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01 尾張、美濃の制覇編
エロかわ猿と墨俣築城
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06
信長による尾張統一から5日後。
晴れて自衛隊第105任務部隊は織田家の同盟者となった。
”しもきた”に搭載されていた陸上部隊はエアクッション揚陸艇により陸揚げされていく。陸自の施設科の隊員達によって駐屯地が構築され、合わせて隊舎や司令部施設も整備されていく。
また、周囲が全て敵性地域であることを考慮して、道路の拡張工事も進められていく。
港も整備され、”はぐろ””かつらぎ”を直接陸付けできる桟橋が、急きょ集められた労働者によって急ピッチで進められていく。
こうなると、元々土地が豊かである上に、交通の要衝で、東西の流通の中継地でもある尾張の立地条件が生きて来る。元々地力があり、金には困っていないのだから、急な公共工事にも工賃も賃金も大盤振る舞いできるのだ。
自衛隊が織田家と共闘する体勢は整いつつあるのだった。
さて、そんな中、清須城では今後の方針を決めるべく、軍議が開かれていた。
信長を上座として、織田家の重臣たちの他、自衛隊の幹部たちも列席している。自衛隊員の中には、この地での実戦経験を買われ、戦闘アドバイザーとして(信長の夫という立場もあって)田宮の姿もあった。
「さて、皆も存じていると思うが、目下のところ我々の懸案事項は二つ。
1つは東の三河から尾張へと兵を進めつつある今川。
2つ目は北の美濃で分裂状態にある斎藤だ。
五郎左説明せよ」
信長の命を受けて、丹羽長秀が地図を棒で指しながら説明を始める。
「は、説明します。
1つ目の今川家は、三河と尾張の国境に大規模な兵を集めています。尾張に対する侵攻と見て間違いないでしょう。
ただ、兵を集めるだけで他に動きがないのが気にかかります。これではこちらも押すか引くかの判断が難しいところです」
長秀はそこで言葉を一度切る。
「2つ目の斎藤家ですが、ご存じの通り、我が織田家の同盟者であった斎藤道三様が謀反によってお亡くなりになって以来、美濃は四分五裂の状態にあります。
こちらも難しいところです。美濃は我が尾張の大切な商売相手。美濃が内乱状態では我らも商売どころではなくなります。また、道三様のかつての家臣の方々より助成の要請が再三来ています。加えて、美濃から流民や盗賊化した者たちが尾張に流入する事態は避けたいところ。
しかし、美濃は古来攻めるに固く守るに易いところ。こちらから兵を進めるのは困難が予測されます」
軍議の場に重苦しい空気が立ち込める。
「つまり、現状どちらにも有効な手はないってことか。しかし、今の内に手を打っておかないとどちらも危ういことにならないか?」
そう言ったのは柴田勝家だった。憑き物が落ちたように、織田家の家臣としての自覚と覚悟に満ちた表情をしている。
「まあ、権六の言う通りだ。
そこでだ。私はこの際美濃に駒を進めようと思う。斎藤家現当主の龍興では美濃をまとめることは叶わぬ。美濃に平和と安定をもたらすという名目で、我が織田家が美濃の統治を預かるのだ」
信長の言葉に、軍議の場がどよめく。たしかにこうなってはそれが最善の策。しかし、具体的にどうするか。名案が簡単には出てこないのだ。
その中で口を開いたのがこの場での自衛隊代表、木場一等陸佐だった。
「用は交通の便がいいところに砦を築き、拠点とすればいいのでしょう?その後で尾張から本命の部隊を送り込んで制圧する。
我々にお任せいただければ短期間にやってみせますが?」
その言葉に織田家の重臣たちは困惑するが、自衛隊の力なら任せておいて問題はないだろうという考えも皆持っていた。信長もうなずきかける。が…。
「お待ちください。その任、ボク…いえぜひこの猿めにお任せください」
軍議の末席から透き通った声がした。
足軽大将筆頭、木下藤吉郎だった。目端が利いて、憎めない性格から”猿”で通っている。ベリーショートの茶髪と、くりっとした大きな瞳がかわいい、ボーイッシュな美少女。しかもボクっ娘だ。やたら露出度の高い、ビキニアーマーのような鎧が目のやりどころに困る。信長や勝家に負けず劣らずの素敵なふくらみをお持ちだからなおのこと。
「猿、木場一佐の策では不満か?
