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第二章 ツンデレ王子様はメス堕ちかわいい

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 ある午後の王都裏街。
 男妾館の正面玄関に、1台の人力車が乗り付けられる。客は車夫に運賃を払うと、そそくさと入り口をくぐる。
「いらっしゃいませ。よくおいでくださいました」
「予約した、オーガスタだ。里実殿をお願いしたい」
「はい。おかけになってしばらくお待ちくださいませ」
 オーガスタと名乗った青年は、パーテーションで仕切られた待合室に通される。この世界に正確な時計はない。数分の遅れや待ち時間に目くじらを立てる者はいない。
「お待たせ致しました。オーガスタ様」
 華やかに化粧をして中性的な服装に身を包んだ男妾が、色っぽく声をかけてくる。
「よろしく頼むよ。里実殿」
 いかにも一元客のように装いながら、腕を組んで最上階まで向かう。
「むさ苦しいところによくおいでくださいました。〝オーガスタ様〟」
 ペントハウスに入り、冷たいお茶を差し出しながらふざける里実。
「嫌みを言わないでくれ。みんな私の素性には気づいているが、予定調和というやつだ」
 上着と帽子を脱いで輝くような美貌を現わしながら、アレクサンドル・カレコフが嘆息する。王国第一王子が男妾館に表だって通うのは、あまり体面がよくない。母方の姓を名乗り、簡単な変装をして足を運んだ。それが、里実には滑稽に映るのだ。
(やんごとなき方々は大変だ)
 そんなことを思う。日本の皇族が、四六時中しきたりにしばられていたのを思い出す。
「失礼を致しました。会いたかったですよ、アレクサンドル♡」
 目を覗き込んで顔を寄せると、美貌の王子は瞳を閉じる。
「んんん……。あむむむ……♡」
「ちゅっちゅっ……。んん……♡」
 抱き合って、優しいキスを交わす。ふたりの股間は既に興奮してテントを張っている。
「それにしても、わざわざお越しくださらなくとも。お声がけ頂ければ、こちらから参内致しましたが?」
「私は教えを乞う身だ。先生を呼びつけるのは礼を欠くだろう?そなたは予約がいつもぎっしりで、お忙しいと聞くからな。実際、5日待ちだったし」
 アレクサンドルが、わずかだが早口になる。本音を言っていないときの彼の癖だ。
(かわいいな。アレクサンドルは)
 無性に愛おしくなる。そしていじめたくなる。
「僕に会えなくて寂しかった、と素直におっしゃればよろしいものを♡」
「…………!?私は子どもではないぞ。そなたはよき師だから、こうしてお勉強を習いに来ているだけで……」
 平静を装いながらも、美貌の王子は真っ赤になっている。初めて身体を重ねてから、何度か男色の指南をした。彼は身も心も里実の性技の虜に堕ちつつある。最近知ったことだが、アレクサンドルはツンデレだ。恥ずかしがりで、なかなか本音を言えないところがかわいい。
 部屋に備え付けられた風呂にふたりで浸かる。里実の発案で各階にボイラー室を設けた。そこから井戸に使うポンプで湯を汲む仕組みだ。
「相変わらずお肌がきれいですね。つるつる」
 王子の細く美しい身体を、後ろから抱きしめながら言う。
「教える人間がいいからな。そなたに習ったことを試しているよ」
 アレクサンドルにはその美貌を維持するために、泥パックや乳液による肌の手入れを教えている。真面目な彼はちゃんと続けているのだ。
(本当に、教え甲斐のある生徒だな)
 そんなことを思う。現状にあぐらをかかず、さらに先へ常に進もうとする。それがこの美しい青年だ。
 貴族には歴史と金を鼻に掛けて怠惰な生き方をする者がかなりの割合でいる。男妾として、偉い人たちの相手をするようになってから知ったことだが。
 だが、アレクサンドルはそういう者たちとは違う。いつも先を見据え、今より進んだ自分になることを怠らない。公務でもスポーツでも、そしてセックスでも。
「すごいですね……。♡もうこんなに……♡」
 王子の股間に手を回す。肉茎は、既に猛り狂っていた。
「それは……。前にそなたとシてから……射精していないから……」
(ほう……?オナ禁を……?)
 意外なことだった。指南役を拝命してから知ったが、王子はけっこう性欲が強い。精力も旺盛だ。一晩に何度も射精できるほどに。その彼が、もう10日も禁欲しているとは。
「うれしいですね。♡僕のために無駄撃ちしないでいてくださるんですか?♡」
「違う……。そうじゃないんだ……」
 里実のおふざけを、アレクサンドルは大真面目に否定する。
「ほう……。ではなぜ……?」
 美貌の王子は真っ赤になり、深呼吸して口を開く。
「イけないんだ……!どれだけ自分でしごいても……。射精できないんだよ……!」
 血を吐くように、言葉を紡ぐ。
「なあ里実……。私になにをしたんだ……?そなたの指南を受けるまでは……射精できないなど一度もなかったのに……」
 恨めしそうに振り返りながら。アレクサンドルが言う。
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