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そら豆のフリッターエビ塩掛け
そら豆のフリッターエビ塩掛け6
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いざ調理する段になると、リアナは畑の用事が出来てしまいアリシャは一人になってしまった。
そら豆の入っていたカゴには毎朝とれる卵や牛乳も入れられている。カゴから卵を出して割り、泡立てているといつものようにエドがやって来た。小腹が空くと直ぐにやってくるのだ。
「アリシャなんか食う物」
戸口で騒ぐエドにココはすかさず駆け寄っていく。
「お金を払ってくれなきゃあげないわよ」
意地悪で言っているわけではない。エドにだけ贔屓するのは皆にも申し訳ない。エドだって狩りで金を得ているとレゼナが話していたから、払えないことはないはずなのだ。
「お前のへっぽこぶりに付き合ってやってるのは誰かな?」
アリシャの隣に来て顔を覗き込むエドに後ずさりながら、アリシャはエドを押しやる。
「近いってばー」
エドの顔が整っていることはリアナじゃなくても認めるところだ。意地悪しなければ、アリシャだって……エドはカッコいいような気がするのだから。
「近づかれたくないなら防御を使えよ。ほら、ほら!」
エドの薄茶色の美しい瞳は琥珀みたいだ。とにかく近いとその瞳に吸い込まれてしまいそうになる。
「あー、もう! それでエドが怪我したら大変でしょう!」
「自分の周りに防御使うくらい寝てても出来なきゃ駄目だろ」
更にググっと距離をつめたエドにアリシャの心臓は飛び出しそうだった。
「真っ赤」
「だって!」
「リンゴか? お前がリンゴだったら直ぐに熟していいな」
パッと身を翻して、足元にいたココを抱き上げると額にキスをした。ココはそれはもう喜んで尻尾が切れてしまうのではないかというほどブンブン振り回してエドにキスを返していた。
「あーわかった、わかった。お前は可愛いなぁ」
夢中になってエドの口を舐めるココを下ろすと笑いながら口を拭った。そして部屋から出ていこうとするので、つい「エド!」と呼びかける。
「お腹、お腹空いたんでしょう? この前リリーさんの所に卸した菓子なら少し残ってる」
なぜエドに対して甘いのかアリシャ自身もわからないが、つい呼び止めて菓子をあげてしまうのだ。自分でもこの行動にモヤモヤとしながら荒々しく壺を開けて中身の菓子を握りエドに突き出した。
「どうも。ご褒美欲しい?」
受け取ったエドが変なことを言うので、アリシャは目を泳がせていた。そんなアリシャの頭の天辺に軽く唇をあて「食べ頃」とだけ呟いて出ていった。
「リ、リンゴじゃないもん!」
やっと反応出来た頃にはエドの姿形はないのだった。
心臓の音だけ響いていて何がなんだかわからなかったが、ギクシャク動き出してとにかく食事を作っていく。
その日はナジ一家の歓迎会として、急遽リリーの店から買えるだけのりんご酒を買ってきて、みんなにも振る舞われた。これはもちろんレオやドクの金が使われたが、少しだけ余裕が出来てきたアリシャも資金を渡すことが出来た。それは一人前の大人になれた気がして誇らしい気持ちになる出来事だった。
「この粉……」
りんご酒を手にナジはそら豆のフリッターにかけられたエビの粉に興味を示していた。
「エビの殻をとっておいて粉にしてかけたんですよ」
そう答えたのはリアナで、最後に慌てて「と、アリシャが話してました」と付け足していた。
「アリシャが来てからは毎日毎日食事が楽しくて仕方ないわ」
レゼナの言葉にナジも大いに賛成し、そら豆のフリッターをパクパクと口に運んでいく。
「リリーさんの店で買っていたときから毎日こんなもんが食えたらさぞ幸せだろうって思ってたんだよ。なぁ、倅たち」
ナジの息子たちは二人共頷いた。
「いやぁ、ホント嫁を亡くして俺がずっと作っていたからな。こいつらは美味いもんを食ったことがなかった。それが、あのベリーパイを食っちまったろ? あまりの衝撃に二人共固まっちまって暫く何も言わなかったんですぜ」
だって本当に美味かったんだもんと呟くユーリに、歳の近いリアナが笑いながらわかるわと話しかけていた。
「君が作っているなんて驚きだよ」
ルクに話しかけられてアリシャは横に座るルクに顔を向けた。それにしてもドクとウィンもそっくりだと思っていたが、ナジとルク親子を見ているとドク親子は思っていたほど似ていないように感じてしまう。それほどナジ達はナジの血が濃いように思う。
「私もよ」
余りに似ているからついつい驚きだよと言う言葉に便乗してしまったが、なんだか話の流れ的におかしくなったので笑みを押し殺して言い直す。
「ごめんなさい。私、あなた達が余りに似てるものだから気になってしまって。驚きだよってあなたの言葉についつい乗ってしまったの。驚くほど似てるから」
「ああ……よく言われるよ。お父さんを知ってる人は俺をナジナジって呼ぶんだ」
「ナジナジ? じゃあユーリは──」
「ナジナジナジさ」
二人は揃って吹き出して笑った。一通り笑うとそばかすを散らした頬を引き締めてルクは笑いを収めようとした。そんな動作がなんだか可笑しくてアリシャは全く笑いが引かなくて困った。
「アリシャはよく笑うね。女の子はみんなそんな感じ?」
