僕らの恋愛経過記録

藤宮りつか

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Final Season

    別れた女は要注意⁈(7)

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 番組収録の後で彩に捕まってしまった俺は、写真を受け取りに行くだけのはずだったのに、そこで彩に襲われ掛けたりなんだりで、予定よりもかなり遅くテレビ局を出ることになってしまい、CROWNとの合同レッスンには20分も遅刻をしてしまった。
 事前に撮影が押す可能性を考慮して、今日のレッスンには遅れるかもしれないことは伝えておいたから、俺が20分遅刻したことを責めるメンバーは一人もいなかった。
 しかしながら、実際は撮影が押したわけではなく、元カノに捕まって襲われ掛けていた俺としては、20分だろうと何分だろうと遅刻してしまったことに罪悪感があった。
 それに加え、悠那以外の人間と触れ合ってしまった俺は、レッスン前に悠那の身体の感触を堪能して、嫌な感触を全部忘れてしまいたい気分でもあった。
 だがしかし、レッスン開始から20分も経っていれば、俺以外のメンバーの身体はもう充分に温まっていて、レッスン内容も本格的になっている頃で、悠那とイチャイチャするような時間なんてなかった。
(レッスンが終わるまでの辛抱だ……)
 そう自分に言い聞かせ、どうにか今日一日のスケジュールを終えた俺は――。
「どうしたの? 司。今日はなんだか甘えっこさんだね」
 帰宅して悠那と二人きりになった途端、悠那に甘えまくった。
 悠那を腕の中に閉じ込め、ひたすら悠那の感触、温もり、匂いを堪能する俺に、悠那は擽ったそうにしながらも嬉しそうだった。
「んー……悠那ぁ……」
 悠那にすりすりと頬擦りし、甘えた声まで出す俺の背中を優しく撫でてくれる悠那は、きっと何かあったんだろう、とは思っているものの、しばらくは俺の好きにさせてくれた。
 俺が甘えたい時は好きなだけ甘えさせてくれる悠那だけど、俺が今日、元カノと会って襲われ掛けた事実を知ったらどんな顔をするんだろう。やっぱり怒っちゃうのかな?
 とは言え、悠那に隠し事をしたくない俺は、テレビ局で彩と遭遇してしまったことや、彩から忘れ物を受け取るために彩の楽屋に行き、そこで彩に襲われそうになったという話は伝えておくべきだろうとも思う。
 同窓会からわずか十日で彩と遭遇してしまったことは不運でしかないし、今日彩に遭遇したからといって、今後も彩と何かしらの縁があるとも思えないけれど、今度彩と遭遇してしまった時、俺の隣りに悠那がいないとも限らない。
 俺と悠那が付き合っているだなんて夢にも思っていないであろう彩に、悠那の前で
『この前は……』
 なんて話をされても困るしね。
「よしよし。何か嫌なことでもあったの? 俺に甘える司は可愛いんだけど、そろそろ何か言ってくれないと、俺も心配になっちゃうよ?」
 かれこれ10分ほど悠那にくっついているだけの俺に、悠那もそろそろその理由が気になってきたみたいだ。
「うん。あのね……」
 できれば悠那を怒らせたくはないんだけれど、俺が悠那に隠し事をするほうが悠那を怒らせてしまうし、悠那も傷つく。
 彩にはキスをされてしまったし、身体もちょっと触られてしまったけれど、俺から彩には何もしていない。自分が迂闊であったことは認めるけれど、俺が悠那を裏切ったわけでもないから、ここは素直に全てを話してしまおう。
「俺、今日彩に会っちゃった」
「え」
 悠那を怒らせないよう、悠那をぎゅっと抱き締めながらそう言った俺に、悠那の顔が一瞬にして険しくなったのを感じた。
 うぅ……怒らないで……。
「同じテレビ局内で番組収録の時間が被ってたみたいでね。楽屋に戻る途中で偶然遭遇しちゃったんだけど……」
 悠那を抱き締めたままの俺は、怖くて悠那の顔がなかなか見られなかったけれど、いつまでも目を合わさないままでいると、逆に俺に何か後ろめたいものがあるんだと思われても嫌だ。
 だから、恐る恐るといった感じで悠那の顔を見下ろしてみると
「……それで?」
「え?」
