僕らの恋愛経過記録

藤宮りつか

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Final Season

    別れた女は要注意⁈(2)

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 郁から同窓会に誘われた翌日。俺は自分の言葉通り、マネージャーに9月末までのスケジュールを確認したついでに、同窓会なるものに出席してもいいかどうかも確認しておいた。
 マネージャーからは
「いいわよ。地元の友達って大事だし。同窓会に出席することに問題はないわ。ただし、事務所を通していない写真が大量にネットに流出しないようにだけはしてね。集合写真くらいなら構わないけど」
 とまあ、若干面倒臭く感じてしまう条件付きでオッケーを貰ったわけだけど、そのことを郁にメールで伝えると
《了解。そのへんはこっちからも注意しとく》
 という返事が返ってきたから、俺はそのまま人生初の同窓会に参加することになったのであった。
 郁に「都合のいい日を教えて」と言われた日から、実際に俺が同窓会に参加できそうな日はそんなに時間が空いているわけでもなかったんだけど、俺が郁にスケジュールの空きを教えた三日後には、郁から同窓会の案内メールが送られてきた。
 その案内の中には“全員参加”の文字まで、ご丁寧に記載されていた。
「うわぁ……全員参加かぁ……」
 俺の予想だと、なんだかんだで一割二割の人間が来られないだろうと思っていたんだけどな。
(全員参加になってしまったら……)
 もれなく俺の高校時代の元カノも参加することになるじゃん。
 俺が彼女と付き合っていたのは高校二年生の時ではあったけれど、その彼女とは高二、高三と同じクラスだった。俺が通っていた高校は、二年生から三年生に進級する際のクラス替えがなかったからだ。
 卒業時のクラスで行われる高校の同窓会では、俺と元カノのどちらかが欠席しない限り、お互いに顔を合わせることになってしまうのである。
 ぶっちゃけ、俺にはもう終わった恋だし、多少の気まずさはあるだろうが、特に彼女のことを意識することもないんだけれど、同窓会に俺の元カノが来ると知った悠那は面白くないんだろうな。
 最初、同窓会に元カノが来ると知った時は、悠那に黙っていようかとも考えてしまったけれど、悠那に隠し事はしたくないし、後ろめたい気持ちがないのであれば堂々としているべきだとすぐに思い直し、悠那にそのことを伝えておいた。
 それが同窓会三日前の夜の話だった。
「えーっ! 結局元カノ来るんじゃんっ! すっっっごい嫌ぁっ!」
 俺から同窓会に元カノが出席する話を聞いた悠那は盛大に嫌がった。嫌がった挙げ句
「普通は遠慮して来ないものじゃない? 司の元カノの神経を疑っちゃうっ!」
 何故だか彼女の人間性を否定するようなことまで言い出した。
 いくら同窓会とはいえ、俺に元カノと顔を合わせて欲しくないから、そんなことを言っているのはわかるんだけど、せっかく高校時代のクラスメートが集まる同窓会なんだから、彼女だって“行きたい”と思うだろう。むしろ、俺が参加する方がおかしいんだから。
 と思いきや
「そんなわけだから、司は俺のヤキモチを全力で鎮めるべきっ!」
 悠那も自分が我儘で理不尽なことを言っている自覚があるのか、俺にヤキモチの鎮静を要求してきた。
 ヤキモチを焼くあまり、意地悪な発言をしてしまう自分が嫌だから、そのヤキモチをどうにかして欲しいらしい。どんな可愛い発想なんだ。
「全く悠那は……。こっちおいで」
 俺と向かい合った悠那はぷぅっとほっぺたを膨らませ、恨みがましそうに俺に向かって怖い顔をしていたけれど、俺が両手を広げてみせると、あっという間に相貌を崩して俺の腕の中にダイブしてきた。
 俺はそんな悠那をしっかりと抱き留め、俺の腕の中にすっぽりと収まってしまう悠那のおでこに、ちゅっ、とキスをしてあげた。
「えへへ♡」
 たったそれだけのことで嬉しそうな顔になる悠那に、俺は早くもナニがおっ勃ちそうだ。
 俺が元カノと再会することを盛大に嫌がった悠那だから、今日は悠那の機嫌を直すのにも苦労しそうだと思ったが――。初っ端に盛大に嫌がってみせたついでに、元カノの悪口まで言ってしまったからか、悠那の機嫌は意外と早く直ってくれそうだった。
「そんなに俺と元カノが再会するのが嫌なの?」
「そりゃそうだよ」
「でも、俺に未練なんかないし、そもそも、俺が彼女を振ったんじゃなくて向こうが俺を振ったんだよ? 今更向こうも俺に未練なんてないと思うけど?」
「甘いよ、司。甘いしわかってない」
「え?」
 腕の中の悠那を甘やかしながら、まさに悠那の不安を取り除いてあげるべく会話に全力を尽くそうと思っていると、逆に悠那から忠告めいた言葉を浴びせられてしまい、心臓がドキッとなってしまった。
(俺、甘いの?)
