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01 金髪ギャルのアイデンティティ
緊急避難先は
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13
「まずいな、土砂降りだぜ…」
「風も強いねえ。なんでこんなところでこんなときにー…」
治明と椿姫は、濡れ鼠の状態で避難先を探していた。
横殴りの雨は、念のため持ってきた折りたたみ傘程度でなんとかなるものではない。
「まずいな…この辺コンビニすらないぜ」
「雨宿りしようにも、人が住んでるとこあるのかどうか…」
運悪く、周辺は完全なシャッター街だった。
コンビニなり喫茶店なり雨宿りできるところを探すが、望みは薄そうだった。
タクシーを拾おうにも、ローカル線の無人駅周辺では難しそうだ。
ことの始まりは、病気で入院した教師の見舞いに、治明と椿姫が選ばれたことだった。
気さくで面倒見がよく、生徒たちから慕われている人物ではあったが、あまり大勢で押しかけても病気に触る。
なにより、郊外のへんぴなところにある病院だ。行くのも大変。
なら、くじで誰か代表を決めて行ってもらうべき。
そんな流れになった。
くじに当たったのは椿姫だったが、一人で行くこともなかろうと治明が同行することになった。
かくして、見舞いは無事に済んだ。
だが、帰り道で悲劇は起きる。
病院を訪れた時の天候ががらりと崩れ、風も出てきた。
そして、10分もしない内に横殴りの本降りになってしまったのだ。
「これなら病院でバス待った方がよかったじゃん」
「反省してるって。俺が悪かったよ」
30分に1本しかなくともバスを待つべきと言う椿姫に対し、電車の時間もあるし歩いた方が早いと断じたのは治明だった。
そして、悪いことは重なることになる。
「くそっ。運転見合わせかよ」
「よくよくツキに見放されてるねー」
こうなったらさっさと電車に乗った方がいいと駅に向かったが、時間になっても電車は来なかった。
ネットで調べて見ると、倒木の影響で運転見合わせとなっていた。
「しょうがない。この際だ。あそこに避難しよう」
「ええ…?まじ…?」
治明が緊急避難先として提案したのが、派手なネオンのラブホテルだった。
「しょうがないじゃん。
気にする必要無いって。田舎じゃ、茶店とかカラオケ代わりに利用する人だっているしさ」
「うー…。変なことしたらぬっ殺すかんね!」
治明の説得に、椿姫は渋々承諾する。
別にただの休息であっても、男と女でラブホテルに入るのは恥ずかしいのだ。
ともあれ、横殴りの雨から避難したければ他に手はなさそうだ。
本降りの雨に逆らって、治明と椿姫はラブホテルに向かうのだった。
「じゃ、どっちが先にシャワー浴びるー?」
「いや、折角だし風呂にしようや。
雨もまだ止みそうにないしさ」
ずぶ濡れで、なんとかラブホテルの一室にたどりついた2人は、まず体を温めるために風呂を使うことにする。
2人で別々の部屋を借りることも考えたのだが、どういうわけか空いているのは1室だけだった。
やむなく、同じ部屋に収まることになったのだ。
「先に入ってていいよ。
洗濯物洗って乾かしてくるから」
「うん。お願いねー」
備え付けの浴衣に着替えた治明は、ホテル1階のコインランドリーまで濡れた服を運んでいく。
(ラブホテルのお風呂って考えると、なんかドキドキするな…。
これからその…えっちなことするための準備みたいで…)
椿姫は湯船の中でそんなことを思う。
体を洗っているときは、とにかく風呂に入って冷えた体を温めることしか考えられなかった。
だが、風呂に肩までつかって暖まってくると、急に緊張し始めてしまう。
男女でラブホテルの1室にいることを、急に意識し始めてしまったのだ。
(変なこと考えない。ただ雨宿りしてるだけ。雨宿りしてるだけ)
