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エピローグ
03
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男同士の話を終えた二人は、再び他のメンバーと合流する。
「しかし……高森君の推理力はすさまじいな。警察に欲しいぐらいだよ」
沖田が冗談交じりに切り出す。
「まったく……我々の立つ瀬がないくらいです。推理力を高める秘訣でもあるのかね?」
速水が頭をかきながら問う。
「特に秘訣というものはこれと言って……。強いて言うなら……実は、なんとしても解決したい事件があるんです。なんとしても」
おちゃらけていた誠が、急に男の表情になる。心に誓ったものがある。顔に書いてあった。
「解決したい事件?」
沖田が問い返す。
「ま、それはいずれお話ししましょう」
そう言った少年の言葉は、この話は終わりだと言外に付け加えていた。
「ああ、ところで高森サン……。読唇術が特技だって言ってましたネ……?」
ニコライが顔を近づけてくる。
ジェンダーレスな美貌がとても近い。不覚にもドキリとしてしまう。
「ああ。そうだがどうして……?」
「実は、ボクも唇を読むのは得意なんでス」
(な……なんだってーーっ!?)
美少年の返答に、心臓が口から飛び出そうになる。自分と倉木の会話、まさか全部筒抜けだったか?
「女装少年……男の娘カ……。お父さんにそういう趣味があるなら……。ボクにもワンチャンあるかナ……?」
「え……?」
ほおを染めるニコライに、誠は『まさか』という気持ちになる。
「実は……お父さんをちょっといいかなって思ってるんでス……。ラリサじゃないけど……ボクもバイだかラ……」
そう言う彼の顔は、恋する乙女だった。
「おいおい……本気か……?」
「どうですかネ……?」
ニコライは、はにかんではぐらかす。
「まあ、お父さんを犯罪者にはしてやるなよ……? 成人した後の健全な恋愛なら、俺も応援すっからさ」
「スパシーバ、高森サン」
釘を刺された美少年は、いつもの表情に戻っていた。
(ま……これだけきれいでかわいいんだ……。成人したらもっと美しくなるかも……。オーナーも幸せなんじゃないかな……)
ジェンダーレスな少年の横顔を見て思う。
ラリサだけでなく、ニコライからも憎からず思われている。倉木のモテっぷりが、少しうらやましかった。
「ところで誠。私もちょっと聞きたいことがあるんだけど?」
その声に振り向くと、七美が笑っていた。いや、正確に言って、笑顔だが背中に夜叉が浮かんでいる。
「ええと……なにかな……? 七美さん……?」
悪い予感しかしない。
「オーナーとずいぶん盛り上がってたよねえ。ソープランドがどうのア○ル風俗やSM倶楽部がどうの……? なんで誠がそういうこと知ってるのか気になってねえ……?」
幼なじみの言葉に、また心臓が口から飛びでかける。
「いやいや……。ほら……ミステリー創作の資料として、いろいろ調べてるだけで……」
誠は、背中に嫌な汗が流れるのを感じる。
(って……なんで七美がオーナーとの会話の内容知ってるんだ……? まさか……?)