 でも、今言ったように、俺が彼女を振ったんじゃなくて、彼女が俺を振ったんだよ?
 そりゃまあ、俺に告白してきたのも彼女ではあったけれど、実際に付き合ってみたら俺が思ったような男じゃなくてがっかりしたってことなんだろう。
 そんな相手に彼女も未練なんてないと思うのは当然だし、自分の考え方が甘いとは思わないんだけどなぁ……。
「えっと……俺って甘いの?」
 一体俺のどこがどう甘いのかがわからなくて、悠那にそう言われてしまう理由を聞いてみると
「あのね、司。昔と今じゃ元カノにとっての司の価値は全然違うの。司がまだ普通の高校生してた時は、彼女にとっての司は同じ学校に通う彼氏だったり元カレで済んだけど、司がアイドルとしてデビューした瞬間、彼女は今をときめくアイドル、Five Sの蘇芳司の元カノに昇格したわけ。彼女からしてみれば、そりゃもう誇らしいわけだよ。多分、司がFive Sのメンバーとしてデビューした直後に、いろんなところで自慢してると思うよ。あれは自分の元カレなんだって」
 とまあ、物凄く饒舌じょうぜつに説明してくれた。
 なるほど。そういう考え方もあるのか。なんか俺、アイドルになるってなった途端に学校まで辞めちゃったから、アイドルになる前となった後では自分の人生が別物になっている気分だったよ。
 これまで元カノの存在が一切気にならなかったのも、俺の中では一度リセットされた別人生の話だったからだと思う。
「きっと今頃、元カノはさぞ後悔してるだろうね。せっかく未来のアイドルと付き合っていたのに、そんな司をあっさり振っちゃってさ。もしかしたら、今度の同窓会でヨリを戻そうとしてくるかもよ?」
「まさか……。だって俺、彼女と別れた後はロクに口も利いてないんだよ? いくらなんでも、そんな相手とヨリを戻そうだなんて考えてないでしょ」
「だからっ! その考えが甘いって俺は言ってるのっ!」
「そうかなぁ?」
「そうなのっ! 大体、司って女の子の押しに弱いところがあるんだからっ!」
「うーん……」
 悠那の心配し過ぎなようにも思うけど、痛いところを衝かれてひるんでしまいそうだった。
 俺が高校時代に付き合っていた彼女はちょっと気が強いうえに押しも強くて、自信家なところがあったと思う。
 実際に顔は可愛かったし、スタイルも良かったから、彼女が自信家になるのもわからなくはなかった。男子からも結構人気がある女子だったし。
 そんな彼女がどうして俺のことを好きになったのかは知らないけれど、俺が告白の返事に悩んでいると
『私と付き合ったら絶対に楽しいよっ!』
 って言われた。
 当時の俺はそれなりに異性に興味があったものだから、可愛い女子にそんなことを言われてしまうと、ついつい「この子いいかも♡」なんて思っちゃって……。
 彼女の勢いに押されたところもあるけれど、彼女と付き合うことにしたんだよね。
「それに、司って高校時代はその子としか付き合ったことがないんでしょ? 彼女からしてみれば、自分と別れた後に司が誰とも付き合っていないことも、まだチャンスがあると思いそうなところじゃん」
「でも俺、今は悠那と付き合ってるよ?」
「そんなの司の元カノは知らないじゃんっ!」
「そっか。それもそうだね」
 なんかもう、俺と悠那の関係が身近な人間の間でどんどん広まっていく一方だから、俺の知っている人間は全員俺と悠那の関係を知っているものだと勘違いしてしまいそうだった。
 しかし、現実にはほとんどの人間が知らないことなんだよね。
