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側近選抜試験(後編)

歓声

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レイラが台の上に登ると。
「お集まりの皆さん。今年はあのような襲撃事件がありましたが。側近が決まりました」
蒼たちの周りの人物が
「誰になるんだ?」
「蒼っていう人物たちのチームじゃないか」
「いや、ルイスたちかもしれないぞ」
「だが、そのチームに負けてはいるんだぞ」
などの話し声が聞こえてくる。
「静かに!・・では、発表する。今年の側近に選ばれたのは・・」
おそらく蒼達だろうと分かっていても、あのような事件があったから、どうなるか分からない。
蒼達の額から汗が出てくる。

「そこにいる。蒼、サンダー、ランツェのチームだ!」
ヒヤヒヤしたが、予想通りの結果にはなった。
だが、この場にいることを言われるとは思わなかった。
いや、試験に出てる時点で顔は見られている。
バレることはほぼ確実だっただろう。
「よし!」
全員で顔を見合せ、ガッツポーズをして、微笑みあった。
周りの人達が拍手をしながら、「おめでとう!」と言って賞賛してくれている。


蒼達は寮に戻って、荷物を整えている。
あの後、ヴィトンから伝えられた。
『明日の10時くらいに全ての荷物を整えて、門の前に集まるように』らしい。
「これが、新生活というやつか!いや・・この世界に来たときから新生活みたいなものか」
「まだ、準備が終わらないのか。もう終わったからな、こっちは」
王宮から貸してもらったキャリーケースを引きずりながら、まだかまだかとでも言いたそうに、腕組みをしている。
刀とそれをしまう袋、数少ない着替え、お金(まだ、ロートンからもらったものも残っている)やさまざまな必需品を詰め込む。
「今は、終わったところだ」
バタッとキャリーケースの蓋を閉じる。


ー冒険者協会(エントランス)ー
「遅かったわね」
ランツェは、似たようなキャリーケースの手持ちを握りながら、そう言った。
「蒼が準備に時間がかかっててだな」
「すまん」
軽く頭を下げる
「まぁ、いいよ。私も準備には時間をかけたほうがいいと思うし。それにこの寮は今日で協会に返すしね。忘れ物はない?」
「ああ!ない、何度も確認した」
サンダーがそう言うのと同時に、蒼もうなづいた。
「じゃあ、そろそろ行くわよ」


境界の外に出ると、1台の豪華な馬車が止まっていた。
馬車のドアが開くと、ギガントが降りてきた。
「久しぶり、任務依頼だ。あっ!それと、試験合格おめでとう」
「ありがとうございます」
「まぁ、話は中で移動しながらね」
そう言うと、馬車の中に戻っていった。


馬車は城にゆっくり向かって行っている。
窓の外を眺めていると、たまに住民が礼をしている。
「こういうのって慣れないな」
「最初はそういうものだと思うよ」
王宮の馬車の後ろでは、ランツェ専用の馬車を兵が操縦している。
「それで、側近の仕事って何をするんですか?」
「そうだな。他の国との会議の参加や資料の整理・・あとは国の防衛とかかな」
大体は予想していた仕事だった。
別に特別なことなどないみたいだ。


その後、10分の時間を経て、馬車は王宮の門の前に到着した。
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