理由を申してみよ」
「お間違いなきよう。不満などとは滅相もないこと。総論としては木場様の作戦に賛成です。
ただ、力のみによって美濃を制圧したのでは、当家に対して恨みを抱く者が多数出て来る危険があるかと」
「ならばどうする?」
「かねてから計画があった通り、美濃の住人たちの中でも力があって味方にできそうな者たちをこちらに引き入れます。
それと並行して、墨俣に塁を築く策もお任せください。
その上で、美濃の民草に織田勢を受け入れるように根回しを行います。
じえいたいの方々のお力をお借りするのは、もう少し後の段階でも遅くはないかと」
信長は藤吉郎の策を吟味する。確かに、美濃にただ攻め込めばいいというものではない。美濃の住人たちが従わず、泥沼の内戦になれば、斎藤家が味わっている苦しみを今度は織田が味わうことになるのだ。
「話は分かったが、猿よ、お前にやれるか?」
「必ずや。
そこでひとつお願いがございます」
「なにか?」
「この無学な猿に、お目付け役として田宮隊長をつけていただきたく」
そういって藤吉郎は平伏する。
信長は顎にこぶしを当てて考え込む。重臣たちや自衛隊員たちも顔を見合わせる。
藤吉郎の猿知恵に感服する一方、認めていいだろうかと決めかねているのだ。
木場の作戦では、現地の住民の反感を買う可能性がある上に、織田の権威を示せない。かと言って、織田家の家臣だけで事を進めて万一失敗すれば織田家の名折れだ。一応織田家主体の作戦だが、自衛隊の人間を関わらせて、危なくなったら自衛隊が支援するという策は悪くない。
だが、寄り合い所帯の作戦は「船頭多くして船山に上る」の危険が常に付きまとう。それに藤吉郎は戦や土木工事、兵糧の調達などで着実に実績を重ねているが、これほどの大規模な作戦を担当した経験はない。
なにより、自称妻である信長が、夫が他の女と肩を並べて戦うことを承服するかどうか。それが一番問題だった。
だが、信長は意外にも藤吉郎の願いを快諾した。
「あいわかった。知をお前の目付とする。
わが夫よ。聞いての通りだ。この猿に協力してやって欲しい」
「承知しました。必ず藤吉郎殿の作戦を成功に導いてごらんに入れましょう」
田宮は信長の言葉に応じて一礼する。
「しかし猿よ、珍しいな。男が嫌いなお前が、自ら男の目付を望むとは」
「男が嫌いとは異なことを。ただの男には興味がないだけです。
その点田宮隊長は、下手な女よりお美しいではありませんか」
にしし。といたずらっぽい笑顔でそんなことを言う藤吉郎。
まさかそれが田宮を目付に望んだ理由か?その場にいた者たちは本気でそんなことを思っていた。
女扱いされるのを嫌がる田宮はうんざりした顔をしていた。
「よろしい。猿よ。動機はどうあれ、お前のやる気は本物だ。
必ずやり遂げて見せよ!」
「はい!」
信長はわざわざ藤吉郎のところまで進み出て肩パンで激励する。
「わが夫よ。いくら猿のおっぱいが魅力的でも、目移りは許さんぞ」
「おっぱいがついてりゃいいってもんじゃありません。俺は節度を心得てます!」
ついでに耳打ちする信長に、田宮は渋面を浮かべながら答えるのだった。
07
「それじゃ、作戦会議をはじめちゃうよー!」
会議室として借り受けた清須城の一室。藤吉郎のハイテンションな声が響く。
「騒がしいなあ…」
「ま、いいからいいから。さ、お茶をどうぞ。これは取って置きのお茶でね」
そう言った藤吉郎は素早く茶筌で茶を立てると、振る舞っていく。田宮は見様見真似で器を廻すと、軽く口をつける。
「おお、これはいける」
茶道などかじったこともなかったが、この茶がうまいということはわかる。
「でしょ?ね、ね、知。お茶うけあるんだよね?あるんだよね?」
「あーはいはい。最初からそれが目的だったな?」
女の子はたいてい甘いものに目がないものだが、めざとく鼻も効く藤吉郎は、田宮の趣味がお菓子作りで、しかも相当な腕前ということを誰よりも早く嗅ぎつけていた。
”作戦会議はお茶を振る舞いながら。お茶うけよろしく”
という藤吉郎の指示は、田宮の作った甘味を狙ってのことだった。まあ、それに応じて作ってしまう自分も大概だが。そう思いながら、田宮は手製のチーズケーキを差し出す。食べやすいように一口サイズに切ってある。
「んんーーーー!美味しい!
