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Final Season
第8話 一緒が楽しい秘訣(1)
しおりを挟むこの春。事務所の引っ越しと一緒に僕達がFive S専用の新居に引っ越してきてから四ヶ月が過ぎた頃――。
世間はすっかり夏になっていた。
夏も夏。夏真っ盛り。って感じで毎日暑い。なんてったって8月だもん。そりゃ暑いよね。一年の中で最も暑い一ヶ月だもん。
でも、僕はそんな暑い夏が結構好きだったりもする。
毎日茹だるような暑さや、ちょっと身体を動かすだけでも大量の汗が流れるのは困りものだけど、夏には夏にしかない良さがあるし。天気がいい日の強い日差しや青い空は、露出した肌も相俟って、頗る解放的な気分になれていい。
ついでに言うと、まだ学生を続けている僕としては、夏休みの存在も嬉しい。
正直に言うと、完全オンライン制の大学に通っているから、あまり夏休みを実感できないところもあったりはするけれど、それでも、どんなに忙しい日でも毎日必ず一コマ分の講義動画は見るようにしている学生生活から、一時的に解放されるのは気が楽だった。
夏は色々と忙しいからね。“今日も講義動画を見なくちゃ!”って思わなくていいぶん、仕事にも専念できる。
7月に二枚組のニューアルバムを出したばかりの僕達Five Sは、そのアルバムを引っ提げ、今年の夏は全国七ヶ所でのツアーも組まれている。
そんなわけだから、テレビや雑誌、ラジオの仕事に加え、ライブの練習や準備で忙しい日々なのである。
でも、全然大丈夫。問題ない。
だって、どんなに忙しい日々を送っていても、僕はいつでも律と一緒にいられるから。
どんなに毎日が暑かろうが、仕事に忙殺されていようが、律と一緒にいられるだけで、僕の毎日はパラダイスなのである。
恥ずかしがり屋で不器用な律相手じゃ、司さんや悠那君のようにラブラブ三昧というわけにもいかないけれど、律の全てが大好きで堪らない僕は、僕に対して塩対応な律でさえ可愛くて仕方がないし、子供の頃からの付き合いでもある律のことは誰よりも理解しているという自負もあるから、塩対応の奥に隠れた照れ隠しや愛情表現に気が付くと、嬉しくなったりもする。
それに、律はなんだかんだと僕に甘い。
問答無用に断固拒否を貫くこともあるけれど、僕の我儘には一応耳を傾けてくれるし、僕からの押しには弱いところもある。
今の新居に引っ越してきた時だって、最初は悠々自適な一人部屋を希望していた律は、僕が駄々を捏ねたことにより、引き続き僕との相部屋を承諾してくれた。
律の話では、必要に応じて部屋を分ける、という話ではあったけれど、新居に引っ越してきてから四ヶ月。元々二つの部屋を一部屋として使っている僕と律の部屋が、一部屋ずつに分けられたことはまだ一度もない。
それは、ただ単に部屋を二つに分ける作業が面倒臭いから……というわけではない。むしろ、部屋の仕切りはボタン一つで簡単に上がったり下がったりする仕組みだ。そのために、仕切りが下りてくり場所には何も家具を置かないようにしているくらいだ。
僕は当初、律が事あるごとにそのボタンを押すんじゃないかと、内心ビクビクしていたものだった。
でも、実際に僕達の部屋に仕切りの壁が下りてきたことはない。ここに引っ越してくる前に約二年半、律と同じ部屋で一緒に生活していた実績が功を奏した結果……なのかどうかはわからないけれど、とりあえず、この四ヶ月の中で律はわざわざ僕と部屋を分ける必要性は感じなかったらしい。
この調子で行くと、僕達は一生部屋を分ける日なんて来ないんじゃないかと、僕もようやく安心してきた頃である。
