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第35話 追跡、セインベル
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「大変な事になったが……本当に僕たちなんかがこんな重大事態に対応していいのか……?」
冒険者に男女は関係ないという学園の思想が反映されているのか、アリーシャやシエルも交えた4人組で泊まったホテルの部屋。
ルークは素早く出立の準備をしながらも、どこか不安そうな声をあげる。
「間違いなく、プロの冒険者にも依頼しているはずだ。俺たちだけという事はないだろう。俺たちに依頼が来た理由は、聖女に聞いてみないと分からないが……」
俺は少し苦しいなと思いつつも、そんな会話で自然にルークの迷いを消すように誘導する。
「おそらくですが、あの聖女には何か考えがあるのでしょう。それはわたしたちには及びもつかない何かなのかもしれないですが」
秘密結社〈円環の唄〉では聖女リーチェの同輩であるアリーシャも、俺と同じく色々な物事を把握している人間として、自然な会話でさっさとこのイベントを進行させようとする。
「……なにか裏があるような気がする」
シエルは目ざとく聖女リーチェを疑っている。下手すると俺やアリーシャも疑われかねないので、俺はさっさと話を逸らそうと、こんな発言をしていく。
「賊が逃げ込んだ天眼山脈は、領地で暮らしていた頃に修行でお世話になった。地理は完璧に分かるし、地図も持ってる。聖女から、セインベルの追跡を行うための波長探知機も貰った。あと大事なのはスピードだ、さっさと出よう」
セインベルがレプリカである事を知る俺からすると、この波長探知機もまた偽物という事になるわけだが、これは間違いなく気づかないふりをしておいたほうがいいやつだろう。いろいろな意味でリーチェが怖すぎる。
俺の発言が流れを決め、そのまま俺たちは最速でホテルを後にし、マークの街から出ている魔導バスに乗って、天眼山脈の麓のイーブ村まで移動した。
「イーブ村名物、イーブボア鍋だって。あとで食べたい」
車窓から見えたイーブ村の看板にシエルが自由な感想を述べて、少し一行の緊張が和らぐ。シエルにはムードメーカーとしての魅力もあるよなぁ、なんて原作からのシエルのファンである俺は思うのだった。
「以前食ったけど、めちゃめちゃ美味かったよ。これが終わったら、お祝いに食べよう」
俺もそんな発言をして一行の士気を上げつつ、俺たちは到着したバス停に降りて、さっそく天眼山脈へと走りだす。
「サルヴァ、あのワープする魔法を使った方がサルヴァは早いんじゃないか?」
ルークの提案は一考の価値があったが、
「1人で賊に出くわして各個撃破を食らっても始末が悪い。パーティで固まるのが最善だと思う。波長探知計も一つしかないし」
この後、レプリカのセインベルとすり替えて鐘を運んでいる〈風の秘密を唄う使徒〉と出会う事を知っている俺は、彼女との戦闘の事を考え、そのように返事をする。
天眼山脈の山道を駆ける俺たちの目の前に、いつか見た植物型モンスターが現れるが――
「リプレイスメント」
素早く背後にワープし、〈氷と風の剣〉で一瞬でその命を刈り取り終わる。
そのまま俺は後ろも振り返らず走り続け、一刻も早く目標の少女に追いつこうと、山道を急ぐ。
「サルヴァ、あれ……!」
山道が巨大な谷間にさしかかり、いよいよ国境地帯に入ろうとしたところで、俺たちはついに一人の少女の影を発見する。
その少女、〈風の秘密を唄う使徒〉ミリアは、黄色いミディアムヘアを谷間を吹く強風に揺らしながら、水色のどんよりとダルそうな瞳で、俺たちを待ち構えていたかのように見つめていた。
その傍には、ご丁寧にアイテムボックスから取り出してあるセインベルのレプリカがある。これは原作通りの流れだ。
「ありゃ。お仕事完了したと思って油断してたら、なんか随分と早く追手が来ちゃったねぇ。ご苦労様だよ、若者たちよ」
そのセリフは内情を知る俺からすると茶番だったが、残念ながらこの美少女の実力は本物である。
俺はこの後に待ち構える耐久型の激しいバトルに緊張を感じながらも、目の前の少女と会話をする。
「鐘を盗んだ犯人。その鐘を置いて、逃げ出してもらう、なんてわけにはいかないのか?」
「うーん、おあいにくさま。めんどくさいけど、ここは諦めて戦いで奪ってもらわないとかなぁ……!?」
途端、目の前の少女、ミリアから緑色の凄まじいオーラが発され、あまりの闘気に俺たちはそれだけで気圧されてしまい、ルークとシエルは怯えたように後ずさる。
「こいつ……ヤバい……!」
最大限の危機が訪れた事を叫ぶように、ルークが恐怖の混ざった声を上げる。
そして、どこからともなく少女の武器である独特の意匠の巨大な魔法杖が現れ、くるくると舞うように回転しながら少女の両手に収まり、秘密結社の使徒らしい、恰好のいいポーズを決め、少女は戦いの開始を宣言する。
「さてさて、お若いキミらには正直荷が重いと思うけど――秘密結社〈円環の理〉が一員、〈風の秘密を唄う使徒〉ミリアが、名乗ったからには最大武力を持って、その命、頂いちゃうよ~!」
軽い口調で発されたその言葉は、紛れもなく強者の余裕を見せつけた名乗りを伴っており、少女が俺たちの命を生かして帰すつもりがない事がひしひしと伝わる。
そうして、俺たち〈Ⅴ組1班〉と、〈風の秘密を唄う使徒〉ミリアの戦闘が、いよいよ始まる――!