 俺の学生時代の知り合いなんてその最たるもので、俺が高校を辞めた後に連絡を取っていたのは郁くらいのものだから、他の連中が俺の現恋人を知っているはずがなかった。
「全くもう……司は呑気なんだから」
 俺の中では当たり前のことを言っただけだったのに、悠那に呆れられてしまった。
 今の生活に慣れ過ぎているせいもあるのか、悠那との関係が当たり前になってしまっている俺にとっては、今更元カノだのなんだのという存在は面倒臭いだけだったりもする。
 ただでさえ、俺は悠那と付き合う前に彼女を作ってしまったことを、後悔しているところがあるくらいなのに。
「でもさ、悠那。仮にもし俺の元カノが俺とヨリを戻そうとしていたとしても、俺にその気がないんだからどうにもならないよ。俺は悠那だけなんだから」
 機嫌はそんなに悪くなさそうだけど、元カノに対するヤキモチはなかなか治まりそうにない悠那を抱き締めて、とびっきり優しい声でそう言ってあげると
「それはわかってるんだけどぉ……」
 悠那は甘えた声を出しながら、俺の胸にぴたっとほっぺたをくっつけてきた。
 そして
「司を好きになる子ってなんかしつこいんだもん。だから、俺も心配になっちゃうの」
 拗ねた上目遣いで俺を見上げてくるから、俺のナニがピクンって反応してしまった。
 女子より可愛い上目遣いをする悠那ってなんなんだろう。やっぱり俺の彼女って最強じゃん。
「えっとぉ……それはありすさんのことを言ってるのかな?」
 最近は一緒にやっているランキング番組以外で会うこともないけれど、悠那は未だにありすさんが俺に気があると思い、それが面白くない様子である。
 なまじ自分が朔夜さんとの関係に終止符を打てたものだから、いつまで経っても俺に好意的なありすさんのことが気に入らない気持ちはわかる。
 でも、ありすさんのことはちゃんと振っているし、いくらありすさんに好意を寄せられていても、俺がその気持ちに応えることはない。ありすさんとは仕事上の付き合い以上の関係になったこともない。
 それに、朔夜さんとの関係に終止符を打った後も、朔夜さんは相変わらず悠那がお気に入りで、仕事で会えば必ずと言っていいほど悠那のお尻を揉んでくる。
 葵さんと付き合うことになったはずなのに、恋人以外のお尻を揉むのはいいのか? それも、葵さんが見ている前でもお構いなしだ。
 目の前で恋人以外のお尻を揉む朔夜さんに、さすがの葵さんも怒るんじゃないかと思いきや
『朔夜は相変わらず悠那君のお尻が好きだね。どれどれ、僕も揉んでみようかな』
 とか言って、朔夜さんと一緒になって悠那のお尻を揉むことすらあった。
 一体どういうカップルだ。揃いも揃って自分の恋人以外のお尻――それも、俺の恋人のお尻を好き放題揉むだなんて。
 厄介者が一人から二人に増えただけじゃん。勘弁してよ。
 これには悠那もびっくりで、もう朔夜さんにお尻を揉まれることもないだろうと安心しきっていただけに、会えば今まで通り自分のお尻を揉み倒してくる朔夜さんと、それに便乗してくる葵さんに
『いやぁぁぁ~っ! どうして⁈ どうしてなのぉ~っ⁈』
 と悲鳴を上げながら、二人にお尻を揉まれ放題になっていた。
 そんな悠那が不憫で可哀想ではあったんだけど、可愛くもあった。もちろん、俺もどうにかこうにかして、悠那を二人の魔の手から救い出してあげた。
「そう。ありすちゃんのことは嫌いじゃないけど、一体いつになったら司のことを諦めてくれるの? って思う時はある」
「そうなんだ」
