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Final Season
第5話 僕達ルール(1)
しおりを挟む(家の中に司さんと悠那君によく似た知らないカップルがいる……)
今日から5月。
高校に通っていた時より少しだけ朝がゆっくりになった僕は、目が覚めるなり、部屋の中に僕の天使の姿を探したけれど、律のベッドの中は既に蛻の殻だった。
僕と違って律は基本的な生活リズムを変えていないからな。今までより起きる時間が一、二時間遅くなった僕が目を覚ました時、律はもう活動を始めていて、いつも部屋の中にはいなかった。
それでも、今日はわりと早い時間に目を覚ました方だ。時計の針はまだ朝の7時を回ったばかりだし。
たまには恋人と同じベッドで目を覚まし、「おはよう」を言って欲しい気がしなくもないけれど――全くそういう朝がないわけでもないけれど――律はつれない。
だけど、今の家に引っ越す際、一人部屋を希望した律が、結局は僕の我儘を聞いてくれて、ほぼ同室生活を承諾してくれたことは嬉しいから、これ以上の贅沢は言わない。律の前では。司さんや悠那君と違って、ベッドが別々なことだって寂しくなんかないさ。僕は律と同じ部屋の空気を吸えるだけで幸せなんだから。
なんて、起きて早々、自分を慰めることから始めた僕は、ベッドから抜け出し、律がいるであろうダイニング、もしくはキッチンへと向かったわけだけど――。
確かに律はいた。エプロン姿でキッチンに立ち、みんなの朝御飯を作っていた。
僕は律の姿を見つけるなり、律に向かって声を掛けようと思ったんだけれど、それよりも先に、キッチンの手前にあるダイニングテーブルに座る謎の二人組の姿と、その背後で二人の髪の毛をセットしてあげているらしい陽平さんの姿が気になって、律に声を掛けそびれてしまった。
いや、まあこの場合、謎の二人組というのは十中八九、司さんと悠那君でしかありえないんだけどね。二人の顔はどう見ても司さんと悠那君のものだし。
でも……でもね。陽平さんが真剣な顔をしてセットしてあげている二人の髪型が昨日までとはあまりにも違い過ぎて、一瞬「誰?」ってなっちゃったんだよね。
一体司さんと悠那君と陽平さんの三人は朝っぱらから何をしているんだろう。まさか美容院ごっこをしているわけではないだろうに。
「あ。おはよ、海。今朝は海が一番お寝坊さんだね」
「お……おはようございます……」
顔は悠那君なんだけど、肩より下まで伸びた毛先の巻かれたミルクティー色の髪。顔には女の子顔負けのメイクまでしていて、悠那君に激似の女の子にしか見えない。そんな悠那君に声を掛けられた僕は、どういう反応をするべきかで悩んでしまうほどだった。
「ねえ、陽平。このヘアカラースプレーって濡れたら落ちちゃうの?」
加えて、悠那君の隣りで僕に負けず劣らずの派手な金髪になっている司さんにも唖然とする。
本当にもう……二人とも一体どうしちゃったの? 何が始まるっていうの? 映画の撮影がクランクアップを迎えたことと何か関係があったりする? 僕、黒髪以外の司さんを見るのなんて初めてなんだけど。
「落ちる。っつーか、落ちなきゃヤバいだろ。一時的に髪の色を変えるためのスプレーなんだから。だから、あんま濡れた手で髪の毛触るなよ。お前、手洗った後とか癖みたいに前髪つつくから」
「だって癖なんだもん。ちょっとでも濡れたらダメなの?」
「さあな。今まで仕事で使ったことがあるスプレーはわりとすぐ落ちたからな。これもすぐ落ちるんじゃないか? 念のためにスプレー持ってっとけ。髪に吹き掛ける時は服に掛からないように注意しろよ」
「はーい」
お母さんか。うちのグループ最年長、八神陽平の母性が強過ぎる。
もともと陽平さんは面倒見が良かったし気が利く人だったけれど、陽菜ちゃんが生まれてお兄ちゃんになってからというもの、更に面倒見が良くなり、細かいところにも気が付くようになったよね。
