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03 九州の脅威編

甘い夢に堕ちる義弘 島津制圧の切り札

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 島原湾。ミサイル護衛艦“ながと”艦内。
 「また来たの?
 今度はなんの用?」
 拘束室の中、セミロングの黒髪の美女は、部屋に入ってきた霧島を親の敵のようににらみつける。
 島津家次女にして“鬼島津”の異名を取る猛将、島津義弘だ。
 肥後南部で捕虜となり、“ながと”にヘリで移送されてきたのだ。
 「ご挨拶ですね。顔が見たくなったから来たのに」
 霧島のそのことばに、義弘はふっと不敵な笑みを向ける。
 「光栄だけど、敵であるあなたに簡単には従わないわよ。
 手込めにするならしてみればいい。この鬼島津をくみしける自身があるならだけど?」
 霧島もつられて口の端を吊り上げる。
 もちろんまともにやり合う気はさらさらない。女の力では男にはかなわないという一般論は、少なくとも義弘にはあてはまらないだろうから。
 「滅相もない」
 そう言って、霧島は背中に隠し持っていたテーザー銃を義弘に向け、引き金を引く。
 特別警備隊が暴徒の鎮圧やテロリストの生け捕りのために配備していたものを借用したのだ。
 射出された電極が義弘の腹に命中し、電気が流れる。
 「あうっ…!」
 死に至る電圧ではないがショックは充分で、義弘は床に倒れ伏す。
 (あまりこういう手荒なことはしたくないのだが…)
 霧島はさすがに良心が咎めるが、今は毛利と島津は敵だ。義弘には当たり前の方法で協力させることは不可能だ。
 それに、やり方は卑怯だが、これも戦を早期に終結させるため。
 その考えを免罪符として、霧島はポケットから薬のアンプルを取り出すと封を切り、悪魔の薬液を義弘の口に流し込む。
 「な…なにをするの…!?」
 電流で身体の自由が利かない義弘は、ろくに抵抗もできなかった。
 鼻をつままれると口を開けずにはいられず、そのまま上を向かされ強制的に飲みこまされる。
 霧島は薬が効いてくるのを待った。
 謀神こと毛利元就特性の、ホレキメ薬が効いてくるのを。

 (なに…なんなの…頭がぼんやりして…からだがなんだかすごく熱い…)
 島津義弘は、霧島に飲まされた妖しげな薬が効いてきたのを感じていた。
 「義弘殿、手荒なことをして悪かった」
 「ああああ…?」
 霧島に名前を呼ばれた瞬間、全身に心地良い痺れがじーんと走る。
 (ああ…どうしよう…なんだか蕩けそう…すごく興奮して…ふわふわする…。
 霧島が…欲しい…。
 え…私今なにを思ったの?)
 義弘は、自分の身体と心に起きた変化が信じられなかった。
 この男は敵であり、自分にいやらしい視線を向けてくる変態であるはず。嫌悪の対象でしかなかったはずだ。
 大友宗麟たちを、卑劣な手段で籠絡して性の奴隷にしているという噂を信じたくなる。
 (なのに…霧島の顔を見ると…なんだか溢れて来ちゃう…)
 義弘は慌てて霧島から顔を逸らす。このまま霧島の顔を見ていると、胸がいっぱいでどうにかなってしまいそうなのだ。
 「義弘殿、顔が赤いが大丈夫ですか?」
 名前を呼ばれると、また全身に心地良い痺れが走る。
 (やだ…私濡れちゃってる…)
 義弘は、誰も触れていない自分の女の部分が充血して、ふしだらな汁をとろりと滴らせていることに気づく。
 「ち…近づかないで!それ以上近づいたら…舌噛んでやるんだから…」
 “鬼島津”たる女傑とは思えない、弱々しくかわいい抵抗の言葉だった。
 だが、義弘にはそれだけ言うのが精一杯だったのだ。もしこれ以上近づかれたら、理性を保つ自信がなかった。
 (こんなの嘘!なにかの間違いよ…!
 こいつを愛おしい気持ちが止められないなんてこと…ない…)
 義弘は胸の奥からこみ上げてくる、霧島を愛おしく思う気持ちを必死に抑えようとしていた。これはさっき飲まされた薬のせいだ。
 たぶらかされてはならない…でも…自分が抑えられない…。
 (確かに霧島はいい男だけど…でも敵だ…敵の武将の色香に屈するなんてことだめ…。でも…だめ…自分が抑えられない…)
 激しい愛欲と理性の葛藤は、やがて前者が押し勝ち始める。
 「義弘殿。我慢しなくていいのですよ?
 それはきっと素敵な気持ちなのですから」
 霧島が両手を拡げてにっこりと微笑むと、義弘は愛欲に屈した。
 (だめ…好きって気持ちが止まらない…。我慢しなくていいんだよね…。
 人を好きになるのは…とても素敵なことなんだから…)
 おぼろげに、霧島が自分に言い訳を与えたことに気づく。愛おしいと思う気持ちは止められないのだからしかたないと。
 「ああ…霧島どのお…。好きです…愛しています!」
 義弘は自分の意思で霧島の腕の中に飛び込んだ。
 「私もあなたが好きですよ。義弘」
 「ああ…ああああーーー…」
 思いきり強く抱きしめられ、耳元で愛を囁かれた瞬間、義弘は絶頂を迎えていた。
 限界まで興奮して高まっていた義弘の身体は、耳元で愛を囁かれ、名前を呼ばれただけで子宮がキュンと収縮して、心地よくアクメに達していたのだった。
 