「それでさ、陸ってば基本的には使ったものをそのまま放置が多くてさ。水回りなんかもいつも水浸しのままで困るんだよな」
「うーん……それはさ、僕に愚痴るより、陸とちゃんと話し合った方がいいことなんじゃないの?」
「もう何回も陸本人に言ってることだけど、一向に改善されないから海達に相談してんの」
「と、言われましても……」
この家に引っ越してきてから四ヶ月目にして、初めて部屋の仕切りが活用されることになった事実に、僕はがっくりと肩を落としている真っ最中であった。
と言っても、これは僕と律の間に何かしらの問題が生じたからではなく、今から二時間ほど前にうちに遊びに来た陸と京介のせいである。
先月――正確には6月末日――から、それまで住んでいたZeusの寮を出て、都内のマンションでルームシェアを始めた陸と京介は、初めての二人暮らしがあまり上手くいっていない様子。
今日はたまたまお互い時間に余裕のあるスケジュールになっていたから、それを知った陸と京介が、僕達に共同生活を上手く送るためのコツみたいなものをわざわざ聞きに来た……というわけである。
しかし、一体どういうところが上手くいかないのかと原因を聞き出している最中に、陸と京介が険悪になりそうな雰囲気になってしまったから、僕と律が二手に分かれ、二人から別々に話を聞いてアドバイスをすることになった。
その際
『別々に話を聞くなら、部屋も分けた方がいいよね』
ということになってしまい、僕と律の部屋が二分されることになってしまったのである。
全くもう……。全くもって予想外。大誤算って感じだよ。
まさか二人の話を聞いてあげることで、僕達の部屋が分断されるまでに発展するとは思わなかった。二人の話を僕達の部屋で聞いてあげることにしたのが失敗だったよね。
これがまだ、一階のリビングで話を聞いてあげていたら、不味い雰囲気になっても一階と二階に分かれるだけで、僕達の部屋を分断する必要はなかったのに。
でもまあ、二人がうちに遊びに来た時、うちの中にはまだ司さんと悠那君がいたし。二人がダイニングでそこはかとなくイチャイチャしながら、朝御飯なのか昼御飯なのかわからないものを食べている中、陸や京介と真面目な話なんてできなかったもんね。
そんな二人も
『今日はこれから夕方まで司とドライブデートしてくるね』
って言ってたから、今はもう家にいないんだけど。
ちなみに、陽平さんは陽平さんで朝早くから湊さんに呼び出され、嫌々ながらもデートに出掛けているから家にはいない。
今日のFive Sは夕方からダンスレッスンが入っているだけで、実質ほぼオフみたいなものだった。
7月5日にニューアルバムを出して以降、休みらしい休みは一日もなかったからな。今日は息抜き日みたいなものだった。
CROWNもCROWNで今日はほぼオフと同じようなスケジュールらしいから、こうして陸と京介が僕達の家に遊びに来ているし、湊さんが陽平さんをデートに誘っているわけである。
唯一、名前が出てこない玲司さんは何をしているのかと尋ねてみたところ
『今日は時間が許す限り、撮り溜めしてるアニメを見るって言ってた。あの人、よっぽど興味を引かれないアニメ以外、放送されるアニメは全部見るつもりでいるから。時間がいくらあっても足りないんだって』
という返事が返ってきた。
それはそれで凄いな。僕も時々アニメは見るけど、毎週欠かさず見ようと思ったら、三、四作品が限界って感じなのに。
「Five Sはデビューする前からメンバーと共同生活を送ってるけど、最初から上手くいってた?」
「え? いや……そうでもないよ」
話は戻って、共同生活を上手く送るためにコツである。