しかし、この状況が本当によくわからない。陽平さんが司さんや悠那君の髪の毛をどうこうしようとは思わないだろうから、これは二人からお願いされて渋々やっていることなんだろうとは思う。
それにしては仕上がりのクオリティーが高過ぎてプロ並みだ。多分、今の司さんと悠那君を見て、この二人の髪型が人の手によって細工された偽の髪型だと気付く人は少ないんじゃないかと思う。
ほんと、陽平さんってなんでも器用にできちゃって凄いよ。
「にしても、お前って全然金髪似合わねーな。たまには髪色変えてみればいいのにって思ってたけど、金髪はダメだわ。凄いガキ臭くなるし、ただのヤンキーみたいになる」
「仕方ないじゃん。他の色ってなると、青とかオレンジとかピンクしかなかったんだよ。正直どれも似合わないと思ったけど、その中だったら一番無難な金を選ぶでしょ?」
「だったら青にすれば良かったんじゃね? 色的には一番落ち着いてる感じがするし、黒に近いものもあったんじゃね?」
「えー……今更?」
案外、陽平さんが甲斐甲斐しく二人の髪型をセットしてあげているのも、二人を着せ替え人形みたいにできることが楽しいからなのかもしれない。こんな機会でもなけりゃ、司さんの金髪姿なんて見られそうにないし。
そういう僕も、司さんの金髪姿は物凄く新鮮だし、物珍しいと思ってしまう。陽平さんのセットが終わった後に写真を撮らせてもらおうと思っているくらいだ。
「えー? 俺は結構いいと思うよ? 金髪の司ってなんか可愛いじゃん」
もちろん、どこからどう見ても女の子にしか見えない悠那君も一緒に撮らせてもらいたい。普段とはちょっと違う二人の写真も、それはそれで絶対に可愛い写真になると思うから。
「お前は司だったらなんでもいいんだろ。ってか、お前は本当にその格好でいいのか?」
「うん。変?」
「いや……別に変じゃねーけど……」
起きてすぐにダイニングにやってきた僕は、司さんと悠那君の首から上ばかりに目がいって、二人がどんな格好をしているのかはちゃんと見ていなかった。
司さんと違い、悠那君の方はウィッグだということはすぐにわかったけれど、陽平さんに「その格好でいいのか?」と聞かれ、改めて自分の服装を確認しようとして立ち上がった悠那君は――。
「っ⁈」
ズボンではなくスカートを穿いていた。しかも、膝上10センチはある結構短めのスカートである。なんで?
普通にしていても女の子に見える容姿のせいで、仕事でちょこちょこ女装をさせられることもある悠那君は、私生活でも女装をすることにすっかり抵抗や躊躇いがなくなってしまったのだろうか。
そんなことより――だ。
「あっ……あのっ!」
「うん?」
「お二人は今日、これから一体なんのお仕事ですか?」
さっきから驚きの連続だし、何がなんだかさっぱりわからないままなんだけど、そろそろ置いてけぼりはやめにしてもらいたい。
二人のヘアメイクをしてあげている陽平さんや、三人にお構いなしで朝御飯を黙々と作り続けている律には、司さんと悠那君がこんな格好をしている理由がわかっているんだよね? 今この場で何もわかっていないのは僕一人……ってことになるんだよね?
陽平さんにしても律にしても、二人にぶつぶつ文句を言っていないということは、二人とも仕事でこんな格好をしなくちゃいけないのかな? とも思ったけれど、仕事でヘアメイクが必要なら何も自宅で陽平さんがしてあげる必要はない。行った先で、それこそ本物のプロのヘアメイクさんがきちんとセットしてくれるはずだもん。
それに、僕の記憶が正しければ、昨日映画の撮影がクランクアップを迎えたばかりの司さん悠那君は、今日から三日間のお休みを貰っているはずじゃなかったっけ?
最近はグループとしての仕事だけじゃなく、個人の仕事も増えているから、同じグループのメンバーでも一人一人のスケジュールは把握しきれていないけれど。
「違う違う。今日は仕事じゃないよ。俺も司も今日から三日間オフだもん」
「ですよね……」
どうやら僕の記憶は間違っていなかったようだ。やっぱり司さんと悠那君は今日から三日間のオフになっているらしい。
(でも……だったら何故?)
