時空を駆ける荒鷲 F-15J未智の空へ

ブラックウォーター

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第三章

狂った科学の果てに

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 05

 ヴィリ空軍基地。メグレス連合首都スケルタスから北西に10キロほどの平原に作られたロシア人義勇軍の空軍基地は、比較的警戒厳重だった。AK-74小銃で武装した歩哨が24時間体制で警備を行い、監視カメラや対人センサーが水も漏らさぬ監視体制を敷いている。
 滑走路に駐機するSu-47は、義勇軍の最高機密だったから、これだけ厳重な警備が必要というのはわかる話だが、それだけではなさそうだった。
 「遅いぞ!」
 警備の歩哨は、門限ぎりぎりで帰隊したロシア人の若い下士官をトラックの窓越しに怒鳴りつける。
 「怒るなよ。すごくいい女に当たったもんだから、つい遅れちまってさ」
 「馬鹿野郎!規律を守れ!今は俺たちにとって難しい時期なんだぞ!」
 厳しく言いながら、歩哨は下士官に、IDと指紋、手首の静脈の照合をさせる。トラックには他に誰も載っていないことを確認する。
 「よし、行け」
 トラックはそのまま基地内に向けて走り出す。
 「ひやひやしたぜ...」
 「まさか、本当に気づかないとはな...」
 トラックの後部のベンチシートに乗っていた、私服姿の陸自特殊作戦群の隊員が大きく息を吐く。
 「だから言ったであろう。われの力を信じよと」
 シグレが「ふんす!」と鼻を鳴らしながらいう。シグレの妖術”認識せざる結界”は、文字通り誰にも存在を認識させない効果を持つ。歩哨だけでなく、監視カメラを通して基地の各所を監視している警備員すらも、トラックの後部に堂々と乗っているシグレ達7人の男女を認識できなかった。後で録画した画像を再生して見ても、トラックには下士官が一人しか乗っていないように見えるだろう。シグレの妖術はそれほど強力なのだ。
 ここで重要なのは、ロシア人が運転する車に同乗するということだった。基地の入り口は通常はゲートが閉まっているし、なにより、何か妖しいものはいないかと目を光らせている複数の人間を同時に欺くのは、シグレの妖術にも荷が勝ちすぎる仕事だった。その点、ロシア人の車に乗り込んで、自分たちの存在を隠した場合、ゲートは開けてもらえるし、”車には他に誰も載っていなかった””だから特に異常なし”という思い込みを利用することができる。マジシャンが、箱をあえて(仕掛けがばれないように)これ見よがしに客に見せて、何も入っていないという思い込みを持たせた後、箱からハンカチや万国旗を取り出してみせるのと原理は同じだった。
 トラックをこっそりと降りて、いざ基地の中に入ってみると、中はけっこう和気あいあいとして、格別機密保持や欺罔工作にうるさいわけではないようだった。本来よそ者のはずの男女7人が歩き回っていても、とくに気にする者はいない。下働きや事務仕事に現地の人間を使っていることもあるだろう。
 そして、Su-47の部品や機材を搬出している施設はすぐに見つかった。しかも、その施設の一画に、「Общие воспрещен персонал(一般職員立ち入り禁止)」の注意書きが親切にも張り出され、生体認証とカードキーがなければ入れない警備区画になっている。
 「厳重なのかザルなのかよくわからんな」
 特戦の曹長がぼやく。いくら頑丈な金庫でも、目立つところに堂々と置いてあれば、金庫ごと盗まれてしまうことだってあり得る。
 「匂うな...。情報通りじゃ。”あれ”はあそこに運び込まれているとみて間違いないのじゃ」
 シグレが、人よりはるかに鋭い嗅覚で、お目当てのものがそこにあると結論付ける。特戦の隊員たちはどう入ったものかと思案した。カギを壊して入るのは簡単だが、警報が鳴ってしまうだろう。
 「まあ、待たれよ。お、ちょうどいい」
 警備区画には、ちらほらと人が出入りしているが、ちょうど中年の研究員という風体の男が出て来たところだった。
