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Final Season
前途洋々! 無敵の二人♡(6)
しおりを挟む司の誕生日から年明けまではあっという間だった。
あっという間で、忙しくて――でも、充実した毎日だったと思う。
Five S初となるCROWNとの合同カウントダウンライブも大盛況で、俺達の不安とは裏腹に、物凄い盛り上がりを見せてくれた。
毎年カウントダウンライブは見る側だった俺達が、初めて見せる側に回った感動も大きかった。
一生懸命練習して、観客が楽しめるような企画もあれこれ考えた甲斐があって、俺達の考えたコーナーで盛り上がってくれるファンの姿を見るのは嬉しかった。
Five SやCROWNだけでなく、年内にデビューした俺達の後輩であるSeven Heavenの登場や、今度Zeusから新しくデビューするCROWNの弟分達のお披露目なんかもサプライズとして組み込んでいたんだけれど、そっちの反応もなかなか良くて、先輩としてはほっとした気分。
まあ、Seven Heavenや今度Zeusからデビューするグループのメンバーの中には、年齢的にカウントダウンライブには出演できない子もいたけれど――客席にはいた――、出演したメンバーは先輩と同じステージで堂々としたパフォーマンスを見せていたと思う。彼らのこれからが楽しみだと思った。
そして、年明け10秒前から出演者と観客全員でカウントダウンをした時は胸がドキドキして、1月1日の0時0分になった瞬間には、「今、新しい年が明けたんだな」っていう実感を感じることができた。
23時から始まったカウントダウンライブは、カウントダウン直後に年明けライブへと変わり、25時を回った頃に無事終了した。
普通に考えたら、こんな時間にライブをすることなんてないから、カウントダウンライブの特別感みたいなものを感じられたのも良かったかな。
その日は朝からリハーサルをしていたから疲れちゃって、翌日も仕事が入っていた俺達は、ライブの感想やお互いへの労いの言葉もそこそこにして、帰宅するなり早々に深い眠りについた。
本当は司と年明けエッチをしたかったんだけど、最近のハードスケジュールで体力を消耗しきってしまい、その日は司とくっついて寝るだけに終わってしまったのがちょっと残念。
でも、司と一緒に年末年始を過ごすことはできたから、それはそれで良しとする。
年明け初エッチにはならなかったけれど、司の腕の中で眠る時間も幸せで、俺は充分満足だったもん。
そんな年末年始が過ぎ、例年よりも遅めの年末年始休暇――いや、年明け休暇をもらったのは、年明けから十日後の1月10日から1月15日の五日間だった。
その頃には冬のツアーも終わり、お世話になっている人達への挨拶回りも終わっていたから、却っていつもよりのんびりした気分で休暇を過ごせると思った。
実家へは司の運転する車で帰る俺だから、実家に帰ったの10日ではなく9日の夜だった。
俺を送ってくれるついでに司が俺の家に一泊して、翌日の夕方からは俺の家族と一緒に司の実家に出向き、家族揃って蘇芳家に新年の挨拶に行くことになっていたりする。
去年、蘇芳家と如月家で一緒に年末年始旅行をしたおかげか、司の家族とはすっかり家族ぐるみの付き合いが始まっていることが嬉しい。
「ただいまぁ~」
「お帰り、悠那、司君。二人とも疲れてるでしょ? 早く上がってゆっくりしなさい」
「はぁ~い」
家に着いたのは午後9時を回っていたけれど、お母さんは嬉しそうな顔で俺達を玄関まで出迎えてくれたし
「二人ともお帰り。夕飯はもう食べたのかい?」
お父さんもリビングで俺達の帰りを待ってくれていて、俺と司が一緒に帰ってきた姿に、ほっとしたような笑顔を見せた。
「うん。でも、ちょっと小腹が空いてるかも。何かデザート的なものが食べたい」
「ちょうど良かった。ケーキ買ってるわよ」
「わーい♡ ケーキ~♡」
「手を洗っていらっしゃい。みんなでお茶にしましょう」
「うんっ!」