「たまたま会っただけで終わったの?」
 やっぱり悠那の顔は怖い顔になっていたけれど、俺の話をちゃんと聞いてくれるつもりはあるようだった。
 しかし
「いや……。それがね、俺が同窓会で忘れ物をしてるからって、彩の楽屋まで取りに行くことになっちゃって……」
「行ったの⁈ 元カノの楽屋にっ!」
「…………はい」
 俺が彩の楽屋に行ったことを知った悠那は目を見開いて驚き、あからさまに俺を非難する顔になった。
 俺だって、できれば彩の楽屋なんかに行きたくなかったけど、「忘れ物を預かってる」なんて言われたら、取りに行かないわけにもいかなかったんだよ。
 その忘れ物が、たかが同窓会で撮った集合写真だとわかっていれば、俺だって
『ごめん。今忙しいから、また今度にして』
 って言って逃げていただろうと思うけれど、俺の忘れ物が写真だと知ったのは、俺が彩の楽屋に向かう途中の廊下だったからな。今更「やっぱりいい」とは言い出せなかったんだよね。
 それに、写真を受け取るだけなら、彩の楽屋の前まで行っても楽屋の中にまで入る必要はなかったし、俺もそのつもりでいた。
「それで、どうなったの? まさか司、元カノの楽屋で元カノと……」
「そんなわけないじゃんっ! やめてよっ!」
 俺が不用意に彩の楽屋になんて行ってしまったからか、悠那は早速俺の行動を疑った。
 こういう時、真っ先に疑われてしまう自分が悲しい。
 でも、悠那からしてみれば、一度は俺と恋人同士になっていた相手だから、そういう相手に対しては俺も気が弛むというか、流されてしまうこともあるんじゃないかと心配してしまうのかもしれない。
「入ったの? 彼女の楽屋に」
「入ったっていうか……無理矢理押し込まれたというか……」
 蘇る嫌な記憶。
 俺は楽屋の前で彩が写真を持って来るのを待っているつもりだったのに、そんな俺の背中を乱暴に彩の手に突き飛ばされ、その直後に彩から強引に襲われそうになるとか……。
(今思うと、俺の扱いが酷過ぎる)
 俺と彩の関係なんて、いつも彩が俺より上って感じではあったけれど、やや暴力的にも思える行動を取られたことは今回が初めてだった。
「じゃあ何もなかったの? 司は彼女から忘れ物を受け取っただけ?」
 まさか悠那も本気で俺が浮気をしたとは思っていないだろう。俺が彩の楽屋に行き、彩の楽屋の中にまで入ったことについては面白くないだろうが、その先の俺の行動を信じてくれる気持ちはあるようだった。
「何も……」
 そんな悠那の気持ちに応えてあげたいのは山々だけど、「何もなかった」と言い切れない自分が情けない。
 が、俺も不意打ちを喰らってしまった状態だったから、多少のアクシデントは許してもらいたいところである。
 彩に無理矢理楽屋の中に突き飛ばされ、その後に起こった諸々を思い出すと、何が悲しくて、俺はあんな目に遭ってしまったんだろう……と、泣きたい気持ちにすらなってしまう。
「司?」
 急にテンションが下がり、悲し気に口をつぐんでしまう俺を見た悠那は、怒りの感情を一瞬忘れたのか、俺の顔を心配そうに覗き込んできた。
 ああ……俺、悠那が好きでもない男に襲われた時の気持ちがちょっとだけわかったかも。
 もちろん、俺に比べたら悠那のほうがよっぽど怖い目に遭っているし、身の危険度も遥かに上だったけれど、好きでもない相手に襲われるのって本当に怖い体験なんだな。
「どうしたの? 何か嫌なことでもされたの?」
 最早ヤキモチを焼くとか、迂闊な俺の行動に腹を立てている場合ではなくなったらしい悠那は、悲し気な顔をした俺を心から心配して、俺の頭をよしよしと撫でてきたりもした。
「うん。凄く嫌だった。俺、急に彩に襲い掛かってこられて、本当に怖いと思った」
 ぶっちゃけた話、どう頑張っても俺に力で勝つことができない彩相手に、俺が本気で怖がるのもおかしな話だけれど、恨み辛みの籠った敵意を向けられるのではなく、彩に俺の身体を求められたことが恐怖だった。
 敵意や悪意を向けられているのであれば、こっちもある意味開き直った態度に出られるが、悠那以外の人間から愛欲を向けられることが怖い。そのことに今日初めて気が付いたって感じだった。