 俺を好きになる子がしつこい、という実例として、俺と一緒に番組をやっているありすさんの名前を出されてしまうと、俺もなんとなく気まずい。
 そうは言っても、ありすさんとは悠那と付き合う前から一緒に番組をやっているし、俺が望んでありすさんと共演をしているわけでもないから、俺にはどうしようもできないことなんだよね。
 そもそも、ありすさんは俺と悠那の関係を知っているから、未だに俺のことを好きだとしても、なかば諦めているところはあると思う。
 女性アイドルグループの中でも高い人気を誇るDolphinの一番人気、橋本ありすでさえ、悠那の可愛さには勝てないと認めているようなところがある。
「っていうかさ、ありすちゃん可愛いんだから、何も司じゃなくても誰とだって付き合えるじゃん。早く彼氏作っちゃえばいいのに」
 かく言う悠那は悠那で、ありすさんのことは可愛いと認めているみたいだから、余計に俺を好きでいて欲しくないという思いがあるみたいだった。
 昔に比べると、悠那のありすさんに対する態度も随分と柔和になってくれたことは助かる。
「悠那は俺の周りにいる女の子には全員ヤキモチ焼くんだから」
「そんなことないよ。尊さんにはヤキモチ焼かないもん」
「いやいや。そこにヤキモチ焼かれたら、俺もめちゃくちゃ嫌だよ」
 俺も悠那のことを言えないくらいのヤキモチ焼きではあるけれど、悠那が俺の姉ちゃんにまでヤキモチを焼き始めたらちょっと嫌だ。
「まあ、今のはちょっとした冗談。でも俺、司のことが好き過ぎちゃって、ヤキモチ焼かないようにしようと思っても無理なんだよね。だって司格好いいもん。大概の女の子は司が傍にいたら好きになっちゃうよ」
「俺、そこまでモテモテな人生を送った記憶はないんだけどね」
 先日の陽平や海に続き、悠那からも様子を褒められた俺は、うっかり調子に乗ってしまいそうになった。
 正直、俺にその自覚はあんまりないんだけれど、応募者多数のオーディションで審査員の目に留まり、こうしてアイドルとしての日々を順風満帆に送れているわけだから、自分の容姿に全く自信が持てないとまでは言わない。それって逆に嫌味になるんだろうし。
 でも、これまで女子から“モテた”という記憶がないのも事実。
 確かに、何度か告白されたことはあるし、実際に彼女がいた時期もあるにはあるけれど、それって結構普通のことだったもんね。俺の周りには普通に彼女持ちが何人もいたから。
「あのね、告白された回数とか、付き合った人間の数でモテる、モテないが決まるわけじゃないの。好きでもなかなか告白する勇気がない子だっていっぱいいるんだから」
「それはそうかもしれないけど……でも、そういうのがないと、好かれている方としては気が付かないから、自分がモテるとは思わないんじゃない?」
「もー。ああ言えばこう言うんだから。司に自覚はなくても司はモテるのっ! これ絶対っ!」
「わ……わかった……」
 何やら決めつけられてしまった。でもまあ、悠那がそう言うならそうなのかもしれない。そういうことにしてしまおう。ここで悠那に反論する気にもならないし。
「あー……元カノとの再会も嫌だけど、他の同級生女子と司が再会するのも嫌だなぁ……」
「そんなこと言われたら、俺は同窓会に行けなくなっちゃうよ」
「うー……。本当は行って欲しくないけど、さすがにそんなこと言い出したら俺が面倒臭い我儘を言ってるみたいになるのが嫌なんだよね」
「今“行って欲しくない”って言ったのに?」
「だって本音だもん」
「ほんと、悠那は素直で可愛いね」
