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Final Season
別れた女は要注意⁈(4)
しおりを挟む同じクラスに在籍していながらも、別れた後は全く口を利くこともなく、これが三年振りの再会になる元カレに対し、彼女の第一声は至極普通で、まともなものだった。
対する俺の第一声は
「彩……豊胸手術でもしたの?」
だった。
「失礼ねっ! 育ったのよっ!」
「司……今のは結構最低だよ」
当然、彩には怒られ、郁には呆れられ、拓には複雑そうな苦笑いをされてしまった。
だって、俺が知っている頃の彩の胸より遥かに大きくなっているんだもん。
高校の時も既に充分大きかった彩の胸が更に大きくなって……というよりも、大きくなり過ぎているのを見ると、豊胸手術でもしたのかな? って思っちゃうよ。
はっきり言って顔より胸しか目に入らないレベル。胸に小玉すいかでも仕込んでいるのかと思うほどで、驚きのあまり心臓が止まるかと思ったじゃん。
だからって、彩の大きく育ち過ぎたおっぱいには何も感じないんだけどね。
それより何より、拓が彩のことで俺に大事な話って? 俺に相談したいことってなんなんだろう。拓だって、俺と彩が昔付き合っていたことは知っているよね?
「はあ……三年振りに再会した元カノに向かって、豊胸手術でもしたの? とかさ。ほんとありえない。しかも、それが第一声だなんて益々ありえない」
「ご……ごめん……」
三年振りの再会直後にすっかり機嫌を損ねてしまった彩にとりあえず謝っておいたけれど、別れた彼女とどう接していいのかなんて、三年振りに再会するクラスメートよりわからないよ。俺と別れた後の彩は俺を避けるようにしていたから、俺のことは嫌いになったんだろうと思っていたし。
でもさ、だったらどうして俺はここに呼ばれて、三年振りに彩と顔を合わせなきゃいけない状況になっているの? って感じだよね。
拓は彩のことで俺に話があるみたいだけれど、俺や彩はお互いに話すことなんて何もないような気がするんだけど。
そもそも、彩と拓ってどういう関係?
二人とも俺を質問攻めにしていたクラスメートの中には混ざっていなかったみたいだから、そこから少し離れたここの席に二人でいたんだろうとは思うけれど、それってつまり、今現在の二人は恋人同士ってことでいいのかな?
それなら、益々俺がここに呼ばれた意味がわからない。
何が悲しくて、彩の元カレの俺と今カレの拓が、彩を交えて同じ席に着かなくちゃいけないんだろう。それってめちゃくちゃ気まずくない? 俺、そういう展開とか全然望んでいないんだけど。
「そ……それで、拓は一体俺になんの話があるの? 彩のことで相談って?」
あまり長居したくないと思ってしまうこの場所から少しでも早く解放されたい俺は、彩への謝罪もそこそこにして、俺をここに連れて来た拓に話を振ってみた。
まさかとは思うけど、彩の今カレである拓から、彩の元カレである俺に物申したいことがある……とかじゃないよね?