オフの日の朝早くに二人がこんな奇抜というか、オフらしからぬ格好をしている意味がわからない。
そもそも、せっかくの休みの日の朝に、司さんと悠那君が早起きをしていること自体が不自然なのに。
「今日は司さんの中学時代の頃からの友人と、悠那さんの幼馴染みと一緒に遊びに……じゃなくて、ダブルデートなんだってさ」
「ダブルデート?」
司さんと悠那君に気を取られて、すっかり声を掛けそびれてしまった律とようやく口を利くことができた。
律はエプロン姿のまま、作り終わったばかりの五人分の朝御飯をテーブルの上に並べ始めたわけだけど、その姿がちょこちょこしていて物凄く可愛かった。
「なるほど。それで二人ともそんな格好をしているわけですね。つまり、お二人のその格好は一般人のお友達と遊びに行くための変装ってことですね?」
「そういうこと」
ようやく会話を交わすことができた律の言葉を受け、僕も司さんと悠那君の格好の理由を知ることができてすっきりした。
そうかそうか、ダブルデートか。何やら楽しそうな響きだよね、ダブルデートって。
で、ダブルデートってことならば、男女二人ずつにならなくちゃいけないから、女装をしても全く違和感のない悠那君が、プライベートでも女装を披露すると。そういうわけなんだな。
仕事なら女装も致し方ないと思われているだろうけれど、まさかプライベートで悠那君が自ら女装をするとはみんな思わないだろうから、ダブルデートに乗じたこの女装はいい目くらましになると思う。いつもとは違う、今日一日限定の二人の髪型も非常に効果的だと思うし。
これなら、いくら顔が本人そっくりでも――本人なんだけど――“似てない?”で済みそうな話ではある。
万が一
『TSUKASA君とYUNA君ですか?』
って聞かれても
『よく似てるって言われるけど違います』
って答えれば信じてもらえそうだし。
「それで、どちらのお友達が女性なんですか?」
休みの日にアイドルになる前からの友達とダブルデートだなんて如何にも楽しそうだし、二人のうちのどちらかに「ダブルデートをしようっ!」って話で盛り上がるような女友達がいるとは思わなかったな。
僕の予想では、女の子と普通に仲のいい友達付き合いができそうなのは悠那君だから、悠那君の友達が女の子だとみた。幼馴染みって言ってるし。幼馴染みなら大きくなっても性別に関係なく仲良くできそうだもんね。
と思ったら――。
「え? 女の子なんていないよ?」
「え⁈」
まさかの女の子不在のダブルデートだった。
ここで僕は再びわけがわからなくなってしまう。女の子のいないダブルデートとは? それって本当にダブルデートなの? 男だけで遊びに行くのであれば、それはデートではなく普通に遊びに行くだけなのでは?
それに、男だけで遊びに行くのに、どうして悠那君が女装をする必要があるんだろう。
「俺の幼馴染みも司の中学からの友達も男だよ。俺の幼馴染みの祐真が司の友達のいっ君と同じ大学で、いっ君のことが好きだって言うから、今回のダブルデートを俺と司でセッティングしたんだよ」
「ああ……そういうことですか……」
祐真といっ君という初めて聞く名前にいまいちピンとこないけれど、どうやら悠那君の幼馴染みの祐真君という人も、悠那君と同じで男の人を好きになってしまったらしい。
名前もなんだか似ている感じだし、悠那君と祐真君って人は顔や性格が似ていたりするのかな? もしかして、今回女装をすることにしたのは二人の案だったりする?
僕は祐真って人もいっ君って人も知らないから、どっちが彼女役に相応しいのかはわからないけれど、司さんと悠那君の友達じゃね。彼女役は祐真って人かな? ってなっちゃうよね。
それにしても、悠那君って本当に身内の色恋沙汰には積極的過ぎるほど積極的に首を突っ込んで行くよね。どうせ今回のダブルデートだって言い出しっぺは悠那君に違いない。
「ところで、どうして悠那君は女装を?」
大体の謎は解けたけれど、やっぱり女装の謎だけは残った。わからないことは本人に聞いてみるのが一番手っ取り早い。
悠那君も僕がそこに疑問を抱くことは予想ができただろうから、その理由をちゃんと説明してくれるだろう。
「これはただの変装。せっかく司とデートするのにマスクやサングラスで顔を隠したくないんだもん。だから、思いきって女装することにしたの」
「女装は悠那君だけですか?」
「うん。そうだよ」
僕の思った通り、悠那君は素直に女装の理由を教えてくれた。
なんだ。女装をするのは悠那君だけなのか。それならば、司さん、悠那君、祐真さん、いっ君さんの四人は、傍から見ると男三人に女の子一人の逆ハーレム状態に見えてしまうのでは?
