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00 プロローグ

3人のイケメンは真剣

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 01
 ええと、なんでこんなことになってるんだっけ…?
 秋島瞳は困惑する。
 「瞳さん、俺を選んではくれないか?」
 「僕が一番年下ですけど…瞳先輩のことは譲れませんよ」
 「そうはいかない。秋島くんとお付き合いするのは俺だ」 
 会社の屋上。
 瞳は修羅場の中心にあった。
 3人のイケメンから、自分を選べと迫られているのだ。
 一見ナンパ風の同い年の上司、林原 克己。
 長身のエリートルーキー、澄野 勇人。
 広い肩幅と熱い胸板が特徴のキャリア、夏目 龍太郎。
 彼らがそれぞれに自分を選んでくれと迫っているのだ。
 (これってなんの冗談?3人とも私なんか影も踏めないようなすごい人たちじゃない?)
 いくら頭をひねっても、その疑問の答えは出てこなかった。
 アラサー、オタク、干物女子、仕事は可も無く不可も無く。
 そんな自分がなぜエリートのイケメンたちに急にモテ始めてしまったのか、さっぱりわからないのだ。
 「俺らが言い合ってても仕方ないか。
 瞳さん、君が決めてくれないか?」
 「そうですね。先輩が決めたことなら、僕も異議はないです」
 「秋島くん、ここはひとつ、あなたの気持ちを聞かせてくれないか?」
 イケメンたち真剣な眼で見つめられ、瞳は心臓をわしづかみにされた気分になる。
 (女としては幸せなはずなのに…プレッシャー強すぎるって!)
 目はぐるぐる、頭の中もぐるぐる。
 瞳はとても何かを決断できる状態ではなかった。
 平穏だが単調で退屈な毎日が、急に波乱に満ちたものに変わった。
 つい最近まで無聊を囲っていたのに、ここ数日でまるでジェットコースターだ。
 「ええと…。持ち帰って検討させて下さい!」
 プレッシャーに耐えかねた瞳は、政治家の答弁のような台詞を残して脱兎のごとく屋上を後にした。
 (選べって言われても無理だって!)
 階段を駆け下りながら、瞳は胸の内に叫んでいた。
 現実は竹取物語やシンデレラのようにはいかない。
 まして、自分はお姫様でも貴族のお嬢様でもない。
 突然3人の王子様から求愛されても、どうしていいのかわからないのだ。
 (ドッキリだったなんてオチ…なわけはないか…)
 階段の踊り場で足を止めて呼吸を整え、周りにカメラがないかどうか探してみる。だが見つかることはない。
 (そもそも、ドッキリって具体的にどんなのだ?)
 平成生まれの自分が昭和のネタを知っているのは不可解だった。
 まあどうでもいいことだが。
 (本当にどうしてこういうことになったんだろう?)
 喪女を通り越し、女を捨てているレベルで残念かつ干物女子。
 そんな自分がなぜエリートのイケメン3人にモテ始めてしまったのか。
 瞳はここ数日のことを回想してみるのだった。


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