俺、彩と拓が付き合っていようがいまいが好きにしてって感じだし、彩に未練なんてこれっぽっちもないから、彩の今カレに何か言われる筋合いもないと思うんだけど。
「ん、それなんだけど……まあ座ってよ。ちゃんと一から説明するから」
「うん。わかった」
どうやらすぐに済む話でもなさそうだ。拓に促された俺は仕方がなく郁と並んでテーブルに着くことにした。
できれば可能な限り彩とは距離を取りたかったんだけれど、郁より先に奥の席に座った俺は、拓に席を譲るため、奥の席に移動した彩と向かい合う形になってしまった。
いやいやいや。そこは拓が奥の席でも良くなかった? なんで俺の正面に移動してきたんだよ。俺に話があるのは拓なんだから、俺と拓が向かい合う席になるべきなんじゃないの? そう思ったから、俺も正面が空いている奥の席に座ったのに。
「~……」
自分から俺の正面に座った癖に、俺と向かい合った彩はまだ俺の第一声が気に入らないのか、やや恨みがましそうで、俺を非難するような目を俺に向けていたりする。
ひょっとして、俺の第一声を根に持った彩は、俺を非難し続けるために俺の正面に座ったわけじゃないよね? そんな目でずっと見られ続けるなんて御免なんだけど。
彩の視線が気になる俺は、椅子に座り直す振りをして、彩の正面から少しだけ身体をズラしたりもしたんだけれど、そんな俺を見て、彩は呆れた顔になって溜息を吐いたりする。
何、その反応。そんなに俺が嫌いなの? 俺、そんな態度を取られるほど、彩に酷いことをした記憶がないんだけど。
明らかに俺に対して良くない感情を持っていそうな彩にうんざりした俺は、拓の言う相談事に対し、親身になって聞いてあげられる自信がなくなりそうだった。
俺がそんな気持ちになっている中
「俺が司に相談していことっていうのはさ……」
俺と彩の無言のやり取りなんて一切気にしていない感じの拓が、至極真面目な顔をして話を始めた。
午後6時から始まった同窓会は、開始から四時間後にお開きとなり、疲れきった俺が家に帰って来たのは時計の針が11時を回ろうかという頃だった。
「ただいまぁー……」
げっそりとした俺が家の玄関を潜るなり
「おかえりぃ~っ!」
俺の帰りを今か今かと待ち侘びていた悠那が一直線に俺に向かって突進してきて、その勢いのまま俺に飛びついてきた。
「ただいま、悠那」
「同窓会どうだった?」
元気過ぎる悠那をしっかりと抱き留めた俺は、おそらくずっともやもやしていたであろう悠那のおでこにキスを落としてから、悠那の小さな身体をぎゅっと抱き締めてあげた。
「ねえ、司。司と悠那っていつも家でそんな感じなの?」
帰宅するなり、早速悠那と二人きりの世界を展開させる俺だったけれど、家には俺一人で帰って来たわけではなかった。
「へ? あっ! いっ君⁈」
そう。俺は今日、郁を連れて帰宅しているのである。
どうやら悠那の目には俺の姿しか映っていなかったようで、俺の後から玄関を潜った郁の姿は見えていなかったらしい。俺の後ろから聞こえてきた郁の声に、目を丸くして驚いている。
「え? え? なんでいっ君と一緒なの?」
普段、一緒に暮らしているメンバーの前では堂々と俺にキスしてくるし、俺とイチャイチャし放題の悠那も、郁の前でいつも通りのイチャイチャをしてしまったことが恥ずかしかったようで、少しだけ顔が赤くなった。
以前、俺と悠那、郁と祐真の四人でダブルデートをした時には、二人の前でもこれみよがしに俺とイチャイチャした癖に。今更何を恥ずかしがることがあるというのだろうか。
まあ、郁に見られて恥ずかしいという感情よりは、俺が郁を連れて帰って来たことに驚いたついでに、乱れた感情が“恥ずかしい”と錯覚しただけなんだろう。どうせ後二、三分もすれば、郁の前でも平気で俺とイチャイチャし始めると思う。
「ちょっとね。今日の同窓会で話し足りないことがあったから、郁を家に連れて来たんだよ」
「そうなの? いっ君と話し足りないことって?」
俺が今日、郁を連れて帰って来たことには理由がある。その理由を悠那にもちゃんと説明してあげたいんだけれど、俺の中でも何から話していいのかがわからなかったから、曖昧な説明になってしまった。
俺の曖昧な説明では悠那も何が何やらさっぱりわからないようで、きょとんとした顔で小首を傾げ、可愛らしく俺を見上げてくる。
うん。可愛い。やっぱり俺の彼女が最強だ。
元カノにゴミでも見るかのような目で蔑まれた後の俺としては、今カノの愛らしい瞳が俺に向けられていることに、この上ない喜びを感じる。
「悠那、可愛い。大好き♡」
悠那の存在が俺の心を癒し、満たしてくれることで、悠那への愛情も駄々洩れ状態になってしまった俺は、腕の中の悠那を改めて抱き締め直すと、悠那の感触や温もり、匂いまでも大いに堪能した。
「え? え?」
急に悠那に甘えだす俺に、悠那もちょっとわけがわからない感じではあったものの、悠那の腕は戸惑いながらも俺の身体を抱き返してくれていた。
「あのさ、二人がイチャイチャするのは一向に構わないんだけどさ。俺を家に上げてくれるつもりはないの?」
一方、郁の方は目の前で展開される俺達のイチャイチャに、やや呆れ気味な様子である。
「ううん。そんなつもりはないよ」
悠那の顔を見ると、ついついイチャイチャしたくなる俺ではあるが、郁の存在を忘れているわけでも、蔑ろにするつもりでもなかった。
名残惜しくはあったけれど、一度悠那から腕を解くと、まだ靴も脱いでいない郁を家の中に招き入れ、三人一緒にリビングへと向かった。
もちろん、玄関からリビングまでの道では俺の手が悠那の手をしっかり握っていたわけだけど、それについては郁も何も言ってこなかった。
俺、悠那、郁の三人がリビングに顔を出すと
「おー、おかえり。って……どちら様?」
どうやらお風呂上がりらしい陽平は、同じくお風呂上がりの海と一緒にリビングでまったりしている最中だった。
二人がお風呂上がりということは、今ここにいない律が入浴中ということなのかな?
