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別の異世界

蒼とサンダー

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「うーん。あれ、どこだ。ここは・・」
蒼という名の少年は、知らないベットの上で目を覚ました。視線を横に向けると、金髪で和服を着た女の子が心配した顔で蒼のことを見ている。
「おっ。やっと起きたのか」
蒼が目を覚ました事に気づいたサンダーの顔は安心した顔に変わった。その時、部屋の扉が開く音がした。蒼は最初、医者でも入ってくるのかと思った。
しかし、入ってきたのは、知らないコックの服装をした30代くらいの男の人だった。
「起きたみたいだね。蒼くんが起きたのなら、教えてくれてもいいのに。サンダーくん」
「いや~。今、目覚めたところだったからな」
会話の仕方から、サンダーは先に目が覚めていたことが予測できる。
状況を整理できない部分がある蒼は男にいくつか質問をすることにした。
「あの、ここはどこですか」
「ここか。ここは、僕の家だけど」
「いえ、そういうことじゃなくて」
「・・なるほど。そういうことね。確かに、服装から見てこの辺のものじゃなさそうだからな。知らないのも無理はない。ここは、テネレ王都だ」
と教えてくれた。
次に、蒼は男の名前を聞くことにした。
「テネレ王都ですか。それで、あなたの名前は何ですか」
「僕の名前か。ロートンだ。こう見えて、年齢は23だよ。」
「ロートンさん。助けてくれてありがとうございます。何か、お礼をさせてください」
と蒼が言うと、ロートンは少し考えた後、部屋を出ていった。
そして、2着の服とエプロンを持って、戻ってきた。
「じゃあ、今日一日だけ私のバーで働いてもらうってのはどうかな?」
そういうロートンに二人は驚いた。
「そんなんでいいのか?」
そう言うサンダーに、ロートンは首を縦に振った。
「わかりました。今日一日だけよろしくお願いします」
蒼は服とエプロンを手に取りそう言った。
「よろしく。着替えたら下に降りてきてね。説明を始めるから」
二人は元気よく、はい、と返事をした。

「着替えたようだね。サイズの方は大丈夫だったかい」
ロートンは、二人が、大丈夫、と言うと椅子から立ち上がり、二枚の紙を持ってきた。
「詳しいことは、これを見てもらえばわかるけれど、何か質問はあるかい」
「特に・・ないです」
「私も蒼と同じく」
二人がそう言うと、ロートンはふと時計の方を見た。時計の針は五時半を指している。それを見たロートンは慌てて、掃除用具を取りに行った。
「なんで、そんなに急いでるの。」
「あと三十分でお客さんが来るんだよ。サンダーくんは店内の掃除、蒼くんは僕とキッチンで料理の準備の手伝いをしてくれ」
ロートンはサンダーにモップを渡した後、蒼とキッチンに向かった。しばらく、キッチンで二人が作業をしていると、キッチンにある裏口の扉が開いた。
「ふー、間に合った。遅めのこんにちはです。ロートンさん」と言い、二十代くらいの薄い茶髪の女性が入ってきた。
「ギリギリじゃないか。アウムくん」
ロートンはアウムという女性とかなり仲が良いみたいだ。
「彼女は誰ですか、ロートンさん。」
「5年くらい前に総合学校で出会ってね。仕事の資質があると感じて雇い入れたうちのウェイターで看板娘だよ」
(確かに、可愛らしさがある女性だな)と蒼は心のなかで思った。
「看板娘って、照れるじゃないですか。・・・それと気になってたんですけど、そちらの方は新人さん?」
アウムはロートンに喜びながらそう聞いた。
「今日一日だけどな」
ロートンが答えると、アウムは少し残念そうな顔をして、二階のスタッフルームの方に行ってしまった。
「まあ。アウムくんは自分に後輩的な存在ができると思ったのだろう。さあ、あと五分で開店だ。蒼くんは、引き続きキッチンで僕の手伝いをしてくれ」
蒼とロートンは作業を再開し始めた。

アウムは、スタッフルームに向かう途中でサンダーと出会った。
「もう一人いたのね。あなたも今日だけの新人さん?」
「そうだけど」
アウムは、サンダーがウェイターの役割だと気づいたのか、先輩面を出して話すことにした。
「そう。分からないことがあったら、何でも聞いてね」
「わかった。じゃあ、早速質問してもいいか」
「う、うん。どうしたの。」
いきなり質問されるとは思わず、アウムは少し慌てた。
「このテーブルクロスなんだけど、どうすればいいのか分からなくて」
「テ、テーブルクロスね。それはね・・」
アウムは少し緊張していた。
なぜなら、今まで後輩的な存在を持ったことがないため、質問をされるということがほとんどないからである。しかし、今日だけだが、先輩面ができると思うと、少し嬉しい気持ちもあった。
「そういえばあなた、名前は何ていうの?」
「サンダー、って呼んでほしい」
「女の子でサンダーって名前でかっこいいわね」
サンダーはアウムの言葉を聞いてにっこりした。
「ありが・・とう」
「どういたしまして・・って、あと三分でお客さんが来ちゃう。サンダーちゃん・・引き続き手伝ってくれる。」
サンダーは、元気よく「あぁ」と言った。
二人が全てのテーブルにクロスをかけ終えた時、正面扉が開いた。
そして、お客さんが四名入ってきた。
サンダーは、心のなかで気合を入れた。

その頃、蒼とロートンは、かなり大量の料理の作り置きがいくらか完成していた。
「・・すごいな。蒼くん。」
ロートンは、蒼の料理の上手さと手際の良さに驚かされていた。
「そんなに褒めないでくださいよ。・・それよりも、こんなに作っちゃって大丈夫なんですか」
「全然大丈夫だよ。それに、一部の作り置きは、次の日までは使っているしね。だから、心配しなくてもいいよ」
「はい」
楽しそうに会話をしているが、蒼とロートンはまだ店が開店していることに気づいていないようだ。
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