 「しばし待て」 
 特戦の隊員たちにそういったシグレはさりげなく研究員に近づくと、人差し指と小指で軽く彼の首筋に触れる。研究員は石像のようにその場に立ち尽くす。シグレはその隙に彼の首に下がったパスケースからカードキーだけを抜き取ると、呪術を解く。研究員は、今何かあったという自覚もないまま歩き去る。
 「よし、行こうか」 
 そういうシグレを先頭に、7人は再び”認識せざる結界”をまとい、前進する。シグレが口の中で何事か詠唱を始め、9本の尻尾がうっすらと光を放ち始める。すると、シグレの姿はみるみる先ほどの中年の研究員そのものになる。そのまま、カードキーをリーダーにかざし、生体認証もパスしてしまう。事前にシグレの能力についてレクチャーはある程度受けていたとはいえ、特戦の隊員たちも、これにはあっけに取られた。と同時に、この一見銀髪の獣耳少女にしか見えない女性が敵でなくてよかったと心底思った。
 厳重な扉を区切りぬけた先は、意外といえば意外。予想通りといえば予想通りな光景が広がっていた。そこは、厳重に滅菌された研究施設のようだった。ただ、何を研究しているのかが問題だ。特戦の曹長にはそう思えた。白衣やマスク、ゴーグルなどで細菌感染対策をしている研究員たちの姿は、何か生物的な研究をしているとみて間違いはなかった。しかし、ではその研究は何のためなのかという問題になってしまう。ここは、大学や医療機関ではない。戦闘機に部品や機材を供給する施設のはずだ。
 「あれはなんだ?有機コンピューターの類か?」
 特戦の隊員の一人が、ガラス張りの研究室の一画を指さしていう。有機コンピューターとは、字義通り、電子機器ではなく、生物の有機組織由来の物質を演算装置とするコンピューターだ。何かの培養液が満たされた容器の中の生体組織らしきものに複数の電極が接続され、何かの情報処理実験をしているように見えるのだ。
 「お、あそこは少し興味深いぞ」
 曹長の言葉にシグレが施設の一番奥を見ると、「Sample room」の表記がある部屋が見つかったのだ。電子ロックがかかっていたが、幸いにしてカードと生体認証だけで開いた。
 「う...」「げ...」「これって...」「マジかよ...」
 音もなく中に入り込んだ特戦の隊員たちは、一様に言葉を詰まらせた。若い二曹など、必死で夕食のウサギの煮込みを戻さないようこらえている。
 「やはり、メグレス軍のやつら、こんなまねを...」
 「し...しかしシグレ様、こんなもの戦闘機に積めないでしょう?」
 曹長にとって、理屈はわかっても、ここに並んでいるものをどうやって兵器に、しかも戦闘機の部品に使うのか、皆目見当もつかなかった。
 「別にこれをそのまま使うとは限らんじゃろ?機能の一部を再現できればいいわけじゃからな」
 シグレがぴしゃりと言い返す。
 その時、施設内に警報が鳴り響く。
 『侵入者の可能性あり。繰り返す、侵入者の可能性あり。全職員はその場を動かず、警備兵の指示に従われたし』
 どうやら、先ほどの研究員からカードを失敬したのがばれたと思って良さそうだった。反射的に上着の下からM4コマンドを取り出して構え、周辺を警戒する特戦の隊員たちを「ああ、待て」と曹長は制する。
 「もっと詳しく調べたかったが、長居は無用だな」
 曹長は腰に下げたポーチの中から発煙筒を三本取り出すと、一つを点火して床に置き、もう二つも点火して廊下に放り投げた。たちまちスプリンクラーが作動し、火災警報が鳴る。
 「火事だ!みんな火事だ!逃げろ、非難するんだ!」
 「みんな、荷物なんかいいから、さっさと逃げるんだ!」
 パニックを助長するために特戦の隊員たちが異世界の言葉やロシア語で”火事だ””逃げろ”と怒鳴り散らす。火事となってはその場を動かないというわけにはいかず、研究員たちは我先に避難を始める。
 「シグレ様、どうします?予定通りヘリを呼びますか?」
 無線で連絡すれば、メグレス軍の機体に艤装したKa-27ヘリ(日本の民間航空会社から借り上げたもの)が迎えに来る手はずになっていた。