俺を玄関まで出迎えてくれた悠那はまだお風呂に入っていないようだから、俺が帰って来てから一緒に入るつもりだったんだろうな。可愛い。
「あ! もしかして、その人が噂のいっ君さんですか?」
俺が中学時代から連んでいる郁の存在は、うちのメンバーの知るところでもある。
俺の家族と悠那の家族で一緒に旅行に行った際、泊まった旅館が郁の両親が経営する旅館だったし、5月には祐真も含めてダブルデートなんてものまでしているから、うちのメンバーも郁や祐真のことなら会ったことがなくても名前は何度か耳にしている。
「そうだよ」
なので、今更郁がどこの誰だという説明は必要ないのだけれど、噂の、というほどに郁の話をしているわけでもなかった。
「へー。司さんのお友達だけあって、爽やかなイケメンさんですね。悠那君の幼馴染みの祐真君にはまだ会ったことがないですけど、これなら祐真君が好……」
「わぁぁぁ~っ! ちょっと待って! そういう話はナシっ!」
「え?」
俺達が四人でダブルデートをしたと聞いている海は、どうやら郁のことを祐真の彼氏だと勘違いしているのかもしれない。が、郁の方は祐真の気持ちに全く気が付いていないし、あれをダブルデートだとも思っていない。
そんなわけだから、今ここで海に余計な発言をされてしまっては困る。悠那的には郁に祐真の気持ちを知って欲しい気持ちがあるんだろうけれど、恋人同士になっていなくても、せっかく今は交流が深まっているらしい二人みたいだから、しばらくはそっとしておいてほうがいいと思うんだよね。
「あ……そうですか。まだなんですね」
俺が突然大きな声を出して海の言葉を遮ってしまったのは不自然だったけれど、察しのいい海はそれだけで状況を理解してくれたようで助かった。
俺と海のそんなやり取りを見て、悠那はやっぱり少し不満そうな顔だったし、郁は意味がわからなさそうな顔をしていた。
で、陽平はというと、呆れた顔になりながらソファーから立ち上がり、静かにキッチンへと向かった。
多分、俺が連れて来たお客さんにお茶でも淹れてくれるのだろう。
「お会いできて光栄です~。司さんからいっ君さんの話を聞いて、どんな人なんだろう? ってずっと気になっていたんですよ」
「いやいや。こっちこそこんな形でFive Sのメンバーに会えるとは思わなかったよ。いきなりお邪魔してごめんね。迷惑じゃないかな?」
「とんでもないっ! うちはいつでもお客さん大歓迎ですよっ!」
「それなら良かった」
最近の我が家はわりとお客さんがよく来るからな。家の中にメンバー以外の人間がいることに、うちのメンバーも慣れてきたところはある。特に、陽平と付き合い始めた湊さんなんて、しょっちゅううちに遊びに来ているくらいだし。
俺と郁が中学時代からの友達だと知っている海は、気持ちを切り替えた後も郁に対して友好的だった。
海のこういう人見知りをしないフレンドリーなところはとても助かるし、俺も見習うべきところだと思っている。
「同窓会で話が盛り上がりでもしたのか? お前が友達を家に連れて来るとは思わなかったよ」
俺の予想通り、郁のぶんだけではなく俺や悠那のお茶まで淹れてくれた陽平は、俺達三人の前に氷入りのお茶を置いてくれた。
こういうさり気ない気遣いというか、おもてなしをサラリとしてしまう陽平がさすがである。
「ありがとうございます」
何も言わなくてもお茶を出してくれる陽平に、郁は恐縮しつつも意外そうな顔だった。
おそらく、うちのメンバーの中で一番男らしく見える陽平に家庭的な一面があることに驚いているんだろう。
