不手際な愛、してる

木の実

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  目が覚めると、視線の先は白い天井だった。
「んー…」
ぼやっとした照明すら眩しくて、思わず横に寝返りをうつ。
「うわっ」
真横に、平内さんがいた。
「えっ」
私は驚いて飛び起きる。
昨日のアレは、夢じゃなかったんだ…。
スヤスヤと眠り続ける平内さんの横顔を見つめながら、頭の中に昨夜の記憶がよみがえってくる。

「村松、待って」
「えっ」
酒で少しだけ赤く染まった頬の平内さんは、私の腕を掴む。
「あのさ」
平内さんの目は、あからさまに泳いでいた。だけど私は、次に出てくる平内さんの言葉に釘付けになってしまう。
「僕も、君の時間が欲しい」


…。それでそのままホテル行って、今に至る。……って、何この展開…。
「絶対その場の勢いだよね…」
無防備な彼の寝顔とは裏腹に、私の心に後悔が現れる。
憧れの平内さんが、目の前にいるのに。酒で酔って、こんなに簡単に体の関係をもって。
「あぁもう、最悪…」
その上、その後の記憶すら全くない。なんてざま…。全部自業自得だけど。
  こんなんじゃ完全に、体だけの関係だ。私は本当にただ、平内さんが好きなのに。
絶対都合のいい女だって思われた…
ベッドにうずくまって、思わず涙が出てくる。
「あれ、村松?」
その瞬間背中から、彼の声が聞こえた。
「起きてるんだろ?」
落ち着いた変わらない静かな声。でも私は振り向けない。
「ごめん、昨日のこと。でも、村松が俺のこと受け入れてくれるなんて、思ってもなかったから、嬉しかった。」
「え…?」
私はようやく顔をあげて、平内さんを見た。
「ありがと、村松」
「え、そんな…受け入れるって…。私、ずっと平内さんのこと好きだったから…」
むしろ、私の気持ちを受け入れてくれた平内さんの方がすごい。
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