僕らの恋愛経過記録

藤宮りつか

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Final Season

    前途洋々! 無敵の二人♡(2)

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 映画の公開も待ち遠しいけれど、12月はライブや司の誕生日、クリスマスや初のカウントダウンライブもあるから、俺達の毎日はそれなりに忙しい日々だった。
 そんな中、俺の実家に続き、司の実家にも久し振りに顔を出した俺――。
「いらっしゃい、悠那君。司もお帰り。二人とも元気そうね」
「やだっ! ちょっと見ないうちに、また悠那君の可愛さに磨きが掛かってない⁈ これ以上可愛くなってどうするの⁈ ほんと、司にはもったいな過ぎるんだけどっ!」
「おいおい、尊。司にはもったいない、とか言ってやるな。仮にも自分の弟じゃないか」
 蘇芳家の人達に快く迎え入れてもらい、すっかり嬉しくなってしまった。
 司の両親はまだ俺達の関係を完全には認めてくれていないのだけど、俺と司が付き合っていることは受け入れてくれているし、俺にも優しくしてくれる。
 本当は色々と思うところもあるんだろうけれど、こうしてたまには二人揃って実家に顔を出すようにしているからか、俺と司の家族も随分と仲良くなったように思う。
 一方、俺の家族は俺と司の関係を知った後も、お兄ちゃん以外は司に対してウェルカムモードだから、司との関係は至って良好って感じである。
「二人とも疲れてない? 今お茶淹れてあげるから、炬燵こたつにでも入ってゆっくりしてなさい」
「わーい♡ 炬燵~♡」
「悠那は本当に炬燵が好きだね」
「だって、司の家に来た時じゃないと炬燵の温もりを味わえないんだもん」
 司の実家に来ると、俺の家や今住んでいる家では味わえない、炬燵の良さを味わえることも嬉しい。
「二人とも今は忙しい時期なんじゃないのか? 今年の年末年始は一緒に過ごせなくて残念だよ」
「今年の年末年始は初めてのカウントダウンライブがあるからね。年明け早々からも何本か仕事が入っているから、実家に帰って来るのは少しズレそうだよ」
「でも、休みは貰えるんだろう?」
「お正月モードが抜けたあたりに貰える予定。その時はまた帰って来るよ」
 俺がうきうきと炬燵の中に足を突っ込むと、その隣りに司が腰を下ろし、司の正面に司のお父さんが腰を下ろした。
 司の隣りで親子の会話を聞いているだけでも
(なんかいいなぁ~♡)
 と思ってしまう。
 一時は険悪になるんじゃないか、という不安もあった司とその家族だけれど、その心配はすっかりなくなったみたいで良かった。
「ねえねえ、悠那君。もうすぐ悠那君と司が出た映画が公開されるんでしょ?」
「え? あ……うん……」
 司のお母さんがお茶を淹れてくれている間にお菓子を持って来てくれた尊さんが、テーブルの上にお菓子を置きながら腰を下ろすと、期待に満ちた顔で聞いてきた。
 今日はその話をするためにここに来たんだけれど、まさか尊さんのほうから映画の話を振ってくるとは……。
 物凄く楽しみにしている顔の尊さんだけど、いざ映画を見に行って、俺と司のラブシーンを見たらどういう反応をするんだろうか……って考えると、ちょっと胸が痛くなる。
「ちょっと前に試写会があったのよね。映画の感想をネットに上げてる人の記事を読んだけど、かなり評判がいいみたいじゃない。ネタバレされたくないから、ネタバレを含んだ記事は読んでないんだけど、見応え充分なんだってね」
「えっと……そう言ってくれる人が多いことは嬉しいんだけど、尊さん達にはちょっと複雑になるシーンがあるのかも……」
 一体どんな記事を読んだのかは知らないけれど、ネタバレをしていなくとも、俺と司のラブシーンがあることくらいは書いてありそうな気がする。
 記事にある『見応え充分』というのが、映画の内容を言っているものなのか、俺と司のラブシーンを言っているものなのかは定かじゃないけれど、“見応え”の中に俺達のラブシーンも入っていることは間違いないと思う。
