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チキンソテー、レモンソース添え
チキンソテー、レモンソース添え2
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「今夜の分は料理部屋に持っていったから」
エドは一瞥をくれただけで脚立の上で肉のロープを結ぶ続きをしていた。エドを看病した時以来の二人きりの空間なのに、全然動じないらしい。
「あり……がと」
キュッと縛り終えたロープを確かめるため、肉を揺らしてみてからエドは脚立から下りてきた。
「んじゃ、暖炉やってくる」
「あ!」
思わず声を上げたが、実は用もないし、呼び止める理由などない。でも、話す口実を探してしてエプロンを無意識に捻っていた。
「あの……そう! 体調はどう?」
「ああ、寝込んで衰えた筋肉も戻りつつある」
マズい、もう次の話題を探さなければならない。焦ってもう一度エプロンを捻っていた。
「エプロン切れるぞ」
エドに指摘されて捻っていた箇所を慌てて伸ばす。そんなアリシャの横でエドは脚立を片付けていた。
「アリシャさ」
「うん」
壁に脚立を立て掛けるとアリシャの近くまでやってきて立ち止まる。距離があれば見上げることなく話せるのに、今は近くて自然と顎が上がっていた。
「ボリスにあんまり──」
言いながらアリシャの顎を親指で撫でる。
「触らせんなよな」
顎を擦られる感触に硬直しながらも「ヤキモチ?」などと、ちょっと挑発したのが悪かった。グッとそのまま顎を指で固定されて上げられると、エドの美しい瞳がアリシャを見下ろしていた。
(お、怒ってる)
アリシャが顔を背けようとすると、もうエドの唇が押し当てられていてアリシャは目を見開いた。
「こっちは我慢してやってるのに、挑発すんな」
エドは直ぐに身体を離して、怒った口調で言い放つ。
「我慢……し、しなくてもいいのに」
荒々しくてもエドからキスされるのは嫌ではなかった。むしろ待ち望んでいたことだった。でもエドは盛大なため息を吐いて髪をくしゃくしゃに握った。
「いいか、防御の主様。お前が妊娠したらどうなるかわかるか? その力は子供へ移行するんだぞ。なんの準備もなくやりたいからやるって訳にはいかないんだよ。それじゃなくても子供を育てるのは大変だろ? 多くの人にサポートして貰わなきゃなんない。俺たちの子供として生まれて来ても、その子供はとてつもない重荷を背負っていくことになる。多くの人間がその子をサポートし導かないと世界が歪になっちまうんだよ。今のストルカみたいにな」
アリシャは口を半開きにして話を聞いていた。ただ好きで一緒になりたいと単純に考えていたアリシャと違い、エドはこれほど多くの事を考えていたとは驚きだった。
「おら、あほっ面。理解したか?」
おずおずと頷いたアリシャにエドは今度は吐息に近いため息を吐き出した。
「女はどうかしらないけど、俺は一旦そうなったら止められる自信がない。だから挑発すんな」
返事はと問われてアリシャは思わず「感動した」と答えていた。
「あ? お前何言ってんの?」
「だって……そこまで考えてくれているなんて思ってなくて」
エドは天を仰いでから目を閉じて呼吸を整えてから口を開いた。
「お前もちゃんと考えろよ。どんだけ凄いもの抱え込んでるのか、しっかり考えろ」
それは確かにそうだとしても、アリシャはエドがしっかり先を見据えていることに深く感動していた。もしかするとエドが生計を立てられるようになってからと言ったのも、周りを納得させるためだったのかもしれないと思い至ると、また心が震えるのだった。
現にウィンはまだ一人前ではないにも関わらず結婚している。生計云々の話は絶対ではないのだ。
「うん。ごめん」
項垂れるアリシャの腕を掴むとエドは自分の方に引っ張り抱き締めて「触れたくなんだよ、こうやって」と力を込めた。
「ボリスがお前に本気なら、ボリスだってそうだろ? 触れて、更に触れて、自分のものにしたくなる。だから嫌なんだよ」
アリシャを解放すると「ボリスから無理矢理なにかされそうになったら防御を使ってくれ。あんまり簡単に使うのはどうかと思うが……」と、顔を顰めてから、アリシャの額に軽く唇を押し当てると背を向けた。
「俺もこんな密室で二人きりだとヤバイしな。じゃ、またな」
エドの言葉はアリシャをドキドキさせた。少し興奮を抑えてから出て行こうと思い食料庫の壁に背を預け上を見たら、薄暗い中に光るものが二つ。
「あ……キティ。居たのね。見てたの?」
猫と言えども抱き合っていたのを見られたのは恥ずかしくて、アリシャは食料庫から出て行くことにした。まだ、心臓はバクバクしていたし顔は赤いかもしれないが居たたまれなかった。
扉を押し開けると「おっと!」と、カゴを抱えて器用に避けたウィンの姿。
「あ、ごめんなさい」
「いや、難は逃れたよ。ごめん、丁度いい、扉を開けててくれないか?」
もちろん断る理由はないので扉を開けて、ウィンがカゴを食料庫に入れるのを待った。
「さっきさ、エドも居たろ?」
食料庫に横付けした荷車からレモンの入ったカゴを運び入れながらウィンが言う。見られていたことに恥ずかしさを感じてソワソワし、アリシャもドアを石で止めてカゴを運び入れ始めた。
「君らはやはりそういう仲なんだな」
「あー……私はエドが好きなの。でもまだ皆には──」
「黙っておく? いいよ、オーケー」