 もちろん、俺はアイドルなんてものをやっている身だから、ファンの中には俺をそういう目で見ている子もいるのかもしれないけれど、ただそう思われているだけなのと、実際に襲われるのとでは全然違う。身体的に女の子に負けるはずがない俺が、女の子に襲われるようなことなんてないだろうと思っていただけに、今日の体験は本当に恐ろしい体験だった。
 恐ろしい体験だったし、精神的にもかなり凹む。
「司……」
 過去に二度も危険な目に遭い、俺との映画撮影では現場にいた男共から欲情されまくっていた悠那は、生まれて初めて誰かから襲われそうになった俺に同情したのか
「よしよし。怖かったね。でも、もう大丈夫だよ。今は俺と一緒なんだから」
 俺の頭をぎゅっと抱き締めてくると、精一杯優しく俺を慰めようとしてくれた。
 そして
「一体どんなことされたの? 俺が全部帳消しにしてあげるから」
 それこそ、俺が彩と別れた直後から求めていた展開へと、俺を導いてくれた。
 ヤキモチ焼きの悠那のこの反応は意外だったけれど、俺が本気で落ち込んでいるとわかっている時は、悠那もヤキモチを焼くより俺に優しくするほうを優先してくれるということなのだろう。
「キスされた」
「どこに?」
「口」
「うんうん」
 悠那はまるで小さい子供の話でも聞くように頷くと、拗ねた顔をした俺の唇に、ちゅってキスをしてきてくれた。
 彩にキスされた時とは全然違う感覚が、俺のすさんだ心を癒してくれる。
「他にはどんなことされたの?」
「押し倒されて、乗っかられて、身体をちょっと触られた」
「全くもう。元カノ相手だからって油断し過ぎじゃない?」
 いつもなら絶対に鬼の形相になって俺を叱りつけてくるはずの悠那は、しょんぼりしている俺に対する小言はそれだけにして、俺の膝の上に乗ってくると、俺の身体を優しくベッドの上に押し倒してきた。
 本来、俺の身体が悠那の力で倒れることはないんだけれど、こういう時の俺の身体は素直である。
 俺をベッドの上に押し倒した悠那は、何度も何度も俺にキスを落とし、悠那にされるがままになっている俺の身体をまさぐってきた。
 いつもとは立場が逆になってしまっているような感じでもあるが、悠那にも俺を気持ち良くしてあげたいという願望があるからか、最近では悠那のほうから積極的に俺を愛撫してくることも多い。
 最初は俺からの愛撫を真似て俺を愛撫してくる感じだった悠那も、主導権を握るたびに独自の愛撫の仕方に変わっていき、俺をいっぱい気持ち良くしてくれるようにもなった。
 だからって、そのまま悠那が俺の中にまで挿入はいってくるようなことはないんだけれど――俺もそこだけは譲りたくない――、悠那も一応は男だから、本能的に相手を気持ち良くさせる愛撫のやり方を学んでいくものなのかもしれない。
「今日は俺が司をいっぱい気持ち良くしてあげる」
 キスと愛撫の最中さなかに俺を半裸状態にしてしまった悠那は、欲情した目で悠那を見る俺の瞳に満足そうだった。
 同じ襲われるのでも、相手が悠那だとここまで感じるものなんだな。俺のナニはもうパンパンだ。
「ねえ、司。もしかして、ココも触られたりしたの?」
 ズボンの上からでもはっきりわかる膨らみに気が付いた悠那は、すっかり元気になっている俺のナニをズボンの上からゆるゆる撫でながら聞いてきた。
「一瞬だけ……。別れ際に一瞬だけ触られた」
 彩に襲われても全く興奮しなかったし、欲情もしなかった俺だから、触られたといっても、おとなしいままの俺に一瞬触れられただけではある。
 それでも、悠那じゃない人間にソコを触られたことがはなはだ気持ち悪かった。
「そっか。じゃあ念入りに消毒してあげないといけないね」
 俺に主導権を握られている時の悠那は、俺から与えられる刺激にすぐいっぱいいっぱいになって、あまり余裕なんてものはなさそうに見えるのに。自分が主導権を握っている時は余裕綽々な顔だった。
 多分、自分が主導権を握っているという優越感からくる余裕だろう。俺も自分が主導権を握っている時のほうが余裕を持てるから、それと一緒だ。
 余裕のある悠那は、シャツのボタンを外して露わになった俺の胸から愛撫を始める。
 悠那は俺に乳首を虐められるのが大好きで、すぐに感じちゃうけれど、俺は乳首で感じるというよりは、悠那の舌に胸全体を擽るように舐められたり、キスされることに感じる。