「今日はその話をするために帰って来たんだよね。それと、映画の前売り券も渡しておこうと思って」
 どういう流れで映画の話を切り出そうかと考えていた司は、幸いにも尊さんから映画の話を振ってきてくれたものだから、早速それに乗っかることにしたらしい。
 ちなみに、先に顔を出した俺の家では、映画の中に俺と司のラブシーンがあって、そのラブシーンが結構過激だと知るや否や
『あら、そうなの? ちょっと楽しみ』
 なんてお母さんは言っていたし、お父さんも
『親としてはやや複雑だけど、悠那ももう子供じゃないしな。司君や悠那が頑張ったシーンだって言うなら、映画を鑑賞する人間として受け止めよう』
 と言っていた。
 ここにお兄ちゃんのコメントがないのは、面倒臭いことになりそうだから、お兄ちゃんが帰って来る前に話を済ませてしまったからだった。
 どうせ俺達の話を聞いたところで、「許せん!」とか「そんな映画は見ないっ!」としか言わないんだろうから、話すだけ無駄だしね。
 前売り券は三人分渡しておいたけれど、お兄ちゃんと顔を合わせずに済むよう、お兄ちゃんが帰って来る前に俺の実家を後にして、司の実家に来ているのである。
「ネタバレするつもりはないんだけど、家族としては映画を見る前に心の準備が必要だと思うから」
「え……何? 心の準備をしなきゃいけないようなシーンがあるの? ラブシーンがあるってことなら知ってるけど?」
「そのラブシーンがね……ちょっと刺激が強いっちゃ強いから、映画を見に行くつもりなら、そのへんの覚悟をしておいて欲しいと言うか……」
 俺の家族と映画の話をした時は、事前に考えておいた通りに話せていた司だけど、自分の家族相手だと冷静さを失ってしまうのか、完全に行き当たりばったりの話し方になっていた。
「し……刺激が強いって? どれくらい過激なの?」
「だから、心の準備が必要な程度には」
 やはり作中に俺達のラブシーンがあること自体は知っていた様子の尊さんは、決まり悪そうな司の顔を見て、急に不安に駆られてしまったようだった。
 一体どんなラブシーンがあると思っていたんだろう。ラブシーンと言っても、ちょっとキスするだけとか、ベッドの上で抱き合っているだけ……とでも思っていたのかな?
 尊さんの立場からしてみれば、俺と司が演じるラブシーンは、どんなものでも安心して見られるものではないと思っていたんだけれど。
 司の正面に座っているお父さんも、“ラブシーン”という単語を耳にするなり、もう複雑そうな顔である。
 こうした反応を見ると、俺の両親って呑気というか、おおらかというか……。ちょっと変わってるのかな? って思っちゃうよね。
 そのおかげか、司との関係をあっさり認めてくれたわけだから、俺として大助かりなんだけど。
「なあに? みんなして深刻な顔なんかして。どうかしたの?」
 炬燵に集まっている俺達四人の顔を見て、お茶を持って来てくれた司のお母さんが不思議そうな顔になる。
「いやね、司が今度の映画を見る前に、心の準備をしておいたほうがいいって言うから……」
 なんとなく口を開きにくい雰囲気になっていたから、尊さんがお母さんの声に反応してくれたことには助かった。
「あら。そうなの?」
 戸惑った顔の尊さんに対して、司のお母さんは少しだけ驚いたような顔をしたものの、特に動揺した様子はなく、落ち着いた仕草で俺達の前にお茶を置いてくれた。
「それで、そういうシーンがあるから見ないで欲しいって話なのかしら?」
 ネットで俺達の映画を一足先に見た人達の感想を読んだ尊さんとは違って、司の両親は俺達から聞かされた映画の情報しか知らないのだろう。
 そもそも、司は自分の家族に映画の話をどこまでしているんだろうか。
 去年の年末から今年の年始にかけて、俺の家族と司の家族で旅行に行った際に、俺のお兄ちゃんや尊さんには映画の話をちょっとした。
 でも、あの旅行ではお互いの親に
『今度一緒に映画に出ることになったよ』
 くらいしか言っていないんだよね。
 俺はその後、自分の家族にはもう少し詳しい映画の話をしているけれど、司がそういう話をしているのかどうかがわからない。