でも、うちのメンバーの中で一番主婦力があるのは陽平なんだよね。これはもう、俺達の共同生活が始まった時からずっと変わらない。俺達の中で陽平はFive Sのお母さん的存在だったりする。
「ちょうどいいや。みんなにも話しておきたいことがあるから、ちょっとだけ付き合ってくれる?」
時間が時間だから、もう律や海は寝ているんじゃないかとも思っていたんだけれど、二人ともまだ起きているのであれば、俺が郁を連れて帰ってきた理由というやつを話しておこう。
幸い、こんな時間に俺が客人を連れて帰ってきても
『俺達はもう寝るから、後は適当にしてくれ』
とはならないみたいだし。
「え。お前がそういうことを言い出すと嫌な予感しかしない」
「もしかして司さん、今日の同窓会で悠那君との関係を暴露しちゃったんですか?」
「ねえ、俺の信用度低くない?」
俺と悠那の関係が身近な人間の間に広まっていく一方だからか、俺がちょっとでもメンバーの前で「話がある」と言うと、真っ先に悠那とのことだと思われてしまう俺ってなんなんだろう。
そりゃまあ、俺に悠那との関係を隠すつもりがあまりないことは認めるけれど、マネージャーにも口止めされている以上、一般人にまで悠那との関係を暴露するつもりはないよ。
と言いつつ、郁には俺と悠那の関係を打ち明けてしまっているが、それは俺が郁のことを信頼しているのと、郁がそういう話を外部に漏らさない人間だと知っているからだ。
自分が一般的な恋愛をしていない自覚はあるから、いくら悠那との関係を隠すつもりがなかったとしても、打ち明ける相手くらいは俺も選ぶ。
「だって、知らない間にどんどん広まっているじゃないですか。司さんと悠那君の関係」
「同窓会で“彼女いるの?”って聞かれて、お馬鹿なお前がさも当然顔で“いるよ”って答えたのかと思うだろ」
「俺、陽平の中でお馬鹿ポジションなの?」
「おう。お前と悠那は俺の中じゃお馬鹿だな」
「酷っ! 俺まで一緒なの⁈ まあ、司と一緒なら別にいいけどっ!」
俺の隣りでおとなしくしていた悠那は、いきなり自分までお馬鹿扱いされたことに腹を立てたが、俺と一緒にお馬鹿扱いされたことにはちょっと喜んでいた。
きっと、悠那のそういうところが陽平の中で“お馬鹿”と思うところなんだろうけれど、俺としては悠那が可愛ければお馬鹿でもなんでもいい。もちろん、俺も悠那と一緒のお馬鹿で構わない。
「あ。でも、ちょっと待ってください。みんなにって言うなら、律がお風呂から出てくるまで待ってくれませんか? 多分、もうすぐ出てくると思いますから」
この流れで俺の話が始まってしまうと思ったのか、海は今この場にいない律を気遣って口を挟んできた。
「ああ、うん。そうだね」
海が口を挟んでくれなかったら、そのまま話を始めてしまいそうだった俺は、海に止めてもらって良かったと思う。
ここで誤解のないように言っておくけれど、俺は何も律の存在を忘れていたわけじゃないし、今からする話は律にも聞いて欲しいと思っている。
だけど、今日の同窓会で拓の口から聞かされた話は、あまり俺の中で長く留めていたくなくて、早くみんなに話してしまいたいという気持ちが強かった。
「……………………」
心なしかそわそわし始める俺の様子に気付いた悠那は、眉間にちょっと皺を寄せると
「もしかして、司の話って元カノ関係の話?」
少しだけ怖い顔になって俺を見上げてきた。
「ん……まあ……そういうことにはなるんだけど……」
正直、悠那の前でこの話はしたくない気もするんだけれど、俺の元カノに関する話になると悠那が一番気に病むことでもあるのだろうから、悠那に話さないわけにもいかないんだよね。