ねえねえ知、ボクのところにお嫁に来ない?」
チーズケーキを口に入れて、蕩けそうな顔をした藤吉郎は、息がかかりそうなほど田宮に顔を近づけてそんなことを言う。うざかわいい。それが田宮の印象だった。かわいいが、やっぱりうざい。
「おいおい。今の言葉、信長様の耳に入ったら下手すりゃ二人とも手打ちだぞ」
「ちぇ。つれないの。
まあいいか。それで作戦の内容だけど」
藤吉郎は墨俣に出城を築く作戦の概略を説明していく。
その斬新さには田宮と施設科からよこされて来た補佐役の自衛隊員達も舌を巻いた。自分たちの知る史実通り、いったん組み上げた建造物を分解していかだとし、川で目的地まで移動して再度組み上げる。
言うは易しだが、建造物をいかだにするというのは簡単なことではない。その点、藤吉郎の策では、建造物としては多少不便になるが、いかだとして組むためにいろいろと構造が工夫されている。墨俣は最前線の出城に過ぎず、長く使うことは予測されないからこれは非常に合理的なことだった。
「君たちに相談したいのは、いかだがあちらに着いてからのことだ。
これまで織田家が美濃に塁を築こうとしてうまく行かなかったのは、ことごとく工事の間に攻撃を受けてしまっていたからだ。
野伏たちを集めて可能な限り早く組むように段どらせている。が、敵が気づいて攻めてくる前に城を完成させるにはまだ足りない。
そこで助言が欲しいんだ」
藤吉郎が畳の上に拡げた図面に目を通し、田宮たちが意見を交換していく。
「まず野伏たちを4つの組にわけて、担当する資材を決めておくことだな。混乱をふせぐために他の組のものが攻撃を受けても、作業に専念させる必要がある」
「構造材と言ってもややこしいな。めんどうだ。焼き印で印をつけよう。プラモみたいに」
「梁や柱の接続部分だが、間違った部品だと接続できないようにしたらどうだ?
これは三角。こっちは長方形。こっちは台形という具合でさ」
施設科の隊員達が本領発揮とばかりに作業の効率を上げる方法を進言していく。
「うんうん!相談してよかった。これなら予定よりずっと早く行きそうだよ!」
藤吉郎は次々と出されて来るアイディアに上機嫌だった。
「しかし待てよ。せっかくだ。一夜で城を出現させて、敵さんを驚かせてやろうじゃないか」
にやりとしながら言う田宮の言葉に、藤吉郎はもちろん、施設科の隊員達も耳を疑う。
「一夜?そんな無茶な」
「まあ聞きなさい」
田宮は自分の思いついた策を紙に書いて説明していく。
「なるほど、これなら本当に一夜で城ができることになるね。すごい!」
「よし、作戦は決まりだ!」
士気は上々の内に作戦会議はお開きとなり、”霧の城”作戦と命名された墨俣築城作戦は速やかに実行される運びとなったのだった。
いかだの列が墨俣川を進んでいく。
雨が降り始めてくれたのは幸いと言えた。自衛隊員たちは、迷彩服と武装をうまくむしろと傘の下に隠していた。藤吉郎とその配下の兵たちも、むしろと傘によって一見すると兵隊とはわからない。
「やはり、見つかったか。思ったより遅かったけど」
「どうせ隠しきれるもんじゃない。予定の内さ」
どこかの勢力の物見と思しい人影が川岸にちらほらと見えるのを藤吉郎は気にしている。が、随行している田宮は油断こそしないが特に問題にはしていなかった。
これだけの大規模な筏の列はすぐに人目を引いてしまう。そして、先行した偵察部隊が地ならしや測量を墨俣で行っているとなれば、このいかだが墨俣に城を築くためのものであることはすぐに知れることだろう。
「ねえ知。ボクらの作戦が成功して美濃が織田のものになったら、ご褒美ちょうだい?」
「ご褒美?なんか嫌な予感がするなあ」
藤吉郎が不意に発した言葉に田宮はうろたえる。
「まあそう言わず。お願いだよ。痛くしないからさ」
「ん…わかった。俺の出来る範囲でな」
藤吉郎が宝石のような目でのぞき込んでくると、どうにも無下には扱えない。こういうところが人たらしと言われる所以か。そんなことを思う。
まあ、それが藤吉郎にとっての励みになり、ひいては作戦の成功につながるならと了解することにする。
人にモチベーションを持たせるというのは考える以上に難しいことだ。
給料さえ払っていれば従業員がモチベーションを高く持つのは当然で、それ以上の義務など上司や会社にはないと思い込んでいる愚か者は世に絶えない。そう言う手合いは結局どんな商売でもうまく行かず、人材が定着せず仕事の効率は上がらず、遅かれ早かれ店を潰す運命にある。
そして、自分の不明と至らなさを最後まで顧みることなく、失敗を人のせいにして世の中を呪いながら終わるのだ。