 (これが…ホレキメ薬の効果か…)
 霧島はさきほどまでとは全く変わってしまった義弘の反応に驚いていた。
 先ほどまで自分に憎しみと忌避の視線を向けていたのに、今は完全に恋する乙女だ。
 どういうわけか、瞳にハートマークが浮かんでいる。
 いや、文学的な表現ではなく、どういう原理なのか、本当に瞳に赤いハートが浮かんでいるのだ。
 「義弘、目を閉じて」
 霧島がそう言うと、義弘は目を閉じて唇を軽く突き出した。
 「はむ…ちゅ…」
 最初は触れあうだけのキス。やがて深く触れあっていく。
 「ああ…あああああ…」
 義弘が自分に強く抱きついて、身体を硬直させる。
 互いに舌を突き出して絡ませあった瞬間、絶頂を迎えてしまったらしい。
 濃厚なキスは長く長く続く。その間、義弘は数え切れない程絶頂に押し上げられた。
 やっとお互い満足して唇を離した時には、義弘はぽーっとしてしまい、放心状態だった。
 「ああ…霧島殿。抱いて下さい。私をあなたのものにして下さい」
 愛おしさが止まらないらしい義弘が、霧島の手を自分の胸の膨らみに導く。
 「うれしいけど、こんな暗くて狭いところじゃちょっと。
 後日、もっと雰囲気のいいところでどうです?
 それと、あなたにお願いがあるんです。あなたにしかできないことだ」
 義弘は嬉しそうな顔になる。女である自分の気持ちをわかってもらえたようで、喜んでいるようだ。
 そして、あなたにしかできないことと言われては、なんだろうと断るという選択はなかった。
 愛おしい霧島の頼みであるのだから。

 霧島は、元就からホレキメ薬を渡された時のことを思い出していた。
 元就が隆景を伴って“ながと”を訪れた用向きは、ホレキメ薬を作り、霧島に渡すことだった。
 「んん…いっぱい出ましたね…素敵…」
 「隆景、呑み込んではいけませんよ。大事な材料なのですから」
 隆景は残念そうな顔で、今し方霧島に口奉仕をして出させた白濁をガラスの試験管の中に吐き出していく。
 まだ右腕の骨折が治りきっていない霧島は、自分で出すことができなかったのだ。
 まあ、隆景は嬉しそうに霧島に奉仕していたが。
 「しかし…本当にそれですごい薬ができるんですか…?」
 「それはもう。本来なら材料が手に入らないんですけど、そこは解決しましたから」
 「というと?」
 「詳しい材料と調合は秘密ですけど、どうしても必要なのがあなたの精液と、隆元の淫らな汁なのです」
 元就はガラスの小瓶のフタを開け、中身を試験管に入れて混ぜ合わせていく。
 「隆元の?」
 「尼子晴久殿と竜造寺隆信殿。
 聡明で身持ちが堅く、そもそも女色に興味が薄かったお嬢さん二人がなぜ抵抗もできずに百合妊娠させられてしまったと思います?」
 「隆元の生理機能の作用だと?」
 「その通りです。
 発情した隆元の体臭は、女の思考力を鈍らせ、理性を麻痺させます。
 その状態で隆元のお汁を女の部分に塗り込まれたら、もう抵抗できません。
 どんな媚薬よりも強力な催淫作用があるのですから」
 その作用を応用し、女を発情させて理性を麻痺させ、目の前にいる男に恋愛感情を抱かせる。
 それがホレキメ薬なのだそうだ。
 「あなたに抱きしめられ、口づけを交わしたら、もう女の子はあなたの虜です。
 薬の効果はいずれ切れますが、女の子は甘く心地良い夢から一生覚めることはありません。永遠に、あなたに抱かれて夢の中です」
 その説明を聞いて、霧島は怖くなる。
 与太話と笑おうとして、できなかったのだ。元就の表情があまりに真剣で、そして妖艶だったから。
 (しかし、それって女の子に強制的に恋愛感情を植え付けるってことか?
 いいのかなあ?)
 純真で何も知らない女の子に、薬で無理やり恋心を抱かせる。女ったらしで変態と評判の霧島だが、さすがにためらわずにはいられなかった。
 「勇馬、気持ちはわかるけど、戦を早期に終結させるためです。
 島津相手に長期戦は危険です。
 島津の兵の精強さという意味でも、立地条件という意味でも」
 「それを言われるとぐうの音も出ないな」
 それまで沈黙していた隆景が、彼女なりの状況分析を述べる。
 実際、開戦前は毛利家でも自衛隊でも、島津と戦うべきかについては意見が分かれたのだ。
 特に史実を知る自衛隊の幹部たちは、島津領が遠いこと、ゲリラ戦に持ち込まれたら危険であることを理由に、島津との開戦に慎重な声が多かった。

 振り返れば、豊臣秀吉も徳川家康も、島津を討伐する必要性を認識しながら結局は全面的な戦いを避けた。
 薩摩、大隅、日向まで出向いて戦うのは大変なのだ。
 補給兵站の確保だけでも一苦労だし、複雑な地形では大軍の有利を活かせない。
 島津家が、秀吉の九州平定、関ヶ原での敗北と危機に見舞われながら、結局おとがめなしのまま乗り切ってしまったのも当然の結果と言えた。
 だが、260年を経て、時の明治政府はいよいよどうあっても薩摩を攻撃せざるを得ない状況となる。西南戦争である。
 予想通りというか、明治政府は苦戦を余儀なくされる。
 そもそも薩摩は東京や大阪から遠いので、兵力を送るのも容易ではない。
 また、不平士族は腐っても武士。接近戦となれば農民あがりの兵隊には荷が勝ちすぎた。
 なんと言っても、山がちで複雑な地形では、ライフル銃も大砲も力を発揮しにくい。
 政府軍は兵の消耗率を無視できず、危険を承知で警視庁の抜刀隊を送り込んでゲリラに対抗させていた有様だった。
 戦いはなんとか政府軍が勝ったが犠牲も大きく、その後の軍や警察の人手不足が問題となった。
 また、かかった戦費も莫大で、明治政府はその清算に頭を悩ませることとなる。
 それやこれやの問題が、自分たちに現在進行形で降りかかる。それは誰しも避けたいことだった。
 だが、元就が「わたくしに策があります」と自信ありげに言ったことで、急転直下開戦が決定されたのだ。
 
 元就が提示した策はいろいろとあった。
 島津にあえて隈本城を獲らせ、そのあとで南北に分断してしまう。
 包囲が手薄なところがあると見せかけることで誘い出し、待ち伏せして叩く。など。
 が、わけても切り札と言える策こそ、このホレキメ薬だった。
 島津家はなんだかんだで島津四姉妹によって運営されている。
 その四姉妹全員を籠絡して言いなりにしてしまえば、島津は戦いを続けることはできない。
 それが元就の作戦だった。
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