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6:...羨ましくなんてない。
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やっと水道が使えるようになった頃、大学の入学式が終わった。
水道の偉大さを思い知った。生まれたのが平成で良かった。
もう僕は重いペットボトルをぶら下げて坂道トレーニングをしなくて済む。
などと余韻に浸りながらゆっくり...途中で水を床にぶちまけるというイベントを挟んで...朝食を食べていると、
「あーーーーー!!!」
初日から遅刻した。
ドタバタと毎日を過ごすうちに、授業が始まってからもう1ヶ月ほど経っていた。
一人暮らしに慣れたかと聞かれるとまだ微妙なところだ。
これも前世が関係している。僕は火が怖い。
僕は複数の前世を覚えている。多分、6人分。だから、僕は記憶上では7回目の人生を送っている。
火が怖い原因は、きっとその中の5人目、おじいさんの前世だ。
5人目は、若い男性で、ホテルの客室員だったらしい。名前は分からないが、なかなかのイケメンだった。...羨ましくなんてない。
勤め始めて3年目、男性のホテルが火事になった。それは当時の新聞に載るほどの大火事だった。
その男性のことを思い出した時、僕は小5で、怖くて暫く眠れなかった。図書館で昔の新聞を読み漁り、その火事の記事がトップで載せられているのを何社か見つけた。恐らく実家を探せば、そのコピーを切って貼ったノートが見つかるだろう。
男性は、火事の時、ホテル内にいた客を避難経路へ誘導し、最後まで中に居続けた。鎮火後の客室に、蹲る男性の遺体が発見された...と新聞に書かれてあった。
男性の腕には、瀕死状態の赤ん坊が抱きしめられていた。
赤ん坊はその後病院にすぐに運ばれ、幸いにも一命を取り留めたらしい。
死に際までイケメンな奴だった。
―正確に言うと、僕が火が怖いのは、彼のせいじゃない。僕が勝手にその思い出した光景に恐怖を感じただけだ。
前世を思い出すと、どうしても今の自分と比べてしまう。自然な成り行きだろうけど、僕の場合それを何回も繰り返すことになる。
今の自分はこんな風にはなれない、と。
劣等感にも似たけだるさが付きまとう。
水道の偉大さを思い知った。生まれたのが平成で良かった。
もう僕は重いペットボトルをぶら下げて坂道トレーニングをしなくて済む。
などと余韻に浸りながらゆっくり...途中で水を床にぶちまけるというイベントを挟んで...朝食を食べていると、
「あーーーーー!!!」
初日から遅刻した。
ドタバタと毎日を過ごすうちに、授業が始まってからもう1ヶ月ほど経っていた。
一人暮らしに慣れたかと聞かれるとまだ微妙なところだ。
これも前世が関係している。僕は火が怖い。
僕は複数の前世を覚えている。多分、6人分。だから、僕は記憶上では7回目の人生を送っている。
火が怖い原因は、きっとその中の5人目、おじいさんの前世だ。
5人目は、若い男性で、ホテルの客室員だったらしい。名前は分からないが、なかなかのイケメンだった。...羨ましくなんてない。
勤め始めて3年目、男性のホテルが火事になった。それは当時の新聞に載るほどの大火事だった。
その男性のことを思い出した時、僕は小5で、怖くて暫く眠れなかった。図書館で昔の新聞を読み漁り、その火事の記事がトップで載せられているのを何社か見つけた。恐らく実家を探せば、そのコピーを切って貼ったノートが見つかるだろう。
男性は、火事の時、ホテル内にいた客を避難経路へ誘導し、最後まで中に居続けた。鎮火後の客室に、蹲る男性の遺体が発見された...と新聞に書かれてあった。
男性の腕には、瀕死状態の赤ん坊が抱きしめられていた。
赤ん坊はその後病院にすぐに運ばれ、幸いにも一命を取り留めたらしい。
死に際までイケメンな奴だった。
―正確に言うと、僕が火が怖いのは、彼のせいじゃない。僕が勝手にその思い出した光景に恐怖を感じただけだ。
前世を思い出すと、どうしても今の自分と比べてしまう。自然な成り行きだろうけど、僕の場合それを何回も繰り返すことになる。
今の自分はこんな風にはなれない、と。
劣等感にも似たけだるさが付きまとう。
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