そうはなるまいと思うなら、どうすれば人をやる気にさせられるかに常にアンテナを巡らせ、できること、すべきと思ったことは全てやるに越したことはない。藤吉郎に対してもそうだ。田宮はそう思うのだった。
墨俣に織田勢が塁を築こうとしている。
その知らせは斎藤龍興の元にも速やかに届けられた。
直ちに軍議が開かれ、さっさと墨俣に攻め込むべしという決定が下される。
だが、その決定に従って実行された作戦は大失敗に終わる。墨俣周辺には広大な湿地帯が拡がり、特に初夏には泥濘に変わる。多数の兵力が移動できる場所は限られてしまうのだ。
織田勢はそこを突いてきた。なんとかまとまった兵力が通れるところにはそこかしこに罠が仕掛けてあった。斎藤勢の足が止まったところで、織田勢は猛然と鉄砲を撃ちかけて来る。進退窮まった斎藤勢は一方的に撃退されてしまったのだ。
半端な兵力では落とすことはできない。墨俣の周辺の湿地帯こそ天然の防壁であり、そこに城が出来れば相当の脅威となる。それに遅ればせながら気づいた斎藤勢は、集められるだけの兵力を集めて集中投入することに決定する。
だが、この時代の軍事は機動性が悪いのが欠点だった。2000の兵を集め動かすのに3日必要になると目算された。それでも、2日たち、3日目の夕方になっても墨俣に城らしいものが出来ている様子はなかった。
これならばまだ行けると斎藤勢は読み。明日は早いからと眠りに入ったのである。
さて、一方でこちらは墨俣。
「気合を入れろ!どうした引っ張れ!」
施設科の古参の陸曹の怒号が響いていた。建造材と一緒に運んできた木製のクレーンに壁を釣るし、一気に持ち上げて柱に固定する。
これこそが田宮の策だった。普通は壁も屋根も下から順に組み上げていくものだが、それでは時間がかかる。時間がかかること自体はいいのだが、こちらの城の普請の進捗が敵にもわかってしまう。
そこで、壁や屋根などをほとんど完成の段階まで組み上げ、人力のクレーンで釣り上げて組み立てるという荒業が行われたのだ。作業効率からいえば非効率だし、事故が起きた場合非常に危険ではある。だが、”一夜城”を現実のものにするためには必要な策でもあった。
「よしみんな、休憩だ!悪いが徹夜になるぞ!がんばってくれ!」
兵たちと同じように泥にまみれ、資材を担いで作業に参加していた藤吉郎が、砂時計を木箱の上に置く。砂時計は陸自の隊員の私物を藤吉郎が譲り受けたものだ。砂が落ちるまでが休憩だ。
「やれやれ、人使いの荒いことで」
「そういうな。ほれ、配給だ。予定通り完成したらもっといいものをやるぞ。
なあ田宮隊長?」
一口サイズのチョコかけドーナッツを兵たちに配りながら、藤吉郎は田宮の方を見る。
「わかった。ただし、甘いものを食べた後は歯を磨けよ」
田宮はそう応じる。歯ブラシはこの時代にはないが、口に水を含んで指で歯を擦るだけでも虫歯になる確率はぐっと下がる。
とにかく、明日の夜明けまでに予定通り作業を終わらせなければならないのだ。兵たちには頑張ってもらわなければならない。
かくして次の朝。
「馬鹿な。もう完成しているだと?」
「信じられん!どんなからくりを使ったのだ?」
ようやく兵力を整え、いよいよ墨俣に攻め込む時と意気込んでいた斎藤勢は信じられない光景を目にすることになる。昨日までなかったはずの建造物が墨俣に並んでいるのだ。即席とはいえ城壁、兵舎、物見やぐら、蔵まである。
それは、柵と掘っ立て小屋しかなかった昨日までとは根本的に状況が異なることを意味していた。城壁が完成していると言うことは、矢や鉄砲を撃ち込んでも効果は格段に薄くなる。なにより、多くの兵が雨露しのぐことができるということが重要だ。野宿が続けば兵たちはたちまち消耗してしまう。が、取りあえず屋根のある所で休むことができ、簡素でも温かい食事をとることが出来れば、兵たちの体力と士気を維持することははるかに容易になる。
昨日までの墨俣ならば2000の兵で十分だった。だが、今この瞬間の墨俣は、2000では返り討ちにされかねないものだった。
結局、墨俣から鉄砲が撃ちかけられてくると、とどまっていては犬死するだけと斎藤勢は撤退せざるを得なかったのである。
「なんとかごまかせたみたいね」
「ともあれ、今のままじゃまずいな。風が吹いたら倒れかねないぞ」
斎藤勢が引いて行くのを確認した藤吉郎と田宮は安堵の吐息を漏らす。が、大変なのはこれからだ。
一見すると完成しているように見える墨俣城は、実はハリボテだった。裏から見れば一目瞭然だが、完成しているのは外見だけ。つっかえ棒をあてたり、縄を張って何とか立たせているところも少なくない。釘やかすがいで柱や梁に固定しないと、風が吹いたら倒れてしまう。それに、内装はほとんど完成していないから、このままでは軍事拠点としてはもちろん、住居としても役に立たないのだ。
