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04 ただの昔なじみのはずが
デートごっこと放置プレイと
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05
その年の初夏は夏日が続いた。
原因は不明だが、皆が急な暑さでばてていたのだ。
湖は、水浴び客で賑わっていた。
イレーヌが水泳を貴族の嗜みとして広めたことで、貴族たちも泳ぐ習慣をつけ始めたのだ。
まあ、男はショートパンツ、女はノースリーブのワンピースと、やや色気は足りなかったが。
湖畔には海の家ならぬ湖の家が並び、飲み物や軽食が売られているのだった。
「お一人ですか?」
「いいえ、連れがいるんです」
「良ければ一緒に泳ぎませんか?」
「申し訳ありません。人を待っていますので」
「冷たい飲み物でも一緒しませんか?」
「いえ、間に合ってます」
一人の美人が、ひっきりなしに声をかけてくるナンパ男たちから必死で貞操を守っていた。
(自分は男だ!)
女装したヴァンサンは腹の奥で叫んでいた。
これはイレーヌの放置プレイだった。
湖畔のパラソルの下で、一人で荷物番を命じられたのだ。
結果、チャラい男たちが群がってくる。
自分できれいに化粧をして、女物の服を着せられた姿はどう見ても女だ。
長い髪ときれいな肌、美しく整った顔立ちは、どうしても男を引き寄せてしまう。
加えて、魔法で声を女のものに変えてあるから、男と見破りようがない。
(イレーヌ様、ひどいです)
そのイレーヌはどうしているかというと、湖でアレクサンダーと楽しそうに水の掛け合いをしている。自分には一人で荷物番を任せておいて。
ここにくる途中も、これ見よがしにアレクサンダーと楽しげに話す一方で、自分は徹底的に無視された。
声をかけると、無言で目線を送ってくる。
“聞こえている”と示すために。
必要な時さえ、短く冷たい声で命じるだけだ。
(でも、すごく惨めで…なんだかぞくぞくしてしまう…)
放置プレイをされてまで倒錯した悦びを感じてしまう自分が、ヴァンサンは情けなかった。
イレーヌは意地悪で、どうすればヴァンサンを苦しめることができるか、逆に快楽を与えることができるか心得ている。ドSな人間は、相手を苦しめるだけでなく悦ばせる方法も心得ているという。
飴を与えてもらえるとわかっていれば、たいていの鞭には耐えられてしまうことをヴァンサンは痛感していた。いや、後で飴を下さるなら、鞭さえ快感になって行くと言っていいかもしれない。
「ちゃんと荷物番をできたらご褒美をあげる」
イレーヌは確かにそう言った。
女王様がご褒美を下さるなら耐えられる。
一人で荷物番をさせられるのも。女装させられて放置されるのも。ナンパ男どもが引っ切りなしに寄ってくるのも。なにより、イレーヌが自分を無視し、これ見よがしにアレクサンダーといちゃつくのも。
(ああ…イレーヌ女王様…。あなたは最高の女王様です…)
ヴァンサンは美しい顔をだらしなく緩ませるのだった。
「ほーら、イレーヌ嬢!」
「きゃあっ!やりましたわね!えい!」
イレーヌはアレクサンダーと冷たい水の掛け合いをしていた。
なかばやけ気味に。
アレクサンダーに“ご褒美”を約束して実行してしまったことで、なし崩し的にとうとう攻略対象全員とフラグを立ててしまった。
こうなったら、開き直って徹底的に今の状況を楽しんでやろう。そう考えたのだ。
破滅フラグでも何でも来い。そう思うことにしたのである。
アレクサンダーは誰もが振り向くイケメンのエルフで、ドラゴン討伐の英雄でもある。せっかくだから、みんなに見せびらかしてやろうというわけだ。
アレクサンダーも喜んでくれている。
ついでに、ヴァンサンを放置して楽しむことにした。
(ナンパされてるナンパされてる)
イレーヌの目論見通り、女装したヴァンサンには男どもが群がっていた。
「あの、イレーヌ嬢、彼女いいのかい?」
「ああ、いいのですわ。
彼女泳げないから、本でも読んでいるって。
湖の風に当たるのは好きみたいですしね」
「その…なんというか…なんか彼女に冷たいみたいだったけど?」
「そういうわけじゃなくて…。
ちょっとケンカして…。まだ仲直りできてないの。
きっかけがなかなか掴めなくて…」
アレクサンダーの疑問を、イレーヌは適当なことを言ってかわす。
アレクサンダーでさえ、ヴァンサンが男だと気づいていない。