 悠那は物凄くヤキモチ焼きではあるけれど、俺との交際期間が長くなるにつれ、我儘を言って俺の行動を制限することを嫌がる傾向にある。
 だけど、物凄くヤキモチ焼きだから、本音はいつだって俺に言ってくる。
 正直な話、悠那が「同窓会に行かないで」と言えば、俺は迷わず同窓会への不参加を選ぶし、そのことで悠那を面倒臭いとも思わないんだけどね。
 それでも、悠那はなんだかんだと文句や不満を言いながら、散々ヤキモチも焼きながら、俺にある程度の自由を与えてくれるのである。
 俺は悠那を一層強くぎゅっと抱き締めると、まだちょっと拗ねているような悠那の顔に、これでもかってくらいにキスの雨を降らせてやった。
「んっ……ぁんっ……もうっ……」
 最初はヤキモチを焼いている最中だからと、俺からのキスに顔をしかめたりしていた悠那だけど、俺がしつこく、ちゅっ、ちゅっ、とキスを浴びせていくうちに、それがくすぐったくなってきたのか、肩を竦めて小さく笑い始めた。
「やだ、もう……擽ったいよ」
「そう? 俺は擽ってるわけじゃないんだけどね」
 悠那の声が楽しそうになったところで、今度は悠那の柔らかい耳朶を唇で挟み、唇で挟んだ耳朶にちゅうぅっと甘く吸い付いてやった。
「ぁんっ……」
 敏感で感じやすい耳朶を吸い上げられた悠那は、ぶるっと身体を震わせて、切なそうな声を漏らした。
 これは悠那が感じた証拠で、ヤキモチを焼いている最中だろうがなんだろうが、俺の愛撫にはしっかり感じてしまう悠那がエロ可愛い。
「ちょっと……俺、まだ司と大事な話してる途中なのに……」
 悠那の中ではまだ俺に話があるのに、俺が悠那とエッチしたくて仕方がない雰囲気を出し始めると、悠那もその雰囲気に釣られたのか、唇を尖らせながらも俺に擦り寄ってきた。
 エッチ大好きな悠那をその気にさせるのは簡単だけど、悠那が俺としたい大事な話をないがしろにするつもりはないから、悠那の身体をゆるゆると愛撫しつつも
「大丈夫。悠那の話はちゃんと聞いてるよ」
 と、話をしながらエッチをしよう、と提案してあげた。
「うん……」
 悠那は俺の言葉にほっとした表情になりながら、俺からのキスを受け入れた。
 柔らかくて甘い悠那の唇に触れただけで、身体の奥からどんどん欲望が溢れ出してきて、悠那が欲しくて堪らなくなる。
 最初は戯れのようなキスだったのに、次第にどんどん深く、貪るようなキスへと変わっていくと
「んんっ……ぁっ、ん……んっ……んぁっ……」
 悠那の口からは感じる甘い声が漏れ始めて、俺とのキスに夢中になっていくようだった。
「ぁんっ……司は……元カノともこういうキスしたの?」
 三日後に控えた同窓会で、俺と元カノが再会することが気になる悠那は、俺の唇が悠那の唇から離れた瞬間、すっかり蕩けきった顔でそんなことを聞いてきた。
「ううん。こんなに欲情に任せたキスは悠那としかしたことがないよ。彼女とのキスはもっとソフトな感じだった」
 エッチな顔になった悠那に満足する俺は、悠那の服に手を掛けながら、悠那からの質問にもちゃんと答えてあげた。
 恋人同士ではあったから、元カノとキスしたことくらいはあるけれど、彼女とのキスは悠那とするキスとは全然違っていた。
「でも、元カノの胸は触ったことがあるんだよね?」
 俺の指がシャツのボタンを外しに掛かると、悠那はその下の自分の真っ平らな胸を気にしたのか、そんなことも聞いてくる。
「まあ……ちょっとだけね。彼女、なかなかおっぱいが魅力的だったから」
 さすがにちょっと気まずい気持ちにはなったけれど、悠那には俺が元カノの胸を揉んだことがあるという事実を知られているから、そこも素直に答えてあげた。
