23 / 59
02 恋も仕事も?
恋の話は単純化して
しおりを挟む
10
(会話がない…。
一杯付き合えと言っておいてこれはまずい…。まずいのはわかってるんだけど…)
瞳は自分でもどうしていいかわからず、無言のまま時だけが過ぎていった。
お気に入りのはずのこの店のミモザが、今日はやたら酸っぱく思えた。
佐奈が元気がないのは男がらみ。
そして、彼女が思っているのは、自分に近づきつつある克己。
それはなんとなくわかった。
とにかくなにか話だけでもしてみようと思って酒に誘ったが、一向に会話が進まないのだ。
瞳が克己のことをなんとも思っていなければ、すっぱりと克己を拒絶して佐奈を応援してやればすむ話だ。
だが、瞳は克己を突き放すことができなかった。
イケメンであり仕事もできる。少しいいかなと思っていた。
かつては克己はそれ以上でも以下でもなかっただろう。
だが、酔っ払って克己の家に泊まり、悪のりして互いに裸になって、酔った勢いでセックスに及びかけた。
それ以来、瞳の中で克己の立ち位置が変わった気がした。
(でも…受け入れることも拒絶することもできない…。
私ってなんて優柔不断…)
裸を見られ、最後まではいかないにせよ触れあったことで、恋愛感情かどうかはともかく、克己に執着する気持ちが生まれてしまったように思える。
それに、総務部長室で、克己がいずれ瞳を自分のものにすると臆面もなく言い放ったとき、戸惑いながらも嬉しいと思えた。
さりとても、積極的に克己と付き合おうとするでもない。
それどころか、勇人や龍太郎ともつかず離れずの間合いを保ち続けている。
(こういう場合どうしたらいいかわからないんだよ…)
瞳は今までの人生で、モテた経験がなかった。
恋人と呼べる男はいたが、瞳の方から必死でアプローチしてやっと付き合う形になったのだ。
複数の男があちらから近づいてくる状況など、どう対処していいのかさっぱりわからないのだった。
それだけに、誰か一人を選ぶとなると困ってしまうのだ。
そんな負い目もあって、自分から誘っておきながら佐奈となにを話していいかわからないという情けない状況に陥っているのだった。
「その…ごめん佐奈ちゃん…。
私から誘っておきながら…なんだか会話がなくて…」
「いえ、先輩から誘われたのは嬉しいですから…。
そんなこと気にしないで下さい…」
なんとか2人はそんな会話を交わすが、また無言になってしまう。
(気まずい)
瞳は針のむしろの気分だった。
正直なところ、佐奈が自分に悪感情を抱いていないか心配していたのだ。
佐奈の思い人である克己を受け入れるでも拒絶するでもなく、中途半端な距離を保っている。
それだけならまだしも、勇人や龍太郎にも同じような対応をしている。
だらしない女と思われているかも知れない。
(佐奈ちゃんにはそう思われたくないけど…)
瞳は佐奈を後輩として可愛いと思ってきた。
自業自得とはいえ、佐奈に悪感情を抱かれるのは怖かったのだ。
それに助け船を出すように、佐奈が切り出す。
「ねえ先輩。
話しにくいことは、単純化して言葉に出してみるといいそうです。
どう話したらいいかあれこれ考えているから、よけいに言葉にできなくなる。
わかりやすく、なにが問題点なのか口に出してみるっていうのはどうです?」
「そうか…そうね…」
瞳はにわかに我が意を得た気分になる。
今まで、どう話を構成してどこから話していくか、そればかり考えてぐるぐるとした迷路にはまっていた気がする。
とにかく、話してみるのも悪くない。
後々、酒の勢いでとごまかすこともできるはずだ。
意を決した瞳はミモザをあおると、思い切って切り出す。
「じゃあ…まあその…私の問題から。
ひと言でいうと…男の問題…かしら?」
その言葉に、今まで消沈した様子だった佐奈がにっこりと微笑む。
(やっぱり…笑った方が断然きれいで可愛い…)
