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第三章 豪商の跡取りは競技も恋も負けられない
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とある晴れた日。豪商バーミンガム家の広間。
「えいっ!しゅーとっ!」
小さなストライカーがよちよちと、おもちゃの鞠をドリブルする。わりと様になっていてうまい。狙いを定めて蹴る。2歳になったばかりのアイザック・バーミンガムだ。
「しまった!」
キーパーを務める父親のエドワードが、鞠を取りこぼす。もちろんわざとだが。その演技力もあってなかなかに劇的なゴールに見える。
「ごーるっ!ごーるっ!」
アイザックの腹違い(?)で3歳の姉、グロリアがかわいらしい声でアナウンスする。
「やったーっ!ごーる、ごーるだよっ!」
2歳の天才ストライカーが、両手を挙げて勝利のポーズをする。父であるエドワードや義母のエリザベスは言うに及ばず、執事やメイドたちも笑顔で拍手をする。その微笑ましく愛らしい姿に。
髪の毛が伸びて歯が生えると、母親であるエドワードにそっくりになっていった。焦げ茶髪藍色の瞳も目鼻立ちも、姉のグロリアによく似ている。一見して半分しか血のつながりがないとわからないほどに。
「あなた、アイザックは本当にサッカーが好きですわね」
「ああ。この間試合を見に行って以来すっかり鞠を蹴るのがお気に入りだな」
(小さい子は飽きるのも早いけど、アイザックはそうでもないか……)
エドワードは思う。
姉であるグロリアは、年相応に熱中しやすく飽きっぽい。おもちゃもダンスもごっこ遊びも割とすぐにマンネリ化する。そして、次の好奇心の対象を探す。
一方のアイザックは、飽きるということがほとんどない。ついこの間までは、買い与えられたぬいぐるみをいつも大事に持っていた。絵本を読んであげると、毎日でも同じお話しを聞きたがる。そして、今度はサッカーにハマっている。かれこれ3ヶ月。
「おとーしゃん。もういっかい、もういっかいやるよ!」
まだ遊び足りない様子の2歳児が、父親似キーパーの役目を要求してくる。
「アイザック。休憩をしないとだめだろう?試合でも休憩は大事なんだからね」
エドワードは真剣な表情で注意する。
子どもは走り回ってなんぼだが、休息は必要だ。
「う……うん。きゅうけいする……」
アイザックは渋々同意する。まだ走り回っていたいが、試合でも大事なことと言われては仕方がない。
(かわいいな。本当はもっと鞠を蹴りたいのが見え見えで……)
もっと遊びたいけど仕方ない、と顔に書いてあるのがなんとも愛らしい。
「さあアイザック。休憩の間にお手洗いに行きましょうね」
「はい。おかーしゃん」
エリザベスが、猶子である2歳児の手を引いてトイレへと向かう。ちょうどトイレトレーニングの最中だ。アイザックは特に跳んだり跳ねたりが好きだから、トイレを教えるのは早いに超したことはない。
(わだかまりあるだろうけど、過ぎた嫁だな。感謝しかない)
エドワードは胸の内でエリザベスに礼を述べる。
愛人である里実との子を、実子と分け隔てなく愛してくれている。できた嫁を持てて幸せこの上ない。まあ、里実がそれだけいい男であり、エリザベスも惚れ込んでいる証左ではあるのだが。
「おとーしゃん……さっかーしよ……。すう……すう……」
しばらくして、アイザックは疲れてお昼寝に入る。夢の中でもサッカーをしたがっているようだ。天使のような寝顔とサッカー馬鹿ぶりに、みなが笑顔になった。
「えいっ!しゅーとっ!」
小さなストライカーがよちよちと、おもちゃの鞠をドリブルする。わりと様になっていてうまい。狙いを定めて蹴る。2歳になったばかりのアイザック・バーミンガムだ。
「しまった!」
キーパーを務める父親のエドワードが、鞠を取りこぼす。もちろんわざとだが。その演技力もあってなかなかに劇的なゴールに見える。
「ごーるっ!ごーるっ!」
アイザックの腹違い(?)で3歳の姉、グロリアがかわいらしい声でアナウンスする。
「やったーっ!ごーる、ごーるだよっ!」
2歳の天才ストライカーが、両手を挙げて勝利のポーズをする。父であるエドワードや義母のエリザベスは言うに及ばず、執事やメイドたちも笑顔で拍手をする。その微笑ましく愛らしい姿に。
髪の毛が伸びて歯が生えると、母親であるエドワードにそっくりになっていった。焦げ茶髪藍色の瞳も目鼻立ちも、姉のグロリアによく似ている。一見して半分しか血のつながりがないとわからないほどに。
「あなた、アイザックは本当にサッカーが好きですわね」
「ああ。この間試合を見に行って以来すっかり鞠を蹴るのがお気に入りだな」
(小さい子は飽きるのも早いけど、アイザックはそうでもないか……)
エドワードは思う。
姉であるグロリアは、年相応に熱中しやすく飽きっぽい。おもちゃもダンスもごっこ遊びも割とすぐにマンネリ化する。そして、次の好奇心の対象を探す。
一方のアイザックは、飽きるということがほとんどない。ついこの間までは、買い与えられたぬいぐるみをいつも大事に持っていた。絵本を読んであげると、毎日でも同じお話しを聞きたがる。そして、今度はサッカーにハマっている。かれこれ3ヶ月。
「おとーしゃん。もういっかい、もういっかいやるよ!」
まだ遊び足りない様子の2歳児が、父親似キーパーの役目を要求してくる。
「アイザック。休憩をしないとだめだろう?試合でも休憩は大事なんだからね」
エドワードは真剣な表情で注意する。
子どもは走り回ってなんぼだが、休息は必要だ。
「う……うん。きゅうけいする……」
アイザックは渋々同意する。まだ走り回っていたいが、試合でも大事なことと言われては仕方がない。
(かわいいな。本当はもっと鞠を蹴りたいのが見え見えで……)
もっと遊びたいけど仕方ない、と顔に書いてあるのがなんとも愛らしい。
「さあアイザック。休憩の間にお手洗いに行きましょうね」
「はい。おかーしゃん」
エリザベスが、猶子である2歳児の手を引いてトイレへと向かう。ちょうどトイレトレーニングの最中だ。アイザックは特に跳んだり跳ねたりが好きだから、トイレを教えるのは早いに超したことはない。
(わだかまりあるだろうけど、過ぎた嫁だな。感謝しかない)
エドワードは胸の内でエリザベスに礼を述べる。
愛人である里実との子を、実子と分け隔てなく愛してくれている。できた嫁を持てて幸せこの上ない。まあ、里実がそれだけいい男であり、エリザベスも惚れ込んでいる証左ではあるのだが。
「おとーしゃん……さっかーしよ……。すう……すう……」
しばらくして、アイザックは疲れてお昼寝に入る。夢の中でもサッカーをしたがっているようだ。天使のような寝顔とサッカー馬鹿ぶりに、みなが笑顔になった。
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