「まあ、みんなお疲れだし、所期の目的は果たした。今は寝かせておいてあげよう」
「まあ、そうだな」
徹夜の作業の疲れで、そこかしこに寝転がっていびきをかいている兵たちを見ながら、二人はそんな会話を交わすのだった。
かくして、墨俣に出城を築くという作戦目的は、一応成功したのだった。あくまでも一応。
信長による尾張統一から5日後。
晴れて自衛隊第105任務部隊は織田家の同盟者となった。
”しもきた”に搭載されていた陸上部隊はエアクッション揚陸艇により陸揚げされていく。陸自の施設科の隊員達によって駐屯地が構築され、合わせて隊舎や司令部施設も整備されていく。
また、周囲が全て敵性地域であることを考慮して、道路の拡張工事も進められていく。
港も整備され、”はぐろ””かつらぎ”を直接陸付けできる桟橋が、急きょ集められた労働者によって急ピッチで進められていく。
こうなると、元々土地が豊かである上に、交通の要衝で、東西の流通の中継地でもある尾張の立地条件が生きて来る。元々地力があり、金には困っていないのだから、急な公共工事にも工賃も賃金も大盤振る舞いできるのだ。
自衛隊が織田家と共闘する体勢は整いつつあるのだった。
さて、そんな中、清須城では今後の方針を決めるべく、軍議が開かれていた。
信長を上座として、織田家の重臣たちの他、自衛隊の幹部たちも列席している。自衛隊員の中には、この地での実戦経験を買われ、戦闘アドバイザーとして(信長の夫という立場もあって)田宮の姿もあった。
「さて、皆も存じていると思うが、目下のところ我々の懸案事項は二つ。
1つは東の三河から尾張へと兵を進めつつある今川。
2つ目は北の美濃で分裂状態にある斎藤だ。
五郎左説明せよ」
信長の命を受けて、丹羽長秀が地図を棒で指しながら説明を始める。
「は、説明します。
1つ目の今川家は、三河と尾張の国境に大規模な兵を集めています。尾張に対する侵攻と見て間違いないでしょう。
ただ、兵を集めるだけで他に動きがないのが気にかかります。これではこちらも押すか引くかの判断が難しいところです」
長秀はそこで言葉を一度切る。
「2つ目の斎藤家ですが、ご存じの通り、我が織田家の同盟者であった斎藤道三様が謀反によってお亡くなりになって以来、美濃は四分五裂の状態にあります。
こちらも難しいところです。美濃は我が尾張の大切な商売相手。美濃が内乱状態では我らも商売どころではなくなります。また、道三様のかつての家臣の方々より助成の要請が再三来ています。加えて、美濃から流民や盗賊化した者たちが尾張に流入する事態は避けたいところ。
しかし、美濃は古来攻めるに固く守るに易いところ。こちらから兵を進めるのは困難が予測されます」
軍議の場に重苦しい空気が立ち込める。
「つまり、現状どちらにも有効な手はないってことか。しかし、今の内に手を打っておかないとどちらも危ういことにならないか?」
そう言ったのは柴田勝家だった。憑き物が落ちたように、織田家の家臣としての自覚と覚悟に満ちた表情をしている。
「まあ、権六の言う通りだ。
そこでだ。私はこの際美濃に駒を進めようと思う。斎藤家現当主の龍興では美濃をまとめることは叶わぬ。美濃に平和と安定をもたらすという名目で、我が織田家が美濃の統治を預かるのだ」
信長の言葉に、軍議の場がどよめく。たしかにこうなってはそれが最善の策。しかし、具体的にどうするか。名案が簡単には出てこないのだ。
その中で口を開いたのがこの場での自衛隊代表、木場一等陸佐だった。
「用は交通の便がいいところに砦を築き、拠点とすればいいのでしょう?その後で尾張から本命の部隊を送り込んで制圧する。
我々にお任せいただければ短期間にやってみせますが?」
その言葉に織田家の重臣たちは困惑するが、自衛隊の力なら任せておいて問題はないだろうという考えも皆持っていた。信長もうなずきかける。が…。
「お待ちください。その任、ボク…いえぜひこの猿めにお任せください」
軍議の末席から透き通った声がした。
足軽大将筆頭、木下藤吉郎だった。目端が利いて、憎めない性格から”猿”で通っている。ベリーショートの茶髪と、くりっとした大きな瞳がかわいい、ボーイッシュな美少女。しかもボクっ娘だ。やたら露出度の高い、ビキニアーマーのような鎧が目のやりどころに困る。信長や勝家に負けず劣らずの素敵なふくらみをお持ちだからなおのこと。
「猿、木場一佐の策では不満か?