 ネタバレを含まない映画の感想を読んだ尊さんの反応からして、司は家族に映画の内容を一切話していないような気がする。
「うーん……そこまでは言わないけど、あまりお勧めもできないって感じかな。見るなら覚悟はしてね、って話」
「そう。見に行くな、って言われないのなら良かったわ」
 俺と司の過激なラブシーンがあるとほのめかされて、尊さんやお父さんは戸惑いを隠せない様子なのに、お母さんは堂々としたものだった。
 母強し、ってことなのかな。自分のお腹を痛めて産んだ我が子への母親の愛は計り知れないって言うし。
「意外と落ち着いてるんだね。俺のほうは映画を見て欲しいと思う反面、見られるのが恥ずかしいって気持ちがあるのに」
「今更何言ってるの? 司のラブシーンなら前にドラマで見たことがあるじゃない。そりゃまあ、お母さんだって多少は恥ずかしい気持ちになるし、あらあらって思っちゃうけど、それが司のお仕事でもあるわけでしょ? 恥ずかしいと思う気持ちよりも、ちゃんと見てあげたいって気持ちのほうが強いのよ」
「ふーん……そうなんだ」
 やはり母の愛は大きかった。自分の母親にそう言ってもらえたら、司も少しは“家族に見られるのが恥ずかしい”って気持ちが薄れそうだよね。
 司のお母さんの言葉を聞いて、お父さんも気持ちが切り替わったのか
「そうだな。司の仕事は人に見てもらう仕事だもんな。一緒に住んでいないぶん、司が頑張っている姿はちゃんと見てやらないとな」
 さっきまでの複雑そうな顔から一転して、穏やかになった顔でそう言ってきた。
「えっと……ちょっと待ってよ? 私、なかなかそんな風には思えないっていうか、心の準備ができないんだけど……」
 唯一、尊さんだけが心を決めかねておろおろと戸惑っていたけれど、そこはまあ、映画を見に行く前までに心の準備ができてくれたらいいな、と思う。
「それにしても、司と悠那君が出る映画がそういう内容のものだとは知らなかったな。司は何も説明してくれないから」
「きっと恥ずかしくて言えなかったのよ。恋愛ドラマに出る時だって、今度ドラマに出る、としか言わないもの」
「しかし、司と悠那君の二人に揃ってそういう仕事の話が来るというのも、何やら運命みたいなものを感じてしまうな」
「誰の目から見ても二人の仲が良く見えるから、そういう仕事がきたんじゃないのかしら。司と悠那君はデビューした時から仲良しだったものね」
「そりゃまあ、ルームメイトでもあったからね」
 デビュー当時を思い出すと、なんだか妙に懐かしい気持ちになる。
 あの頃の俺は、恋愛的な意味で司を好きだなんて気持ちは全然なくて、初恋すらもまだだった。何かと俺に手を焼いてくれる司に甘え放題だったし、我儘三昧でもあったんだよね。
 まあ、今でも司に甘え放題の我儘三昧ではあるんだけれど。
「とりあえず、これ。映画の前売りが三枚入ってるから。気が向いたら見に行って」
「何言ってるの。絶対に見に行きますからね」
「ああ……うん。あ、それと、この前売り券じゃ入場はできないから、事前に日時と座席を指定したチケットと引き換えてね。そのへんは姉ちゃんに任せればいいから」
「そうするわ」
「ちょっと。私を使う気?」
「仕方ないじゃん。みんなの都合のいい日なんてわからないし、父さんや母さんはこういうのよくわからないじゃん」
「それはそうだけど……」
 封筒に入った三枚の前売り券を尊さんに手渡す司は、目的を果たせてホッとした顔をしていた。
 当初の予定とはちょっと違う流れになってしまったものの、一応司の家族にも予防線を張ることができたから良しとしよう。
 でもまあ、予防線を張ってみたところで、家族としては複雑なシーンになっているとは思うんだけどね。
 映画を見た後の司の家族が、映画に対してどういう感想を抱くのかがちょっと心配。
(俺のイメージが悪くならなければいいんだけれど……)
 って思うけど、結構なラブシーンを演じる俺の姿を見たら、多少はイメージが変わってしまうのも仕方がないんだろうな。
「そうそう。二人とも夕飯食べて行くでしょ?」
「え? ああ……その予定ではなかったんだけど……。でも、そう言ってくれるなら、そうしようかな」