百合の気はないはずだが、不覚にもそんなことを思ってしまう。
「やっぱりそうですよね-。
先輩きれいだしモテるから。
じゃあ、あたしの番ですね。
あたしの場合は…まあ恋の悩みですか…。
はっきり言えば先輩と同じ、男の問題です」
そう言った佐奈の顔が赤かったのは、酒のせいではないだろう。
一瞬、瞳と佐奈の間に気まずい空気が流れる。
だが、すぐに2人ともにっこりと笑い合う。
やっと、腹を割って話が始められそうに思えたのだ。
(会話がない…。
一杯付き合えと言っておいてこれはまずい…。まずいのはわかってるんだけど…)
瞳は自分でもどうしていいかわからず、無言のまま時だけが過ぎていった。
お気に入りのはずのこの店のミモザが、今日はやたら酸っぱく思えた。
佐奈が元気がないのは男がらみ。
そして、彼女が思っているのは、自分に近づきつつある克己。
それはなんとなくわかった。
とにかくなにか話だけでもしてみようと思って酒に誘ったが、一向に会話が進まないのだ。
瞳が克己のことをなんとも思っていなければ、すっぱりと克己を拒絶して佐奈を応援してやればすむ話だ。
だが、瞳は克己を突き放すことができなかった。
イケメンであり仕事もできる。少しいいかなと思っていた。
かつては克己はそれ以上でも以下でもなかっただろう。
だが、酔っ払って克己の家に泊まり、悪のりして互いに裸になって、酔った勢いでセックスに及びかけた。
それ以来、瞳の中で克己の立ち位置が変わった気がした。
(でも…受け入れることも拒絶することもできない…。
私ってなんて優柔不断…)
裸を見られ、最後まではいかないにせよ触れあったことで、恋愛感情かどうかはともかく、克己に執着する気持ちが生まれてしまったように思える。
それに、総務部長室で、克己がいずれ瞳を自分のものにすると臆面もなく言い放ったとき、戸惑いながらも嬉しいと思えた。
さりとても、積極的に克己と付き合おうとするでもない。
それどころか、勇人や龍太郎ともつかず離れずの間合いを保ち続けている。
(こういう場合どうしたらいいかわからないんだよ…)
瞳は今までの人生で、モテた経験がなかった。
恋人と呼べる男はいたが、瞳の方から必死でアプローチしてやっと付き合う形になったのだ。
複数の男があちらから近づいてくる状況など、どう対処していいのかさっぱりわからないのだった。
それだけに、誰か一人を選ぶとなると困ってしまうのだ。
そんな負い目もあって、自分から誘っておきながら佐奈となにを話していいかわからないという情けない状況に陥っているのだった。
「その…ごめん佐奈ちゃん…。
私から誘っておきながら…なんだか会話がなくて…」
「いえ、先輩から誘われたのは嬉しいですから…。
そんなこと気にしないで下さい…」
なんとか2人はそんな会話を交わすが、また無言になってしまう。
(気まずい)
瞳は針のむしろの気分だった。
正直なところ、佐奈が自分に悪感情を抱いていないか心配していたのだ。
佐奈の思い人である克己を受け入れるでも拒絶するでもなく、中途半端な距離を保っている。
それだけならまだしも、勇人や龍太郎にも同じような対応をしている。
だらしない女と思われているかも知れない。
(佐奈ちゃんにはそう思われたくないけど…)
瞳は佐奈を後輩として可愛いと思ってきた。
自業自得とはいえ、佐奈に悪感情を抱かれるのは怖かったのだ。
それに助け船を出すように、佐奈が切り出す。
「ねえ先輩。
話しにくいことは、単純化して言葉に出してみるといいそうです。
どう話したらいいかあれこれ考えているから、よけいに言葉にできなくなる。
わかりやすく、なにが問題点なのか口に出してみるっていうのはどうです?」
「そうか…そうね…」
瞳はにわかに我が意を得た気分になる。
今まで、どう話を構成してどこから話していくか、そればかり考えてぐるぐるとした迷路にはまっていた気がする。