ニコライの方を見やる。
彼はなにも言わず、肩をすくめるだけだった。間違いない、自分と倉木の唇を読んで、実況中継していたのだ。
「はい目線泳がせない! 正直に言いなさい。まさか、年齢ごまかして利用してたりしてないでしょうね!?」
七美は作り笑いをやめて、怒りの形相になる。まるで鬼ばばあだ。
「えーと……。皆さん後よろしく!」
誠は脱兎のごとく駆け出す。
「こら待て! 逃げるなーっ!」
七美が後ろから、ものすごいスピードで追いかけてくる。
「あらら……どうしまス?」
「犬も食わないでしょ。痴話げんかなんて」
「周りにぶつからないようになー」
沖田や速水たちは、味方になってくれそうにない。
結局、また幼なじみ二人の鬼ごっこが幕を開けてしまうのだった。
了
「しかし……高森君の推理力はすさまじいな。警察に欲しいぐらいだよ」
沖田が冗談交じりに切り出す。
「まったく……我々の立つ瀬がないくらいです。推理力を高める秘訣でもあるのかね?」
速水が頭をかきながら問う。
「特に秘訣というものはこれと言って……。強いて言うなら……実は、なんとしても解決したい事件があるんです。なんとしても」
おちゃらけていた誠が、急に男の表情になる。心に誓ったものがある。顔に書いてあった。
「解決したい事件?」
沖田が問い返す。
「ま、それはいずれお話ししましょう」
そう言った少年の言葉は、この話は終わりだと言外に付け加えていた。
「ああ、ところで高森サン……。読唇術が特技だって言ってましたネ……?」
ニコライが顔を近づけてくる。
ジェンダーレスな美貌がとても近い。不覚にもドキリとしてしまう。
「ああ。そうだがどうして……?」
「実は、ボクも唇を読むのは得意なんでス」
(な……なんだってーーっ!?)
美少年の返答に、心臓が口から飛び出そうになる。自分と倉木の会話、まさか全部筒抜けだったか?
「女装少年……男の娘カ……。お父さんにそういう趣味があるなら……。ボクにもワンチャンあるかナ……?」
「え……?」
ほおを染めるニコライに、誠は『まさか』という気持ちになる。
「実は……お父さんをちょっといいかなって思ってるんでス……。ラリサじゃないけど……ボクもバイだかラ……」
そう言う彼の顔は、恋する乙女だった。
「おいおい……本気か……?」
「どうですかネ……?」
ニコライは、はにかんではぐらかす。
「まあ、お父さんを犯罪者にはしてやるなよ……? 成人した後の健全な恋愛なら、俺も応援すっからさ」
「スパシーバ、高森サン」
釘を刺された美少年は、いつもの表情に戻っていた。
(ま……これだけきれいでかわいいんだ……。成人したらもっと美しくなるかも……。オーナーも幸せなんじゃないかな……)
ジェンダーレスな少年の横顔を見て思う。
ラリサだけでなく、ニコライからも憎からず思われている。倉木のモテっぷりが、少しうらやましかった。
「ところで誠。私もちょっと聞きたいことがあるんだけど?」
その声に振り向くと、七美が笑っていた。いや、正確に言って、笑顔だが背中に夜叉が浮かんでいる。
「ええと……なにかな……? 七美さん……?」
悪い予感しかしない。
「オーナーとずいぶん盛り上がってたよねえ。ソープランドがどうのア○ル風俗やSM倶楽部がどうの……? なんで誠がそういうこと知ってるのか気になってねえ……?」
幼なじみの言葉に、また心臓が口から飛びでかける。
「いやいや……。ほら……ミステリー創作の資料として、いろいろ調べてるだけで……」
誠は、背中に嫌な汗が流れるのを感じる。
(って……なんで七美がオーナーとの会話の内容知ってるんだ……? まさか……?)
ニコライの方を見やる。
彼はなにも言わず、肩をすくめるだけだった。間違いない、自分と倉木の唇を読んで、実況中継していたのだ。
「はい目線泳がせない! 正直に言いなさい。まさか、年齢ごまかして利用してたりしてないでしょうね!?」
七美は作り笑いをやめて、怒りの形相になる。まるで鬼ばばあだ。
「えーと……。皆さん後よろしく!」
誠は脱兎のごとく駆け出す。
「こら待て! 逃げるなーっ!」
七美が後ろから、ものすごいスピードで追いかけてくる。
「あらら……どうしまス?」
「犬も食わないでしょ。痴話げんかなんて」
「周りにぶつからないようになー」
沖田や速水たちは、味方になってくれそうにない。
結局、また幼なじみ二人の鬼ごっこが幕を開けてしまうのだった。
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