 「いや、それには及ばん。陸路でのんびり帰ろうではないか。仕込みを頼めるか、曹長?」
 「了解しました」
 そう応じた曹長は、研究室のつけっぱなしになっているパソコンにUSBメモリを差し込んで、データを転送していく。効果は恐ろしく早く表れた。基地のあちこちで火災警報が鳴り響き、スプリンクラーが作動し始めたのがわかる。研究用の共有フォルダと基地の防災システムが同じネットワークで運用されているとはずいぶんずさんだなと曹長は思う。ハッキングやサイバー攻撃に一日の長があるロシアらしくない。最初は自分たちを罠にはめるための陽動工作の可能性を疑ったが、基地のあちこちで誰も彼もが右往左往している姿には拍子抜けした。電子戦といってもいろいろあるが、攻撃は得意なロシアも防御は苦手なのかもしれない、となんとなく思えた。
 
 「なんだって?もう一度言ってくれ!ノイズが多くて聞こえないんだよ!」
 基地の入り口を警備していた歩哨は、ガリガリと耳障りなノイズを発する電話に向かって必死に話しかけていた。基地のあちこちで火災警報が鳴り響き、大混乱に陥っているが、奇妙なことに火の手が上がっている様子がない。電話もノイズばかりでろくに通じず、状況がさっぱりわからない。
 その時、入り口の詰所の前に一台のワンボックスが滑り込んでくる。
 「おい、通してくれ!女房が産気づいてるんだ!」
 運転手の軍曹が必死な様子で怒鳴る。助手席には、腹の大きい女が苦しそうな声を上げている。
 「通してくれってどこへ行く?なんで基地内の施設を使わない?」
 「どこもかしこも水浸しでどうにもならんよ!病院もだぜ!?あんなところに身重の女房おいておけるかよ!町にいい助産師がいるからそっちに頼もうと思うんだ!」
 歩哨は迷った。今は侵入者がいる可能性がある。対処マニュアルに従えば、基地を封鎖して誰も出さないのが通常の措置だ。だが、産気づいている女となると、我慢しろともいいにくい。基地の医療設備までが麻痺しているとなればなおさら。まして、指示を仰ごうにも、電話がまともに通じない。
 「一応、身分証と生体認証を確認させてもらうぞ」
 そういって、歩哨は二人に身分証を提出させ、指紋と静脈の照会を行う。いずれも、基地に勤務する下士官で、夫婦ということだった。女房の方は、産休の申請が確かに提出されている。
 「後ろを調べるからドアを開けろ」
 歩哨は念のため、ワンボックスの後部座席を調べる。誰も乗っていない。
 「わかった。行っていいぞ。ただし、無線で定時連絡は必ずしろよ」
 「おう、恩に着るぜ、スパシーバ!さあ、母ちゃん、頑張ってくれよ!」
 ゲートが明けられると、いささか乱暴にワンボックスは走り出す。
 「うまくいきましたね」
 「うむ、名演技じゃった、誉めて取らすぞ」
 特戦の一曹がツングース系といった風体の変装をとき、元の顔に戻る。身重の女性下士官の振りをしていたシグレは、幻術を解き、もとの小柄な少女の姿に戻っていく。後部座席で、”認識せざる結界”で姿を隠して息を潜めていた特戦の隊員たちも、緊張を解く。もし自分たちの正体がばれたら、歩哨を射殺してゲートを強行突破するつもりでいたが、杞憂に終わったことにほっとしたのだ。それにしても、基地のセキュリティシステムをハッキングして噛ませた、生体認証と偽の身分証の情報が全く疑われずに信用されるとはさすがにできすぎに思えた。基地を混乱させ、歩哨も状況がわからず慌てていたからどうにかうまくいったに過ぎない。歩哨もう少し用心深く振る舞い、例えば基地司令部に伝令を出して確認を取っていたらまずいことになっていたところだった。 
 「さあ、急ぐぞ、本国に連絡を取らねばな」
 シグレの言葉に応じて一曹はアクセルを踏み込む。実際、ベネトナーシュ王立軍は彼らからの報告を心待ちにしていた。今回の潜入偵察作戦で、どうにか必要なパズルのピースがそろいそうだったのだ。


 ベネトナーシュ王国、北ベネトナーシュ島、インギャルド基地。
 「こんなことまでやらされるとはねえ...」
