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肉のパン包みフリッターガーリック風味
肉のパン包みフリッターガーリック風味13
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「そうそう、アリシャが馬のスリを貸してくれることになったんだ」
ウィンは菓子を噛りながら切り出した。アリシャは同意を込めて一つ首を縦に振った。
「そりゃいいなぁ。力も速度もあるから……ああ、甜菜を作ってみるか。あれは深く掘らなきゃならんからやってなかったが、馬の力なら作れるぞ」
そしたらこれも食い放題だと、ドクも菓子を掲げてからパクリ。唸ってから「ウマイ!」と叫ぶから、アリシャは笑みを抑え切れず口を両手で覆った。
「そうすると、春の間はウィンとレゼナは農業。エドは大工仕事。ドクはその二つを兼業。私も薬草つみと大工仕事を兼業しよう。アリシャは料理と雑用を頼む。水汲みとか洗濯とか。レゼナに少し手伝って貰うといい」
「レオ様の薬作りがそれじゃあ出来んでしょう?」
ドクは菓子を摘みながらりんご酒を飲む。
「夜にやるさ。薬草を煮出したりするのに火を使うし、寒さ避けに丁度いいからな。今夜も思いの外冷える。アリシャの掛け布団が作れてよかった」
手を伸ばしてココを撫でていたレゼナがそうだわと顔を上げた。
「レオ様、アリシャの家は終わりましたか?」
「ああ。扉にも鍵をつけておいた。合間をみて長持も作らなきゃな」
「それは俺たちが作りますよ」
「なんだか……申し訳ないです。何から何まで」
皆が惜しみなく提供してくれるものは、金に換算したら目玉が飛び出る額になる。アリシャにはそんな金額を用意することも、代わりに提供できるものもなかった。
「アリシャ、君は既に私達のコミュニティの一員なのだ。家族だよ。だから、家族の為に美味しくて栄養価の高い物を作ってくれ。それが君の役割なのだ。しばらくは損得なしでやっていこう。そのうち人が増えた時にでも考えればいい」
レオの言葉にドクは頷き、ウィンとレゼナは微笑んだ。エドは「量も考えてくれよな」と、ここでも一言多い。
「たくさん美味しいものを作ります!」
「そうよ。余ったら隣の村に売りに行けばいいのよ。男やもめの家もあるし、パンや菓子は売れるわよ」
皆の気持ちが嬉しかった。特にレオの言葉は家族を失ったアリシャにこれ以上のプレゼントだった。緩みがちの涙腺がまたヒクヒクしてアリシャは天を仰いだ。
(新しい……家族。新しい役割。私は神に生かされたのだから、亡くなった人達の分まで頑張らなきゃ)
「泣くのか? アリシャ」
エドが茶化すからキュッと目元に力を入れてから顔をエドに向ける。
「泣かないわよ! あなたこそ、私の料理が美味し過ぎて泣かないようにね」
穏やか笑い声が起き、アリシャもなんだか愉快になって皆と笑っていた。
足元で眠気に堪えきれなくなってきたココがコクンコクンと舟を漕ぎ始めていた。
ウィンは菓子を噛りながら切り出した。アリシャは同意を込めて一つ首を縦に振った。
「そりゃいいなぁ。力も速度もあるから……ああ、甜菜を作ってみるか。あれは深く掘らなきゃならんからやってなかったが、馬の力なら作れるぞ」
そしたらこれも食い放題だと、ドクも菓子を掲げてからパクリ。唸ってから「ウマイ!」と叫ぶから、アリシャは笑みを抑え切れず口を両手で覆った。
「そうすると、春の間はウィンとレゼナは農業。エドは大工仕事。ドクはその二つを兼業。私も薬草つみと大工仕事を兼業しよう。アリシャは料理と雑用を頼む。水汲みとか洗濯とか。レゼナに少し手伝って貰うといい」
「レオ様の薬作りがそれじゃあ出来んでしょう?」
ドクは菓子を摘みながらりんご酒を飲む。
「夜にやるさ。薬草を煮出したりするのに火を使うし、寒さ避けに丁度いいからな。今夜も思いの外冷える。アリシャの掛け布団が作れてよかった」
手を伸ばしてココを撫でていたレゼナがそうだわと顔を上げた。
「レオ様、アリシャの家は終わりましたか?」
「ああ。扉にも鍵をつけておいた。合間をみて長持も作らなきゃな」
「それは俺たちが作りますよ」
「なんだか……申し訳ないです。何から何まで」
皆が惜しみなく提供してくれるものは、金に換算したら目玉が飛び出る額になる。アリシャにはそんな金額を用意することも、代わりに提供できるものもなかった。
「アリシャ、君は既に私達のコミュニティの一員なのだ。家族だよ。だから、家族の為に美味しくて栄養価の高い物を作ってくれ。それが君の役割なのだ。しばらくは損得なしでやっていこう。そのうち人が増えた時にでも考えればいい」
レオの言葉にドクは頷き、ウィンとレゼナは微笑んだ。エドは「量も考えてくれよな」と、ここでも一言多い。
「たくさん美味しいものを作ります!」
「そうよ。余ったら隣の村に売りに行けばいいのよ。男やもめの家もあるし、パンや菓子は売れるわよ」
皆の気持ちが嬉しかった。特にレオの言葉は家族を失ったアリシャにこれ以上のプレゼントだった。緩みがちの涙腺がまたヒクヒクしてアリシャは天を仰いだ。
(新しい……家族。新しい役割。私は神に生かされたのだから、亡くなった人達の分まで頑張らなきゃ)
「泣くのか? アリシャ」
エドが茶化すからキュッと目元に力を入れてから顔をエドに向ける。
「泣かないわよ! あなたこそ、私の料理が美味し過ぎて泣かないようにね」
穏やか笑い声が起き、アリシャもなんだか愉快になって皆と笑っていた。
足元で眠気に堪えきれなくなってきたココがコクンコクンと舟を漕ぎ始めていた。
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