風呂に浸かっている間、椿姫は自分にそう言い聞かせ続けた。
そうでないと、心臓が止まりそうだったのだ。
「まずいな、土砂降りだぜ…」
「風も強いねえ。なんでこんなところでこんなときにー…」
治明と椿姫は、濡れ鼠の状態で避難先を探していた。
横殴りの雨は、念のため持ってきた折りたたみ傘程度でなんとかなるものではない。
「まずいな…この辺コンビニすらないぜ」
「雨宿りしようにも、人が住んでるとこあるのかどうか…」
運悪く、周辺は完全なシャッター街だった。
コンビニなり喫茶店なり雨宿りできるところを探すが、望みは薄そうだった。
タクシーを拾おうにも、ローカル線の無人駅周辺では難しそうだ。
ことの始まりは、病気で入院した教師の見舞いに、治明と椿姫が選ばれたことだった。
気さくで面倒見がよく、生徒たちから慕われている人物ではあったが、あまり大勢で押しかけても病気に触る。
なにより、郊外のへんぴなところにある病院だ。行くのも大変。
なら、くじで誰か代表を決めて行ってもらうべき。
そんな流れになった。
くじに当たったのは椿姫だったが、一人で行くこともなかろうと治明が同行することになった。
かくして、見舞いは無事に済んだ。
だが、帰り道で悲劇は起きる。
病院を訪れた時の天候ががらりと崩れ、風も出てきた。
そして、10分もしない内に横殴りの本降りになってしまったのだ。
「これなら病院でバス待った方がよかったじゃん」
「反省してるって。俺が悪かったよ」
30分に1本しかなくともバスを待つべきと言う椿姫に対し、電車の時間もあるし歩いた方が早いと断じたのは治明だった。
そして、悪いことは重なることになる。
「くそっ。運転見合わせかよ」
「よくよくツキに見放されてるねー」
こうなったらさっさと電車に乗った方がいいと駅に向かったが、時間になっても電車は来なかった。
ネットで調べて見ると、倒木の影響で運転見合わせとなっていた。
「しょうがない。この際だ。あそこに避難しよう」
「ええ…?まじ…?」
治明が緊急避難先として提案したのが、派手なネオンのラブホテルだった。
「しょうがないじゃん。
気にする必要無いって。田舎じゃ、茶店とかカラオケ代わりに利用する人だっているしさ」
「うー…。変なことしたらぬっ殺すかんね!」
治明の説得に、椿姫は渋々承諾する。
別にただの休息であっても、男と女でラブホテルに入るのは恥ずかしいのだ。
ともあれ、横殴りの雨から避難したければ他に手はなさそうだ。
本降りの雨に逆らって、治明と椿姫はラブホテルに向かうのだった。
「じゃ、どっちが先にシャワー浴びるー?」
「いや、折角だし風呂にしようや。
雨もまだ止みそうにないしさ」
ずぶ濡れで、なんとかラブホテルの一室にたどりついた2人は、まず体を温めるために風呂を使うことにする。
2人で別々の部屋を借りることも考えたのだが、どういうわけか空いているのは1室だけだった。
やむなく、同じ部屋に収まることになったのだ。
「先に入ってていいよ。
洗濯物洗って乾かしてくるから」
「うん。お願いねー」
備え付けの浴衣に着替えた治明は、ホテル1階のコインランドリーまで濡れた服を運んでいく。
(ラブホテルのお風呂って考えると、なんかドキドキするな…。
これからその…えっちなことするための準備みたいで…)
椿姫は湯船の中でそんなことを思う。
体を洗っているときは、とにかく風呂に入って冷えた体を温めることしか考えられなかった。
だが、風呂に肩までつかって暖まってくると、急に緊張し始めてしまう。
男女でラブホテルの1室にいることを、急に意識し始めてしまったのだ。
(変なこと考えない。ただ雨宿りしてるだけ。雨宿りしてるだけ)
風呂に浸かっている間、椿姫は自分にそう言い聞かせ続けた。
そうでないと、心臓が止まりそうだったのだ。
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