ギャル乙女!! 処女ビッチたちの好奇心

ブラックウォーター

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01 金髪ギャルのアイデンティティ

“付き合うふり”を始めよう

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05

 椿姫は長考に入ってしまう。
 人の記憶を消去する方法でもない限り、治明が秘密を守ることを信じるしかない。
 治明が意地悪で口外するとは思わない。
 だが、人はぽろっと口を滑らせてしまうことはあるものだ。
 その辺りが心配と言うことか。
 「そんな顔したってどうするよ。
 俺が友人知人に話さないように、あるいはネットやSNSに書き込まないように、四六時中くっついてる?」
 治明は冗談めかしてそう言う。
 これくらいの冗談は言ってもいいだろう。
 椿姫の処女ビッチアイデンティティを守ることに付き合わされて、正直なところとてもめんどくさいのだ。
 まあ、椿姫は怒るかも知れないが。

 だが、椿姫は治明の予想に反して、我が意を得たりという顔になる。
 「それ、いいかも」
 「へ…?」
 変なアイディアが閃いたらしい椿姫が、会心の笑みを浮かべる。
 一方の治明には、悪い予感しかしなかった。
 「あたし、あんたにくっついて監視する。
 よけいなこと言わないように。ネットとかに書き込まないようにね」
 「ええ…。本気か…?」
 その様子を治明は想像してみる。
 食事も、外出も、風呂やトイレ…まではさすがに一緒とは行かないか。
 とにかく、椿姫が一緒にいる。
 (でも、考えてみればそれって役得じゃね?
 高宮さんって美少女だし。性格もまあ…めんどくさいけど処女ビッチでかわいいってわかったしな)
 そう思うが、そこで治明は考える。
 椿姫のがわは、そのあたりをどう思っているのか。
 「でも、なんかそれ付き合ってるみたいじゃん?」
 「え…?なななな…!おばか!そんなわけないでしょ!
 あくまであんたを監視するだけだって!」
 いつも一緒にいる、つまり付き合っている恋人同士のようだ、ということに今さら気づいた椿姫が、また真っ赤になって慌てる。
 (ほんと、中身は純情乙女だな…)
 椿姫の反応がいちいちおおげさかつ乙女で、見ていて飽きない。
 「でも、確実にうわさになると思うんだが…。
 普通、男女がいつも一緒にいる理由って限られてくるじゃない?」
 「それもそうか…。うーん…」
 椿姫は治明の言葉に考え込んでしまう。
 どうやら、処女バレを防ぐために治明を監視することはやめるつもりはないらしい。
 (かわいいけど、めんどくさい女の子だこと…)
 内心でこっそり嘆息した治明は、代替案を出してみることにする。
 「じゃ、形だけでも付き合ってるってことにするのはどう?」
 「ええ…?あんたと恋人同士ってことにするの?うーん…」
 椿姫はまた考え込む。
 治明のことを嫌っているわけではないらしい。
 単純に恥ずかしいのだろう。
 なにせ、セックスどころかキスや恋愛の経験さえないのだ。
 「口を滑らせないように俺を監視するなら、それがベストじゃね?」
 「そうか…。そうだね…」
 椿姫は腹を括ったらしい。
 とにかく処女バレだけは絶対に防がなければならない。
 そのためには、周囲から治明と付き合っていると思われるくらいは必要経費。
 そう割切ったようだった。
 「だけど…勘違いしないでよ?
 あくまで付き合ってるふりだかんね。
 調子に乗って変なことしようとしたら、ぬっ殺すからね」
 (ツンデレかよ…)
 ツンツンしながらもまんざらでも無さそうな椿姫の様子ににやけそうになるのを、治明はなんとかこらえる。
 「わかってるってば。
 じゃ、明日から表向き俺たちはお付き合いしてるってことで」
 「うん、あくまで表向きだけどね」
 “表向き”を強調する椿姫の顔は、まだ少し赤い。
 「よろしく、高宮さん」
 「椿姫だよ。あたしら、付き合ってることになってんだし。
 よろしくね、治明」
 そんな会話を交わす2人は、自然と笑顔になっていた。

 「ねえ、一つだけ教えてくんない?」
 「え、なにかな?」
 別れ際、椿姫が改まって聞いてくる。
 「あんた、DT?」
 「それは…。残念ながらDTですけど…」
 答えにくいことを聞かれ、治明は歯切れ悪く答える。
 「でも、なんでそこが気になるの?」
 「いや、あんたがあたしが処女だって知ってるのに、あたしがあんたがDTか知らないのって不公平じゃん」
 そう言った椿姫の表情は、どことなく安心したように見えた。
 (まあ、なんだかわからないが、それで満足ならいいか)
 治明はそんなことを思う。

 何はともあれ、椿姫と治明の“付き合ってるふり”生活が幕を上げるのだった。

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