しかしながら、はっきり言って僕や律はメンバーとの共同生活を送るにあたり、あまり苦労らしい苦労を感じたことがないから――不慣れな家事には苦戦したけど――、コツと聞かれてもよくわからないんだよね。
そういう話は僕と律じゃなくて、陽平さんや悠那君に聞いた方がいい気がする。うちのメンバーの中で、共同生活で一番揉めたのがあの二人だから。
まあ、陽平さんは悠那君限定で揉めてたって感じなんだけどね。うちのメンバーの中で一番共同生活に不向きだったのが悠那君だったから。
「うちも最初は結構陽平さんと悠那君が衝突してたよ。よく陽平さんが悠那君の説教をしてたもん」
「そうなんだ。まあ、あの二人を見てると、なんとなくそんな感じがするかも」
「かく言う僕も、メンバーとの共同生活が始まったばかりの頃は、律に色々言われることもあったけどね」
さっき、メンバーとの共同生活にあまり苦労を感じたことがないと言ったけど、だからって僕にも全く問題がなかったわけじゃない。
特に、二人で同じ部屋を使うことになった律には、僕のダメなところをあれこれ指摘され、注意もされたものだった。
いくら子供の頃からの付き合いで、お互いにどんな人間なのかをよくわかっていたとしても、毎日同じ部屋で一緒に生活するとなると、見過ごすわけにはいかない部分が出てきてしまうのは仕方がないことだよね。
でも、僕は律と毎日同じ部屋で一緒に過ごせることに浮かれていたから、律に対してはなんの不満もなかったし、律に注意されたこともすぐに改めようと思ったから、律と揉めることはなかった。
そもそも、メンバーとの共同生活が始まる直前に律と恋人同士になった僕は、律の言うことはなんでも聞いてあげよう、と思う彼氏だった。
そこが陸や京介との決定的な違いとも言えるんだけど、まさかそのことを馬鹿正直にここで言うわけにもいかないから、京介にアドバイスをしてあげようにも、何をどうアドバイスしてあげたらいいのかがよくわからない。
ついでに言わせてもらうと、僕と律、陸と京介だと、陸が僕寄りの人間で、京介はどちらかと言えば律寄りの人間みたいだから、今僕が話を聞いている相手が京介っていうのもなぁ……。
(逆の方が良かったんじゃない?)
と思わなくもない。
でも、律が言うには
『違うタイプの人間同士で話した方が、それぞれの視点から話し合えるからいいと思う』
とのこと。
確かに、僕と陸、律と京介が話し合ったところで
『あー、それ、わかる~』
って共感するばかりで、一向に解決策が見つからないのかもしれない。
「え? 海と律も上手くいかない時とかあったの?」
まるで僕と律にはそんな時なんてないと思っているような口振りである。
実際、「上手くいっていない」と言うほどに険悪になったことがないのは事実である。
「上手くいってないってほどじゃないけど、律が僕に直して欲しいところはあったみたいだよ。僕の方は律に直して欲しいところなんてなかったけど」
「たとえば? どういうところを直して欲しいって言われた?」
「そうだなぁ……“ベッドの上に服を脱ぎっぱなしにしないで”とか“机の上は綺麗に片付けて”とか。そういう細かいことは結構言われたかな」
「あーっ! わかるっ! 俺も陸にそういうこと言っちゃうんだよねっ!」
「僕の場合、律に言われたことは“すぐに直そう”って思ったから、律と揉めることも、険悪になることもなかったんだけどね」
「あぁ……それもなんか凄いわかる。だって海、律のこと大好きだし、律にはいつも甘々だもんな」
「ん……うん。まあね……」
それ、どういう意味で言われているんだろう。もしかして、僕と律の仲が疑われてる?
