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Season 3
第13話 終わり良ければ総て良しっ!(1)
しおりを挟むFive Sとしてデビューしてから二度目のクリスマスを目前に、俺達は去年以上に忙しいスケジュールを熟していた。
今年もクリスマスライブには出演するし、あちこちのクリスマス特番にも呼ばれている。事前収録だったり生放送だったりはするけれど、とにかく、毎日どこかのテレビ局や収録現場に行き、朝から晩まで仕事三昧な日々だった。
加えて、ライブツアーも間に入ってくるから、体力のない俺は、移動時間をほぼ寝て過ごす有り様だった。
(結局、今年も司の誕生日は仕事なんだよねぇ……)
司の誕生日ももうすぐだ。クリスマスイブが誕生日になる司は、この仕事に就いてしまった以上、自分の誕生日を恋人とゆっくり過ごす……なんて日が、いつになったら来るんだろう。もしかしたら、そんな日は一生来ないのかもしれない。
司はあまりそのことを気にしていない様子だけど、俺の方は気にするし、残念だって思う気持ちがある。
俺がもっと早く司と恋人同士になっていたら、共同生活一年目の司の誕生日を、恋人として朝から晩まで祝ってあげられたのに……。ほんと、惜しいことをした。
それはさておき――。
「ところでさ、結局陽平と湊さんってどうなってるの?」
今年が終わりに近づいてくると、今年中に済ませておきたいことというか、やり残しはないかが気になってくる。
今現在、俺が一番もやもやしていて、今年中にすっきりさせたいと思っていることは、先日何かしらの進展があったっぽい陽平と湊さんの恋の行方だったりする。
自分のことじゃないの? って感じではあるけれど、この一年はこれといって大きな問題もなく――全くなかったわけでもないけれど――、トータル的には大満足で終わりそうな俺には、やり残しや心残りなんてものは思いつかなかった。
そんなわけだから、いくら聞いてもハッキリした答えを教えてくれない陽平と湊さんの関係が、気になって気になってしょうがないって感じだったりする。
他人事とは言え、一緒に住んでるから気になっちゃうんだよね。あんなに湊さんからの好意を鬱陶しがっていた陽平が、どういう経緯で心変わりしたのかも気になるし。
「さあ? “付き合ってない”って言い張るわりには、結構いい感じみたいだけどね。なんで付き合わないのかはよくわかんないけど」
今日も一日のスケジュールを終え、へとへとになって帰ってきた俺は、司と一緒にお風呂に入ると少しは元気も出てきたから、色々知っていそうな司に聞いてみることにした。
メンバーにも秘密主義な陽平のことを、一番知っているのは間違いなく司だと思う。先日の一件も、司は陽平から細かい事情を聞き出し済みみたいだし。
俺がまだ学校に通っている時は、陽平と二人っきりで過ごす時間も多かった司。陽平とは他愛のないやり取りをしたり、悩み相談みたいなものもしていたそうだから、司は陽平と最も話をしてきたメンバーだと言える。
その司と陽平がキスをしたって話を聞いた時は、司を疑うわけじゃないけれど、反射的に物凄くショックを受けてしまったし、尋常じゃなく腹も立ててしまった。
おそらく、俺が心のどこかでずっと陽平にヤキモチを焼いていたからだと思う。
司と陽平がそういう関係になるはずがないとわかっていても、陽平が一番心を許しているメンバーは司なんじゃないかって思うし、司も陽平だけにはちょっと甘えた態度を取るところがあるから、それが俺的には面白くないっていうか……。お互いがお互いを特別扱いしてるのが悔しいって感じかな。
本人達的には、特別扱いしているつもりは全然ないんだろうけど。
とにかく、陽平に司以上に特別な想いを寄せる相手ができてくれれば、俺も安心できるって思うから、いい感じになっているのであれば、陽平と湊さんには早くくっ付いてもらいたい。
そしたら、俺も心が狭すぎるヤキモチを焼く必要なんてなくなるし、すっきりした気持ちで今年を終わらせられると思うから。
「えー……まだ付き合ってないんだ。早く付き合っちゃえばいいのに……」
今日は12月20日。今年が終わるまであと11日しかない。その11日間の間で、この問題に決着はつくのだろうか……。