理由を申してみよ」
「お間違いなきよう。不満などとは滅相もないこと。総論としては木場様の作戦に賛成です。
ただ、力のみによって美濃を制圧したのでは、当家に対して恨みを抱く者が多数出て来る危険があるかと」
「ならばどうする?」
「かねてから計画があった通り、美濃の住人たちの中でも力があって味方にできそうな者たちをこちらに引き入れます。
それと並行して、墨俣に塁を築く策もお任せください。
その上で、美濃の民草に織田勢を受け入れるように根回しを行います。
じえいたいの方々のお力をお借りするのは、もう少し後の段階でも遅くはないかと」
信長は藤吉郎の策を吟味する。確かに、美濃にただ攻め込めばいいというものではない。美濃の住人たちが従わず、泥沼の内戦になれば、斎藤家が味わっている苦しみを今度は織田が味わうことになるのだ。
「話は分かったが、猿よ、お前にやれるか?」
「必ずや。
そこでひとつお願いがございます」
「なにか?」
「この無学な猿に、お目付け役として田宮隊長をつけていただきたく」
そういって藤吉郎は平伏する。
信長は顎にこぶしを当てて考え込む。重臣たちや自衛隊員たちも顔を見合わせる。
藤吉郎の猿知恵に感服する一方、認めていいだろうかと決めかねているのだ。
木場の作戦では、現地の住民の反感を買う可能性がある上に、織田の権威を示せない。かと言って、織田家の家臣だけで事を進めて万一失敗すれば織田家の名折れだ。一応織田家主体の作戦だが、自衛隊の人間を関わらせて、危なくなったら自衛隊が支援するという策は悪くない。
だが、寄り合い所帯の作戦は「船頭多くして船山に上る」の危険が常に付きまとう。それに藤吉郎は戦や土木工事、兵糧の調達などで着実に実績を重ねているが、これほどの大規模な作戦を担当した経験はない。
なにより、自称妻である信長が、夫が他の女と肩を並べて戦うことを承服するかどうか。それが一番問題だった。
だが、信長は意外にも藤吉郎の願いを快諾した。
「あいわかった。知をお前の目付とする。
わが夫よ。聞いての通りだ。この猿に協力してやって欲しい」
「承知しました。必ず藤吉郎殿の作戦を成功に導いてごらんに入れましょう」
田宮は信長の言葉に応じて一礼する。
「しかし猿よ、珍しいな。男が嫌いなお前が、自ら男の目付を望むとは」
「男が嫌いとは異なことを。ただの男には興味がないだけです。
その点田宮隊長は、下手な女よりお美しいではありませんか」
にしし。といたずらっぽい笑顔でそんなことを言う藤吉郎。
まさかそれが田宮を目付に望んだ理由か?その場にいた者たちは本気でそんなことを思っていた。
女扱いされるのを嫌がる田宮はうんざりした顔をしていた。
「よろしい。猿よ。動機はどうあれ、お前のやる気は本物だ。
必ずやり遂げて見せよ!」
「はい!」
信長はわざわざ藤吉郎のところまで進み出て肩パンで激励する。
「わが夫よ。いくら猿のおっぱいが魅力的でも、目移りは許さんぞ」
「おっぱいがついてりゃいいってもんじゃありません。俺は節度を心得てます!」
ついでに耳打ちする信長に、田宮は渋面を浮かべながら答えるのだった。
07
「それじゃ、作戦会議をはじめちゃうよー!」
会議室として借り受けた清須城の一室。藤吉郎のハイテンションな声が響く。
「騒がしいなあ…」
「ま、いいからいいから。さ、お茶をどうぞ。これは取って置きのお茶でね」
そう言った藤吉郎は素早く茶筌で茶を立てると、振る舞っていく。田宮は見様見真似で器を廻すと、軽く口をつける。
「おお、これはいける」
茶道などかじったこともなかったが、この茶がうまいということはわかる。
「でしょ?ね、ね、知。お茶うけあるんだよね?あるんだよね?」
「あーはいはい。最初からそれが目的だったな?」
女の子はたいてい甘いものに目がないものだが、めざとく鼻も効く藤吉郎は、田宮の趣味がお菓子作りで、しかも相当な腕前ということを誰よりも早く嗅ぎつけていた。
”作戦会議はお茶を振る舞いながら。お茶うけよろしく”
という藤吉郎の指示は、田宮の作った甘味を狙ってのことだった。まあ、それに応じて作ってしまう自分も大概だが。そう思いながら、田宮は手製のチーズケーキを差し出す。食べやすいように一口サイズに切ってある。
「んんーーーー!美味しい!
