私にモテ期とか冗談でしょ？ アラサーオタ喪女に突然の逆ハーレム

０３ 寒い日々だから

どんな人？

１１

　「はい、終わり。つかさちゃんいい髪だねー」
　「母親ゆずりですから…」
　つかさは、瞳に髪を乾かしてもらっていた。
　（なんか…けっこう母性的な人かも…）
　そんなことを思う。
　つかさには２つ下の弟がいる。
　自分がまだ小さいころ、母親が生まれたばかりの弟にかかりきりになってしまった。
　あまり甘えさせてもらった記憶がない。
　お姉ちゃんであることを求められたから。
　だから、瞳に髪を洗ってもらい、ドライヤーで乾かしてもらうのが、なんだか嬉しかったのだ。
　（悪い人ではないのかな）
　そんなことを思う。

　澄野つかさは、いわゆるブラコンである。
　年が離れていて、大人の男である兄、勇人が大好きだ。
　父親が仕事で家にあまりおらず、母親は２歳下の弟にかかりきり。そんなときに、まだ小さいつかさの面倒を見てくれたのが一回り近く上の兄だった。
　背が高くかっこいい、大人の男である勇人は、つかさの中で単なる兄以上の存在だった。
　そんなつかさには、最近懸案事項があった。
　最近、兄である勇人に気になる女がいると、色めいた話がある。
　女の名は秋島瞳。
　だが、つかさはそれを素直に喜べなかった。
　どうも聞いていると、その女はモテる上に、他にも男から粉をかけられている。
　しかも、誰にするのか答えを保留したままだという。
　（もしかして、悪女ってやつ？）
　つかさの心に猜疑が芽生えた。
　よく言っておおらか、悪く言ってお人好しな兄が、悪女に弄ばれているのではないか。
　悪く考えると、夜も眠れなかった。
　最近兄があまり遊んでくれないのも、その女のせいではないかと思い始めた。
　今夜にしても、雪で帰宅が困難なため、兄のアパートに泊まれるかも知れないと内心楽しみにしていた。
　それなのに、会社の人間が来るからと宿泊を拒否され、よりによって猜疑の対象である秋島瞳と相部屋になってしまった。
　不満なことこの上なかった。
　だが、実際に瞳に接してみると、とても悪女というタイプには見えない。
　確かに美人で色っぽいが、気さくで優しくてけっこう親しみやすい。
　（どういう人なんだろう…？）
　つかさは、秋島瞳という女がわからなかった。

　「つかさちゃん、なにか見たい番組ある？」
　「いえ、この時間はとくに…」
　テレビのリモコンを操作しながら聞いてくる瞳だが、実際に見たい番組がないつかさは、そう答える。
　「なんかないかなー」
　瞳はベッドに腰掛けてチャンネルサーフィンを始める。
　ホテルに備え付けの浴衣を来て、髪をアップにし、シャンプーのにおいを漂わせるその姿は、女の子であるつかさから見ても色気を感じる。
　（これが大人の女ってものか…）
　つかさは、瞳がモテるのもわかる気がしていた。