 俺の高校時代の彼女は顔もスタイルも良かったけれど、胸の大きさにも目を引く子ではあったんだよね。
 せっかく彼氏になったなら、そりゃ「触ってみよう」くらいは思っちゃうでしょ。高校生男子にとって巨乳はロマンでもあったわけだから。
「どんな風に触ったの? その時の彼女の反応は?」
「えっと……ただ普通に、胸全体を両手で揉んでみただけだよ。特別エッチな揉み方なんかしてないし、乳首も触ってない。彼女の反応はまあ……恥ずかしがってすぐに“ダメ”って言われたかな」
「女の子のおっぱいって、やっぱり柔らかくて気持ちいいの?」
「そりゃまあ……。その時は“おっぱいってこんなに柔らかいんだ”ってびっくりしたけど、今は悠那のおっぱいが一番だよ」
 元カノと今カノの胸なんて比べるものではないし、そもそも悠那と元カノじゃ性別自体が違うから比べる対象にもならない。でも、悠那は自分に胸がないことが気になってしまう時もあるらしい。
 胸なんかなくても悠那のおっぱいが一番だって、いつも言っているのに。
「むぅ……司はそう言ってくれるけど、おっぱいなんてない俺からしてみれば、なんだかちょっと釈然としない」
「えー……」
 俺は本当のことを言っているのに、俺の手によって露わにされた自分の真っ平らな胸を見下ろす悠那は大層ご不満な様子だった。
 そんなことを言われましても……だ。俺はむしろ、悠那のこの真っ平らなのに柔らかくてエッチな胸のほうが、女の子のふくよかなおっぱいより魅力的で、大好きなんだけどな。
「嘘は言ってないよ。俺は悠那のおっぱいが大好きだよ」
 悠那の機嫌を直してあげるための発言ではあったけど、この一文だけ聞くと、俺がおっぱい好きの変態みたいだな。
 まあ、男なんてみんなおっぱい大好き星人だろうけど。
「でもさ、司は元々普通に女の子が好きだったんだから、やっぱり女の子の身体のほうがいいんじゃないかな? って不安になる時はあるんだよ」
 おそらく、悠那のこの心配は悠那が男である以上、ずっとついて回る心配事なのかもしれないけれど、以前、悠那と一緒にAVを見て、なんの反応もしなかった俺のことを少しは信じて欲しいものである。
 俺、今はどんなに大きいおっぱいを生で見ても、ナニがピクリとも反応しない身体になっているんだから。
「ほんと、悠那は心配性なんだから。悠那より女の子の身体のほうがいいなら、こんなに毎日悠那に欲情なんてしてないし、悠那とセックスだってしてないよ」
 この発言は効果があったようで、悠那の服を器用に脱がせながら、悠那の薄い胸にキスを落としてあげると
「っ……そう……だよね……」
 悠那は小さく息を詰め、切なげな表情になって答えてくれた。
 悠那の話はまだ終わっていないのかもしれないけれど、俺を容赦なくそそってくる悠那の身体を目の前にして、俺も我慢ができなくなってきた。
 悠那の服を取り除き、本格的に悠那の身体を愛撫し始めると、悠那も会話どころじゃなくなってしまったようだった。
「んっ、ぁ……んんっ……っ……ゃあっ……司ぁ……」
 悠那の口からひっきりなしに甘い声が漏れ始め、悠那の体温もどんどん上がっていき……。煽情的に波打つ悠那のしなやかな肢体に俺も夢中になっていく。
 こうなってしまうと
「話の続きはまた後で……ね」
 となってしまう俺達だった。


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