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03 長身ボーイッシュギャルの幼なじみも
本当に本当か?
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07
「お待たせ」
「やあ」
とある休日、治明と友佳は駅前で待ち合わせていた。
友佳は買い物に付き合えと言っていたが、なにやらデートのようでうれしくも少し恥ずかしそうだ。
「さてと、まずお茶でも飲もうか」
「そうだな」
別に急ぐわけではない。
まずは水分補給も兼ねて紅茶かコーヒーでも。
そう思った2人は、取りあえず喫茶店に入ることにする。
チェーン店ではない。こだわりの強い主人が個人経営している本格的な店だ。
知る人ぞ知る穴場で、味は確かだった。
「それで、買い物っていうのは?」
「ああ、ここだよ」
治明と友佳は、テナントビルの一角にある店に向かう。
「って…友佳…まじか…?」
それがなんの店家に気づいて、治明はうろたえる。
「まじもまじ。治明に選んで欲しいんだって」
友佳が真剣な眼で応じる。
「でもなあ…」
治明は踏み切れなかった。
そこはランジェリーショップだったからだ。
当然のように、女物の下着しか扱っていない。
見えない字で入口に“男子禁制”と描かれているようにさえ感じられる。
「いいから来なよ。ぜひお前の意見を聞きたいのさ」
床に手を引かれて、渋々店に入る。
良く見れば、カップルで女の子の下着を見つくろっているのが目に入る。
(まあ、ああいうもんか)
まだ気恥ずかしかったが、そう自分を納得させた治明は友佳についていく。
「ハルー。そこにいるな?」
「ああ、いるぜ」
試着室のカーテンの向こうから友佳の声がする。
どうやらつけ終わったらしい。
(そう言えば、どんな下着だろうか)
ふとそんなことを考える。
シンプルなスポーツブラや綿のありふれたデザインなら、こういう専門店である必要はない。
店内を見回せば、品揃えは実に豊富だった。
かわいいピンクのフリフリ。アダルティーな黒のシルク。はては、大胆な股割れまで。
友佳はなにを選んだろうか。
急に気になり始めた。
「ハル、準備いいか?」
「いいけど?」
「笑うなよ…」
「え?」
「だから、笑うなよ?」
治明は友佳の言葉の意味がわからなかった。
友佳がもったいつけたようになかなか出てこないのも気になる。
「なんで笑うのさ?」
「いいから!笑わないって約束しろって!」
かなりテンパった調子で、友佳が大声を出す。
「わかった。絶対笑わないから」
「よし…」
友佳がカーテンの向こうで深呼吸するのを感じる。
カーテンが開く。
(おお…これは…)
治明は、目の前の光景に一瞬言葉を失う。
友佳の下着姿に。
意外にも、友佳が身につけている下着は、ピンクの花柄で面積も大きい。
よく言ってかわいい。悪くいって少女趣味な下着だった。
(友佳ってこういうの好きなのか?
意外だが…かわいいじゃないか)
素直にそう思えた。
傷心でボーイッシュな友佳がかわいいデザインを好むというのは多少ギャップを感じないでもない。
だが、友佳も女の子だ。
腰は美しくくびれているし、出る所はちゃんと出て自己主張している。
花柄の下着も、普通にかわいいと思える。
「ハル…黙ってないでなにか言ってくれないか…」
「ああ。いい感じだよ。友佳、かわいいじゃん」
治明の返答に、友佳は恥ずかしさが半分、嬉しさが半分という表情になる。
「ほ…本当にそう思うか…?似合わないとか思ってないか?」
「大丈夫。かわいいって。普段とちょっと違って見えて、けっこう新鮮かも」
普段と違って見えることをネガティブに解釈されないよう、治明は言葉を選んでいく。
「本当に本当か…?」
「本当だって。友佳かわいいよ。花柄、似合ってる」
女の子としての自分にいまいち自信が持てないらしい友佳は、なおも食い下がる。
治明は努めて笑顔で優しい声で応える。
「そうか…似合ってるか…。かわいいか…」
友佳は、真っ赤になりながらも大輪の花のような笑顔になる。
(やっぱり女の子だな。そんじょそこらの女の子よりかわいいじゃないか)
友佳の笑った顔を見て、治明も嬉しくなる。
「これください」
友佳は、花柄の下着を買い求めるらしい。
店を出ても、友佳は下着の包みを大事そうに抱え、上機嫌だった。
だが、治明も友佳も知らなかった。