いやいや。そんなことはないだろう。今の京介の感じからして、僕達の関係を疑っているような気配は感じられなかったから。
「り……陸は京介に注意されたらどういう態度を取るの? 反抗してきたり、怒ったりとかするの?」
今から数分前。二人の共同生活の話を聞かせてもらっている最中にあわや険悪な感じになりそうだった二人を思い出すと、ちょっと心配になった。
僕はいつも仲のいい二人しか見ていないから、一緒に暮らし始めた途端に二人の仲が悪くなったら嫌だな。
「反抗したり怒ったりはしない。二人ともそこはちょっと気を付けてるっていうか、一緒に住んでいる以上、嫌な空気になるのだけは避けたいって感じなんだよね。だから、俺が何か言っても、いつも“ごめん”とか“気を付ける”とは言うんだけど、実際にあんまり反省はしてないし、そこが直ることもないんだよな。俺も一方的に責めるような言い方はせず、さり気なく直して欲しい気持ちを伝えるようにはしてるんだけどさ。さっき二人に話を聞いてもらってるうちに、日頃の鬱憤みたいなものが漏れちゃってさ。陸もムッとしたんだと思う」
「そうだったんだ。じゃあ、一緒に暮らし始めて陸のことが嫌になったとかはないんだね?」
「それはないかな。元々俺達って仲いいし。ただ、一緒に暮らし始めてみると、今までに気にならなかったことが気になるって感じかな。寮では別々の部屋だったし」
「今でも部屋はそれぞれにあるんだよね?」
「そりゃそうだよ。いくら仲が良くても、プライベートな空間って必要じゃん」
「そ……そう?」
僕と律、司さんや悠那君にはあまり理解できない感覚だよね。
もっとも、最初は一人部屋を希望していた律の口からは、「その通りだよ」って言葉が返ってくるのかもしれないけれど。
でも、良かった。もしかしたら、一緒に暮らし始めたことで、二人の仲に亀裂が入る可能性があるかもしれない、と心配したけど、今のところはその心配がなさそうで。
「多分、陸は陸で俺に対する不満があるとは思うんだよ。でも、陸って全然そういうこと言ってこないんだよね。だから、俺もあんまり陸のことに口出ししないようにって思うんだけど、使った後のタオルがソファーの上に放置されてたり、顔を洗おうと思ったら洗面台が水浸しだったりすると、ついつい口を出したくなるって言うか……」
「そこはもう性格の違いだから仕方がないよ。むしろ、我慢して言わない方が却ってストレスが溜まって良くないと思うよ?」
「そうかもしれないけど、陸からしてみれば“いちいちうるさい”って思うのかな? って」
「どうだろう。陸は陸でそう思ったら言うんじゃない? 何も言わないってことは、そんな風に思ってないんじゃないかな」
「うーん……」
僕達の場合、二人きりとかではなくてメンバー五人との共同生活だったから、それなりに衝突することがあったのかもしれない。
実際、陽平さんと悠那君がしょっちゅう揉めていても、周りにそれをフォローする人間がいたから、家の中全体が気まずい空気にはならなかった。二人がどんなに揉めても、仲裁役がいるから仲直りをするのも早かったように思う。
陽平さんに怒られて拗ねちゃう悠那君を、司さんがいつも宥めていたんだよね。
でも、二人きりだと多少は事情が変わるだろうから、今京介が言った心配も、あながち「ない」とは言い切れないのかもしれない。
「一回そのへんのことを陸と話し合ってみたいんだけど、万が一、それで喧嘩になったら嫌だから、こうして海や律に相談してみようってなったんだよね。共同生活のことなら海や律の方が大先輩だし」
「言っても、うちは五人での共同生活だからね。二人だけの共同生活とはちょっと勝手が違うよ。ちゃんと相談に乗ってあげられてる自信はないな」
「こうして話を聞いてもらってるだけでも、少しは気が楽になるよ」
「それならいいんだけどね」
僕の方はさっきから全然アドバイスらしいアドバイスができていなくて不安しかないんだけど、律の方はどうなっているんだろう。
律のことだから、陸の話を聞いて、真面目で的確なアドバイスをしてあげていそうではある。
「でもさ、陸と共同生活を始めてみてつくづく思ったんだけどさ。出逢ってすぐにメンバーとの共同生活が始まったFive Sって凄いよな。下手するとデビュー前にメンバー仲が最悪になる可能性だってあったのに。今じゃもう家族みたいに仲良しじゃん」
