奇欲

特別

「ええーー…わかってるとは思うが、しばらく一年五組の教室は立ち入り禁止だから、授業の際はこの多目的室に集まるように」
ザワザワ。落ち着きが冷めやらぬ体育館で、慌ただしそうに先生たちが説明をしている。
「ねえ、警察も来てるらしいよ、真波」
前方から、穂乃花が頬を紅潮させて振り返ってくる。
「へえ、なんだか大事になってるみたいだね」
「こんな全校生徒集めて臨時集会してるんだから、よっぽどのことなんじゃない？」
そう言いながら、穂乃花はやっぱり興奮したように笑っている。
「ほら、そこうるさい」
「あっ、すみません」
隣のクラスの担任に注意されてしまった。
 穂乃花はちょっぴり罰が悪そうにしながら、前を向いて列に並び直した。
  やっぱり誰もが、特別に焦がれているのかもしれない。変わることのない惰力的な日常生活の中で、突然光始める異端なものを。さっき見たハムスターの死体を頭で思い描きながら、私は胸を落ち着かせた。
 とにかく誰にも、私が死体で興奮していることを悟らせてはいけない。今までせっく築きあげてきた私のささやかな生活を壊してはいけない。
「一年五組の生徒に関しては、これから個別で聞き取り調査をしますので、よろしくお願いします」
「げっ、私たちじゃん」
穂乃花がまた後ろを振り向いてきた。