「自分の家なんだから遠慮しなくていいのよ。悠那君だってお腹空いてるわよね?」
「うん」
「すぐ用意するわね。今日はお鍋だから、そのまま炬燵で食べようかしら。尊。手伝ってくれる?」
「はーい」
「俺も手伝う」
 別にご機嫌取りってわけじゃないんだけれど、司の実家に来て、ただただのんびりさせてもらうだけなのも申し訳ない気がするから、俺は炬燵を抜け出して、キッチンに向かう司のお母さんと尊さんの後について行った。
「あら? ゆっくりしてていいのよ?」
 お手伝いする気満々の俺に、司のお母さんは少しびっくりしていたけれど
「ううん。お手伝いしたい」
 と言う俺に柔らかく微笑むと、俺にいろんなことを教えてくれた。





「なんかさ、俺の実家に悠那を連れて行くたびに、悠那が本当に俺の嫁になっていく気がする」
「え? そう?」
 司の実家で夕飯をごちそうになってから、メンバーと一緒に住む家に帰る途中の車の中で、司が感慨深そうにそう言ってきたから、俺の胸がドキッとなった。
「うん。だってさ、これまでもちょっとしたお手伝いは率先してやってたし、今日は夕飯のお手伝いまでしてたじゃん。食後は洗い物までしてたでしょ? そういう悠那の姿を見ると、ああ、うちではもう悠那は俺の嫁扱いなんだな、って思うんだよね」
「うーん……そうなのかなぁ? でも俺、いつももてなされてるだけなのも嫌だから、自分に手伝えることがあるなら手伝いたいって思っちゃうんだよね。それに、司のお母さんに料理を教えてもらったら、司におふくろの味を再現してあげられるじゃん。俺、今日お母さんから寄せ鍋のおつゆの作り方を教えてもらって、今度司に作ってあげよう、って思ったもん」
 メンバーとの共同生活は自炊が主だから、冬になると夕飯がお鍋になることもあるにはある。
 だけど、俺は今まで一度も自分でお鍋を作ったことがないから、今日、司のお母さんに寄せ鍋のおつゆの作り方を教えてもらった時はちょっとテンションが上がっちゃったし、嬉しくもなったんだよね。
 そういうことを教えてもらえること自体、「今度司に作ってあげてね」って言われてる気分になって嬉しいもん。
「そういう発想がもう俺の嫁だね。可愛い」
「そうだよ。俺は司のお嫁さんになるんだもん。っていうか、もう嫁のつもりだもん」
 蘇芳家で過ごした時間が楽しかったからか、俺は完全に浮かれていた。
 今月に入ってからというもの、俺は結構浮かれることが多い気がする。
 ああ。でも、今月とかはあんまり関係がないよね。だって俺、司といる時はいつも浮かれているんだから。
「司はお父さんとしみじみ話し込んでたみたいだよね? お父さんとどんな話をしてたの?」
 俺と司のお母さん、尊さんの三人でキッチンにいる間、司はお父さんと二人で親子水入らずの時間を過ごしているようだった。
 普段、なかなかお父さんとゆっくり話す時間がない司だから、たまにはお互いに腹を割って話したいこともあるんだろうな。
「仕事の話やプライベートな話とか。あと、悠那の話もしたよ」
「俺の話?」
 司とお父さんの間で俺の話題が出たと聞くなり、ついつい身構えてしまう俺がいた。
 でも
「うん。ちゃんと仲良くしてるのか? とか、大事にしてあげてるのか? とかね。あんまり無理させちゃダメだぞ、とも言われた」
 思った以上に司のお父さんが俺のことを気遣ってくれているんだと知って、俺の喜びは頂点に達しそうだった。
 そうなんだ。俺、司のお父さんにそんな風に気遣ってもらえてるんだ。良かった。
「うちの親は俺と悠那がエッチする仲だって知ってるからね。俺と体格差がある悠那の身体が心配になるんじゃないかな」
「あうぅ……」
 そっか……そうだった。俺の両親と違って、司の両親は俺と司がどこまでの関係なのかを知っているんだったよね。
 さすがに俺の前では「どうなんだ?」って話はできないけど、父親と息子の二人きりになると、そういう話をすることもあるらしい。
(あれ? でも、待って? ってことは……)
 近々公開される俺達の映画を見た司の両親は、俺と司のラブシーンを見て
『ああ……。うちの息子はいつもこんな風に悠那君を抱いているのか……』
 って思われちゃうわけ?
