僕らの恋愛経過記録

藤宮りつか

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Final Season

    トップアイドルの恋愛事情(3)

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 葵さんからAbyssのタブーについての話を聞きたがったのは俺だし、初っ端の琉依さんの話を聞かされてから、衝撃に備える準備も多少はできていたつもりだった。だけど――。
「でね、それが一真さんと仁さんにバレちゃって。僕達二人とも一真さんと仁さんにめちゃくちゃ怒られたんだよね」
「怒ると同時にめちゃくちゃ混乱もしてたよね。一真さんなんて“同じグループ内で何やってるんだ!”って言いながら完全に目が泳いでたし、仁さんなんてずっと“どういうこと? 男同士だよな?”って呪文のように呟いてたし」
「そんな二人の姿が面白いやら可愛いやらで、申し訳ないけど笑っちゃったんだよね」
「そしたら“反省してないだろ!”って余計に怒られちゃったんだよね」
「あの頃の一真さんはグループのリーダーを任されたことへのプレッシャーからか結構厳しかったし、怒りやすくもあったよね」
「それだけ俺達が一真さんや仁さんの手を焼かせることが多かったからじゃない? 今は二人ともすっかり穏やかになったけど」
 葵さんと琉依さんが過去にセフレ関係にあっただなんて話、どう構えていても衝撃を受けずにはいられない話だよ。
「二人はそのまま“付き合おう”って話にはならなかったの?」
 言っても、俺と司も最初はセフレとまではいかなくても似たような関係にあったから、葵さんと琉依さんの関係が身体の関係止まりのまま終わってしまったのかどうかが気になってしまった。
「ならないよ。僕と琉依ってそういう関係には絶対にならないし、なりたいとも思わないもん」
「そうそう。葵のことは好きだし可愛いとも思うけど、俺の中で葵は恋愛対象外なんだよね」
「ねー」
「へー……」
 そ……そうなんだ……。エッチはするのに恋愛対象にはならないんだ。それってどういう感覚なんだろう。俺にはちょっとよくわからないな。
 司と付き合う前からエッチなことをしていた俺が言えたことでもないのかもしれないけれど、そういうことがあったからこそ、俺は司を強く意識し始めたし、そもそも自分が気付いていないだけで、心のどこかで司のことを好きだと思う気持ちがあったから、俺は司とそういうことをシてもいいと思ったんだと思う。
 身体だけの関係ってなんか嫌だったし。
「っていうか、琉依さんもこっち側の人なんですか?」
 一体今日はなんの集まりなのかを知らない司も、次々と暴露されていくAbyssの秘密に少しずつ口を挟んでくるようになった。
 最初は呆気に取られるだけで、完全に話を聞く側に徹しているだけだったけれど、俺同様に色々と聞きたくなってきたのだろう。
「琉依はこっちもあっちもないんだよ。どっちでもイケるし、どっちの立場でも構わないんだから」
「え……」
 聞いてはみたものの、その答えに絶句する司だった。
 うんうん、わかるよ。俺も今絶句しちゃったもん。
「俺はオールマイティーなんだよね。老若男女問わず、どんな相手にも合わせるよ。その方が楽しいじゃん」
「はあ……そうですか……」
 楽しい……のか? これもまた俺や司には理解ができない感覚だ。
 老若男女問わずモテるであろう琉依さんが、老若男女問わずお相手するつもりでいるのであれば、琉依さんの経験人数は物凄いことになっていそうだな。
「葵とそういうことをするつもりはなかったんだけど、葵が男相手じゃないと基本的にはダメな人間だって知って、その葵が“今すぐヤれる相手が欲しい”って欲求不満を爆発させそうだったから、だったら相手になってあげようかな? って」
「え⁈ そんな軽いノリ⁈」
「当時の僕らはそんなノリでヤっちゃうような性欲盛んなお年頃だったんだよ」
「むしろ、そういうノリだったからこそできたって感じだよね」
「へー……」
 さっきから俺と司、「はあ」とか「へー」くらいしか言えていない。要所要所で質問はしてみるけれど、「はあ」とか「へー」って相槌を打つだけでも、二人がどんどんいろんな話をしてきてくれる。
「あの頃はまだ朔夜が中学生だったから、俺と葵のことは朔夜の耳にだけは入れないようにしよう、ってなったんだけどね」
「その朔夜が僕のことを好きだって言い出しちゃったものだから、一真さんと仁さんはもうパニックだったよね」
「え⁈」
 嘘。朔夜さんって葵さんのことが好きだった時期があるの?