「あれ? 悠那は陽平と湊さんが付き合うことに賛成なの? 前は“変な感じがする”って言ってたのに」
「前はね。でも、今はそうでもない。むしろ、なんだかんだと陽平と湊さんってお似合いだから、ここ最近では“早く付き合っちゃえばいいのに”って思ってる」
「そうなんだ」
一番最初に司の口から湊さんが陽平を好きだって話を聞いた時は、真っ先に湊さんの趣味を疑った。どうして陽平をそういう目で見られるんだろう……と、理解にも苦しんだ。
これがまだ、陽平が見るからに可愛い系男子だったり、湊さんがそうであるなら納得ができたかもしれないけど、俺の目から見ると二人とも普通に男子だし。そんな二人が恋仲になるというのは、なんだかしっくりこないものがあった。
でも、湊さんに付き纏われ、振り回されている陽平を見ているうちに、なんとなくその気持ちがわからないでもなくなってきて――湊さんに振り回される陽平は結構可愛い――、二人の姿がお似合いにも見えてきた。
だから、今はどちらかと言えば湊さんを応援していたりする。
「いい感じって言うけど、具体的にどういい感じなの?」
「え?」
「司は知ってるんでしょ? 俺なんかよりもっと詳しい事情。この前も二人でコソコソ話してたよね?」
「コソコソなんかしてないよ。進捗状況を確認しただけで……」
「で、どうなってるの? 教えて」
「えぇっ⁈」
だけど、湊さんを全面的に応援するには全然情報が足りてない。
俺が知っている二人の情報と言えば、湊さんが陽平にベタ惚れなことと、この前陽平が湊さんの家に泊まったこと。陽平が湊さんの気持ちと前向きに向き合うことにしたことくらいで、それ以上の情報はいくら聞いても教えてもらえなかった。
「いや……それはちょっと……」
「なんで教えてくれないの? 何か言えない理由でも?」
「俺が勝手に悠那に話したら、陽平が怒るかな~……って」
「つまり、司は俺より陽平を優先したいんだ」
「違っ! そういうことじゃないよっ!」
陽平が湊さんの家に泊まって帰ってきた日の夜。司と陽平がキスしたこと知って烈火のごとく怒った俺に、司は多少恐れをなしているところがある。
多分、司的にはそこまで俺が怒るなんて思っていなかったんだろうけど、俺の中では最も警戒してしまう相手というか、一番ヤキモチを焼いてしまう相手が陽平かもしれないから、俺のヤキモチ具合も相当なものになってしまう……らしい。
正直、あの時になるまで、俺は自分が陽平にヤキモチを焼くなんて思っていなかった。司と陽平の関係に嫉妬していたことにも初めて気付かされたんだけど、一度気付いてしまったら、事あるごとに気になってしょうがないらしい。
それはもう、司を好きだと言っているありすちゃんの時よりも、陽平相手の方がヤキモチ焼きになってしまうかもしれないくらい。
もちろん、二人の間に恋愛感情が生まれることはないと思っているけれど、恋人vs親友って感じ? 我儘な俺は、司に誰よりも俺を優先して欲しい。
「参ったなぁ……陽平に相談してからじゃダメ?」
「なんでそこで陽平が出てくるの。教えてくれてもいいじゃん。大体、陽平は隠し事が多いんだよね。もっと色々話してくれてもいいと思うのに、司にしか話さないんだもん。司に言えることなら、俺達にだって教えてくれても良くない?」
「陽平が話すっていうより、俺が色々聞き出しちゃうって感じなんだけど……。陽平はいつも俺に色々聞かれて嫌がってると思うよ?」
「でも、結局司には話すじゃん」
「そうだけど……」
陽平と湊さんの情報を聞きたがる俺に、司は困り果てた顔になる。
そんなに陽平の秘密を守りたいの? そんな態度を取られると、俺にもちょっと考えがあるよ。
「ちょっ……何っ⁈ どうしたの⁈ 急にっ!」
いつまで経っても口を割らない司に腹を立てた俺は、ムッとした顔になって司の上に跨ると、そのまま司の身体を押し倒した。
ちょうどベッドの上で寛いでいたから、押し倒すにはちょうどいい場所だ。
司をベッドの上に押し倒すなり、俺は司のズボンに手を伸ばし、司のズボンを脱がそうとした。
「待って待って! 何しようとしてる⁈」
「司が素直に口を割らないから、白状しやすい状況を作るの」
「白状しやすい状況って……んっ……!」
俺にズボンを脱がされそうになった司は、慌ててズボンを押さえてきたけれど、俺はその手を払い除け、司のズボンをパンツと一緒に引き下ろしてやった。