この後、いいムードを台無しにするトラブルに巻き込まれることになるのを。
「お待たせ」
「やあ」
とある休日、治明と友佳は駅前で待ち合わせていた。
友佳は買い物に付き合えと言っていたが、なにやらデートのようでうれしくも少し恥ずかしそうだ。
「さてと、まずお茶でも飲もうか」
「そうだな」
別に急ぐわけではない。
まずは水分補給も兼ねて紅茶かコーヒーでも。
そう思った2人は、取りあえず喫茶店に入ることにする。
チェーン店ではない。こだわりの強い主人が個人経営している本格的な店だ。
知る人ぞ知る穴場で、味は確かだった。
「それで、買い物っていうのは?」
「ああ、ここだよ」
治明と友佳は、テナントビルの一角にある店に向かう。
「って…友佳…まじか…?」
それがなんの店家に気づいて、治明はうろたえる。
「まじもまじ。治明に選んで欲しいんだって」
友佳が真剣な眼で応じる。
「でもなあ…」
治明は踏み切れなかった。
そこはランジェリーショップだったからだ。
当然のように、女物の下着しか扱っていない。
見えない字で入口に“男子禁制”と描かれているようにさえ感じられる。
「いいから来なよ。ぜひお前の意見を聞きたいのさ」
床に手を引かれて、渋々店に入る。
良く見れば、カップルで女の子の下着を見つくろっているのが目に入る。
(まあ、ああいうもんか)
まだ気恥ずかしかったが、そう自分を納得させた治明は友佳についていく。
「ハルー。そこにいるな?」
「ああ、いるぜ」
試着室のカーテンの向こうから友佳の声がする。
どうやらつけ終わったらしい。
(そう言えば、どんな下着だろうか)
ふとそんなことを考える。
シンプルなスポーツブラや綿のありふれたデザインなら、こういう専門店である必要はない。
店内を見回せば、品揃えは実に豊富だった。
かわいいピンクのフリフリ。アダルティーな黒のシルク。はては、大胆な股割れまで。
友佳はなにを選んだろうか。
急に気になり始めた。
「ハル、準備いいか?」
「いいけど?」
「笑うなよ…」
「え?」
「だから、笑うなよ?」
治明は友佳の言葉の意味がわからなかった。
友佳がもったいつけたようになかなか出てこないのも気になる。
「なんで笑うのさ?」
「いいから!笑わないって約束しろって!」
かなりテンパった調子で、友佳が大声を出す。
「わかった。絶対笑わないから」
「よし…」
友佳がカーテンの向こうで深呼吸するのを感じる。
カーテンが開く。
(おお…これは…)
治明は、目の前の光景に一瞬言葉を失う。
友佳の下着姿に。
意外にも、友佳が身につけている下着は、ピンクの花柄で面積も大きい。
よく言ってかわいい。悪くいって少女趣味な下着だった。
(友佳ってこういうの好きなのか?
意外だが…かわいいじゃないか)
素直にそう思えた。
傷心でボーイッシュな友佳がかわいいデザインを好むというのは多少ギャップを感じないでもない。
だが、友佳も女の子だ。
腰は美しくくびれているし、出る所はちゃんと出て自己主張している。
花柄の下着も、普通にかわいいと思える。
「ハル…黙ってないでなにか言ってくれないか…」
「ああ。いい感じだよ。友佳、かわいいじゃん」
治明の返答に、友佳は恥ずかしさが半分、嬉しさが半分という表情になる。
「ほ…本当にそう思うか…?似合わないとか思ってないか?」
「大丈夫。かわいいって。普段とちょっと違って見えて、けっこう新鮮かも」
普段と違って見えることをネガティブに解釈されないよう、治明は言葉を選んでいく。
「本当に本当か…?」
「本当だって。友佳かわいいよ。花柄、似合ってる」
女の子としての自分にいまいち自信が持てないらしい友佳は、なおも食い下がる。
治明は努めて笑顔で優しい声で応える。
「そうか…似合ってるか…。かわいいか…」
友佳は、真っ赤になりながらも大輪の花のような笑顔になる。
(やっぱり女の子だな。そんじょそこらの女の子よりかわいいじゃないか)
友佳の笑った顔を見て、治明も嬉しくなる。
「これください」
友佳は、花柄の下着を買い求めるらしい。
店を出ても、友佳は下着の包みを大事そうに抱え、上機嫌だった。
だが、治明も友佳も知らなかった。
この後、いいムードを台無しにするトラブルに巻き込まれることになるのを。
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