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第九話 『Challenge to change』
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しおりを挟むで、話は現在に戻る。
一度自分から言い出したことだから後には引けない俺は、浴槽の縁に頼斗を座らせ、自分は湯船に浸かったまま、勃ち上がった頼斗に手を添えながら、おずおずと口に咥えてみると、歯を立ててしまわないように気をつけながら、ゆっくり頼斗を呑み込んでいった。
俺が初めて口でシてもらったのは高校の入学式があった日。相手は頼斗で、俺は初めての体験に〈口でシてもらうのって、こんなに気持ちいいものなんだ……〉と、感動に近い感情を覚えたほどだった。
あれ以来、頼斗には何度が口でシてもらうことがあったし、雪音も前戯の一つとして俺を口で気持ち良くしてくれることもあった。
だから、サれる側としての経験はそれなりに積んでいるけれど、自分がスる側に回るのは今回が初めてである。
雪音や頼斗にはシてもらっておいて、自分がスる側に回ることを全く考えていなかったから、上手くできる自信は全然無かった。
でも、自分がどんな風にしてもらうと気持ちがいいのかはわかるから、二人が俺にしてくれるように、俺も頼斗のナニを一生懸命口で扱いてあげてみた。
最初は恐る恐るといった感じだったし、なかなか上手くできているようには思えなかったんだけど、段々コツが掴めてくると、それなりにちゃんとできているような気分になってきた。
俺の頭がテンポ良く上下し始めると、俺の口の中の頼斗もビクビクッて震えたりするし、先端の窪みからは蜜が零れてきて、ちゃんと気持ち良くなってくれていることがわかって嬉しかった。
「んっ……んっ……んんっ……」
口いっぱいに頼斗を頬張って舐めているうちに、俺もどんどん気持ちが昂ってきた。
自分は一生する事がないだろうと思っていたフェラチオを、今自分がしている事にも興奮してしまうみたいだった。
「んっ……頼斗っ……気持ちい……?」
口の中でピクピクしている頼斗が何だか可愛くて、俺は頼斗を見上げながら聞いてみる。
「んっ……ああ……すげー気持ちいい……」
頼斗は目を細めながらそう答えてくれて、俺の髪を優しく撫でてきてくれた。
その表情や仕草が物凄く色っぽく見えちゃって、俺は自分のテンションが上がるのを感じた。
これがどういうテンションの高まりなのかはよくわからないけれど、自分には無理だと思っていたフェラチオも、いざやってみるとそんなに嫌じゃないことを知った。
多分、自分も雪音や頼斗にシてもらっている事だから、自分がスる側に回っても、違和感だったり嫌悪感というものが無いのだろう。
元々俺はエッチな事への順応性があるみたいだから、一度体験してしまうと、すぐに慣れてしまうところがあるようだし。
それにしても
(頼斗のって大きい……)
頼斗のナニをこんなに間近で見ることなんかないし、ましてや口に咥えたこともなかった俺は、俺の口の中をいっぱいに満たしてくる頼斗の大きさに、改めて驚いたりもする。
身長は俺と五センチしか変わらないのに。ナニのサイズは明らかに俺より大きくて、俺より一回り……いや、二回りくらい大きいよね。
特に、こうして完勃ち状態になった頼斗のナニは、本当に大きくて立派だと思う。
精通が早く、それなりに女性経験のある雪音のナニが大きいのは何となく納得がいくんだけれど、俺で童貞を卒業した頼斗のナニがこんなに大きいと
(俺と何が違うの?)
と思ってしまう。
まあ、俺も人前に晒せないほどに小さいというわけでもないけれど、大きいと自慢できるサイズでもない。ナニが大きくて立派な男って、やっぱり同じ男としては羨ましく感じるし、挿れられる側の人間としてはドキドキしちゃうものだよね。
「っ……にしても……まさか深雪に口でシてもらえるなんて思ってなかった……。一体どういう風の吹き回し?」
「んっ……内緒っ……」
これまでは常に受け身でしかなかった俺だから、頼斗にそう言われてしまうのも仕方がない。
俺が今回こういう行動に出たのは伊織君が原因の一つでもあるんだけれど、何もそれだけじゃないと思う。
伊織君からの厳しい指摘を受け、自分を変えようと思ったのは俺自身だ。だから、俺が今している事は、伊織君に言われたからやっている事でもないんだよね。
俺はさっき頼斗に後ろから抱き締められて
『深雪。大好き』
って言われた時、物凄く胸がときめいちゃったし、胸の中に湧き上がってくる感情を感じた。
その結果がこれなのだ。伊織君に出された課題はたまたま頭に浮かんだだけだし、単なるきっかけでしかなかったと思う。
俺が伊織君から受けたアドバイスや指摘の話は、いつか頼斗にも話そうと思っているけれど、今はまだどう言って説明していいのかがわからない。
だから、俺がちゃんと上手く説明できるようになるまでは、伊織君とした会話の内容も頼斗には黙っていようと思う。
俺の説明が不十分で
『伊織に言われたからシたのか』
って思われるのも嫌だし。
理由はちゃんと説明してあげられないけれど、俺が今、頼斗を気持ち良くしてあげたいと思っている気持ちに嘘は無い。
きっと、先日雪音を少しでも気持ち良くしてあげることができた俺は、自分が相手を気持ち良くしてあげることに喜びを覚えたんだと思う。
口だけでは刺激が足りないと思い、手も使って頼斗を追い詰めていくと、俺の口の中で頼斗がどんどん張り詰めていくのがわかった。
(イきそうなのかも……)
そう思うと、俄然やる気が出ていちゃうし
(何としてでも頼斗をイかせたいっ!)