「うわぁぁぁ~っ! なんかすっごく恥ずかしいっ!」
「え⁈ 急に何っ⁈」
 思わず心の声が口から飛び出してしまった。それも、かなりの大音量で。
「あ……ごめん。運転中なのにびっくりさせちゃって」
「ほんとだよ。一体何事かと思ったじゃん」
 幸い、俺の大声に驚きはしたものの、司は肩をビクッと震わせる程度に留まり、ハンドル操作は誤らなかった。
「いやね、俺、すっかり忘れてたけど、そう言えば司の両親は俺と司がエッチしてることを知ってるんだったな~って思い出すと、急に恥ずかしくなっちゃって」
 しかも、知った上で俺の身体を気遣われていたとなると、なんだか益々恥ずかしい気持ちになる。
 確かに、俺と司は結構体格に差があるから、俺と司がエッチしていると聞けば
『こんなに体格差がある子相手に大丈夫なのか?』
 って思われちゃうのは仕方がないんだろうけど、俺の身体はすっかり司を受け入れられる身体になっているから、心配されるほうが逆に恥ずかしいっていうか……。
 むしろ、俺の身体を心配してもらうどころか、俺が司に無理をさせていることもあるのでは? って思うこともあるくらいなのに。
「そっか。父さんも悠那の前ではそんなことを気にしている素振りは見せないし、そんな話題を口にすることもないから、悠那が忘れてても仕方がないよね。でも俺、実家に帰るたびに言われてるんだよね。無理はさせるな、って」
「そ……そうだったんだ……」
 なんてことだ。実家に顔を出すたびに、司が毎回父親からそんな忠告を受けていただなんて。
 俺、全然知らなかった。司も言ってくれればいいのに。
「だからってわけじゃないけど、さすがにほぼ毎日ヤってる話まではしてないし、悠那が物凄くエッチ好きだって話もしてないから安心して」
「う……うん……」
 それはほんと、絶対に言わないで欲しいと思う。そんな話をしようものなら、せっかく俺に優しくしてくれる司の両親も、「なんて破廉恥でふしだらな子なんだ!」って、俺への態度が一変しかねないよ。
「でもまあ、そういうわけだから、うちの親は俺と悠那のラブシーンを見ても案外平気かもしれないよ? だって、俺と悠那がそういう仲だって知ってるんだから」
「そ……そうかなぁ?」
 それはどうだろう。俺と司に肉体的な関係が成立していると知っている司の両親なら、俺と司のラブシーンにも既に覚悟ができているのかもしれないけれど……。
 さすがに俺達のそういう姿を想像したことはないだろうから、エッチをしている仲だと知っていたとしても、俺達のラブシーンを見たら、それなりの衝撃は受けると思う。
 もしかしたら、実際の関係を知っているからこそ、余計に生々しさを感じて恥ずかしくなるかもしれないよね。
「むしろ、俺達がどこまでの関係かを話していない悠那の両親のほうが衝撃を受けちゃうんじゃない? まあ、悠那の親が悠那の身の潔白を信じているなら……って話だけど」
「うーん……」
 どうなんだろう。俺、家族に司のことをどれくらい好きかとか、司とどれくらいイチャイチャした日々――エッチしている話は除く――を送っているのかって話ならしているけれど、俺の話を聞いた俺の両親が
『この子、司君とヤってるな』
 って思ったりするんだろうか。
 ずっと言うタイミングを見計らっている俺だけど、そろそろうちの親にもちゃんと話しておいたほうがいいのかもしれない。俺と司が本当はどこまでの関係なのかを……。
 多分、公開された映画を見に行けば、うちの親もさすがに疑いを持つだろうから、そのタイミングで白状しようかな。
『俺、司とはエッチもしてるんだよ』
 って。
 普通の恋人同士じゃないぶん、黙っていたことを怒られちゃうかもしれないけれど、俺ももう二十歳になってるもんね。
 このへんで全部話してしまうのがいいのかもしれない。


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