 それを知っている悠那はあえて乳首を避け、俺が擽ったいと同時に感じてしまう場所に唇や舌を這わせ、俺の身体が悠那からの愛撫に充分感じてきたところで、俺の乳首にちゅうっと吸い付いてきた。
 悠那と違って乳首でそこまで感じられない俺も、絶妙なタイミングで吸い上げられる乳首には感じる。
「んっ……」
 思わず息が詰まり、顎が上がってしまう俺の反応を確認した悠那は、そのまま舌先で俺の乳首を押し潰すように何度か舐め上げてくると、最後にもう一度乳首に強く吸い付き、俺の乳首が赤く膨らんでから、俺の乳首を解放してくれた。
「司は乳首だけじゃあんまり感じないけど、いっぱい胸を愛撫した後に乳首を吸うと感じるよね」
「悠那の唇や舌が気持ちいいんだよ。気持ち良くなってるところで乳首を吸われると感じる」
「感じてる司って可愛くて大好き♡」
「悠那がそれを言う?」
 自分が悠那からの愛撫にどんな顔をして感じているのかは知らないけれど、表情や仕草、感じている声までも申し分なく最強に可愛い悠那に、感じている俺が可愛いと言われても
「悠那のほうが何億倍も可愛いでしょ?」
 って言いたくなる。っていうか、実際に言ってしまう。
「そんなことないよ。司がそう思ってくれるのと一緒で、俺だって司のことは物凄く格好いいと思うし、堪らなく可愛いとも思うんだから」
 何倍、ではなく、何億倍、とまで言ってしまう俺に、悠那は嬉しそうに笑ったけれど、自分の主張は曲げなかった。
 まあ、お互い好き同士が付き合っているんだから、それぞれが自分の恋人のことを“格好いい”“可愛い”と思っているのは当然か。
「今度はこっちを気持ち良くしてあげる。さっきから窮屈そうだしね」
 悠那の愛撫で身体が火照っている俺は、悪戯っぽく笑う悠那に期待をしてしまう。
 俺の顔を見詰めながら、悠那の手が俺の股間の膨らみを怪しい手つきで撫で始め、ズボンの下でピクピクと反応する俺を感じると、ゆっくりとした手つきで俺のズボンを脱がしに掛かってきた。
「司の顔、もっと俺に気持ち良くして欲しいって言ってる」
 俺の表情から心を読み取る悠那に言われて、俺はちょっと恥ずかしい気持ちになるのと同時に、俺の気持ちをわかってくれる悠那に嬉しくもなる。
 この場の主導権を完全に握っている悠那は、俺のズボンをパンツと一緒に膝の下まで引き下ろしてしまうと、俺の唇に濃厚なキスを重ねてきながら、剥き出しになった俺にも触ってきた。
「んっ……悠那っ……」
 わざと濡れた音を立てて俺の唇を貪る悠那は、俺の口の中を甘い舌で犯し、小さな手ですっかり勃ち上がった俺を絶妙な力加減で扱いてもくる。
 どちらの感覚にも感じてしまう俺は、時折熱い吐息を漏らしながら、悠那の与えてくる快楽へと堕ちていく。
「んんっ……んっ……」
 悠那からのキスに唇が腫れぼったくなり、悠那の可愛い手にいっぱい扱き上げられるナニも、先端から溢れ出す透明な蜜でぬるぬるになってくると
「いっぱい気持ち良くなってるみたいだね。もっと気持ち良くしてあげる」
 悠那は俺の唇から自分の唇を離して、もう爆発寸前なくらいに張り詰めている俺を口の中に咥え込み、ちゅうぅって吸い付いてきた。
「んんっ……! ぁ……悠那……」
 一瞬でイってしまいそうになるのをどうにか堪え、ゆっくりと俺を口で扱いてくる悠那からの刺激にも必死に耐えた。
 全く……どんどんエッチなテクニックが上がってくる悠那に、俺も我慢をするのが困難になっていく一方だよ。
 悠那と付き合い始めた頃は、悠那がここまで俺を翻弄してくるようになるとは思っていなかったのに。
「んっ……司の美味しい♡ 口の中でピクピクするのも可愛いよ」
「っ……んっ……」
 口でシてもらう前に他のことでも気持ち良くしてもらっているから、俺もあまり長くはちそうになかった。
 俺を口で強く吸い上げながら巧みに舌まで使われてしまうと、気持ち良さのあまり何度もイきそうになってしまい、我慢するのも辛くなってくる。
「んっ……悠那っ……んんっ……」
「イきたいの? イってもいいよ」
「んんっ……んっ……」
 努力はしてみたけれど、五分が限界だったみたいだ。