俺と司のためにケーキを買っておいてくれた心遣いも嬉しいけれど、司がすっかり俺の家族の一員みたいになっていることも嬉しい。
前回、司の実家に顔を出した時、司が俺のことを「俺の嫁扱いされてる」って言っていたけれど、司は司で俺の家族から完全に婿扱いされているよね。
約一名を除いては……だけど。
「あれ? お兄ちゃんはいないの?」
その約一名とは、言わずもがなお兄ちゃんのことではあるんだけれど、そのお兄ちゃんの姿が見当たらないことに、俺はちょっと小首を傾げてしまった。
いつもなら、俺が帰って来たら飛んで来るし、司を連れて帰って来たともなると、物凄い勢いで司に絡んでくるはずなのに……。
「ああ、克己ならもうすぐ帰って来ると思うよ」
お兄ちゃんの仕事が何時に終わるのかは知らないけれど、俺が知る限り、こんなに遅い時間に帰って来ることは滅多になかったように思う。
お父さんに言われて
(でもまあ、お兄ちゃんにも付き合いってものがあるし。いないならいないで、そっちに方が楽だからいっか♡)
と思っていたら
「最近はいつも帰りが遅いのよ。毎日仕事帰りに映画館に寄って帰ってくるから」
冷蔵庫からケーキを持って来たお母さんにそう言われて、俺と司は思わず顔を見合わせてしまった。
「二人の映画が公開されてからというもの、毎日欠かさず見に行くのよ。その癖、いつも死んだような顔で帰って来るんだから」
「……………………」
嘘……毎日って、本当に毎日なの?
「そうそう。お母さん達も先週見に行ってきたのよ。なんかもう、悠那もすっかり大人になっちゃったのね、って思ったし、あの映画を見た後からは、悠那の相手は司君しかいない、って思うようになっちゃったわよ」
「え? えへへ……そう?」
お兄ちゃん不在の理由に動揺していた俺は、その流れで映画の感想を言ってくれたお母さんに、咄嗟に取り繕った笑顔で応えるしかできなかった。
「そうだなぁ……。映画の中とはいえ、悠那とあんなシーンを演じた司君には、何がなんでも悠那を幸せにして欲しいと思ってしまったな」
実家に帰る連絡をした時に、お父さんとお母さんが映画を見た話は聞いていたけれど、映画の感想を聞かされたのは今日が初めて。
多分、俺が司を連れて帰ると聞いていたから、その時に直接話そうと思ったんだろう。
親としては複雑極まりないシーンを見て、うちの親がどんな感情を抱くのかと心配していたけれど、これといって悪い感情は抱かず、むしろ俺と司の仲が不変であって欲しいと望むようになったみたい。
「もちろん、そのつもりですよ。演技ではあっても、悠那とあんなシーンを演じることになった時点で、俺は悠那との関係を世間に公表するようなものだと思っていましたし、その覚悟もできていましたから。元々俺に悠那との関係や悠那への気持ちを隠す気持ちはあまりなかったんですけど、あの映画のおかげで、もっと悠那への気持ちに堂々としていられる気分になりましたよ」
もっとも、そんな心配は全く必要なくて、俺と司は付き合い始めた頃からずっと変わらず、一生添い遂げる心積もりでいる。
だからこそ、こうしてお互いの家族に自分達の関係を明かしてもいるわけだ。
「あら、頼もしい。司君にそう言ってもらえると、私達も安心だわ」
「司君。これからも悠那をよろしく頼むよ」
「はい。任せてください」
「悠那は本当にいい人を捕まえたわね。最初はちょっと心配するところもあったけど、今ではすっかり安心して見ていられるし幸せそうな二人を見ていると、こっちまで幸せな気分になっちゃうわ」
決して和めるような映画の内容ではなかったと思うのに。俺と司の前で映画の話をするお父さんとお母さんは完全に和みモードだった。
(やっぱりうちの親って少し変わっているのかな?)
俺はてっきり、あの映画を見たお父さんとお母さんに、「司君とはどこまでの関係なの?」って問い詰められるかとも思っていたんだけれど。
お父さんとお母さんは一切そのことについては触れてこなかった。
俺はまだ、自分の親に司とエッチしている仲だとは言っていないんだけれど、実はお父さんやお母さんにはとっくに見抜かれちゃっているのかな?