「その頃、僕もまだ高校生ではあったんだけど、さすがに中学生相手はねぇ……。朔夜もまだまだ全然子供で、朔夜を男としては見られなかったんだよね。だから、僕に“好きだから付き合って”って朔夜が言ってきた時は“ごめんね”って言って振っちゃったわけ」
「なんてことをっ!」
 思わず本音が出てしまった。
 当時まだ中学生だった朔夜さんでも、振ってしまうのはもったいないと思う気持ちと、その時葵さんが朔夜さんを振っていなかったら、今頃葵さんと朔夜さんは付き合っていたかもしれないという、残念な気持ちが混ざり合った本音だった。
 もし、今頃葵さんと朔夜さんが付き合っていれば、俺と司は朔夜さんからのセクハラ行為に悩まされずに済んだのに。
 その場合、そもそも俺と朔夜さんがエッチなことをする流れにはならなかっただろう。朔夜さんが俺を可愛がってくれることもなかったかもしれないことは、ちょっと残念であるような気はするけれど。
「だよね~。今思うとちょっともったいなかったよね~。まさか朔夜があんなにいい男に成長するとは思わなかったんだよね。朔夜は中学の頃から可愛い顔はしてたけど、僕の好みからはちょっとズレててさ。振っても問題はないと思ったのに」
「いや。今からでも遅くはないと思います」
「え?」
 朔夜さんが葵さんのことを好きだったという過去を知り、葵さんが朔夜さんのことを振ってしまったことを残念に思ったのは俺だけじゃなかった。
 俺に対する朔夜さんのセクハラ行為に悩まされ続けている司も、そこは真顔で口を挟んできた。
「幸い、朔夜さんは今フリーですよね? 昔告白までした葵さんのことを、今はもうなんとも思っていないなんてことはないと思います。振られた手前、再度アタックする勇気がないだけかもしれませんよ? 葵さんからアクションを起こせば、もしかしたら付き合うことになるかもしれないじゃないですか」
「そうだよっ! もったいないことしたって思うなら、今度は葵さんから朔夜さんに告白しちゃえばいいんだよっ!」
「えっと……どうして二人は僕と朔夜をくっつけたがるのかな?」
 それまでひたすら衝撃を受けるばかりだった俺達が、朔夜さんが葵さんを好きだったという話を聞いた途端、急に葵さんと朔夜さんをくっつけようとし始めたことに、葵さんは少しだけ戸惑っている様子だった。
「なるほどね。朔夜が悠那君にしつこくちょっかいを出してくるから、この二人は朔夜が葵と付き合えばいいと思ったんだよ」
「ああ。そういうことか。本当に可愛いなぁ~」
 いやいやいや。可愛いなぁ~、じゃなくて。こっちはわりと真剣なんだけど。
「でもね、朔夜は僕に振られた後、僕には一切未練みたいなものは見せなかったよ。振られた直後は多少未練があるっぽいところもあったけど、元々男同士だから望み薄だと思ってたところもあるんじゃないのかな。加えて、僕と琉依の関係も知っちゃったから。それで僕への興味が完全に失せたみたいだよ」
「~……」
 マジか……そこ、知られちゃったんだ。それは朔夜さんも葵さんに再アタックする気力も失せちゃうよね。
 自分を振った相手が同じグループ内の他の男とエッチしてる関係だって知ったらキツいもん。俺だったら絶対に無理。ショック過ぎて同じグループでやっていくこと自体に自信をなくしちゃうよ。
「で、高校に入った途端、あっちこっちで彼女を作り始めちゃって。可愛かった坊やがどんどんオスへと成長していったわけ」