 いつの間にやら俺の両脚からズボンもパンツも抜き取ってしまった悠那は、俺の両脚の間に身体を割り込ませ、更に激しく強く俺を吸い上げてくるから、悠那の頭が上下する動きに合わせて俺の腰も動いてしまう。
「ぁぁっ……ダメ……悠那……もうイきそ……」
「んっ……いいよっ……」
 どうやら今日の俺はいいように弄ばれてばかりって感じでもあるんだけれど、相手が悠那なら俺もいいように弄ばれたい。
「んっ……ぁっ、ん……んんっ……んっ!」
 悠那から与えられる刺激に限界を迎えた俺は、俺のお尻の下に手を挿し入れ、俺のお尻を持ち上げるようにしながら何度も悠那に吸い上げられるのを繰り返すうちに、悠那の口の中で絶頂を迎えた。
 射精と同時に全身に走る解放感はこの上ない快感で、悠那に主導権を握られることが癖になってしまいそうだ。
「んんっ……はぁっ……ぁ……」
「いっぱい出したね、司。気持ち良かった?」
「ん……凄く気持ち良かった」
「かわい♡」
 射精の余韻で頭がぼーっとしてしまう俺は、焦点の合わない目で小さく頷くと、悠那は満足そうに微笑んで、俺の唇に触れるだけの軽いキスを落としてきた。
 悠那にイかせてもらっただけで物凄く満たされた気持ちになった俺だけど、俺をイかせるだけで満足する悠那ではない。
 イったばかりの俺に再び手を添えてくると
「でも、まだ終わりじゃないからね。ここからが本番♡ 今度は一緒にもっともっと気持ち良くなろうね」
 肩で息をする俺の呼吸が収まらないうちに、俺との更なる快楽を求めてくるのであった。
 こんなに可愛くて、エッチが大好きで、俺をいっぱい気持ち良くしてくれる悠那がいるっていうのに、俺が悠那以外の誰かと「セックスしたい」だなんて思うわけがないじゃん。
 俺も悠那の身体を自分好みの身体にカスタマイズしたのかもしれないけれど、俺の身体だって悠那の好きなようにカスタマイズされ済みだ。お互いがお互いを気持ち良くする方法を一番知っているんだから、他の誰かとするセックスを“気持ちいい”と思うこともなさそうだ。
「安心して、司。司の身体の細胞の一つ一つまで、俺の感触で満たしてあげるから」
 俺が射精の余韻に浸っている間に、俺を素っ裸にし、自分も服を脱いでしまった悠那は、透き通るように白い肌を少し上気させながら、俺の上にゆっくりと覆い被さってきた。
 俺に迫ってくる悠那の薄い胸は相変わらずのまな板だったけれど、薄い胸の上で美味しそうに膨らむピンク色の小さな蕾が、俺には堪らなくいやらしく見えて、ごくりと息を呑んでしまった。
 まだ力の入らない腕を伸ばし、悠那の薄い胸に触れてみると、俺の両手にすっぽりと収まってしまう悠那の小さなおっぱいの感触が、今日うっかり触ってしまった彩のおっぱいの感触を消し去ってくれた。
「ぁんっ……」
 俺に胸を掴まれた悠那は身体を小さく震わせながら喘ぎ、一瞬だけ恨みがましそうな目で俺を見てきたが、その表情や仕草がまた可愛くて、俺のナニに精気が戻って来るのを感じた。
「もぅ……ダメだよ? 今日は俺が司を気持ち良くするんだから。司は俺に触っちゃダメ」
「そうなの? でも、一緒に気持ち良くなるんでしょ?」
「そうだよ。だから、俺が司も自分も一緒に気持ち良くするの」
「わかったよ。じゃあ悠那に任せるね」
「うんっ♡」
 俺から悠那に何もできないのも残念だけど、俺が何かしなくても、悠那にはもう俺と自分を一緒に気持ち良くする方法がわかっているから、今日は悠那に全てを任せることにした。
 嫌なことがあった俺を元気づけてくれようとしている健気な悠那の気持ちを無下にしたくはないし、俺を元気づけてくれようとする悠那が、何をどこまでシてくれるのかが見物だしね。
 でもまあ、俺の心はこれまでに悠那がシてくれたことで、もう充分元気にはなっているんだけれど。
 今日、偶然彩に遭遇してしまった後の俺はツいていなかったけれど、一日の終わりにこんないい思いができるのであれば、今日起こった不運も帳消しって感じだよね。
 落ち込む俺に向かって
『俺が全部帳消しにしてあげるから』
 と言った悠那の言葉は嘘じゃなかった。


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