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Season 3
君が望む世界(8)
しおりを挟む明かりを消した部屋の中は薄暗く、静かなエアコンの稼働音に混ざり、乱れた呼吸が絡まり合っていた。
「ぁ、ん……んんっ……」
「律っ……平気?」
「んっ……平気……ちょっと苦しいけど……」
二つ並んだベッドのうちの一つは空。もう一つのベッドの上で重なり合う影は、僕と律が一つになっている証拠を、しっかりと部屋の壁に映し出している。
「あれから二ヶ月だもんね。初めての時とあんまり変わらない感じかも」
「だって……家の中でスるのはやっぱり……」
「わかってるよ。責めてないから安心して。時々エッチなことはしてるから問題ないよ」
「んっ……」
初めての時と同様に、時間を掛けてしっかり解してあげた律の中に、これまた時間を掛けてゆっくり自分を根元まで埋めた僕は、二ヶ月振りの感覚に意識が飛びそうなくらいの快感に襲われた。
蕩けそうなほど熱くて柔らかいのに、しっかりと僕を締め付けてくる律の中は、初めての時より気持ちいいと感じる。
一度セックスしたことによって、少しだけ律の身体が僕に馴染んだってことなんだろか。二ヶ月振りだから、馴染むほどのものでもないとは思うけど。
「ゃっ……待って……まだ動かないで……」
「ん……わかった……でも、あんまり我慢もできなさそう……」
僕を受け入れるだけでも精一杯な律は、僕を根元までしっかり咥え込んだ後、自分の身体が僕を完全に受け入れるまで、そのままでいて欲しいとお願いしてきたりする。
それはそれで辛いものがあるんだけど、律とセックスするのも二回目だから、あまり無茶なことはできない。
もともと律のお尻は小さいし、入り口だってやっとの思いで僕が挿入るくらいだ。挿れて早々、欲望任せに突き上げるなんて乱暴なことはできない。
「ぁ、ん……はぁっ……」
「律の中……何もしてないのにヒクヒクしてて気持ちいい……」
「そ……そういうこと言わないで……」
「どうして? 僕と一つになってる時、律の身体がどうなってるのかを教えてあげてるのに」
「ぁんっ! ぁ、んん……」
少しずつ僕と一つになっていることに慣れてきた頃合いを見計らって、少しだけ腰を送ってみると、律は悲鳴に近い声を上げながら、ギュッと僕にしがみ付いてきた。
「今きゅうってなった。奥突かれて気持ち良かった?」
「馬鹿馬鹿っ……言うなっ……」
「えー?」
必死な律とは裏腹に、可愛い反応をしてくれる律の身体に喜ぶ僕は、もっと律の中を掻き回して、律に可愛い声をいっぱい上げさせたいと思ってしまう。
家の中でエッチなことをする時は、どうしても声を抑えてしまう律だから、律の可愛い喘ぎ声が全然聞けないんだよね。
「律。もういい?」
「まだ……もうちょっと……」
「とか言って……ほんとは声が出ちゃうのが恥ずかしいだけなんじゃないの?」
「そんなこと……ぁあんっ!」
「ほら。大丈夫そうじゃん」
「ば……馬鹿ぁ……」
既に一番苦しい場所を通り過ぎ、僕を根元まで咥え込んでしまっている律は、その時点で痛くないのであれば、多少動いても問題はないと思う。
ただ、身体が慣れていないうちに僕に動かれると、声を抑えることができないみたいだから、律はそれが恥ずかしいに違いない。
その証拠に、僕がちょっと腰を揺らしたくらいでは、律はちっとも痛そうな素振りを見せなかった。
「動かないでって言ってるのに……」
「だって、早く律と一緒に気持ち良くなりたいんだもん。律は気持ち良くないの?」
「そういうわけじゃ……」
「じゃあ気持ちいい?」
「っ……」
僕に中を満たされているだけでも感じてしまうのか、律の中は絶えず僕を堪らなく締め付けてくるから、僕もイってしまわないように我慢するので精一杯になりそうだ。