僕達の美少女、悠那ちゃんを全力で楽しませてあげよう! という、健気な男三人組+みんなのアイドル悠那ちゃん、という構図ができあがってしまいそうだ。
司さんと悠那君以外の二人の顔を知らないから、なんとなくの想像しかできないけれど。
しかしまあ、早い話、悠那君は司さんと堂々と普通のデートがしたいだけらしい。それで意気揚々と女装をしてしまうから悠那君は凄い。
仕事中も家の中でも四六時中司さんとイチャイチャしているのに、人目がある外でも思いっきり司さんとイチャイチャしたいと。そういうことなんだな。
で、悠那君のように女装をするわけにもいかない司さんは、ヘアカラースプレーで髪色を変え、身バレを防ぐことにしたんだ。
(なんという斬新な発想なんだろう……)
まあ、悠那君の毛先の巻いたミルクティー色のセミロングウィッグは似合っていて可愛いし、スカート姿でも全く違和感がないから、今の悠那君の姿を見ても誰も不審に思ったりはしないだろう。
司さんの金髪だって頭は目立つけど、デビューから三年、一度も髪色を変えたことがない司さんがいきなり金髪になっているとは誰も思わないだろうから、逆に髪の色が目立つ司さんを見て、それが司さんであると気付かれる心配はなさそうだよね。
しかし、ダブルデートが理由で変装をする二人に、よく陽平さんが協力してあげたな。
陽平さんなら
『んなもん自分でやれ』
って言いそうなのに。
やっぱり、陽平さん的に自分の手で二人の見た目を変える作業が楽しかったのかな?
「こいつら、よりによってテーマパークでダブルデートするらしいんだよ。なんでそんな人が集まる場所でダブルデートしようってなるんだか。アイドルとしての自覚がないんじゃねーの?」
「だって、一度でいいから司とテーマパークで思いっきりイチャイチャデートしたかったんだもん。人が多い方が逆に気付かれないかもって思ったし」
「朝っぱらからお前らの変装を手伝わされる俺の身にもなれよ。おかげで朝のランニングができなかったし、朝飯も律一人に任せることになっただろうが」
「でも、ちゃんと手伝ってくれてありがと。陽平が上手に司の髪にスプレーしてくれたのと、俺の頭に完璧にウィッグを着けてくれたから凄く助かったよ」
「まあ……そんなところでお前らが一般人込みでデートしてるってバレたら困るからな。俺も協力せざるを得なかったって言うか……」
そういうことらしい。場所が場所なだけに、大胆な変装計画を立てた二人を放っておけなかったらしい。さすがFive Sのお母さんだ。
そして
「あと、ちょっとだけ楽しかったしな」
やっぱり楽しくもあったらしい。そこは可愛い。
「思いきって女装はいいですけど、その格好でトイレはどうするんですか? まさか女子トイレを使うつもりですか? 軽く犯罪ですよ?」
「それは大丈夫。トイレは男女共用の多目的トイレを使うから。もちろん、本当に必要な人が使わないタイミングを見計らってね」
「そうですか」
思いきって女装するだけあって、そのへんの対策はしっかり考えているようだった。
しかし、一緒に行動する祐真さんといっ君さんは、いきなり二人が金髪と女装で来るとは思っていないだろうな。もしかしたら、事前に連絡をしているのかもしれないけれど。
それでも、話で聞くのと実際に目で見るのはまた違うだろう。一体どんなダブルデートになるのやら……だ。司さんと悠那君はテーマパークでデートができて楽しいんだろうけれど。
「あ。それと、帰りは悠那の実家に寄って一泊してくるから。家に帰るのは明日の夜になるよ」
更にデートの後は悠那君の実家にお泊りなんだ。なんか僕達のグループ、既婚者が紛れ込んでいるみたいだな。
年末年始には両家合同で家族旅行に行くくらいだから、もう結婚しているでも間違いではない気もする。
(この二人って、お互いの家族の前ではどんな感じなんだろう……)
この二人のことだから、あまり家族の目を気にしているとは思えない。でも、さすがに家族の目があるところでキスやセックスはしていないだろう……と信じたい。
