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放課後
しおりを挟む「失礼します、福田先生いますか?」
ある日の放課後に、私は国語準備室へ福田先生を訪ねに来た。
高校入学後初めての定期考査がもう来週に迫っている。このテスト週間になると生徒が先生のもとへ質問しに大勢詰め寄るのが普通だけど、廊下を見回してみても私以外に生徒は誰もいない。
放課後独特の静寂に緊張しながらも、私は扉を開いた。
「はい、いるよー。ちょっと待っててね」
先生達の棚の向こうから、福田先生の声が聞こえてきた。かと思うと、ガサガサと音を立てて先生が私の目の前に顔を出した。
突然で胸がビクッとなる。
「あぁ、芥川さん。どうした?」
「あのっ、ここの練習問題の意味が分からなくて!」
「じゃあ、中入っておいで。」
そう言ってにっこり微笑むと、福田先生は私を連れて国語準備室の中へ入った。
私は自分が先生に覚えられていたことを密かに喜びながら着いてゆく。
「あっ、こんな風になってるんだ…」
思わず声が漏れる。職員室はよく入るけど、こういう教科ごとの部屋に入ることは初めて。
先生達の名前が書かれた机が6つ、狭い部屋の中で並べられている。壁には大量の資料が入った棚がズラっと立て掛けられていて、資料室かと思うほどだった。
「国語とか歴史は特に資料が必要だからね。狭いけど、どうぞ。」
挙動不審に部屋を見回している私に少し笑って、先生は奥にあるソファに座った。
「ありがとうございますっ」
その向かいに私は座る。
な、なんだろうこの緊張感。周りが静かなせいか、こんな狭い部屋に押し込まれているせいか、それとも…。
「で?その分からない所見せてもらってもいいかな?」
「あっはい!!」
バタバタと音を立てながら、私はプリントを向かいに座る先生に向けて見せた。
「あー、ここの部分は芥川さん自身の考え方とか、感性を問われてるからねー」
「自分の考え方を文にするのって、すごく苦手で。」
「だけどそれはこれからの君の人生にも関わってくるほど重要な力だよ。」
そうだよなぁ。自分の意見は言えるようにも、書けるようにもならないと。
分かってても難しいなぁ…。
「じゃあさ、芥川さんはこの文書を読んで何を感じ取った?」
「うーん、簡単に言ってしまえば、ただ風景とか秋の静けさだとかが、とても綺麗に表現されてるなぁって思いました。」
だけどそんな簡単なこと、誰だって書こうと思えば書けることだし…。
「1つ、芥川さんに違う解釈の仕方を教えてあげようか?」
「解釈…ですか?」
「そう。この文章は一見風景のことを書き連ねているだけに見えるけど、もう1つ別の意味が隠されているんだよ。」
いたずらっ子のような笑みで、福田先生が指を1の字にして私に見せる。
私はぽかんとしたまま先生を見ていた。
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