でも、さすがに挿れてるだけでイってしまうのは格好悪いから、律の前では余裕ぶって見せている。
僕に「気持ちいい?」と聞かれた律は、自分だけ一杯一杯で余裕がないように見えているのだと思い、悔しそうな顔をしたが
『心配しなくても僕も一杯一杯だよ』
と言ってあげたい。
むしろ、先に理性をなくしてしまいそうなのは僕の方で、こうして一つになった後も、理性を保っていられる律の方が、余裕があるようにも思える。
「教えてよ、律。僕と一つになってどんな感じ?」
「それは……」
「僕は凄く気持ちいいよ。律と一つになってるんだって思うと心の底から嬉しいって感情も湧き上がってくるし」
律を突き上げたい衝動に駆られながらも、紳士的に振る舞おうと頑張る僕は、律と会話をすることで、どうにか理性というものを保とうとした。
そんな僕の気持ちを知らない律は、僕の姿が余裕綽々に見えるのが気に入らないといった顔。
それでも、精一杯甘い雰囲気を作ろうとする僕には多少絆されるようで
「僕だって……海と一つになるのは気持ちいいと思うし、嬉しいって思うよ」
と、消え入りそうな声で答えてくれた。
でも、その後にちゃんと
「って、今日って僕の誕生日なんだよね? なんでそんな意地悪なこと聞くの?」
って責められたりもしたけれど。
意地悪って……。こんな時でもないと、律の本音が聞けないからじゃないか。それを“意地悪”って言われても……。
「意地悪してるつもりはないんだけどね。せっかくだから、律といっぱいイチャイチャしようと思ってるだけ」
「そういうの、僕が苦手だって知ってる癖に」
「うん。知ってるよ」
あまり反省している様子のない僕に、律はムスッとした顔になり
「やっぱり意地悪だ」
と、諦めにも似た声で呟いた。
一見、機嫌を損ねてしまったようにも見えるけど、本当に機嫌を損ねてしまったのであれば、こんな状況でも律は平気で事を中断してしまうだろう。
つまり、これは僕と律なりのイチャイチャの仕方であり、律は見た目ほど機嫌を損ねているわけではないし、ましてや怒っているわけでもない。
心と言葉が裏腹というか、素直じゃないだけなのである。
それもこれも、律の中の“恥ずかしい”という気持ちが先行してしまい、素直になりたくてもなれないだけなのだ。
そういう不器用なところが可愛い。
「ねえ、律。もう動いていい?」
律の中できゅうきゅうと締め付けられる自分にいよいよ我慢ができなくなってきた僕は、少しだけ呼吸が落ち着いてきた律に聞いてみた。
律は大きな瞳でチラッとだけ僕を見てから
「うん……」
と小さく頷いてくれた。
どうやら心の準備ができたらしい。
律の承諾を得て、ようやく欲望を解放することができる僕は、律の太腿の下に腕を差し込むと、律の両脚を持ち上げるようにしながら、律の脚を開かせた。
「っ……」
律はそうされるのが恥ずかしいみたいで、僕から視線を逸らし、悔しそうに唇を噛み締めたりしたけれど、その仕草が僕の目にはとてもいじらしく映ってしまうから、律に煽られた身体がドクンッと脈打つのを感じた。
「んっ……あぁっ……んっ!」
ゆっくりと引いた腰で奥までズンッと突き上げてあげると、律の口からは甲高い嬌声が上がった。
その声がもっと聞きたくて、少しずつ腰の動きを速く、激しくしていくと、律は突き上げられるたびに可愛い声を漏らし、僕を堪らなく締め付けてくる。
「やだっ……声っ……あぁんっ!」
「かわい……」
「ぁ、んっ……やぁっ……ダメぇ……っ……」
初めての時の記憶を辿り、律が感じるように腰を使うと、ただでさえ堪らなく僕を締め付けている律の中が、更に僕を容赦なく締め付けてくるから、少しでも気を抜くと全部搾り取られそうになる。
眩暈を起こしそうなほどの快感に歯を食いしばり、何度も何度も律を奥まで突き上げると、僕をきゅうぅっと締め付ける律の中が、ひくひくと収縮し始めた。