「好きにしろ。ってか、ゆっくりしてこいよ。まさかとは思うけど、その格好のまま行くのか?」
「うん。悠那の家族をちょっとびっくりさせようと思う」
「あっそ。でも、悠那の家族は悠那が本当に女になったのかと思ってびっくりするんじゃね?」
「大丈夫大丈夫。うちの家族はこういうの全然平気だから。むしろ、生の俺の女装姿を見ることができて喜ぶと思うよ」
「ふーん」
正直なところ、悠那君は普段着でも女装しているレベルに可愛い服を着ている時もあるからな。持っている服もメンズよりレディースの方が多かったりするし。
以前会ったことがある悠那君のご両親も、確かに悠那君が女装して現れてもびっくりするどころか、喜びそうな感じの人達ではあった。
でも、悠那君のお兄さんはどうだろう。なんかあの人、司さんと悠那君の関係も認めていないみたいだから、いきなり金髪になった司さんと、完璧に女装した悠那君が目の前に現れたら大騒ぎしそうなんだけど。
まあ、そこは僕が心配しても仕方がないって感じではあるんだけどさ。
「くれぐれもはしゃぎ過ぎて正体がバレないようにしてくださいよ。言い訳ならいくらでも思い付きますけど、できれば面倒なことになるのは御免ですからね」
「わかってるよ。ちゃんと気をつけるから心配しないで。でも、万が一のために言い訳は考えておいてね」
「全く……。それも本来は自分で考えるものですよ?」
「だって、俺や司が考える言い訳より、律が考えてくれた言い訳の方がみんなすんなり納得してくれそうだもん」
「それは司さんと悠那さんに言い訳するつもりがあまりないからなのでは?」
律はデートに出掛ける準備ができた二人の前にやや呆れた顔で朝御飯を置くと、いつまでも突っ立ったままでいる僕に向かって
「海も早く顔を洗っておいでよ。せっかく全員揃ってるんだから、みんなで一緒に朝御飯にしよう」
と言ってくれた。
そうだよね。今年に入ってからというもの、なかなか全員揃う機会もなかったもんね。
それでも、朝なら全員揃うこともあったけれど、先月は司さんと悠那君の映画撮影が佳境に入り、朝も二人がいないことが多かった。だから、こうして五人揃っての朝御飯も久し振りな感じがするよね。
でも、5月の前半は夏に出すアルバム関連の仕事がメインになるから、しばらくはメンバー揃って過ごせる時間が増えると思う。
もちろん、アルバム関連以外の仕事も入ってはいるけれど、拘束時間の長いドラマの仕事なんかはアルバム関連の仕事が終わるまでは入っていないから、久し振りにデビュー前に近いスケジュールで過ごせることになりそうだ。
「待ち合わせは何時なんだ?」
「9時」
「9時? あんまりゆっくりしてられねーじゃん。車で行くんだろ?」
「うん」
「待ち合わせギリギリになっても焦って飛ばすなよ。そういう時は遅れるって連絡して、最後まで安全運転で行けよ」
「わかってるよ。悠那もいるのに無茶な運転なんてしないよ。陽平って本当にお母さんみたい」
「お前らがいつまで経っても俺を安心させてくれないからだろ。いい加減に俺を安心させてくれ」
「はーい」
朝食の席でも何かと二人の心配をする陽平さんの姿は、司さんの言う通り、立派な保護者、母親さながらであった。
朝御飯を食べ終わり、いよいよ出掛ける二人を見送ろうとした僕達は、あまりのんびりしていられないことはわかっていても、出掛ける前の二人の写真をスマホで撮らせてもらった。
いつもとはかなりイメージの違う二人の姿は、やっぱり一瞬「誰?」ってなるけれど、なんとなくいつもより幼くてヤンチャに見えてしまう二人の写真は、僕が思った以上に可愛かった。
(この写真、Five Sの公式アカウントにアップしたいな)
さすがに今すぐアップするわけにはいかないし、二人やマネージャーの許可を取ってからじゃないと上げられないけれど。
でも、こんなレアな二人の写真は僕達だけで見るのは少しもったいない気がするよね。
デビュー三年目を迎えた僕達Five Sの5月は、こんな感じで始まったのである。
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