「あぁ……」
 きっとショックだったんだな、朔夜さん。葵さんにただ振られただけじゃなくて、葵さんと琉依さんがエッチする仲だってことを知って。
「僕と琉依の関係があって、朔夜が僕に告白して、僕に振られた朔夜が僕と琉依の関係を知って……。そういう経緯がメンバー内に知れ渡っていると、そういう話題が自然とタブーになっていくわけ」
「だろうね。物凄くよくわかった」
「不思議なのは、そのことを気にしているのは当人である僕達三人よりも、一真さんや仁さんの方なんだよね。僕達三人はたまに恋愛トークもするよ。さすがに三人ではしないけど」
「その三人で恋愛トークなんてしてたら、三人の神経を疑っちゃうっ!」
 Abyssのメンバー間で恋愛トークがタブーになった理由を、これ以上にないというくらいにわかりやすく説明してもらった俺は、一真さんと仁さんの気持ちが物凄くよくわかる気がした。
 もし、うちのグループ内で陽平、律、海の三人がそういう関係になったとしたら、俺と司はあの三人に絶対恋愛トークを振れなくなると思うし。
 それを思うと
(良かった……うちのグループはなんだかんだと平和で……)
 と心から思った。
 たまにちょっとした問題が発生することはあるけど、うちはそれぞれにちゃんとした相手が決まっているもん。メンバー内で深刻なゴタゴタ問題に発展することはないもんね。
 唯一フリーだった陽平も、先月ようやく湊さんと付き合うことにしたみたいだしさ。
 ほんと、やっとこさって感じだけど。
「さて、僕達の話は聞かせたから、今度はFive Sの話を聞かせてよ」
「えっ⁈」
ただれた僕達なんかよりも可愛いエピソードがいっぱいあるでしょ? 聞かせて聞かせて」
「え……でも……」
 葵さんから話を聞かせてもらう約束はしたけれど、俺達の話をするなんて約束にはなっていない。
 とは言え、これだけ重大な暴露話を聞かせてもらっておいて、自分達の話はしたくない、なんて言えないよね。
(まあ、俺と司の話くらいなら……)
 俺達の話を聞かせて欲しいと言われても、他のメンバーの話を勝手にしたら絶対に怒られちゃう。特に、陽平と湊さんの話をしようものなら、それがバレた時、陽平からどんな仕打ちが返ってくるかわからないよね。
 俺と司の話なら、司も一緒にいるしでいくらでも話せるけど。
「とりあえずさ、司君と悠那君ってどれくらいのペースでヤってるの?」
「いきなりそこ⁈」
 可愛いエピソードが聞きたいんじゃないのかっ! それ、思いっきり爛れた話になるんじゃないの⁈
「今のところ、ほぼ毎日ですかね」
「司っ⁈」
 で、司ったら答えちゃうんだ。
「わあ♡ ほぼ毎日なんだ。凄いね。元気だなぁ~」
「そんなにイイの? 悠那君の身体」
 当然、話に乗ってきた司に葵さんと琉依さんは大喜びである。
「イイですよ。最高で最強です」
「マジ? それは物凄く興味が湧いてくるな」
「司ぁ~っ!」
 まさか司が俺より先に話に乗るとは思わなかった俺はちょっと恥ずかしい。
(もしかして司、酔ってる?)
 一瞬そう思っちゃったけど、ここへは車で来て、このあと俺を助手席に乗せて車で帰る司がお酒を飲むはずがない。葵さんと琉依さんは飲んでるけど、俺と司は素面しらふのままだった。
 お酒が入って陽気なテンションになっている二人に釣られて、司も口が軽くなっているのかな?
