちゃんと一緒に家に帰る。
「あ、じいちゃん。この辺に俺と同い年くらいの女の子いる?」
「さて、どうだっかなぁ。この辺はじーさんばーさんばっかだからなぁ」
京太みたいに遊びに来たんじゃないか?とじいちゃんは付け足した。
「そっかー。姫春さんて知ってる?」
「うーん。知らんなぁ。そんなに気にしてどうしたんだ?そうか、さてはお前、その子に惚れたなー?」
じいちゃんが楽しそうに俺を見る。
「そっ、そんなことないよ!何言ってんのさ全く……」
明日遊ぶけど……。とごにょごにょと続けた。
「もうデートの約束までしたのか。お前もやるなあ」
「だっ、だからそんなじゃないよ!」
じいちゃんはこうなったら止められない。早く家に着いてくれ……。
「ただいまー!」
「あら、はやかったねえ」
おばあちゃんが時計を見ながら言っている。
「京太が手伝ってくれたからなあ。京太のおかげだよ」
じいちゃんが俺を褒めてくれる。じいちゃんとおばあちゃんはいつも俺に甘いからなんだかくすぐったい気持ちだ。
「でももうヘトヘトだよ。おばあちゃん今日のご飯は?」
「もうご飯かい?まだ途中までしか作ってないからまっててちょうだい」
おばあちゃんは台所に行き料理のしたくを始めた。
「そういえば京太はよく一人でここまで来たなあ。遠かっただろうに」
「結構遠かったけどね、行き慣れた場所だし楽しかったよ。ちょっと一人旅に憧れててさ」
じいちゃんはそうか。と呟き、昔のことを思い出しているような顔をして遠くを眺めていた。
「おじいさんはね、昔突然一人で旅に出て行ったんだよ。それはもう本当に突然でねぇ」
おばあちゃんとじいちゃんは小さい頃からの仲らしく、たまにじいちゃんの子供時代のことを懐かしそうに話してくれる。いま、年を取ってもう頭は白髪が目立ちシワもあるじいちゃんやおばあちゃんにも今の俺のような時代があったんだな。面白いなぁ。
「どうした京太、突然ニヤニヤして」
「じいちゃんやおばあちゃんにも、俺みたいな時があったんだなぁって思うと面白くってさ」
「そうだよ。わしにもお前みたいな時があったのさ。もちろんテレビなどないぞ。あったのはラジオくらいさ。金持ちの家にだけ、白黒のテレビがあるような時代だったんだよ。あの頃はわしも若かったなぁ」
じいちゃんはなんだか、とてもノスタルジックな雰囲気になっている。ちょっと放っておくか。
「はいはい。ご飯ができましたよ。ほら、おじいさん準備してください」
「お、おうそうだな。はいはい」
じいちゃんはふと我に返って椅子に座る。俺はいつの間にかあたりも薄暗くなっているので居間の電気をつける。
「さて、ばあさんの手料理を食べるか。京太、働いた後のご飯はうまいぞー!」
みんなで揃って"いただきます"といって、作ってくれたおばあちゃんに、食材に感謝の気持ちを表し食べ始める。
「本当にうまい!おばあちゃんの料理本当に美味しいよ!去年よりもなんか美味しく感じる」
「ありがとねぇ京太。それはね、きっとおじいさんと一緒にお仕事がんばったからだよ」
じいちゃんの手伝いをしただけで二人はすごく褒めてくれる。照れ臭いけど、すごくいい気持ちだ。
「ごちそうさまでしたー」
ああ、もう今日は風呂に入ったらすぐ寝よう。もう限界だ……。今日はいろいろあったなあ。あの電車のおばさんは面白くていい人で、すごく綺麗で可愛い歌菜ちゃんにであって、じいちゃんとおばあちゃんはすごく優しくて、仕事手伝ったり、楽しかったなぁ。明日は歌菜ちゃんに会うからな。楽しみだ。もう、寝よう……。おやすみ。
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