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薔薇の香りと剣舞曲
38 クエスト[ロビーを救え]②
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じっと通りを見つめるが、シーンとしている。誰も居ない街の片隅、冷たい感じすらしてくる。この通りには人の気配が無かった。
「NPCも居ねえのか」
1人しかこの場所に居ないという緊張感と無機質な街並みから伝わって来る少しの恐怖に似た感覚、それを紛らわそうとして、モフモフうさぎは思った事を言葉に出してみる。
(後ろの方はどうなんだ)
モフモフうさぎが振り返ると、両側の建物が3軒連なった先で白い光に遮られて、通りがまるで白い壁で堰き止められる様に終わっていた。真っ白で淡く光る白い壁、その先は何も見えない。
(白く光る壁を通り抜けて何処かに戻れるかもしれない)
そう思ってモフモフうさぎはその白い光の壁まで歩いて行った。白い壁を前にして、せーので通り抜けようとしてみる。
「あいたっ、通れねぇ。なんじゃこりゃあ、よくわかんねぇなぁ、もう」
ぶつかった白い光の壁は、手で触ってみると冷たくコンクリートのような感じがした。
この白い壁から先へは進めない、結局さっきの向いていた方向に進むしかない。または……
「ログアウトすんぞぉっ」
モフモフうさぎが通りに向かって叫んだ。
ギーバタンッ、バタンッバタンッ、ギーバタンッ
誰も居ないはずの建物の窓や扉が、モフモフの声に答えるかの様に、一斉に音を立てて開閉をした。
(うわぁ、ゾワッと来た)
怪奇現象が起きた。そしてモフモフうさぎの全身に鳥肌が立った。リアルの方のモフモフうさぎの方にだが。
(怖え。なんだよ、俺おばけが苦手なんだよっ)
元の静かな人の気配の無い街を見ながら立ちすくむモフモフうさぎの前に、ヒラヒラと一枚の写真? が空からというか、空中から落ちて来た。
モフモフうさぎは地面に落ちるまで目で追って、それから辺りを伺いながらそれを拾った。
この中世風の世界に写真という物がミスマッチな気がしたが、モフモフうさぎが手にしているのは間違いなくハガキサイズの写真だった。
その写真に写っていたのは、体中傷だらけで血を流しロープで両手を背中の後ろで結ばれて、両足もロープで結ばれた、何処かの部屋の床に倒れている生々しい白刃のロビーの姿だった。
(まじかっ、これロビーちゃんじゃねぇかっ! なんだよ、誰がしたんだ、血だらけじゃねぇか)
眉をしかめてモフモフうさぎは本気で腹を立てた。写真を裏返すと、写真の後ろには何か文字が書いてある。
《助けるか、それとも見殺しにするかはお前次第だ》
(……ロビーちゃん)
写真から顔を上げたモフモフうさぎの目線の先には、通りの先の黒っぽい扉があった。
(よくわからねぇ、だがな、ロビーちゃんをこんな目に遭わした奴は許さねえっ。やってやろうじゃねぇか)
決意を胸に抱いてモフモフうさぎは歩き出した。
(俺はドラゴンに喰われた。ロビーちゃんも襲われたみたいだ。だがまだ俺みたいに死んじゃいねぇ。あんなに傷だらけにされて1人ぼっちで縛られて)
ロビーの事を思うと、まるで自分がされているかのような気分になって、悔しくてモフモフうさぎは居ても立っても居られなかった。
(助ける、助ける、助ける、頑張れロビーちゃん)
何度も繰り返しながら、歩きから走りにかわったモフモフうさぎ。誰かが仕組んだとしても関係無かった。
彼は男として進まねばならなかった、ただそれだけだ。
「NPCも居ねえのか」
1人しかこの場所に居ないという緊張感と無機質な街並みから伝わって来る少しの恐怖に似た感覚、それを紛らわそうとして、モフモフうさぎは思った事を言葉に出してみる。
(後ろの方はどうなんだ)
モフモフうさぎが振り返ると、両側の建物が3軒連なった先で白い光に遮られて、通りがまるで白い壁で堰き止められる様に終わっていた。真っ白で淡く光る白い壁、その先は何も見えない。
(白く光る壁を通り抜けて何処かに戻れるかもしれない)
そう思ってモフモフうさぎはその白い光の壁まで歩いて行った。白い壁を前にして、せーので通り抜けようとしてみる。
「あいたっ、通れねぇ。なんじゃこりゃあ、よくわかんねぇなぁ、もう」
ぶつかった白い光の壁は、手で触ってみると冷たくコンクリートのような感じがした。
この白い壁から先へは進めない、結局さっきの向いていた方向に進むしかない。または……
「ログアウトすんぞぉっ」
モフモフうさぎが通りに向かって叫んだ。
ギーバタンッ、バタンッバタンッ、ギーバタンッ
誰も居ないはずの建物の窓や扉が、モフモフの声に答えるかの様に、一斉に音を立てて開閉をした。
(うわぁ、ゾワッと来た)
怪奇現象が起きた。そしてモフモフうさぎの全身に鳥肌が立った。リアルの方のモフモフうさぎの方にだが。
(怖え。なんだよ、俺おばけが苦手なんだよっ)
元の静かな人の気配の無い街を見ながら立ちすくむモフモフうさぎの前に、ヒラヒラと一枚の写真? が空からというか、空中から落ちて来た。
モフモフうさぎは地面に落ちるまで目で追って、それから辺りを伺いながらそれを拾った。
この中世風の世界に写真という物がミスマッチな気がしたが、モフモフうさぎが手にしているのは間違いなくハガキサイズの写真だった。
その写真に写っていたのは、体中傷だらけで血を流しロープで両手を背中の後ろで結ばれて、両足もロープで結ばれた、何処かの部屋の床に倒れている生々しい白刃のロビーの姿だった。
(まじかっ、これロビーちゃんじゃねぇかっ! なんだよ、誰がしたんだ、血だらけじゃねぇか)
眉をしかめてモフモフうさぎは本気で腹を立てた。写真を裏返すと、写真の後ろには何か文字が書いてある。
《助けるか、それとも見殺しにするかはお前次第だ》
(……ロビーちゃん)
写真から顔を上げたモフモフうさぎの目線の先には、通りの先の黒っぽい扉があった。
(よくわからねぇ、だがな、ロビーちゃんをこんな目に遭わした奴は許さねえっ。やってやろうじゃねぇか)
決意を胸に抱いてモフモフうさぎは歩き出した。
(俺はドラゴンに喰われた。ロビーちゃんも襲われたみたいだ。だがまだ俺みたいに死んじゃいねぇ。あんなに傷だらけにされて1人ぼっちで縛られて)
ロビーの事を思うと、まるで自分がされているかのような気分になって、悔しくてモフモフうさぎは居ても立っても居られなかった。
(助ける、助ける、助ける、頑張れロビーちゃん)
何度も繰り返しながら、歩きから走りにかわったモフモフうさぎ。誰かが仕組んだとしても関係無かった。
彼は男として進まねばならなかった、ただそれだけだ。
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