「ぁっ……あー……っ、ん……イ、く……イきそうだよぉ……」
「んっ……イっていいよ……僕もイきそ……」
まだ経験の少ない僕達は、あっという間に追い詰められてしまい、僕が腰を送り始めて5分もしないうちに絶頂を迎えてしまいそうだった。
ちょっと情けないようにも思うけど、セックス自体が二回目だと考えたら仕方ない。初めての時だって、僕達はあっという間に絶頂を迎えてしまい、こんなに早くイっちゃうものなの? って驚いたくらいだ。
でも、その代わりと言っちゃなんだけど、一回イった後は余裕ができるから、一度イってしまった後に時間を掛けて二回目をスる、という流れになる。
セックス自体をそんなにできない環境だから、スる時はとことんやるスタイルだ。一回イった後の方が、律の身体も僕に馴染んで、感じやすくもなってくれるしね。
僕としては、早く律とのセックスに慣れて、一回目から時間を掛けてシてあげたいって思うんだけど、律が好きで堪らない僕は、律とセックスしていること自体に興奮してしまうから、我慢することが難しい。
「ぁっ、ん……んっ……あぁっ……」
「律っ……気持ちいい?」
「んっ……んんっ……気持ちぃ……」
僕に何度も奥を突き上げられているうちに、恥ずかしいと思う余裕もなくなってしまった律は、大きな瞳にうっすらと涙を浮かべ、僕の質問にこくこくと頷いてくれた。
律が僕とのセックスをちゃんと気持ちいいと感じてくれていることがわかると、安心するのと嬉しいのとで、自然と律を突き上げる動きが激しくなった。
「あんんっ! やっ、ぁ……あぁっ……んっ……」
律の腰を掴み、肌がぶつかる音が出るくらいに強く腰を打ち付けると、ただでさえ大きな律の瞳が更に大きく見開かれ、まるで電流でも流されたかのように、身体がびくびくと震え始めた。
「ぁっ……ぁ、んっ……イくっ……イきそ……」
「いいよ……イって……僕もイくから……」
息を弾ませながら、一番奥まで深く突き上げた瞬間――。
「あぁぁんっ……!」
律は身体をきゅうぅっと絞りながら射精して、奥を突くたびに尖端から白濁を放った。
それとほぼ同時に、律に搾り取られるように締め付けられた僕も、律の中に熱い迸りをぶち撒けていて、その解放感が堪らなく気持ち良かった。
「やっ……やだ……いっぱい出ちゃう……」
「んっ……いっぱい出して……イってる律可愛い……」
「あ……んんっ……」
お互い全てを出し尽くし、しばし射精の余韻に酔い痴れはしたものの、そこから一息ついても全然足りない。律の中に射精した後も、僕の硬度は全く衰えていなかった。
自分が吐き出した熱を奥まで塗り込めるように動くと、射精して呆然となっていた律が、ギョッとした顔になって僕を見てきた。
「まっ……待って……まだ……」
「ダメ。待てない。律の中、熱くてぬるぬるで気持ちいい」
「でもっ……僕、イったばっかり……」
「僕もイったばっかりだよ。それに、律もまだまだイけるでしょ? だってほら、律も全然萎えてないよ?」
「こ……これは……」
恋愛に淡白で、エッチなことにも消極的な律だけど、人並みの性欲くらいはあるようだ。僕同様、射精後も全く萎えていない律を見ると嬉しくなる。
「たまにしかできないんだから、できる時はとことんね」
「そんな……」
律から離れるどころか、改めて律の腰を掴み直す僕に、律は泣きそうな顔になって僕を見た。
だけど、僕の身体を押し返すことはしなかったから、律も満更じゃないってことだよね?
抵抗する気力がないだけかもしれないけれど、そういうことにしてしまおう。
今日は律の誕生日だというのに、いい思いをしているのは律より僕の方で、それが少しだけ申し訳なかった。
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