そして、その下でまだ眠っている司を取り出すと、躊躇うことなく司を口の中に咥え込んだ。
「ゅっ……悠那っ……」
俺の口がちゅうぅっと司に吸い付くと、口の中の司はあっという間に形を変え、たちまち俺の口の中をいっぱいにしてしまった。
お風呂から出たばかりだから、ココもボディーソープのいい匂いがする。
「ずっ……ズルいよ、悠那……これは反則……」
「反則でもいいんだもん。司に隠し事されて拗ねてるんだから」
「だからって何もこんな……こんな拗ね方しなくても……っ!」
俺の口に扱かれて、次第に息が上がって追い詰められていく司に気を良くした俺は、俺に気持ち良くされている司をもっと見たくて、口の中をいっぱいにしている司にもっと強く吸い付くと、司は堪らないと言わんばかりに、小さく息を詰めた。
司の反応を可愛いと思ってしまう俺は、当初の目的をすっかり忘れ、もっともっと司を気持ち良くしてあげようと頑張り始める。
「悠那っ……そんなにしたら……イっちゃうよ……」
「んっ……んんっ……」
濡れた音をいっぱい立てて、口と一緒に手も使いながら司を扱き上げていく俺は、掠れた司の声に身体がゾクゾクしてしまう。
俺はいつも司にたくさん気持ち良くしてもらっているけれど、俺と一緒に気持ち良くなっている司を見るのも凄く好き。
俺の中を気持ちいいと感じている司の顔も好きだし、イきそうになっている時のちょっと苦しそうな顔も好き。イった後の恍惚とした顔も好きで、そんな司の表情を見ると、俺は堪らなく嬉しくなるし、司のそういう顔をいっぱい見たいって思ってしまう。
「悠那っ……ダメだよ……イきそ……イっていい……?」
「んんっ……んっ……」
俺の口の中で何度もビクビクと震え、イきそうになるたびにどうにかやり過ごしていた司も、容赦なく攻め立ててくる俺に、とうとう我慢ができなくなってきたみたい。
頭を激しく上下させ、司を一生懸命扱く俺の髪に触れてきた司が、その髪を撫でるような動きをしてきたから、褒められているみたいで嬉しくなった俺は、返事をする代わりに司がそうされると弱いやり方で、司を絶頂へと導いていった。
「んっ……悠那……っ……」
弾む息に熱っぽく呼ばれ、感じている司の顔を想像しただけで気持ち良くなってしまう俺は、頭の中が真っ白になってしまいそう。
「悠那……っ……出る……出すよっ……」
「んっ……んんっ!」
口の中の司がドクンッと大きく脈打ったと同時に、口の中に生暖かい感覚が広がった。
「っ……はぁっ……」
司は何度か腰を揺らし、俺の口の中に全てを出し尽くすと、それを喉を鳴らして飲み込む俺の姿を、愛しそうに細めた目で見詰めてきた。
司が出したものを全て飲み干し、司自体も綺麗にしてあげるように全体を舐めとってから顔を上げると、すぐさま司の腕が俺を抱き締めてきてくれた。
「気持ち良かった……悠那……」
「ん……」
褒められるなりキスされた俺は、今度は自分が司に気持ち良くして欲しいって強く思っちゃったりして……。こうなる前、自分は司となんの話をしていたのかさえ、最早どうでもよくなっている有り様だった。
「物欲しそうな顔してる。悠那は俺のを舐めて気持ち良くなっちゃったんだよね」
「うん……」
「いいよ。次は俺が悠那をいっぱい気持ち良くしてあげるから」
「ぁ……」
司の上に乗っていた俺は、司が身体を反転させたことにより、今度は自分が下になり、あれよあれよという間に着ているものを剥ぎ取られてしまった。
「わ……もうびしょびしょじゃん。そんなにエッチな気分になってたの?」
「だってぇ……」
「俺に陽平と湊さんのことを白状させたいんじゃなかったの? こんな状態じゃそれどころじゃなさそうだね」
「うー……」
司に言われて目的を思い出した俺だけど、司の言う通り、今はそれどころじゃなかった。司から陽平と湊さんの話を聞き出したいのは山々だけど、まずは完全にスイッチの入ってしまった俺の身体をどうにかして欲しい。
「諦めてないもん。また後でちゃんと聞くもん……」
辛うじて言えたのはそれくらいのもので、その先の言葉は司の唇で塞がれた。
呼吸を忘れてしまいそうな深いキスを一身に受ける俺は、今年もこうして司といっぱい愛し合えたことが、嬉しくて幸せで仕方なかった。
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