自分たちが帰る時間までに、あと何人の男にナンパされることか。
イレーヌは腹の中で爆笑していた。引っ切りなしに男に声をかけられて困り顔のヴァンサンに。そして自分がナンパしている相手が男だとも知らず鼻の下を伸ばしている男どもに。
(まあ、荷物番はちゃんとできているようだし、ご褒美をあげないとね)
そんなことを思う。
ヴァンサンはここ数日、毎晩のように相手をしてあげている。
ただし射精はさせていない。
マスターベーションも禁止している。まあ、彼はすでに自分で射精することはできなくなっているようだが。イレーヌに責められないと出せないのだ。
一方で、ドライオーガズム、いわゆる牝イキは毎晩何度も迎えさせている。
マゾであり、尻の穴が敏感なヴァンサンは、すぐにドライオーガズムに達することができるようになった。
自分の指で、前立腺グッズで、イレーヌの指で。
(ドライオーガズムに何度も達した後の射精は最高に気持ちいい。
逆に言えば、ドライオーガズムだけで射精させてもらえなければ、それはむしろ欲求不満になる。
イった感じがしておち○ちんがびくびくしているのに、射精はしてないから満足感を得ることができない)
熟練者であれば、射精しなくともドライオーガズムだけで満足できる者もいるそうだが、ヴァンサンはそういうタイプではない。
ドライオーガズムに達しても、射精をしなければ溜まっていく感覚は解消されない。むしろ、寸止めをされ射精を禁止されて、もどかしく苦しい感覚だけが蓄積されていくのだ。
まあ、イレーヌに陰茎はついてないし、射精もできないから、具体的にどんな感じかは想像するしかないが。
(さて、どんな風に責めて出させてあげましょうか)
そろそろ射精させてあげないとかわいそうだろう。
まあ、出す前にまた、壊れる寸前まで何度もドライオーガズムに達してもらうが。
イレーヌはその時のヴァンサンの情けない表情を想像してぞくぞくしてしまう。
「あら、イレーヌ様、いえ、財務卿補佐閣下とお呼びすべきかしら。
ごきげんよう」
「あ、意外なところで会いますわね、エクレールさん。
ごきげんよう」
一泳ぎして水から上がったイレーヌは意外な人物に遭遇する。
レジェンヌ伯爵家令嬢、エクレールだった。
彼女も泳ぎに来ているようだった。
ワンピースが濡れて身体に張り付き、なかなか色っぽい。
最近仕事に男に忙しく、その存在をすっかり忘れていた。
いや、もう意識しないようにしていたというべきか。
どういうわけか、悪役令嬢である自分が逆ハーレムを形成していく。
もはや、破滅フラグ回避のために彼女に逆ハーレムを作ってもらうという計画は頓挫しているのだ。
「エクレールさん、こちらは騎士、アレクサンダー・アトキンス氏です」
「こんにちは、エクレール嬢。噂には聞いていましたが、こんなにお美しい人だとは…。
いで!」
女であれば誰かまわずお世辞を言うアレクサンダーの尻を、イレーヌが思いきりつねる。
「その…仲がよろしいのですね…」
「うん?そう見えますか?」
エクレールにそう返答したイレーヌは、ふと違和感を覚える。
いつも笑顔を絶やさないエクレールが、少し寂しそうな顔をしていたからだ。
(もしかして、アレクサンダーのことを…)
そう思うと、イレーヌは少し胸が痛くなる。
アレクサンダーと親密な仲になり、フラグが立つ前であれば、エクレールの恋を応援さえしたと思う。
(でも、今は…)
いろいろあったが、なんだかんだでアレクサンダーからも離れられなくなっている。
エクレールといえども、渡すことはできないし決して渡したくない。
だが、後にイレーヌは、とんでもない勘違いをしていたことを知るのだった。
その年の初夏は夏日が続いた。
原因は不明だが、皆が急な暑さでばてていたのだ。
湖は、水浴び客で賑わっていた。
イレーヌが水泳を貴族の嗜みとして広めたことで、貴族たちも泳ぐ習慣をつけ始めたのだ。
まあ、男はショートパンツ、女はノースリーブのワンピースと、やや色気は足りなかったが。
湖畔には海の家ならぬ湖の家が並び、飲み物や軽食が売られているのだった。
「お一人ですか?」
「いいえ、連れがいるんです」
「良ければ一緒に泳ぎませんか?」
「申し訳ありません。人を待っていますので」
「冷たい飲み物でも一緒しませんか?」
「いえ、間に合ってます」
一人の美人が、ひっきりなしに声をかけてくるナンパ男たちから必死で貞操を守っていた。
(自分は男だ!)