 潮崎はぼやく。着慣れないたたみじわのついた迷彩服に、形だけ武装して歩哨もどきのことをやっているのだから、気分が晴れないのも無理はない。
 「お疲れ様。なかなか様になってるじゃない?」
 休憩中らしいディーネが缶入りのジュースを差し出しながら声をかけてくる。
 「よしてくれ。上も何を考えてるのか...」
 潮崎はジュースを受け取り、銃からは右手を離さず左手だけで蓋を開けると、警戒を続けたまま飲んでいく。実際、素人を武装させてそれを歩哨と呼ぶ上層部の正気を疑っていたところだ。というのも、日本本土では空自の施設の警備は陸自が担当しており、空自の隊員は警備のための訓練を全くといっていいほど積んでいないのだ。もし銃を用いての白兵戦となったら、まともに戦える自信は、潮崎には全くなかった。
 それが証拠に、官給品なのは迷彩服と半長靴、迷彩帽くらいで、ボディーアーマーと内蔵されるアーマープレートは、防衛省が防犯用品会社から購入した民生品。着用している戦闘用ベストは、秋葉原あたりで買い入れたであろう輸入物。武装に至っては、先だってのビフレスト島の戦いで、アリオト伯国軍の中国人義勇兵が基地に放置していったものを鹵獲した、HK MP5A5短機関銃と、Cz75、9ミリ自動拳銃という有様だ。メンテナンスや射撃の訓練は繰り返しているが、実戦を想定した訓練など受けたこともない。
 パイロットである潮崎がなぜ歩哨もどきの仕事をしているのか。それは単純に人手不足のせいだった。インギャルド基地は一応滑走路や管制機能は整備されている。だが、対陸兵用の防御陣地や対空防御施設などが、まだ8割程度しか完成しておらず、陸自の人手は基地の建設に取られているからだ。こうも拙速な部隊運用がなされるのも、王国と日本政府がドローミ海の油田採掘を急いでいるという事情があるからだ。が、しかとした足固めもなしに部隊を置いて、基地の機能はおっつけ整えればいいという考えは、非常に危険と言えた。
 「そ...それよりも、メグレス軍の攻撃の秘密と、対処法が判明したと聞いたけど?」
 「ああ...。あちらに潜入したSからの報告でね。身の毛もよだつような話だったそうだ...」
 ディーネの問いかけに、潮崎は言葉を選びながら応じる。ディーネに対して、自分が話す権限がない情報もあるからだ。
 「でも、すぐ戦いになるわけじゃないでしょ?ここのところみんな働きづめだったし、少しはのんびりと...」
 「難しいですわね」
 ディーネのささやかな希望的観測を許さない声が、後ろからかけられる。見ると、ルナティシアが沈痛な面持ちで立っていた。横に控えるメイリンの表情も硬い。 
 「姫様、占いの結果が思わしくなかったので?」
 「ええ、メグレス軍の攻撃、それもかなり大規模な攻勢が近いと出ました。おそらくは、海竜を誘導した油田への攻撃...。敵航空隊も、それなり以上の数になる可能性があります...」
 潮崎は、あまり考えたくない可能性を、ルナティシアの言葉で考えざるを得なくなった。
 「Su-47はメグレスの東部にある基地を拠点としている。それに、西武沿岸部の前線基地に駐留するMig-29Mの部隊が加わるとなると、数ではほぼ拮抗することになるか...」
 「あちらの前線基地を見張っている物見の報告でも、基地の動きが活発化しているということだしね」
 重々しくつぶやく潮崎にメイリンが相手をする。こちらには”はぐろ”のイージスシステムがある分、索敵や悪天候の中での飛行などは向こうより有利なはずだが、絶対ということはない。
 「やっとアリオトとの戦争が終わったのに、どうしてまた戦いが始まるのでしょう...?わたくしたちは平和に暮らしたいだけなのに...」
 ルナティシアが泣きそうな顔になる。泣かせてはいけないな、男として。潮崎は思う。
 「暮らせますとも。平和に。俺たちを信じてください」
 潮崎の明るい調子の言葉に、少しだけ三人の顔の曇りが和らいだように見えた。
 「どうしてそう思うか、聞いてもいいかしら?」
 メイリンが真剣な顔で問い返す。彼女は誰よりもみんなを守りたいという気持ちが強い。適当な気休めは好きではないのだ。どんな時であれ。