互いにすれ違いながら交わす会話は間延びする。その間、アリシャはずっと抱いていた疑問を今こそ聞いてみようと考えた。
から手で荷車に向かうウィンに「聞きたかったんだけど」と切り出した。
エドは一瞥をくれただけで脚立の上で肉のロープを結ぶ続きをしていた。エドを看病した時以来の二人きりの空間なのに、全然動じないらしい。
「あり……がと」
キュッと縛り終えたロープを確かめるため、肉を揺らしてみてからエドは脚立から下りてきた。
「んじゃ、暖炉やってくる」
「あ!」
思わず声を上げたが、実は用もないし、呼び止める理由などない。でも、話す口実を探してしてエプロンを無意識に捻っていた。
「あの……そう! 体調はどう?」
「ああ、寝込んで衰えた筋肉も戻りつつある」
マズい、もう次の話題を探さなければならない。焦ってもう一度エプロンを捻っていた。
「エプロン切れるぞ」
エドに指摘されて捻っていた箇所を慌てて伸ばす。そんなアリシャの横でエドは脚立を片付けていた。
「アリシャさ」
「うん」
壁に脚立を立て掛けるとアリシャの近くまでやってきて立ち止まる。距離があれば見上げることなく話せるのに、今は近くて自然と顎が上がっていた。
「ボリスにあんまり──」
言いながらアリシャの顎を親指で撫でる。
「触らせんなよな」
顎を擦られる感触に硬直しながらも「ヤキモチ?」などと、ちょっと挑発したのが悪かった。グッとそのまま顎を指で固定されて上げられると、エドの美しい瞳がアリシャを見下ろしていた。
(お、怒ってる)
アリシャが顔を背けようとすると、もうエドの唇が押し当てられていてアリシャは目を見開いた。
「こっちは我慢してやってるのに、挑発すんな」
エドは直ぐに身体を離して、怒った口調で言い放つ。
「我慢……し、しなくてもいいのに」
荒々しくてもエドからキスされるのは嫌ではなかった。むしろ待ち望んでいたことだった。でもエドは盛大なため息を吐いて髪をくしゃくしゃに握った。
「いいか、防御の主様。お前が妊娠したらどうなるかわかるか? その力は子供へ移行するんだぞ。なんの準備もなくやりたいからやるって訳にはいかないんだよ。それじゃなくても子供を育てるのは大変だろ? 多くの人にサポートして貰わなきゃなんない。俺たちの子供として生まれて来ても、その子供はとてつもない重荷を背負っていくことになる。多くの人間がその子をサポートし導かないと世界が歪になっちまうんだよ。今のストルカみたいにな」
アリシャは口を半開きにして話を聞いていた。ただ好きで一緒になりたいと単純に考えていたアリシャと違い、エドはこれほど多くの事を考えていたとは驚きだった。
「おら、あほっ面。理解したか?」
おずおずと頷いたアリシャにエドは今度は吐息に近いため息を吐き出した。
「女はどうかしらないけど、俺は一旦そうなったら止められる自信がない。だから挑発すんな」
返事はと問われてアリシャは思わず「感動した」と答えていた。
「あ? お前何言ってんの?」
「だって……そこまで考えてくれているなんて思ってなくて」
エドは天を仰いでから目を閉じて呼吸を整えてから口を開いた。
「お前もちゃんと考えろよ。どんだけ凄いもの抱え込んでるのか、しっかり考えろ」
それは確かにそうだとしても、アリシャはエドがしっかり先を見据えていることに深く感動していた。もしかするとエドが生計を立てられるようになってからと言ったのも、周りを納得させるためだったのかもしれないと思い至ると、また心が震えるのだった。
現にウィンはまだ一人前ではないにも関わらず結婚している。生計云々の話は絶対ではないのだ。
「うん。ごめん」
項垂れるアリシャの腕を掴むとエドは自分の方に引っ張り抱き締めて「触れたくなんだよ、こうやって」と力を込めた。
「ボリスがお前に本気なら、ボリスだってそうだろ? 触れて、更に触れて、自分のものにしたくなる。だから嫌なんだよ」
アリシャを解放すると「ボリスから無理矢理なにかされそうになったら防御を使ってくれ。あんまり簡単に使うのはどうかと思うが……」と、顔を顰めてから、アリシャの額に軽く唇を押し当てると背を向けた。
「俺もこんな密室で二人きりだとヤバイしな。じゃ、またな」
エドの言葉はアリシャをドキドキさせた。少し興奮を抑えてから出て行こうと思い食料庫の壁に背を預け上を見たら、薄暗い中に光るものが二つ。
「あ……キティ。居たのね。見てたの?」
猫と言えども抱き合っていたのを見られたのは恥ずかしくて、アリシャは食料庫から出て行くことにした。まだ、心臓はバクバクしていたし顔は赤いかもしれないが居たたまれなかった。
扉を押し開けると「おっと!」と、カゴを抱えて器用に避けたウィンの姿。
「あ、ごめんなさい」
「いや、難は逃れたよ。ごめん、丁度いい、扉を開けててくれないか?」
もちろん断る理由はないので扉を開けて、ウィンがカゴを食料庫に入れるのを待った。
「さっきさ、エドも居たろ?」
食料庫に横付けした荷車からレモンの入ったカゴを運び入れながらウィンが言う。見られていたことに恥ずかしさを感じてソワソワし、アリシャもドアを石で止めてカゴを運び入れ始めた。
「君らはやはりそういう仲なんだな」
「あー……私はエドが好きなの。でもまだ皆には──」
「黙っておく? いいよ、オーケー」
互いにすれ違いながら交わす会話は間延びする。その間、アリシャはずっと抱いていた疑問を今こそ聞いてみようと考えた。
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