詩《うた》をきかせて

生永祥

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★第27話 夜の鮫

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都会の片隅で
空き缶を蹴り上げた
苛立つ幼さを
吹き飛ばすように

この街はどこかが
捩れたユートピア
蠢く欲望が
バランスを欠いている

君のいとおしく
狂おしく
澄み切った声が
胸の中で弾け出す

じわじわと滲んでいく
ネオンをくぐり抜け
グングンと人波を泳ぐ

なかなか呼吸など
出来ないこの街で
君の声を見つけた

無機質なプライドが
全てじゃないんだと
諭して笑っている

眠らないこの気持ち
抱きしめて進むんだ

僕は今、夜の鮫



あれこれ指示を出す
コンピューターのような
コマンドがあるのなら
確かだと言えるの?

この街は何だか
色褪せたユートピア
歪んだ愛憎が
アブナイと呼んでいる

君の美しく
やるせなく
凛とした声が
胸の奥底で響いている

じわじわと滲んでいく
視界を掻き消して
夜景と君を眺めている

全然呼吸など
出来ないほど
強く
君の身体を抱いた

無機質な世界でも
君が居てくれるなら
どこまでも進めると

眠らないこの気持ち
死ぬまで続くんだ

僕は今、夜の鮫



――『夜の鮫・天野柚木也』
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