とにかく、話してみるのも悪くない。
後々、酒の勢いでとごまかすこともできるはずだ。
意を決した瞳はミモザをあおると、思い切って切り出す。
「じゃあ…まあその…私の問題から。
ひと言でいうと…男の問題…かしら?」
その言葉に、今まで消沈した様子だった佐奈がにっこりと微笑む。
(やっぱり…笑った方が断然きれいで可愛い…)
百合の気はないはずだが、不覚にもそんなことを思ってしまう。
「やっぱりそうですよね-。
先輩きれいだしモテるから。
じゃあ、あたしの番ですね。
あたしの場合は…まあ恋の悩みですか…。
はっきり言えば先輩と同じ、男の問題です」
そう言った佐奈の顔が赤かったのは、酒のせいではないだろう。
一瞬、瞳と佐奈の間に気まずい空気が流れる。
だが、すぐに2人ともにっこりと笑い合う。
やっと、腹を割って話が始められそうに思えたのだ。
0
お気に入りに追加
186
あなたにおすすめの小説
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
【R18】鬼上司は今日も私に甘くない
白波瀬 綾音
恋愛
見た目も中身も怖くて、仕事にストイックなハイスペ上司、高濱暁人(35)の右腕として働く私、鈴木梨沙(28)。接待で終電を逃した日から秘密の関係が始まる───。
逆ハーレムのチームで刺激的な日々を過ごすオフィスラブストーリー
法人営業部メンバー
鈴木梨沙:28歳
高濱暁人:35歳、法人営業部部長
相良くん:25歳、唯一の年下くん
久野さん:29歳、一個上の優しい先輩
藍沢さん:31歳、チーフ
武田さん:36歳、課長
加藤さん:30歳、法人営業部事務
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
蛇神様の花わずらい~逆ハー溺愛新婚生活~
ここのえ
恋愛
※ベッドシーン多めで複数プレイなどありますのでご注意ください。
蛇神様の巫女になった美鎖(ミサ)は、同時に三人の蛇神様と結婚することに。
優しくて頼りになる雪影(ユキカゲ)。
ぶっきらぼうで照れ屋な暗夜(アンヤ)。
神様になりたてで好奇心旺盛な穂波(ホナミ)。
三人の花嫁として、美鎖の新しい暮らしが始まる。
※大人のケータイ官能小説さんに過去置いてあったものの修正版です
※ムーンライトノベルスさんでも公開しています
【ヤンデレ鬼ごっこ実況中】
階段
恋愛
ヤンデレ彼氏の鬼ごっこしながら、
屋敷(監禁場所)から脱出しようとする話
_________________________________
【登場人物】
・アオイ
昨日初彼氏ができた。
初デートの後、そのまま監禁される。
面食い。
・ヒナタ
アオイの彼氏。
お金持ちでイケメン。
アオイを自身の屋敷に監禁する。
・カイト
泥棒。
ヒナタの屋敷に盗みに入るが脱出できなくなる。
アオイに協力する。
_________________________________
【あらすじ】
彼氏との初デートを楽しんだアオイ。
彼氏に家まで送ってもらっていると急に眠気に襲われる。
目覚めると知らないベッドに横たわっており、手足を縛られていた。
色々あってヒタナに監禁された事を知り、隙を見て拘束を解いて部屋の外へ出ることに成功する。
だがそこは人里離れた大きな屋敷の最上階だった。
ヒタナから逃げ切るためには、まずこの屋敷から脱出しなければならない。
果たしてアオイはヤンデレから逃げ切ることができるのか!?
_________________________________
7話くらいで終わらせます。
短いです。
途中でR15くらいになるかもしれませんがわからないです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる