上 下
62 / 64
番外編

シトリー 3

しおりを挟む
最初の授業は、どれだけの力があるかの確認をするらしい。
使う武器は、もちろんお互いに双剣(木で製造された)。
相手は、他チームのメンバーの一人(ランダムで)がするらしい。
名前順だから、私は中盤辺り。
ダヴィデさんか、マリアナさんの動きを真似るにも、2人は私より後。
「だ、大丈夫かな(できる気がしない、無理だ)」
とりあえず、本で読んだ内容を思い出すしかない。
双剣は、手数の多さが鍵になる。
二重の攻撃で相手に隙を与えない。
弱点としては、攻撃距離が短いことを注意しないと。
それと他には・・。
思い出している内に、自分の出番が回ってきた。
「さて・・」
相手は、私より少し身長が高めの男の人だ。
「(か、勝てるかな・・いや)い、いくよ」
「・・来い」
私は両手に剣を持ち、構える。
「やっ!」
そして、一気に相手の所まで走り、左の手を振り下ろす。
だが、相手は防御をすることなく、両手の剣を十字に重ねた。
私は、その動きを見て、重い一撃がくると確信した。 
「(二段階攻撃は流石に、読まれてるよね)」
器用にその重撃を避けることに成功できた。
「このままいくぞ」
「でも・・」
相手は、双剣を同時に振ったことで、胴ががら空きになったようだ。
そこに右手に握りしめていた剣を投げつける。
「ぐっ!」
その剣は相手に見事に命中した。

「やるな、お前の妹」
「そう・・だな。(正直、あっさりやられるものだと思ってた)」
観戦席で見ている2人が微笑んでくれている。
ダヴィデさんは、グッと親指を立ててくれている。

それから、十数人の試合が行われた。
よく覚えていないが、ダヴィデさんとマリアナさんを含む5人は強かったのは覚えている。
ダヴィデさんは、片手剣だけど。私でも、かなり強いことが分かった。
相手を圧倒していたから。
マリアナさんは、流麗な動きと剣捌きで、相手を数十秒で圧倒した。

次の授業は、魔法の練習。
双剣を極めても、魔法が使える相手には不利になることが多いから。
そこで、基礎魔法と属性魔法の基礎は身につけておく必要があるらしい。
最初は、水魔法の『ショット』をぶつけ合う練習。
「水魔法は、私の十八番だ。シトリー、手加減するから、相手をしてくれ」
「は、はい!」
魔法を使ったことは・・あったはず。
手先に魔力を集める感じ・・だったはず。
「いくぞ!『ウォーター・ショット』」
水の球がものすごい勢いで迫ってきている。
「う・・『ウォーター、・・ショット』」
おそらく、久しぶりに打つ魔法はかなりの反動があった。
手が震え、照準が合わない。
「危ない!」
マリアナさんが猛スピードで走ってきている。
そして、私の前に立つと、剣で魔法弾を弾き飛ばした。
「あ、ありがとう。・・だ、大丈夫ですか」
「大丈夫だ!それより、腕は大丈夫か?魔法弾を打つのは、銃と似たような感覚だ。反動には、これから気をつけた方が良い」
「は、はい!」
かっこいい、私はそう感じた。
「何だ?上の空だぞ。もう一度、練習するぞ」
「あ!は、はい!」

それからの授業もマリアナさんが積極的にペアを組んでくれたりして、徹底的に見てくれた。
そして、アドバイスもくれる。

ー放課後ー
「私は、自己練習するが。シトリー、お前もするか?色々、教えるぞ」
「えっ、えーと」
私が返事をためらっていると。
後ろから、ダヴィデさんが声をかけてきた。
「いいじゃないか。教えてもらえば」
「う、うん。それじゃあ、1時間・・お願いします」
私がそう言うと、マリアナさんはフンッと鼻を鳴らして、微笑んだ。

マリアナさんの練習は少し厳しめだった。
かなり疲れてしまったけど、得られたものは大きい。
双剣術の立ち回り方。
魔法弾の打ち方と照準の合わせ方。
基礎魔法を2つくらい。
「たった1時間でかなり成長したな」
「あ、ありがとう、ございます」


私は、日が沈みかけた海沿いの道を急ぎ足で帰宅した。
「おかえりなさいませ、お嬢様。夕食の支度は整っています」
最初は、慣れなかったお嬢様呼びも、身に馴染んできている。
「わかった。すぐに、行くね」
夕食を食べ、魔法の練習をしているうちに、11時になっていた。
「ふぁー。(そろそろ寝よ)」
シャワーを浴び、寝着に着替え、ベッドに横になる。


ー深夜ー 
ゴロゴロと稲妻が走り、ザーザーと大雨が降り出している。
そして・・。
ドゴーンと大きな音が屋敷の近くで鳴り響く。
「はっ!」
私は、その轟音に驚きのあまり、目が覚めてしまった。
1時間ほど、雨が止むまで、本を読んで待ってみた。
けれども、一向に止む気配がない。

コンコンっと扉を叩いた。
「んっ?なんだ、シトリーちゃんか。こんな時間にどうしたんだ?」
ダヴィデさんが目をこすっている。
起こしてしまって、申し訳ない気持ちが湧いてくる。
「あ、あの・・目が覚めちゃって。そ、それから、眠れなくて」
「はぁ。仕方ないな。一緒の部屋で寝るか?」
「うん!」
まだ、頼んでもないのに、望んでた提案をしてくれた。
少し恥ずかしいけど、こうするしか眠れそうにない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

我が輩は石である。名前など有るわけが無い。

seizann
ファンタジー
人生を棒に振った男が転生したのは、異世界の『石』だった。 何も起こらず、何事も起こせず、朽ちること無く、延々と時間だけが過ぎ去る地獄だった。 男はただ思考する。 「異世界」を定義するものは、何なのか。 この世界の「自己という存在」は何なのか? 自虐と後悔の念にまみれながら、異世界の哲学と呼ぶような推察と、 ただ願うだけの言葉を流し続ける。 ※散文、一人称のエッセイのような内容になっています。  異世界に対して哲学的な考察を延々と繰り返す内容です。

ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに!ついでに、女の子とVチューバー始めました

カティア
ファンタジー
 疲れ切った現実から逃れるため、VRMMORPG「アナザーワールド・オンライン」に没頭する俺。自由度の高いこのゲームで憧れの料理人を選んだものの、気づけばゲーム内でも完全に負け組。戦闘職ではないこの料理人は、ゲームの中で目立つこともなく、ただ地味に日々を過ごしていた。  そんなある日、フレンドの誘いで参加したレベル上げ中に、運悪く出現したネームドモンスター「猛き猪」に遭遇。通常、戦うには3パーティ18人が必要な強敵で、俺たちのパーティはわずか6人。絶望的な状況で、肝心のアタッカーたちは早々に強制ログアウトし、残されたのは熊型獣人のタンク役クマサンとヒーラーのミコトさん、そして料理人の俺だけ。  逃げるよう促されるも、フレンドを見捨てられず、死を覚悟で猛き猪に包丁を振るうことに。すると、驚くべきことに料理スキルが猛き猪に通用し、しかも与えるダメージは並のアタッカーを遥かに超えていた。これを機に、負け組だった俺の新たな冒険が始まる。  猛き猪との戦いを経て、俺はクマサンとミコトさんと共にギルドを結成。さらに、ある出来事をきっかけにクマサンの正体を知り、その秘密に触れる。そして、クマサンとミコトさんと共にVチューバー活動を始めることになり、ゲーム内外で奇跡の連続が繰り広げられる。  リアルでは無職、ゲームでは負け組職業だった俺が、リアルでもゲームでも自らの力で奇跡を起こす――そんな物語がここに始まる。

悪意か、善意か、破滅か

野村にれ
恋愛
婚約者が別の令嬢に恋をして、婚約を破棄されたエルム・フォンターナ伯爵令嬢。 婚約者とその想い人が自殺を図ったことで、美談とされて、 悪意に晒されたエルムと、家族も一緒に爵位を返上してアジェル王国を去った。 その後、アジェル王国では、徐々に異変が起こり始める。

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

手乗りドラゴンと行く異世界ゆるり旅  落ちこぼれ公爵令息ともふもふ竜の絆の物語

さとう
ファンタジー
旧題:手乗りドラゴンと行く追放公爵令息の冒険譚 〇書籍化決定しました!! 竜使い一族であるドラグネイズ公爵家に生まれたレクス。彼は生まれながらにして前世の記憶を持ち、両親や兄、妹にも隠して生きてきた。 十六歳になったある日、妹と共に『竜誕の儀』という一族の秘伝儀式を受け、天から『ドラゴン』を授かるのだが……レクスが授かったドラゴンは、真っ白でフワフワした手乗りサイズの小さなドラゴン。 特に何かできるわけでもない。ただ小さくて可愛いだけのドラゴン。一族の恥と言われ、レクスはついに実家から追放されてしまう。 レクスは少しだけ悲しんだが……偶然出会った『婚約破棄され実家を追放された少女』と気が合い、共に世界を旅することに。 手乗りドラゴンに前世で飼っていた犬と同じ『ムサシ』と名付け、二人と一匹で広い世界を冒険する!

異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉
ファンタジー
その乙女の名はアルタシャ。 『癒し女神の化身』と称えられる彼女は絶世の美貌の持ち主であると共に、その称号にふさわしい人間を超越した絶大な癒しの力と、大いなる慈愛の心を有していた。 いかなる時も彼女は困っている者を見逃すことはなく、自らの危険も顧みずその偉大な力を振るって躊躇なく人助けを行い、訪れた地に伝説を残していく。 彼女はある時は強大なアンデッドを退けて王国の危機を救い ある国では反逆者から皇帝を助け 他のところでは人々から追われる罪なき者を守り 別の土地では滅亡に瀕する少数民族に安住の地を与えた 相手の出自や地位には一切こだわらず、報酬も望まず、ただひたすら困っている人々を助けて回る彼女は、大陸中にその名を轟かせ、上は王や皇帝どころか神々までが敬意を払い、下は貧しき庶民の崇敬の的となる偉大な女英雄となっていく。 だが人々は知らなかった。 その偉大な女英雄は元はと言えば、別の世界からやってきた男子高校生だったのだ。 そして元の世界のゲームで回復・支援魔法使いばかりをやってきた事から、なぜか魔法が使えた少年は、その身を女に変えられてしまい、その結果として世界を逃亡して回っているお人好しに過ぎないのだった。 これは魔法や神々の満ち溢れた世界の中で、超絶魔力を有する美少女となって駆け巡り、ある時には命がけで人々を助け、またある時は神や皇帝からプロポーズされて逃げ回る元少年の物語である。 なお主人公は男にモテモテですが応じる気は全くありません。

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

処理中です...