 それとも、普段うちのメンバーとはなかなかこういう話ができないから、何を言っても大丈夫そうな二人に、日頃言えないことを言いたくなったのかもしれない。
 どちらにしても、この手の話で盛り上がる司はちょっと珍しくて、俺としては新鮮だったりもする。
「あれ? いつもは悠那君の方がこういう話に乗ってくるのに。どうして今日は恥ずかしがってるの?」
「え。いや……だって……」
 話が急に俺達のことになったこと。最初の質問がいきなり俺と司のエッチする頻度についてのものだったこと。更には、俺より司の方が先に話に乗っちゃったことといい、俺にはちょっとついていけない展開だったんだもん。
 ついでに言うと、いくら俺だって自分の彼氏が人前で俺の身体が「最高で最強」だなんて褒めると、嬉しい反面、恥ずかしくもなるんだよ。
 大先輩でもある葵さんや琉依さんの前で、堂々と俺のことで惚気ちゃう司のことは本当に嬉しいけどさ。
「今更恥ずかしがることなんてないじゃん。今日はもうアイドルらしからぬ下ネタトークで大いに盛り上がろうよ。悠那君だって司君のことでいっぱい惚気たいでしょ?」
「う……うぅ……」
 可愛いエピソードはどこに行ったの? もう“下ネタトーク”って言っちゃってるじゃん。下ネタに可愛い要素なんてないよね?
(で……でも……)
 普段司のことで惚気たくてもなかなか惚気ることができない俺は、「惚気てもいい」と言われると弱い。
 結局
「わかった! 今日はいっぱい下ネタトークするし、いっぱい惚気話もするっ!」
 人前で遠慮なく司の話ができるという誘惑に負けた俺は、あっという間に腹を括ってしまったのである。
 この時、時計の針は午後10時を回ったところで、俺達がこのお店に入店してから、既に二時間が経過していた。





「悠那から電話をもらった時は、ただ普通にご飯を食べに行くだけなのかと思ってた。まさか、ああいう話をするために葵さんとご飯を食べに行くことになっていたとはね」
「ごめんね。仕事の邪魔しちゃいけないと思って必要最低限のことしか言わなかったから。司はびっくりしちゃったよね」
「うん。まさかAbyssのあんな仰天エピソードを聞かされるとは思わなかった」
 入店から二時間の時点でかなり濃い話題になっていたけれど、そこから更に三時間。トータルで五時間もの間、俺と司、葵さんと琉依さんは、お酒の席でもないと話せないような話を沢山した。
 特に後半は本当に酷い下ネタトークで、女の子の身体を知らない俺や司には刺激や衝撃が強過ぎる話もあった。
 男の人しか恋愛対象にならないという葵さんも、俺や司のように女性経験がないのかと思っていたら、葵さんも多くはないけど女性経験があるという話は意外だった。
 ただ、女性とお付き合いしたことはないと言うから、その多くないという女性経験のお相手は全てセフレ、もしくは、一夜限りのアバンチュールな関係だったということなんだろう。
 俺と司にはちょっと大人過ぎる話だ。
「でも、司も結構下ネタトークしてたよね。ちょっと意外だった」
「あれは完全に葵さんと琉依さんに流されたんだよ。それに、俺だって下ネタトークを全くしたことがないわけじゃないし」
「司も下ネタトークとかするの?」
「悠那はしたことない? 中学とか高校の時」
「う~ん……。俺、そういう話はあんまり友達としたことがないんだよね。軽い下ネタトークらしきものならしたこともあるけど、深い下ネタトークをしようとしたら、みんな急に慌てて逃げちゃってたから。だから俺、いつもみんなが話してる下ネタトークをこっそり聞く方がメインだったかな」
「だろうね」
「え?」
「ううん。なんでもない。あとはまあ……ちょっとした牽制も入ってたかな」
「牽制?」
「ほら。最初に琉依さんが“悠那は俺が引き受ける”みたいなこと言ったでしょ? 朔夜さんのこともあるし、Abyssには悠那は俺のものだってアピールをしっかりしておかなくちゃって思って」
「司……」
 なんだ。それであんなに俺のことをペラペラ喋ったんだ。司ってばヤキモチを焼いてくれていたんだな。可愛い。
「ところでさ」
「うん?」
「昔は友達と下ネタトークもしたことがある司は、本当に女の子とエッチしてみたいと思わないの?」
 お店を出て、司の運転する車で家まで帰る道を助手席に乗って過ごす俺は、司にヤキモチを焼かせた琉依さんから言われた
『二人は一生女の子とシないままでいいの?』
 という言葉が密かに気になっていたりする。
 あの時、俺の答えも司の答えも「YES」ではあったけれど、司は過去に彼女がいたことがあって、司にとって女の子は普通に恋愛対象だ。
 今知ったことだけど、司は友達と下ネタトークをすることもあったみたいだし、俺と付き合う前は女の子で一人エッチをしたこともあるだろうから、女の子の身体に性的欲求を感じたり、欲情することもあるんじゃないのかな。
 俺は生まれてこの方、一度も女の子を好きになったことがないし、女の子の身体に興味を持ったことがない。女の子自体にドキッとしたこともないから、この先も自分が女の子とエッチなことをしたいだなんて一生思いそうにないけれど、司は本当にそんな風に思うことはないのかな?