 「みんな必死になって頑張っているからさ。今まで、みんなが必死で頑張ってうまくいかなかったことなんてあったか?誰よりも必死になって、誰よりも頑張っている俺たちに、できないことなんてあるもんか!」
 言葉面だけ聞いていれば、中身のない精神論に聞こえたかも知れない。しかし、潮崎のいう通り、今まで自分たちは必死で頑張ってきたからこそ、今ここにいる。これからも必死で頑張れば、うまくいかないことなどない。3人は確かにそう信じられたのだった。
 「ただ、そのためにはみんなの協力が必要だ。よろしく頼みますよ!」
 潮崎が、そういって笑顔を見せると、3人もつられて笑顔になる。もう、先ほどまでの沈痛な空気はすっかり過去のものとなっていた。
 
 
 メグレス連合首都スケルタス。幕僚であるザスト将軍の屋敷のゲストルーム。そこは、衆道の交わりが終わった後の独特なにおいに包まれていた。
 「不安なのですか、将軍?」
 「あ...そんな顔をしていたか...?」
 相手であるラーチン少佐の問いに、ザストはうろたえる。
 「よろしいのですよ。ここには私とあなたしかいないのですから。肩の力を抜いても...」
 「う...うむ...。わしもメグレスに生まれ育ったものだ。海竜を武器として用いる作戦は...恐ろしくないと言えば嘘になる...」
 海竜の力、脅威を間近で知っている人間ならではの言葉か、とラーチンは思う。
 「それだけではなさそうですね?」
 「貴君には嘘はつけんな...。正直、この戦いの後ろに、かの国の意向があるというのがどうにもいい気分ではないのだ...。かの国は確か、王国とも、ニホンとも悪い関係ではなかったはず。なぜ、我らを秘密裏に支援して王国を攻めさせようというのか...な...」
 今更いうことか。という言葉を呑み込んだラーチンは、ゆっくりと応じる。
 「それはすでに説明がされたはず。ベネトナーシュ王国はあまりに速く走り過ぎています。
 例えば、奴隷制度の段階的な廃止、王権の制限、法の支配の確立、新規の農地の開墾計画、小作人に農地を与える政策。
 あまりに理想的過ぎて、周りには迷惑千万です。われわれはまだ、奴隷や小作人の労働力が必要なのですから」
 「う...うむ...」
 ラーチンの熱心な弁舌に、ザストは気圧される。
 「ベネトナーシュが油田で利益を上げれば、あの国のお花畑な指導者たちは理想ばかりの政策を本当に実行しようとしますよ。
 そうなれば、我が国やかの国の愚民たちが騒ぎましょう。”ベネトナーシュにできたことがなぜこの国ではできないのだ?”とね。
 今奴隷を全て解放し、小作人に土地を与えて、我が国の経済が立ちゆきますか?不可能です!
 ベネトナーシュに力をつけさせてはならない。あの馬鹿な国の自由主義的な思想や政策とやらが我が国やかの国にまで波及する前に、つぶしておかねばならんのです!」
 ザストは、ラーチンのいうことももっともだと感じると同時に、ラーチンが本音を言っていないと、なんとなく思わずにはいられなかった。今ラーチンは”われわれ”という主語を使ったが、彼には他の思惑があるように思えるのだ。
 「ああ...失礼...。無粋な話でしたね...。どうぞご勘弁を...」
 そういったラーチンは、ザストの乳首に舌を這わせ、ねっとりと愛撫し始める。合わせて、互いの分身同志をこすり合わせる、所謂兜合わせの形でザストを再び興奮させていく。
 余談だが、こちらの世界では特に衆道、男色は禁忌とはされていない。日本で言えば戦国時代の武将ように、家臣や戦友との信頼関係を深めるために、衆道の関係になるのは自然なこととさえ考えられている。
 互いに十分に高まって来たところで、ラーチンはザストを四つん這いにし、後ろから交わっていく。
 「おお...ラーチン...貴君は最高だ...!」
 「ザスト閣下...ザスト閣下...。閣下も素晴らしいですよ...!」
 ザストはすっかりラーチンとの衆道の虜になっていた。女では味わえない快楽を、自分が女になったかのような倒錯を、ラーチンは与えてくれる。彼を男妾としてそばにおいておければ、他に何もいらないとさえ思える。