まあ、見抜かれてもおかしくはないと思う。だって俺、司のことが大好きだもん。家族の前でも平気で司とイチャイチャしちゃうから、そんな俺がおとなしく司と清らかなお付き合いを続けているとは思われなかったのかもしれない。
(でも、一応は自分の口から言っておいたほうがいいのかな?)
普通に考えたら、いくら自分の親だからって、恋人とどこまでの関係なのかを話しておく必要はない。
でも、普通とはちょっと違う恋愛をしている俺達だから、そういう話もちゃんとしておいたほうがいい、と思ってしまう俺だった。
「そうそう。明日は何時頃の司君のおうちにお邪魔したらいいのかしら? ここから司君の家ってどのくらい?」
「高速に乗れば一時間くらいですよ。混んでいなければ一時間も掛からないかも。7時頃に着けば、ちょうど家族全員帰って来ている頃だと思います」
「そう。じゃあ、やっぱり明日はお父さんを職場まで車で迎えに行って、その足で司君のおうちに行きましょうか」
映画の話から明日の予定へと話が流れていき
(明日は司の家族からも映画の感想を聞かされるのかな?)
と思ってしまった俺は
(司の家族はうちの両親と同じってわけにはいかないかも……)
ちょっと不安な気持ちになったりもした。
一応、映画が公開される前に司の実家に顔を出し、映画に対する予防線を張っておいたのだけど、あの予防線は上手く機能してくれたのかな?
でもまあ、俺と司のプライベート動画が流出したわけではなく、仕事としてのラブシーンを演じたわけだから、司の家族だってそこは割り切ってくれるだろう。
複雑で気まずい気持ちにはなっただろうけれど、うちのお兄ちゃんみたいに激高することはないと思う。
(っていうか……)
お兄ちゃんは明日、俺達と一緒に司の家には行かないのかな?
今のお母さんの言い方からして、司の実家にお邪魔するメンバーの中に、お兄ちゃんが入っていないような気がするんだけど。
(まさか、映画を見に行くから行かない、って言ってるわけじゃないよね?)
もしそうだとしたら、「一日くらい我慢してよ」って言ってやりたいけど、お兄ちゃんを連れて行ったら連れて行ったで面倒臭そうだから、お兄ちゃんがいなくてもいいと言えばいい。
それに、お父さんの仕事はいつも定時の5時に終わるらしいけれど、お兄ちゃんの仕事が終わるのはそれよりも遅いって聞く。職場も家からはちょっと遠いから、お兄ちゃんを連れて行くとなると、司の家に顔を出すのが遅くなっちゃうよね。
そういう事情もあって――多分、お兄ちゃんを連れて行ったら面倒臭い、という事情もある――、今回はお兄ちゃんにお留守番をさせることにしたとみた。
お兄ちゃんは別にそれでも構わないんだろうし、誰も家にいないのをいいことに、明日も仕事帰りに映画館に足を運ぶんだろうけれど。
ほんと、お兄ちゃんは完全にお金の使い方を間違っているよね。
「ただいまぁ……」
噂をすればなんとやら――ではないけれど、俺がお兄ちゃんのことを考えていたからか、玄関のほうで物音がしたと思ったら、疲れきった様子のお兄ちゃんが帰ってきた。
前回、俺が司と一緒に実家に顔を出した時はお兄ちゃんに会っていないから、俺がお兄ちゃんに会うのは結構久し振りだったりするんだけれど……。
「どっ……どうしたの⁈ お兄ちゃんっ!」
覚束ない足取りでリビングに入って来たお兄ちゃんを見るなり、そのお兄ちゃんの姿がすっかり窶れきってしまっていることに、俺は驚きの声を上げた。
「あぁ……悠那か……お帰り。久し振りだな……」
「……………………」
こ……これは一体どういうこと? あの見るからに暑苦しくて、熱血漢そのものに見えていたお兄ちゃんが、まるで別人のような有り様、別人のような覇気のなさだ。
目の下にはくっきりと隈が浮かび上がっているし、頬は痩けて顔色も悪い。
これはもう、完全に病人、もしくは、完全に病んでいる人間の顔じゃん。
「お母さんっ⁈ お兄ちゃん、どうしちゃったの⁈」
一体何があったから、お兄ちゃんがここまで様変わりしてしまっているのかが知りたい。