ねえねえ知、ボクのところにお嫁に来ない?」
チーズケーキを口に入れて、蕩けそうな顔をした藤吉郎は、息がかかりそうなほど田宮に顔を近づけてそんなことを言う。うざかわいい。それが田宮の印象だった。かわいいが、やっぱりうざい。
「おいおい。今の言葉、信長様の耳に入ったら下手すりゃ二人とも手打ちだぞ」
「ちぇ。つれないの。
まあいいか。それで作戦の内容だけど」
藤吉郎は墨俣に出城を築く作戦の概略を説明していく。
その斬新さには田宮と施設科からよこされて来た補佐役の自衛隊員達も舌を巻いた。自分たちの知る史実通り、いったん組み上げた建造物を分解していかだとし、川で目的地まで移動して再度組み上げる。
言うは易しだが、建造物をいかだにするというのは簡単なことではない。その点、藤吉郎の策では、建造物としては多少不便になるが、いかだとして組むためにいろいろと構造が工夫されている。墨俣は最前線の出城に過ぎず、長く使うことは予測されないからこれは非常に合理的なことだった。
「君たちに相談したいのは、いかだがあちらに着いてからのことだ。
これまで織田家が美濃に塁を築こうとしてうまく行かなかったのは、ことごとく工事の間に攻撃を受けてしまっていたからだ。
野伏たちを集めて可能な限り早く組むように段どらせている。が、敵が気づいて攻めてくる前に城を完成させるにはまだ足りない。
そこで助言が欲しいんだ」
藤吉郎が畳の上に拡げた図面に目を通し、田宮たちが意見を交換していく。
「まず野伏たちを4つの組にわけて、担当する資材を決めておくことだな。混乱をふせぐために他の組のものが攻撃を受けても、作業に専念させる必要がある」
「構造材と言ってもややこしいな。めんどうだ。焼き印で印をつけよう。プラモみたいに」
「梁や柱の接続部分だが、間違った部品だと接続できないようにしたらどうだ?
これは三角。こっちは長方形。こっちは台形という具合でさ」
施設科の隊員達が本領発揮とばかりに作業の効率を上げる方法を進言していく。
「うんうん!相談してよかった。これなら予定よりずっと早く行きそうだよ!」
藤吉郎は次々と出されて来るアイディアに上機嫌だった。
「しかし待てよ。せっかくだ。一夜で城を出現させて、敵さんを驚かせてやろうじゃないか」
にやりとしながら言う田宮の言葉に、藤吉郎はもちろん、施設科の隊員達も耳を疑う。
「一夜?そんな無茶な」
「まあ聞きなさい」
田宮は自分の思いついた策を紙に書いて説明していく。
「なるほど、これなら本当に一夜で城ができることになるね。すごい!」
「よし、作戦は決まりだ!」
士気は上々の内に作戦会議はお開きとなり、”霧の城”作戦と命名された墨俣築城作戦は速やかに実行される運びとなったのだった。
いかだの列が墨俣川を進んでいく。
雨が降り始めてくれたのは幸いと言えた。自衛隊員たちは、迷彩服と武装をうまくむしろと傘の下に隠していた。藤吉郎とその配下の兵たちも、むしろと傘によって一見すると兵隊とはわからない。
「やはり、見つかったか。思ったより遅かったけど」
「どうせ隠しきれるもんじゃない。予定の内さ」
どこかの勢力の物見と思しい人影が川岸にちらほらと見えるのを藤吉郎は気にしている。が、随行している田宮は油断こそしないが特に問題にはしていなかった。
これだけの大規模な筏の列はすぐに人目を引いてしまう。そして、先行した偵察部隊が地ならしや測量を墨俣で行っているとなれば、このいかだが墨俣に城を築くためのものであることはすぐに知れることだろう。
「ねえ知。ボクらの作戦が成功して美濃が織田のものになったら、ご褒美ちょうだい?」
「ご褒美?なんか嫌な予感がするなあ」
藤吉郎が不意に発した言葉に田宮はうろたえる。
「まあそう言わず。お願いだよ。痛くしないからさ」
「ん…わかった。俺の出来る範囲でな」
藤吉郎が宝石のような目でのぞき込んでくると、どうにも無下には扱えない。こういうところが人たらしと言われる所以か。そんなことを思う。
まあ、それが藤吉郎にとっての励みになり、ひいては作戦の成功につながるならと了解することにする。
人にモチベーションを持たせるというのは考える以上に難しいことだ。
給料さえ払っていれば従業員がモチベーションを高く持つのは当然で、それ以上の義務など上司や会社にはないと思い込んでいる愚か者は世に絶えない。そう言う手合いは結局どんな商売でもうまく行かず、人材が定着せず仕事の効率は上がらず、遅かれ早かれ店を潰す運命にある。
そして、自分の不明と至らなさを最後まで顧みることなく、失敗を人のせいにして世の中を呪いながら終わるのだ。
そうはなるまいと思うなら、どうすれば人をやる気にさせられるかに常にアンテナを巡らせ、できること、すべきと思ったことは全てやるに越したことはない。藤吉郎に対してもそうだ。田宮はそう思うのだった。
墨俣に織田勢が塁を築こうとしている。
その知らせは斎藤龍興の元にも速やかに届けられた。