 一方ラーチンも、ザストとの交わりをそれなりに楽しんでいた。彼のそこはなかなかに具合がいい。それに、自分たちが活躍の場を得るために利用しているだけとはいえ、せっかくなら交わりを楽しむのも悪くはない。自分たちの活躍の場。ラーチンの全てはそのためと言って良かった。ロシア軍の格納庫の中でほこりをかぶり、いらない子扱いされてきたSu-47と自分たちパイロット。Su-47を活躍させて名を上げ、自分たちを社内失業者とさげすんだ、他の航空隊のやつらを見返す。そのためにはなんでもやると、彼は決意していた。敵など誰でもいい。Su-47が戦って勝利した事実のみが重要なのだ。
 そのために、ザストの男妾となってまで彼から作戦の便宜を引き出し、かの国に下げたくもない頭を下げて支援を約束させたのだ。信じてもいない反自由主義を語り、ありもしないメグレス連合への忠義を唱えるのも、全ては自分たちと愛機の栄光のため。
 二人の律動が激しくなり、同時に弾けて全身を硬直させながら絶頂を極める。
 作戦の準備は整っている。王立軍に対する勝利は約束されているも同然。勝利の瞬間の高揚と恍惚感は、衆道の交わりとは比較にならないだろう。その瞬間の栄光を想像し、ラーチンは歓喜に打ち震えた。


 新暦102年天秤月15日。
 その日は、ドローミ海周辺は珍しく朝から抜けるような青空が拡がっていた。そして、この天気が嵐の前の静けさであることを誰もが理解していた。メグレス連合軍による、ベネトナーシュ王国の海上油田建設予定地に対する全面攻勢が行われることが、誰にでも予想できたからである。

 「どうにか滑走路は使えるか...」
 メグレス連合西部にあるヴィースブル空軍基地。飛行服を着て出撃準備を整えたゴルチェンコ大尉は、滑走路の状態を見てつぶやく。昨夜の夜半に雨が止んだくれたおかげで、石灰を巻いてトンボ掛けをすれば、どうにか離着陸はできそうなことに安堵する。
 何せ滑走路とは言っても、舗装されていない。土地を平らにならして芝を植えただけの原始的なものなのだ。管制塔にしても、自動車教習所の展望台のような木材を組んだやぐらのてっぺんに、木造の小屋を乗せただけの間に合わせのものがあるだけだ。
 これで空軍基地とはお笑いなのだが、冗談でも酔狂でもなく、これはロシア軍の伝統的な用兵思想による。そもそも、ロシアという国は広大な領土を持つ。全ての軍事施設に、高度に整備されたインフラを整えるだけの金も人も、物資もありはしない。都市部から離れた辺鄙な前線基地ならなおのこと。ではどうするか?簡単だ。用兵思想の方を現実にすり合わせ、設備が未整備な場所でも問題なく軍を運用できる方向にもっていけばいい。
 ロシア軍の戦闘機が、やたら足回りが頑丈に作られていることが多いのも、コックピットが高い位置にあって視界が広く取られているのも、管制機能が貧弱な不整地の飛行場でも運用できるようにするためだった。
 ロシア軍の大型輸送機が、機首下面にキャノピーを装備しているのも、不整地の滑走路に、地上からのまともな管制誘導もなくパイロットの目視だけで着陸する必要性があるからだった。
 それに加えて、現状のメグレス連合は内憂外患で疲弊していて、義勇軍の基地の整備に人手や予算を廻す余裕がないという現実もあった。あるとしても、首都を頂いて重要度の高い東部の基地整備が優先され、田舎の前線基地などは二の次なのだ。
 ともあれ、理屈は理屈に過ぎなかった。滑走路や管制機能が整備されていないヴィースブル空軍基地は、航空部隊の運用に大きな制約を抱えていた。まずもって、滑走路が整備されていないために、戦闘機は不整地での運用を想定して開発された、Mig-29系統の機体しか運用できない。これが大問題だった。Mig-29シリーズは長距離の飛行を想定した設計ではないため、燃料搭載量が少なく、航続距離が短いという欠点がある。そして、この基地の航空隊の主な活動領域はドローミ海の上である。燃料が切れれば即海にどぼんだから、常に増槽をつけて飛ぶ必要があった。増槽は当然重い上に兵装ステーションを一つ占領してしまうことになる。要するに、機動性が落ちる上に、兵装搭載量も少なくなってしまうのである。