女装したヴァンサンは腹の奥で叫んでいた。
これはイレーヌの放置プレイだった。
湖畔のパラソルの下で、一人で荷物番を命じられたのだ。
結果、チャラい男たちが群がってくる。
自分できれいに化粧をして、女物の服を着せられた姿はどう見ても女だ。
長い髪ときれいな肌、美しく整った顔立ちは、どうしても男を引き寄せてしまう。
加えて、魔法で声を女のものに変えてあるから、男と見破りようがない。
(イレーヌ様、ひどいです)
そのイレーヌはどうしているかというと、湖でアレクサンダーと楽しそうに水の掛け合いをしている。自分には一人で荷物番を任せておいて。
ここにくる途中も、これ見よがしにアレクサンダーと楽しげに話す一方で、自分は徹底的に無視された。
声をかけると、無言で目線を送ってくる。
“聞こえている”と示すために。
必要な時さえ、短く冷たい声で命じるだけだ。
(でも、すごく惨めで…なんだかぞくぞくしてしまう…)
放置プレイをされてまで倒錯した悦びを感じてしまう自分が、ヴァンサンは情けなかった。
イレーヌは意地悪で、どうすればヴァンサンを苦しめることができるか、逆に快楽を与えることができるか心得ている。ドSな人間は、相手を苦しめるだけでなく悦ばせる方法も心得ているという。
飴を与えてもらえるとわかっていれば、たいていの鞭には耐えられてしまうことをヴァンサンは痛感していた。いや、後で飴を下さるなら、鞭さえ快感になって行くと言っていいかもしれない。
「ちゃんと荷物番をできたらご褒美をあげる」
イレーヌは確かにそう言った。
女王様がご褒美を下さるなら耐えられる。
一人で荷物番をさせられるのも。女装させられて放置されるのも。ナンパ男どもが引っ切りなしに寄ってくるのも。なにより、イレーヌが自分を無視し、これ見よがしにアレクサンダーといちゃつくのも。
(ああ…イレーヌ女王様…。あなたは最高の女王様です…)
ヴァンサンは美しい顔をだらしなく緩ませるのだった。
「ほーら、イレーヌ嬢!」
「きゃあっ!やりましたわね!えい!」
イレーヌはアレクサンダーと冷たい水の掛け合いをしていた。
なかばやけ気味に。
アレクサンダーに“ご褒美”を約束して実行してしまったことで、なし崩し的にとうとう攻略対象全員とフラグを立ててしまった。
こうなったら、開き直って徹底的に今の状況を楽しんでやろう。そう考えたのだ。
破滅フラグでも何でも来い。そう思うことにしたのである。
アレクサンダーは誰もが振り向くイケメンのエルフで、ドラゴン討伐の英雄でもある。せっかくだから、みんなに見せびらかしてやろうというわけだ。
アレクサンダーも喜んでくれている。
ついでに、ヴァンサンを放置して楽しむことにした。
(ナンパされてるナンパされてる)
イレーヌの目論見通り、女装したヴァンサンには男どもが群がっていた。
「あの、イレーヌ嬢、彼女いいのかい?」
「ああ、いいのですわ。
彼女泳げないから、本でも読んでいるって。
湖の風に当たるのは好きみたいですしね」
「その…なんというか…なんか彼女に冷たいみたいだったけど?」
「そういうわけじゃなくて…。
ちょっとケンカして…。まだ仲直りできてないの。
きっかけがなかなか掴めなくて…」
アレクサンダーの疑問を、イレーヌは適当なことを言ってかわす。
アレクサンダーでさえ、ヴァンサンが男だと気づいていない。
自分たちが帰る時間までに、あと何人の男にナンパされることか。
イレーヌは腹の中で爆笑していた。引っ切りなしに男に声をかけられて困り顔のヴァンサンに。そして自分がナンパしている相手が男だとも知らず鼻の下を伸ばしている男どもに。