直ちに軍議が開かれ、さっさと墨俣に攻め込むべしという決定が下される。
だが、その決定に従って実行された作戦は大失敗に終わる。墨俣周辺には広大な湿地帯が拡がり、特に初夏には泥濘に変わる。多数の兵力が移動できる場所は限られてしまうのだ。
織田勢はそこを突いてきた。なんとかまとまった兵力が通れるところにはそこかしこに罠が仕掛けてあった。斎藤勢の足が止まったところで、織田勢は猛然と鉄砲を撃ちかけて来る。進退窮まった斎藤勢は一方的に撃退されてしまったのだ。
半端な兵力では落とすことはできない。墨俣の周辺の湿地帯こそ天然の防壁であり、そこに城が出来れば相当の脅威となる。それに遅ればせながら気づいた斎藤勢は、集められるだけの兵力を集めて集中投入することに決定する。
だが、この時代の軍事は機動性が悪いのが欠点だった。2000の兵を集め動かすのに3日必要になると目算された。それでも、2日たち、3日目の夕方になっても墨俣に城らしいものが出来ている様子はなかった。
これならばまだ行けると斎藤勢は読み。明日は早いからと眠りに入ったのである。
さて、一方でこちらは墨俣。
「気合を入れろ!どうした引っ張れ!」
施設科の古参の陸曹の怒号が響いていた。建造材と一緒に運んできた木製のクレーンに壁を釣るし、一気に持ち上げて柱に固定する。
これこそが田宮の策だった。普通は壁も屋根も下から順に組み上げていくものだが、それでは時間がかかる。時間がかかること自体はいいのだが、こちらの城の普請の進捗が敵にもわかってしまう。
そこで、壁や屋根などをほとんど完成の段階まで組み上げ、人力のクレーンで釣り上げて組み立てるという荒業が行われたのだ。作業効率からいえば非効率だし、事故が起きた場合非常に危険ではある。だが、”一夜城”を現実のものにするためには必要な策でもあった。
「よしみんな、休憩だ!悪いが徹夜になるぞ!がんばってくれ!」
兵たちと同じように泥にまみれ、資材を担いで作業に参加していた藤吉郎が、砂時計を木箱の上に置く。砂時計は陸自の隊員の私物を藤吉郎が譲り受けたものだ。砂が落ちるまでが休憩だ。
「やれやれ、人使いの荒いことで」
「そういうな。ほれ、配給だ。予定通り完成したらもっといいものをやるぞ。
なあ田宮隊長?」
一口サイズのチョコかけドーナッツを兵たちに配りながら、藤吉郎は田宮の方を見る。
「わかった。ただし、甘いものを食べた後は歯を磨けよ」
田宮はそう応じる。歯ブラシはこの時代にはないが、口に水を含んで指で歯を擦るだけでも虫歯になる確率はぐっと下がる。
とにかく、明日の夜明けまでに予定通り作業を終わらせなければならないのだ。兵たちには頑張ってもらわなければならない。
かくして次の朝。
「馬鹿な。もう完成しているだと?」
「信じられん!どんなからくりを使ったのだ?」
ようやく兵力を整え、いよいよ墨俣に攻め込む時と意気込んでいた斎藤勢は信じられない光景を目にすることになる。昨日までなかったはずの建造物が墨俣に並んでいるのだ。即席とはいえ城壁、兵舎、物見やぐら、蔵まである。
それは、柵と掘っ立て小屋しかなかった昨日までとは根本的に状況が異なることを意味していた。城壁が完成していると言うことは、矢や鉄砲を撃ち込んでも効果は格段に薄くなる。なにより、多くの兵が雨露しのぐことができるということが重要だ。野宿が続けば兵たちはたちまち消耗してしまう。が、取りあえず屋根のある所で休むことができ、簡素でも温かい食事をとることが出来れば、兵たちの体力と士気を維持することははるかに容易になる。
昨日までの墨俣ならば2000の兵で十分だった。だが、今この瞬間の墨俣は、2000では返り討ちにされかねないものだった。
結局、墨俣から鉄砲が撃ちかけられてくると、とどまっていては犬死するだけと斎藤勢は撤退せざるを得なかったのである。
「なんとかごまかせたみたいね」
「ともあれ、今のままじゃまずいな。風が吹いたら倒れかねないぞ」
斎藤勢が引いて行くのを確認した藤吉郎と田宮は安堵の吐息を漏らす。が、大変なのはこれからだ。
一見すると完成しているように見える墨俣城は、実はハリボテだった。裏から見れば一目瞭然だが、完成しているのは外見だけ。つっかえ棒をあてたり、縄を張って何とか立たせているところも少なくない。釘やかすがいで柱や梁に固定しないと、風が吹いたら倒れてしまう。それに、内装はほとんど完成していないから、このままでは軍事拠点としてはもちろん、住居としても役に立たないのだ。
「まあ、みんなお疲れだし、所期の目的は果たした。今は寝かせておいてあげよう」
「まあ、そうだな」
徹夜の作業の疲れで、そこかしこに寝転がっていびきをかいている兵たちを見ながら、二人はそんな会話を交わすのだった。
かくして、墨俣に出城を築くという作戦目的は、一応成功したのだった。あくまでも一応。
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