 というわけで、ゴルチェンコはとても勇んで部下を率い、出撃するという気分にはなれなかった。日本は島国だから、元空自の機体は当然東西に長い、海に囲まれた国土を守ることを考えて設計されている。ベネトナーシュ王立軍に派遣されている元空自の義勇兵たちは練度も高いと聞く。
 それだけの敵を相手に、こちらは重い荷物をしょった状態で戦わなければならないのだ。
 「それに、あれはどうも複雑な気分だな...」
 そうひとりごちたゴルチェンコの視線の先には、出撃が近いのを察した周辺住民が、大挙して見送りに押しかけている。みな笑顔で手を振って「がんばれ」「ご武運を!」と叫んでいる。彼は自問する。俺たちはあんなに慕われ、感謝されることをしてきたか?と。
 確かに、ロシア空軍からこちらに義勇軍として派遣されてきた当初の任務は、海賊や盗賊の殲滅、鎮圧が主だった。略奪を繰り返し、周辺住民の脅威となっていた犯罪者たちを掃討し、治安を回復した自負はある。治安の悪化で荒れ果てていたメグレス連合西部に、医療のサービスや生活再建の支援を行って来たのも自分たち義勇軍だ。それはいい。
 だが、ベネトナーシュ王国の油田建設予定地の攻撃が決定されてから、自分たちはむしろ住民たちの迷惑になりまくっている。作戦のためとは言え、海竜を怒らせて天候不安を引き起こしているおかげで、せっかく耕した畑は強風や洪水で台無しだ。海が常に荒れて船も出せないから、穀物や鉱山資源を売りにいくことすらできず、周辺の町や村の蓄えは底を突きそうになっているらしい。
 それにもかかわらず、住民たちが自分たち義勇軍に感謝の気持ちを持ち、笑顔で送り出してくれているのはなんとも心苦しいものがあった。ゴルチェンコは誠実でまっすぐな男なのだ。その人格と人当たりのよさ、戦闘機乗りとしての技量の高さも相まって近くの町の子供たちからは、”空の狩人 ピョートルおじさん”として親しまれているほどだ。
 自分は彼らの思いや憧憬に背を向け続けて、何をなそうとしているのだ?そう考えながら、ゴルチェンコは愛機であるMig-29Mに乗り込みエンジンをスタートさせる。不整地でもエンジンが異物を吸い込まないようにエアインテークに設けられたフェンスが独特の吸気音を上げる。いよいよ出撃という段階になるまで。彼は自問自答し続けていた。

 「かなり微妙な姿になっちまったな...」
 「そうかな?俺はかっこいいと思うけどな」 
 インギャルド基地、第1航空師団に割り当てられた滑走路わきの駐機場。潮崎と及川は、新たな装いと力を得た彼らの愛機を眺めて、思い思いの感想を述べる。  
 両名の機体の胴体両側面には、アメリカ空軍が開発中の第4.5世代戦闘機、F-15SE用に開発されたコンフォーマルウエポンベイが装備されていたからだ。コンフォーマルウエポンベイとは、早い話が、内蔵式の弾薬庫とセンサー類のステーションを兼ねた固定式の燃料タンクだ。これによって、ミサイルや爆弾を機外にむき出しで搭載するのではなく、弾薬庫の密閉式のスペースの中に装備することによって、電波の反射率を下げ、ステルス性能を向上させている。また、コンフォーマルウエポンベイ自体も、側面が傾斜して電波を発信元へ戻さない効果を持つため、ステルス性能に一役買っている。(興味のある方は、googleでF-15SEで検索すると画像が見られるため、ぜひご覧いただきたい)
 また、機首部分と機体上面は、ベネトナーシュ王国の技術で開発された電波を吸収する塗料でリペイントされており、正面方向に限れば、ステルス性能はF-22やPAK-FAなどの最新鋭機にも見劣りしないはずだった。あくまで理論上だが。この塗料は、地球に存在する同じ効果を持つ塗料に比べ非常に軽く、通常の航空機用の塗料と変わらないという優れもの。しかも、劣化が遅いので、何度も塗りなおす必要がないから維持費も安く済むという、夢のような代物だった。一方で、一流の魔導士が手作業でしこしこと作っているので、生産性が悪く、調達コストが高いのが欠点と言えた。現在日本の化学者や民間の研究者にも協力を仰いで、大量生産を試みているが、成果は芳しくない。