「ん? それはわからないけど、なぜ?」
ルクは器によそってあったベリージャム入りの肉を口に入れて「マジで美味いよ」と言ってから答えた。
そら豆の入っていたカゴには毎朝とれる卵や牛乳も入れられている。カゴから卵を出して割り、泡立てているといつものようにエドがやって来た。小腹が空くと直ぐにやってくるのだ。
「アリシャなんか食う物」
戸口で騒ぐエドにココはすかさず駆け寄っていく。
「お金を払ってくれなきゃあげないわよ」
意地悪で言っているわけではない。エドにだけ贔屓するのは皆にも申し訳ない。エドだって狩りで金を得ているとレゼナが話していたから、払えないことはないはずなのだ。
「お前のへっぽこぶりに付き合ってやってるのは誰かな?」
アリシャの隣に来て顔を覗き込むエドに後ずさりながら、アリシャはエドを押しやる。
「近いってばー」
エドの顔が整っていることはリアナじゃなくても認めるところだ。意地悪しなければ、アリシャだって……エドはカッコいいような気がするのだから。
「近づかれたくないなら防御を使えよ。ほら、ほら!」
エドの薄茶色の美しい瞳は琥珀みたいだ。とにかく近いとその瞳に吸い込まれてしまいそうになる。
「あー、もう! それでエドが怪我したら大変でしょう!」
「自分の周りに防御使うくらい寝てても出来なきゃ駄目だろ」
更にググっと距離をつめたエドにアリシャの心臓は飛び出しそうだった。
「真っ赤」
「だって!」
「リンゴか? お前がリンゴだったら直ぐに熟していいな」
パッと身を翻して、足元にいたココを抱き上げると額にキスをした。ココはそれはもう喜んで尻尾が切れてしまうのではないかというほどブンブン振り回してエドにキスを返していた。
「あーわかった、わかった。お前は可愛いなぁ」
夢中になってエドの口を舐めるココを下ろすと笑いながら口を拭った。そして部屋から出ていこうとするので、つい「エド!」と呼びかける。
「お腹、お腹空いたんでしょう? この前リリーさんの所に卸した菓子なら少し残ってる」
なぜエドに対して甘いのかアリシャ自身もわからないが、つい呼び止めて菓子をあげてしまうのだ。自分でもこの行動にモヤモヤとしながら荒々しく壺を開けて中身の菓子を握りエドに突き出した。
「どうも。ご褒美欲しい?」
受け取ったエドが変なことを言うので、アリシャは目を泳がせていた。そんなアリシャの頭の天辺に軽く唇をあて「食べ頃」とだけ呟いて出ていった。
「リ、リンゴじゃないもん!」
やっと反応出来た頃にはエドの姿形はないのだった。
心臓の音だけ響いていて何がなんだかわからなかったが、ギクシャク動き出してとにかく食事を作っていく。
その日はナジ一家の歓迎会として、急遽リリーの店から買えるだけのりんご酒を買ってきて、みんなにも振る舞われた。これはもちろんレオやドクの金が使われたが、少しだけ余裕が出来てきたアリシャも資金を渡すことが出来た。それは一人前の大人になれた気がして誇らしい気持ちになる出来事だった。
「この粉……」
りんご酒を手にナジはそら豆のフリッターにかけられたエビの粉に興味を示していた。
「エビの殻をとっておいて粉にしてかけたんですよ」
そう答えたのはリアナで、最後に慌てて「と、アリシャが話してました」と付け足していた。
「アリシャが来てからは毎日毎日食事が楽しくて仕方ないわ」
レゼナの言葉にナジも大いに賛成し、そら豆のフリッターをパクパクと口に運んでいく。
「リリーさんの店で買っていたときから毎日こんなもんが食えたらさぞ幸せだろうって思ってたんだよ。なぁ、倅たち」
ナジの息子たちは二人共頷いた。
「いやぁ、ホント嫁を亡くして俺がずっと作っていたからな。こいつらは美味いもんを食ったことがなかった。それが、あのベリーパイを食っちまったろ? あまりの衝撃に二人共固まっちまって暫く何も言わなかったんですぜ」
だって本当に美味かったんだもんと呟くユーリに、歳の近いリアナが笑いながらわかるわと話しかけていた。
「君が作っているなんて驚きだよ」
ルクに話しかけられてアリシャは横に座るルクに顔を向けた。それにしてもドクとウィンもそっくりだと思っていたが、ナジとルク親子を見ているとドク親子は思っていたほど似ていないように感じてしまう。それほどナジ達はナジの血が濃いように思う。
「私もよ」
余りに似ているからついつい驚きだよと言う言葉に便乗してしまったが、なんだか話の流れ的におかしくなったので笑みを押し殺して言い直す。
「ごめんなさい。私、あなた達が余りに似てるものだから気になってしまって。驚きだよってあなたの言葉についつい乗ってしまったの。驚くほど似てるから」
「ああ……よく言われるよ。お父さんを知ってる人は俺をナジナジって呼ぶんだ」
「ナジナジ? じゃあユーリは──」
「ナジナジナジさ」
二人は揃って吹き出して笑った。一通り笑うとそばかすを散らした頬を引き締めてルクは笑いを収めようとした。そんな動作がなんだか可笑しくてアリシャは全く笑いが引かなくて困った。
「アリシャはよく笑うね。女の子はみんなそんな感じ?」
「ん? それはわからないけど、なぜ?」
ルクは器によそってあったベリージャム入りの肉を口に入れて「マジで美味いよ」と言ってから答えた。
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