 今は俺のことを一番に想ってくれているし、これからも司は俺のことを一番に想ってくれるとは思うけれど、一瞬の気の迷いというか、ちょっとした出来心を起こしてしまうことはあるのかもしれない。
 そんな風に考えてしまうと、まるで司のことを信じていないようにも思われてしまうかもしれないけれど、女の子の身体に性的欲求を感じてしまうのは男として当たり前のことだし、美人や可愛いが溢れている芸能界に身を置いている司が、“人生で一度くらいは……”って思ってしまう日が来てもおかしくはないよね。
 琉依さんにその質問をされた時の司は
『構わないですよ』
 と即答だったけど、あれは葵さんや琉依さんの前だからそう言っただけで、本当は少しくらい迷う気持ちがあったのかも。
 そう思ってしまう俺は、司が絶対に嘘を吐かない俺と二人っきりの時に、同じ質問を司にしてみたけれど
「うん。思わない」
 司はここでも即答だった。
 しかも、物凄く自信たっぷりに即答だったから、俺は
(その自信は一体どこから?)
 と思ってしまった。
 司が自信満々にそう言ってくれることは、めちゃくちゃ嬉しいんだけれど。
「で……でも司、昔は彼女がいたこともあるよね? 司にとって女の子は恋愛対象……だよね?」
 せっかく司が「女の子とエッチしたいと思わない」って言ってくれているのにしつこいし、意地悪な返しだとは思った。
 でも、司が俺に嘘を吐かないのと同様に、俺もサプライズ以外の隠し事を司にはしたくないし、ちょっとでも不安や心配に思ったことは全部司に伝えるようにしている。
 この先もずっと一生一緒にいるつもりの司だから、1ミリだって司を疑いたくないし、俺のことも疑われたくないからだ。
 まあ、俺は元々嘘が吐けない性格で、自分の気持ちにも正直かつお喋りでもあるから、気になることや引っ掛かることはすぐに話してしまう人間ではあるんだけれど。
 一度律と二人っきりで留守番をしていた時、律と触りっこをしてイっちゃった話は咄嗟に隠そうとしちゃったけれど、結局それは速攻バレちゃったし。バレてお仕置きもされちゃったからノーカウントでもいいよね。
「昔はね。悠那と出逢う前は普通に女の子が好きだったし、女の子とエッチなことをしてみたいって気持ちもなくはなかったけど、今は全然。女の子にも女の子の身体にも興味はないし、エッチしたいとも思わないよ」
「ほんと?」
「うん。俺は悠那とエッチできればそれでいいよ」
「司……」
 同じ疑惑を俺が司から向けられたら
『司は俺のこと信じてないの?』
 ってムッとしちゃいそうなのに。司は全く機嫌を損ねた様子もなく、恋人を疑うような発言をする俺に笑顔で接してくれた。
 司のこういう俺に対して底抜けに優しいところが大好きで、胸がキュンってしちゃうんだよね。
「第一俺、今はもう悠那じゃないと勃たないし」
「え~? それはちょっと言い過ぎじゃない?」
 俺を喜ばせることばかり言う司に気を良くした俺が、笑いながら
「司だって女の子の裸を見たり、触られちゃったらさすがに勃っちゃうでしょ?」
 と言うと
「見てもなんとも思わないし、悠那以外の人間に触らせない」
 司も笑いながら威張ってそう答え、そして――。
「なんなら今から証拠を見せてあげようか?」
 車が信号に引っ掛かって停まった瞬間、助手席の俺に視線を向けながらそう言ってきた。


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