 「それにしても、あっちじゃまだ実機の飛行試験すら始まってないんだろ?しかも提供されたのはフレームと外装だけ。ライセンスの許可も同じ。そんなものにずいぶんふっかけられたもんだな」 
 「だからこそ、あの程度のお値段で済んだのさ。これが有償軍事援助だったら、いくらになってたと思う?」
 潮崎の混ぜ返された言葉に、及川が渋面を浮かべる。有償軍事援助は天文学的な利益率の殿様商売だ。イージスシステム、攻撃ヘリ、ミサイル防衛、もちろん戦闘機も含めて、こちらの足元を見て冗談のような値段を提示して来るかの国のいつものやり方を思い出したからだ。それを思えば、パテント料さえ払えばフレームと外装のライセンス生産が認められるという話は、まだましな方と言える。おかげで兵装ステーションや電子機器、燃料タンクなど、全て自前で完成させることになってしまったが、そこはメイドインジャパン。なかなかの完成度を持つものが出来上がった。
 すでに何度か飛行試験や、ミサイル発射試験などが行われているが、結果は上々だった。「F-15JS」と名付けられたこの機体は、潮崎、及川両名の2機しか完成させることができなかったが、ステルス性能を持たない戦闘機が相手であれば、戦力比1対4でも一方的に勝利できる計算だった。あくまで理論上だが。 
 そして、改造といえばそれだけではない。コンフォーマルウエポンベイの先端部分には、王国の技術や、この世界に存在する魔法を応用した、全く新しい概念のセンシングシステムが装備されて入る。今回の作戦の勝利のカギは、むしろこちらにあると言えた。
 「おはよう、シオザキ二尉」
 後ろからかけられた声に振り向くと、青い髪の少女が立っていた。人間サイズモードのメイリンだ。この姿では、体は人間の少女と同じ大きさで、背中の羽もない。特徴的な笹穂耳で、どうにか亜人種とわかる程度だ。力仕事をするときや、いつものサイズでは不都合があるときはこの姿になる。今はタブレットを片手にしているから、それを操作しつつ仕事をするためだろう。
 「おはよう、メイリン」
 「調子はどう?昨夜はよく眠れた?食事はちゃんと食べてる?」
 メイリンはその調子で、世話女房のように潮崎の体調を確認し、タブレットにデータを入力していく。ついで、新しいシステムについての技術的な説明を、一通りおさらいしていく。なにせ新しいシステムはまだ未知数だ。潮崎の心身に悪影響がないとは言い切れないのだ。と繰り返す。
 「いいね?危険だと判断したら、迷わずシステムを停止して。体が第一、任務は二の次よ。それと、作戦が終了したら、必ず医師の診察を受けること。自覚症状がなくても、予想外のトラブルが起きることはありうるから」
 「わかった。メイリンの指示通りにするよ」
 潮崎は、何度も念を押してくるメイリンに困惑しながらも、そう答える。
 「メイリン技術顧問殿は張り切っておられますね。新しいシステムにそれだけ思い入れがあるということか」
 「違うな。思い入れがあるのはどっちかというと潮崎の方さ」
 なにやら楽しそうと、話に混ざって来たハイドラ隊の紅一点の松本二尉の言葉に、及川がにやにやしながら相手をする。
 「おや、潮崎ジゴロ伝説にまた新たな1ページですか...。今度はどうやってその気にさせたのやら」
 「なんでも、潮崎が先だって男らしい名台詞を言ったのがツボにはまったらしいぜ」
 松本が目を丸くする。
 「そんなことで?なんだかちょろイン多いですね...」
 「ま、相手が潮崎だからこそ、ちょろインになっちまうんだろうがね」
 及川の言葉には、松本も異論はなかった。天然ジゴロ、潮崎隆善とはそういう人物だ。まあ、メイリンが精力的に仕事をこなしてくれるなら、理由、モチベーションはなんでもいいのだ。
 警報が鳴り響き、スクランブル発進の命令が出たのは、ちょうどその時だった。
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