という気持ちも湧いてきた。
情けない話だけど、俺はこれまで雪音や頼斗より後にイったことが無い。先日雪音としたセックスでは、あんなに頑張って腰を振ったのに、雪音をイかせるまでには至らなかった。
二人とほぼ同時にイくことなら何度もあったけれど、俺より先に二人がイったことは無い。
せっかく積極的になって、二人を気持ち良くしてあげたいって気持ちを持てるようになったんだ。俺だって自分より先に二人をイかせてみたい。そして、その手段としてフェラチオは一番効果的で、自分が優位に立てると思った。
現に、狭い浴槽の中で頼斗に口でシてあげている俺は、頼斗が手を出し辛い体勢を取っている。
これがベッドの上ならまた話は変わってくるのかもしれないけれど、浴槽の縁に腰を掛けた頼斗の手は、浴槽の中に身体を半分浸けている俺には届かないだろう。俺に触れるとしても、さっきみたいに俺の頭を撫でるくらいだ。
頼斗が俺に手を出せないということは、完全に俺のターン。俺だけが頼斗を気持ち良くしてあげられる状態なのだ。
「っ……深雪っ……そろそろヤバい……イきそうだ……っ」
「んんっ……んっ……」
頼斗の息が上がってきて、自分の身体を支えている両手が微かに震えていた。
腰も時々跳ねるような動きをして、本当にイきそうなんだとわかると、俺は更に口を窄め、根本から先端にかけて強く吸い上げるようにして頼斗を扱いた。
顎が疲れてきたから、今度は先端部分に吸い付いて、先っぽの小さな窪みを舌先で擦るように舐めたりしながら根元の方を手で擦ってあげると
「んっ……! それ……ヤバいかもっ……」
頼斗の顎が上がり、快感に耐える吐息を漏らした。
俺が二人に口でシてもらう時も、全体を口で扱かれるのも気持ちが良くて感じちゃうけど、先っぽを重点的に吸われる方が気持ち良くなっちゃうんだよね。
男性器の亀頭と呼ばれる部分は一番敏感なところでもあるから、根元の方を擦られながら先っぽを刺激されると、俺は腰が溶けちゃいそうなくらいに感じてしまう。
だから、イきそうになっている頼斗にも、先っぽの刺激を強めて扱いてあげると
「っ……深雪っ……イく……イってい……?」
頼斗の声が震えながら聞いてきた。
「んんっ……んっ……」
口が塞がっているから「いいよ」とは言えなかったけれど、「いいよ」と言う代わりに激しく頭を上下させ、頼斗を絶頂へと導いてあげた。
このままだと、頼斗は俺の口の中でイってしまうことになるけれど、それを回避する方法なんて俺は知らない。俺だって二人の口の中でイってしまうことは何度もあるから、口でシてあげるのはそういうものだと思っていた。
だから
「深雪っ……もういい……もう無理……放せっ……」
頼斗に「放せ」って言われた後も、頼斗を口に含んだままでいると
「んんっ……!」
口の中の頼斗がドクンッ、と大きく脈打って、次の瞬間には口の中が頼斗の出した精液でいっぱいになった。
「んんっ⁉」
その温かさと量に驚いた俺は、咄嗟のことに対応しきれず、そのまま頼斗の出した精液を全部呑み込んでしまったんだけど、初めて飲んだ精液は物凄く変な味がした。
「馬鹿……。だから放せって言ったんだ……」
「だ……だって……放すタイミングがわからなかったんだもん……」
うっかり飲んでしまった精液の味にしかめっ面をしてしまっていたのだろう。変な顔をしている俺に頼斗は手を伸ばしてきて、俺の頭をよしよしと撫でてくれた。
そして、ずり落ちるように浴槽の縁から湯船の中に戻ってくると、浴槽の中で四つん這いになっている俺の身体を起こして抱き締めてきた。
自分の胸に俺の頭を抱き寄せて、俺の頭を撫でている頼斗に、俺はまたしても胸がきゅんとした。
顔のすぐ下にある頼斗の胸の奥から、ドクドクと脈打つ頼斗の心臓の音が聞こえてくる。
「すげー気持ち良かったよ、深雪」
「ほんと?」
「ああ。だからイったんじゃん」
「そっか……」
雪音の時は上手くできなかったけれど、今回はちゃんと頼斗をイかせてあげることができた。その事にホッとすると同時に、何だか満たされるような気持になった俺は、俺を優しく抱き締めている頼斗に自分からも抱き付いた。
今、俺の気持ちを満たしてくれているこの感情が、俺が知らなかった恋愛感情ってやつなのかもしれない。
俺は今、頼斗に対して今までの好きとは違う、愛しさというものを感じていることを自覚した。
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