「本当にね。僕も最初の頃は“このままじゃ陽平さんと悠那君の仲が最悪になるんじゃ……”って心配してたけどね。そこは司さんが上手くバランスを取ってくれていたし、二人の仲も取り持ってくれていたんだと思うよ」
「俺の目には、司さんは明らかに悠那さん寄りって感じなんだけど」
「い……今はね。昔は結構陽平さんの肩を持つことも多かったんだよ」
もう三年も前の話だけど、当時は司さんも我儘な悠那君を窘めることがあったし、陽平さんに説教をされてふて腐れる悠那君を宥めながら
『でも、悠那もいけないんだよ?』
と、陽平さんのフォローに回ることが多かった。
それが今ではすっかり悠那君至上主義になってしまい、我儘な悠那君を窘めるどころか、悠那君の我儘は喜んで聞いてあげる盲目彼氏になっている。
そりゃまあ、あれだけイチャイチャ三昧なラブラブカップルになってしまったら、司さんが悠那君に甘々になってしまうのも仕方がないし、昔に比べれば悠那君もかなり協調性が生まれ、メンバーとの共同生活も問題なく送れるようになったから、あえて悠那君を窘める必要もなくなったと言えばなくなった。
時々とんでもなく余計なことをしてくれるし、若干非常識なところはあるにせよ。
強いて言うなら、悠那君の危機管理に関しては結構厳しく言っているみたいだし、場合によってはエッチなお仕置きもしっかりしているみたいだけれど、それはもう、悠那君を躾たいのか、ただ単にお仕置きという名のエッチをしたいだけなのかが、よくわからなかったりもするよね。
しかしまあ、司さんと付き合うまでは悠那君の危機管理能力は全くのゼロだったとも思うから、多少は警戒心が身に付いた悠那君に対し、司さんの説教やお仕置きは効果があるということなんだろう。
なんて話も、今ここでは口が裂けても言えない話だけどさ。
「僕はどちらかと言えば注意するより注意される側の人間だから、効果的な注意の仕方とか、そういう話は全然わからないんだけどさ。逆に注意される側の意見としては、よっぽど嫌な言い方をされない限り、自分のダメなところを指摘されても、“いちいちうるさい”とは思わない、っていうのが本音かな。嫌いな相手とか、反感を覚える相手になるとまた話は別だけど。好意的に思っている相手なら、“うるさい”思うどころか“直してあげよう”って思うはずだよ。共同生活って相手のことを思い遣れないと成り立たないし。ただ、人によってはすぐに直せる人と、なかなか直せない人がいるから、そのへんは大目に見てあげて欲しいし、気長に待ってあげて欲しいかな。多分、陸だって京介に注意されたことを全く無視するつもりはないと思うから」
ついつい余計なところにまで思考が飛んでしまった僕は、そのお詫びと言ってはなんだけど、京介と二人になってから初めてアドバイスらしいアドバイスを口にしてみた。
と言っても、僕は京介側の立場に立ったアドバイスはできないから、やや陸の肩を持つようなアドバイスをするしかできなかったけど。
「そっか……じゃあ、陸に“うるさい”とは思われてないんだ」
「陸の性格を考えてみなよ。そう思ったら京介に気を遣う前に“うるさい”って言ってるよ」
「それもそうだな」
「陸にしても京介にしても素直だもん。だから、言いたいことは遠慮せずに言い合って、共同生活がもっと楽しくなるように理解しあっていけばいいじゃん。もし、それで喧嘩になった時は、僕と律がいくらでも話しを聞くし、二人を仲直りさせてあげるからさ」
「ん。ありがと。なんか元気出た」
「どういたしまして」
それでも、京介は僕からのアドバイスや励ましの言葉を喜んでくれたし、元気づけられてくれた様子だった。
最初はなんの力にもなれないと不安だったけど、どうやら僕も少しは役に立ったみたいで良かった。
(さて……あっちはどうなっているのかな?)
部屋の中心に、いつもはないはずの仕切りが下りていることに物凄い違和感を覚える。
もし、これを機に律が
『これからは定期的に別々に部屋で過ごす時間を作ろうよ』
なんて言い出したら、僕は間違いなく律に抗議をするんだろうな。
僕は律に何一つ不満はないし、律に直して欲しいようなところもないけれど、律が僕から離れていくことだけは許さない、心の狭い男なのである。
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