冒険者に男女は関係ないという学園の思想が反映されているのか、アリーシャやシエルも交えた4人組で泊まったホテルの部屋。
ルークは素早く出立の準備をしながらも、どこか不安そうな声をあげる。
「間違いなく、プロの冒険者にも依頼しているはずだ。俺たちだけという事はないだろう。俺たちに依頼が来た理由は、聖女に聞いてみないと分からないが……」
俺は少し苦しいなと思いつつも、そんな会話で自然にルークの迷いを消すように誘導する。
「おそらくですが、あの聖女には何か考えがあるのでしょう。それはわたしたちには及びもつかない何かなのかもしれないですが」
秘密結社〈円環の唄〉では聖女リーチェの同輩であるアリーシャも、俺と同じく色々な物事を把握している人間として、自然な会話でさっさとこのイベントを進行させようとする。
「……なにか裏があるような気がする」
シエルは目ざとく聖女リーチェを疑っている。下手すると俺やアリーシャも疑われかねないので、俺はさっさと話を逸らそうと、こんな発言をしていく。
「賊が逃げ込んだ天眼山脈は、領地で暮らしていた頃に修行でお世話になった。地理は完璧に分かるし、地図も持ってる。聖女から、セインベルの追跡を行うための波長探知機も貰った。あと大事なのはスピードだ、さっさと出よう」
セインベルがレプリカである事を知る俺からすると、この波長探知機もまた偽物という事になるわけだが、これは間違いなく気づかないふりをしておいたほうがいいやつだろう。いろいろな意味でリーチェが怖すぎる。
俺の発言が流れを決め、そのまま俺たちは最速でホテルを後にし、マークの街から出ている魔導バスに乗って、天眼山脈の麓のイーブ村まで移動した。
「イーブ村名物、イーブボア鍋だって。あとで食べたい」
車窓から見えたイーブ村の看板にシエルが自由な感想を述べて、少し一行の緊張が和らぐ。シエルにはムードメーカーとしての魅力もあるよなぁ、なんて原作からのシエルのファンである俺は思うのだった。
「以前食ったけど、めちゃめちゃ美味かったよ。これが終わったら、お祝いに食べよう」
俺もそんな発言をして一行の士気を上げつつ、俺たちは到着したバス停に降りて、さっそく天眼山脈へと走りだす。
「サルヴァ、あのワープする魔法を使った方がサルヴァは早いんじゃないか?」
ルークの提案は一考の価値があったが、
「1人で賊に出くわして各個撃破を食らっても始末が悪い。パーティで固まるのが最善だと思う。波長探知計も一つしかないし」
この後、レプリカのセインベルとすり替えて鐘を運んでいる〈風の秘密を唄う使徒〉と出会う事を知っている俺は、彼女との戦闘の事を考え、そのように返事をする。
天眼山脈の山道を駆ける俺たちの目の前に、いつか見た植物型モンスターが現れるが――
「リプレイスメント」
素早く背後にワープし、〈氷と風の剣〉で一瞬でその命を刈り取り終わる。
そのまま俺は後ろも振り返らず走り続け、一刻も早く目標の少女に追いつこうと、山道を急ぐ。
「サルヴァ、あれ……!」
山道が巨大な谷間にさしかかり、いよいよ国境地帯に入ろうとしたところで、俺たちはついに一人の少女の影を発見する。
その少女、〈風の秘密を唄う使徒〉ミリアは、黄色いミディアムヘアを谷間を吹く強風に揺らしながら、水色のどんよりとダルそうな瞳で、俺たちを待ち構えていたかのように見つめていた。
その傍には、ご丁寧にアイテムボックスから取り出してあるセインベルのレプリカがある。これは原作通りの流れだ。
「ありゃ。お仕事完了したと思って油断してたら、なんか随分と早く追手が来ちゃったねぇ。ご苦労様だよ、若者たちよ」
そのセリフは内情を知る俺からすると茶番だったが、残念ながらこの美少女の実力は本物である。
俺はこの後に待ち構える耐久型の激しいバトルに緊張を感じながらも、目の前の少女と会話をする。
「鐘を盗んだ犯人。その鐘を置いて、逃げ出してもらう、なんてわけにはいかないのか?」
「うーん、おあいにくさま。めんどくさいけど、ここは諦めて戦いで奪ってもらわないとかなぁ……!?」
途端、目の前の少女、ミリアから緑色の凄まじいオーラが発され、あまりの闘気に俺たちはそれだけで気圧されてしまい、ルークとシエルは怯えたように後ずさる。
「こいつ……ヤバい……!」
最大限の危機が訪れた事を叫ぶように、ルークが恐怖の混ざった声を上げる。
そして、どこからともなく少女の武器である独特の意匠の巨大な魔法杖が現れ、くるくると舞うように回転しながら少女の両手に収まり、秘密結社の使徒らしい、恰好のいいポーズを決め、少女は戦いの開始を宣言する。
「さてさて、お若いキミらには正直荷が重いと思うけど――秘密結社〈円環の理〉が一員、〈風の秘密を唄う使徒〉ミリアが、名乗ったからには最大武力を持って、その命、頂いちゃうよ~!」
軽い口調で発されたその言葉は、紛れもなく強者の余裕を見せつけた名乗りを伴っており、少女が俺たちの命を生かして帰すつもりがない事がひしひしと伝わる。
そうして、俺たち〈Ⅴ組1班〉と、〈風の秘密を唄う使徒〉ミリアの戦闘が、いよいよ始まる――!
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