「でも、悠那が心配するような話じゃないから。ただまあ、一応みんなに話しておいた方がいい話ってだけだよ」
律がお風呂から出てくるまでは俺も曖昧なことしか言えず仕舞いになってしまうんだけど
「司の元カノ関係で俺達に話しておいた方がいい話って何? その時点で俺は充分心配だよっ!」
悠那のヤキモチは既に発動してしまったようで、顔には思いきり「面白くない!」って書いてある。
「まあまあ悠那。落ち着いて。別に司と元カノがどうこうって話じゃないから」
そんな悠那を宥めてくれたのは郁で、今日の同窓会に俺と一緒に出席しているうえ、俺の元カノを知っている郁の言葉には、悠那も少しは冷静になることができるようだった。
やっぱり郁を連れて来たのは正解だったよね。俺一人だと悠那のヤキモチが大爆発するだけだったかもしれないから。
「なんだ、悠那。お前、司の言葉より郁の言葉に素直に従うんだな」
まあ、陽平の言う通りであるところには俺の方こそ面白くないし、ヤキモチを焼いてしまいそうではあるんだけれど。
でも、俺も悠那もお互いのことが好き過ぎて、ヤキモチを焼く対象を目の前にすると冷静になれない時もあるからね。そういう時は第三者の存在が必要なこともある。
「司さん帰って来たんですか?」
俺が郁を連れて帰って来てから10分ほどが経過した頃。お風呂上がりでサッパリした顔の律がリビングに現れ、いつものメンバーの中に郁が混ざっている光景を目にした途端、瞬時に時が止まってしまっていた。
海と違って人付き合いがやや苦手で、人見知りをする傾向にある律は、突然のお客さんに慣れてきたとはいえ、知らない人には警戒心を剥き出しにしてしまうのである。
しかし
「いっ君さんだよ。司さんが連れて来たんだ」
わざわざソファーから立ち上がり、律の傍まで行って説明する海にほっとしたのか
「いらっしゃい。初めまして」
海ほど友好的ではなかったものの、郁を歓迎する態度は見せてくれた。
律からしてみれば、お風呂から出てきたら知らない人が家の中にいるわけだからびっくりするのは当然だし、海みたいにいきなりウェルカムモードにはなれないよね。
「司さんが僕達に話があるんだって」
律に歩み寄ったついでに、お風呂上がりの律をソファーまでエスコートする海がそう言うと
「え。何それ。怖い。まさか、同窓会で悠那さんとの関係を明かしたとか、そういう話?」
律は数分前の陽平と海の反応を足したような反応をした。
「~……」
どうやら俺、メンバーからは知り合いの顔を見たら悠那との関係を広める奴だと思われているらしい。その誤解は追々解いていこうと思う。
「えっと……じゃあみんな揃ったことだし、早速話をさせてもらうね」
別に何か悪いことをしたわけでもないのに、俺を見るメンバーの目が疑いと不安に満ちているあたりが気まずい。
一瞬、郁の口から話してもらおうかとも思ったけれど、ぶっちゃけ郁には全く関係がない話でもあるから、そんなことを郁に話してもらうのも気が引ける。
(大丈夫。俺は何も悪くない……)
そう自分に言い聞かせた俺は、俺が拓から聞いた話をそのままここで話せばいいだけなんだ、と開き直り
「俺の元カノ、グラビアアイドルになってた」
心の動揺をやや引き攣った苦笑いで誤魔化しながら、俺の言葉を待つメンバーに向かってそう伝えた。
「……………………」
「……………………」
「……………………」
俺の言葉に悠那、律、海の三人は絶句し、唯一反応を返してくれた陽平すら
「…………え?」
の一言だった。
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