「悠那達の映画を見に行くようになってからこうなのよ。そんなになるなら見に行かなきゃいいのに、って言うんだけど、悠那に会えないぶん、毎日大画面で悠那の姿を拝むんだ、って聞かないのよね」
「そんな……」
俺達の映画をお兄ちゃんが快く思っていなくて、腹立たしくも思っていることは知っているけれど、それでも毎日映画館に足を運び、こんな状態になっているらしい。
お母さんの言う通り、「そんなになるなら毎日見に行かなきゃいいじゃんっ!」って言ってやりたいんだけれど、俺が実家を離れてしまったことで、俺に会えないことが寂しいお兄ちゃんに言っても無駄なことなのかもしれない。
「悠那……」
いつもは目が合った瞬間にお兄ちゃんから絡まれる司も、変わり果ててしまったお兄ちゃんの姿には不安……になったのか、ドン引きしているのかはよくわからなかった。
ただ、明らかに驚いているのは見てわかったし、とりあえず俺に声を掛けてみたものの、その後に続く言葉が思い浮かばなかったようである。
「ああ……お前も来ていたのか、蘇芳司……」
「え……ええ。お邪魔しています……」
最早風前の灯火の如く、生気のないお兄ちゃんは、司の姿を見ても薄いニヒルな笑みを浮かべるだけで、司に絡む気力もない、と言った感じだ。
司に絡んでこないことはありがたいんだけど、こんなに元気のないお兄ちゃんの姿は初めてだし、そんな姿を見せられたら逆に気を遣う。その原因が俺達の映画にあるともなると、罪悪感のようなものまで感じてしまうよね。
「悠那。克己さん、相当ヤバい感じになってない?」
「う……うん……」
ただならぬお兄ちゃんの様子に、俺と司の心は酷く動揺したけれど
「克己。あなたもケーキ食べる?」
「せっかく悠那と司君が帰って来てるんだから、そんな顔をするな」
お父さんとお母さんは至って普通というか、あまりお兄ちゃんを心配している風ではなかった。
「ははは……そうだな。今、俺の目の前には悠那がいる。俺の可愛い悠那がいるんだ……」
「……………………」
どう考えても普通ではないお兄ちゃんに、俺は恐怖を通り越して、ただただ唖然とするしかなかった。
その夜は、いつものように俺の家でも司と一緒にお風呂に入り、俺の部屋のベッドの中に司と一緒に潜り込みもしたんだけれど、尋常じゃないお兄ちゃんの姿が頭から離れなくて、布団の中で司とぴったりくっついたまま、お兄ちゃんのことについて話し合った。
「敵意剥き出しで絡んで来られないことは助かるんだけど、あんな克己さんを見ると逆に怖い気がするし、実家における悠那の安全が心配になる」
「お兄ちゃんが俺に酷いことをするとは思えないんだけど、俺もちょっと心配。あんなお兄ちゃんなら、まだ今までのウザいお兄ちゃんのほうがマシだとすら思えちゃう」
元々お兄ちゃんは俺に対する愛情表現が過激で、俺に近付く相手には喧嘩腰なところがあったから、鬱陶しいと思いながらも、お兄ちゃんが司にウザ絡みしていくのは通常運転でもあった。
だけど、今回みたいに精神的に危険な状態のお兄ちゃんを見ると、今後のお兄ちゃんがどういう行動に出るのかがわからなくて、ちょっと不安。
司は俺の安全を心配してくれるけど、俺は司の安全だって心配になっちゃうよ。
「俺と悠那のラブシーンが相当堪えているのかな? 電話の時みたいに激高されるなら無視して構わない感じがするけど、今回のケースは無視できないって感じだよね」
「司もそう思う? 俺もどうにかしたほうがいいって思っちゃった」
何も知らずに司とのイチャイチャライフを送っていた俺は、うちの中がこんなことになっているとは思いもしなかった。
お父さんとお母さんは何も言ってこなかったし、「大したことじゃない」って顔をしていたけれど、このままお兄ちゃんを放っておくのは不味いよね。
「俺は明日実家に帰ることになってるけど、あの状態の克己さんと悠那を一緒にするのも心配だなぁ……」