(まあ、荷物番はちゃんとできているようだし、ご褒美をあげないとね)
そんなことを思う。
ヴァンサンはここ数日、毎晩のように相手をしてあげている。
ただし射精はさせていない。
マスターベーションも禁止している。まあ、彼はすでに自分で射精することはできなくなっているようだが。イレーヌに責められないと出せないのだ。
一方で、ドライオーガズム、いわゆる牝イキは毎晩何度も迎えさせている。
マゾであり、尻の穴が敏感なヴァンサンは、すぐにドライオーガズムに達することができるようになった。
自分の指で、前立腺グッズで、イレーヌの指で。
(ドライオーガズムに何度も達した後の射精は最高に気持ちいい。
逆に言えば、ドライオーガズムだけで射精させてもらえなければ、それはむしろ欲求不満になる。
イった感じがしておち○ちんがびくびくしているのに、射精はしてないから満足感を得ることができない)
熟練者であれば、射精しなくともドライオーガズムだけで満足できる者もいるそうだが、ヴァンサンはそういうタイプではない。
ドライオーガズムに達しても、射精をしなければ溜まっていく感覚は解消されない。むしろ、寸止めをされ射精を禁止されて、もどかしく苦しい感覚だけが蓄積されていくのだ。
まあ、イレーヌに陰茎はついてないし、射精もできないから、具体的にどんな感じかは想像するしかないが。
(さて、どんな風に責めて出させてあげましょうか)
そろそろ射精させてあげないとかわいそうだろう。
まあ、出す前にまた、壊れる寸前まで何度もドライオーガズムに達してもらうが。
イレーヌはその時のヴァンサンの情けない表情を想像してぞくぞくしてしまう。
「あら、イレーヌ様、いえ、財務卿補佐閣下とお呼びすべきかしら。
ごきげんよう」
「あ、意外なところで会いますわね、エクレールさん。
ごきげんよう」
一泳ぎして水から上がったイレーヌは意外な人物に遭遇する。
レジェンヌ伯爵家令嬢、エクレールだった。
彼女も泳ぎに来ているようだった。
ワンピースが濡れて身体に張り付き、なかなか色っぽい。
最近仕事に男に忙しく、その存在をすっかり忘れていた。
いや、もう意識しないようにしていたというべきか。
どういうわけか、悪役令嬢である自分が逆ハーレムを形成していく。
もはや、破滅フラグ回避のために彼女に逆ハーレムを作ってもらうという計画は頓挫しているのだ。
「エクレールさん、こちらは騎士、アレクサンダー・アトキンス氏です」
「こんにちは、エクレール嬢。噂には聞いていましたが、こんなにお美しい人だとは…。
いで!」
女であれば誰かまわずお世辞を言うアレクサンダーの尻を、イレーヌが思いきりつねる。
「その…仲がよろしいのですね…」
「うん?そう見えますか?」
エクレールにそう返答したイレーヌは、ふと違和感を覚える。
いつも笑顔を絶やさないエクレールが、少し寂しそうな顔をしていたからだ。
(もしかして、アレクサンダーのことを…)
そう思うと、イレーヌは少し胸が痛くなる。
アレクサンダーと親密な仲になり、フラグが立つ前であれば、エクレールの恋を応援さえしたと思う。
(でも、今は…)
いろいろあったが、なんだかんだでアレクサンダーからも離れられなくなっている。
エクレールといえども、渡すことはできないし決して渡したくない。
だが、後にイレーヌは、とんでもない勘違いをしていたことを知るのだった。
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