「大丈夫だよ。別に俺とお兄ちゃんの二人っきりってわけじゃないし。いざとなったらお父さんやお母さんに助けてもらうもん。お兄ちゃんの様子を見つつ、お兄ちゃんを元気づけてあげようと思う」
「そう? でも、気を付けてよ。何かあったらすぐ連絡して」
「うん」
司が酷く心配している様子だから、できるだけ明るくそう言ってみたものの、あまり自信はなかったりもする。
だって、お兄ちゃんは俺と司のラブシーンで凹んでいるわけだから、俺が慰めてあげたところで、元気になってくれるかどうかがわからないんだもん。
もしかしたら、俺が慰めれば慰めるほど、余計に落ち込んじゃうかもしれないよね。
「なんなら一日くらいデートしてあげようかな? 司と付き合うようになってから、俺、全然お兄ちゃんに構ってあげてないし。俺がデートしてあげれば、お兄ちゃんも少しは元気になってくれそうじゃない?」
「そこまでする必要ある? そんなことして、克己さんが益々悠那のことしか考えなくなっても困るよ」
「そっか。じゃあデートはやめにしよう」
休暇中には特に予定がない俺だから、俺が仕事終わりのお兄ちゃんをデートに誘えば、お兄ちゃんは喜んで俺とデートしそうではあるけれど、そこは司にしっかり反対されてしまった。
そうだよね。今更お兄ちゃんにそこまでしてあげる必要はないよね。あんまり優しくし過ぎると、お兄ちゃんのことだから、すぐ付け上がりそうな気がするし。
そもそも、俺は別にお兄ちゃんのことが嫌いじゃないし、お兄ちゃんに冷たくしているわけでもない。ただ、お兄ちゃんが司のことを悪く言ったり、すぐ司にウザ絡みするから怒っちゃうだけだもん。
だから、俺のことでお兄ちゃんがこれ見よがしに落ち込んでいたとしても、そこまで気を遣う必要はない気がする。
それでも、実家にいた頃よりはお兄ちゃんに構わなくなってしまったのも事実ではあるから
「でも、今回の帰省中はお兄ちゃんに優しくしてあげる。でもって、俺と司の仲もさり気なく認めさせちゃう」
と言っておく。
そうだよ。お兄ちゃんが俺と司の仲を認めないから、こんな面倒臭いことになるんだよ。
よし、決めた。俺は今回の帰省中にう~んとお兄ちゃんに優しくしてあげて、俺と司の仲を認めさせることにしよう。
そうすれば、俺と司にとっての唯一の障害がなくなって、俺と司はハッピーだし、お兄ちゃんも俺達のことで気に病む必要がなくなって二重にハッピーじゃん。
「そこまで上手くいくかどうかは謎だけど、克己さんのことは悠那に任せるしかない気もするからなぁ……。でも、絶対に無理はしないでよ? 俺に手伝えることがあったら遠慮なく言ってね」
「うん。任せて。俺、司のためにも頑張っちゃう」
最初は“どうしたものか……”と悩んでいたけれど、「こうしよう!」って決めたら元気が出てきた。
元々俺はあれこれ悩むのが苦手だし。自分のことでもないお兄ちゃんのことなんてよくわからないもん。頭を悩ませるだけ無駄って感じだよね。
「でも、俺がお兄ちゃんに構ってあげるのと同じくらい、司も俺にいっぱい構ってよね」
これからの方針が決まった俺が、もう問題は解決したばりの明るさで言うと、司は
「それはもちろんだよ。俺は早速明日、悠那の地元で悠那と地元デートする気満々だよ」
って答えてくれた。
地元デート。なんて素敵な響きなんだろう。
実家暮らしをしていた頃はデートなんかしたことがなかった俺だから、初めてできた恋人と地元でデートができるなんて夢みたいだし、最高な気分。
「悠那が生まれ育った町だからね。俺と出逢う前、悠那がどんなところに行っていたのか教えて」
「うんっ!」
お兄ちゃんのことがあったから、「今日は司とイチャイチャしている場合じゃない」と思ってしまっていたけれど、司の言葉でそんな気分はすっかり消え失せた。
家族がいる家の中だというのに、布団の中で司に擦り寄っていく俺は、いつものベッドの半分もない、狭い俺のベッドの上で司にキスをすると、そこからはいつもの流れだった。
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