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Season 3
Love Fighter!(4)
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ドラマの放送が始まる前から
『悠那君が凄く可愛いから楽しみにしててね』
と、以前撮影現場にお邪魔した際、監督やスタッフから口々に教えてもらってはいたけれど……。
「最早女子にしか見えねー」
「男の娘っていうより、普通に女の子ですね」
「可愛過ぎませんか? ちょっと問題ですよ」
そう……みんなの言う通り、問題にしていいレベルに可愛い悠那の姿に、俺は言葉を失いかけていた。
なんだこれ。こんなに可愛い悠那の姿が、今まさに全国放送のテレビから流れちゃってるの? 見せたくない。見て欲しくない。見るな。
そりゃこんなに可愛けりゃ、変なおっさんに目も付けられるわ。どういうことよ、この可愛さは。
「お前さー、顔はともかく、身体付きまで女っぽいのはなんでなの? 普通、男の太腿はこんなに柔らかそうには見えないし、ケツだってこんなに丸みを帯びてないんだよ。悠那の裸なんて見たことないけど、お前の身体ってどうなってんの?」
「悠那君はあんまり筋トレに力入れてないですもんね。筋力がないぶん、身体が柔らかそうに見えるんじゃないですか? このドラマ見てる人で、悠那君を知らない人は、これが男同士の恋愛ドラマだなんて思わないでしょうね」
「知ってても普通の恋愛ドラマかと思いますよ。僕、悠那さんが女の子役を演じているのかと思いますもん」
「え~?」
悠那のドラマが始まる時間までに家に帰って来られた俺は、着替えるより先にテレビの前に座り、みんなと一緒に悠那のドラマを見ることにした。
家に帰ってきた時間がドラマの放送開始ギリギリだったから、着替えている間なんてなかったんだよね。
俺がソファーに座ると、俺の膝の上に悠那がちょこんと座ってきたから、なんでそこに座るの? と思っていたら……。
「あーっ! ここは司が見ちゃダメなとこっ!」
どうやら俺に見られたくないシーンがあるらしく、そのシーンがくるたびに、自分の身体で俺の視界を遮るためらしい。
どういう邪魔の仕方なんだ。そもそも、俺が見ちゃいけないシーンってなんだ。そんな問題シーンなんてまだないはずだよね?
「は? なんで今のシーンを司が見ちゃダメなんだよ。別になんもしてねーじゃん」
「樹さんと距離が近いし、見詰め合うシーンだからダメなの」
「いやいや……それじゃ司はドラマの半分以上を見られねーんじゃねーの?」
「そんなことないよ。俺だけのシーンは見て大丈夫だもん」
遮られたシーンがどういうものかが逆に気になってしまうが、悠那は樹さんと一緒にいるシーンを俺に見せたくないらしい。
そんなこと言われると、陽平の言うように、ドラマの半分以上が見られなくなる気もするが、樹さんとの距離がある場合や、樹さんと目を合わせていないシーンなら見てもいいらしい。
ぶっちゃけ、今隠されたところで、ちゃんと録画はしてあるから、後からいくらでも見られるんだけどね。
いやいや……そんなことよりも……だ。俺は悠那と樹さんのシーンより、悠那の剥き出しになっている太腿の方が気になる。陽平の言うように、悠那の柔らかくて美味しそうな太腿が丸出しである。なんでこんな太腿丸出しの衣装なの? 男の娘は太腿出さなきゃいけない決まりでもあるの?
「悠那……」
「うん?」
「毎回こんな衣装で撮影してるの?」
「え? えっとぉ……うん。大体はこういう服装してるかな。この前はスカートも穿いたよ?」
「スカート⁈ スカートってまさか……ミニじゃないよね?」
「膝上ではあったけど、ミニってほど短くはなかったと思うよ」
な……なんてことだ。悠那はまたしてもドラマでスカートなんか穿かされているのか。しかも、悠那本人があまり嫌がっている様子がない。
前は多少嫌がる素振りを見せていたと思うのに、一番最初に出たドラマがメイド役で女装だったことや、俺の誕生日に自ら女性用の下着を着けたりしたことにより、女装姿を披露することに抵抗がなくなってしまったんだろうか。
もともと、“男の娘”というマニアックな題材を取り上げたドラマに、需要があるのかどうかと疑いを持っていたけれど、これはもうドラマの内容云々より、ただ悠那の可愛さを垂れ流すだけのドラマなのでは?
「これ、また凄い反響きそうですよね。悠那君はどこに向かっていくんでしょうか」
「まあ……今後も悠那さんはあまり“男らしさ”を求められるようなことはないと思うので、こういう中性的な役柄ばかりになりそうではありますよね」
「確かに、悠那に男らしさを求められても……って感じだもんなぁ……」
「なんで⁈ 俺だってたまには男らしい時だってあるよっ!」
悠那が可愛いのは今に始まったことじゃないけれど、日々性別不詳になっていく悠那に、同じグループのメンバーも困惑気味だった。
悠那本人は男としての自覚があるようだけど、悠那の一番近くにいる俺でさえ、悠那の男らしさというものはよくわからなかったりする。
初主演ドラマで男の娘を演じている悠那ではあるが、男の娘を地でいっているような悠那は、律の言うように、今後も男らしさを求められるようなことはないだろう。また、本人に男という自覚があったとしても、男らしくはなれないと思う。
そこに不満はないけれど、これ以上、悠那を邪な目で見る輩が増えることは好ましくない、とは思ってしまう。
「司……なんか怒ってる?」
ドラマを見終わった後は順番にお風呂に入り、それぞれの部屋に引き上げていったわけだけど……。
「怒ってはいないよ」
一回目の放送から始終“可愛い”でしかなかった悠那に、俺は思いの外、精神をやられていた。
なんて言うか……俺の大事な悠那を隠し撮りされて晒されてるって感じ?
もともと悠那は可愛いし、今までテレビから流れる悠那も全部可愛くはあったわけだけど、今回は恋愛ドラマということもあり、これまでの“可愛い”とはちょっと違う“可愛い”姿も披露させられていると思う。
つまり、俺と一緒にいる時の可愛い悠那が垣間見えてしまうから、俺的にはそこが面白くない。
もちろん、ドラマの中で演じる表情と、俺に見せてくれる自然な表情に若干の違いはあるものの、恋愛対象として“可愛い”悠那の姿は表現されていると思う。
これまで俺だけが見ていた悠那を、テレビなんかで簡単に見られてしまっては、悠那に関してだけは独占欲の塊である俺がいい顔をするわけがなかった。
前に悠那がドラマの中でメイド姿を披露した時だって、俺は引き籠ってしまいたくなるくらいに拗ねそうになった。
「あんまり可愛い悠那を他の人間に見られたくないだけ」
不安そうに俺の顔を覗き込んでくる悠那に手を伸ばすと、俺はギュッと悠那を腕の中に閉じ込めた。
華奢で柔らかい悠那の身体を抱き締めると、悶々とした気持ちは和らいでくれるけど、同時に、誰にも渡したくない、という強い独占欲も湧いてくる。
「そんなこと言ったら、俺だって格好いい司を人に見られるのは嫌だよ?」
俺がただやきもちを焼いて拗ねているとわかった悠那は、ホッとした表情になり、俺を宥めるみたいに俺の背中に手を回してきた。
「やきもち焼いてくれてたんだ。嬉しい」
俺に抱き付いた悠那は、俺の胸に顔を埋めながら、本当に嬉しそうな顔でそんなことを言うから、俺の心を支配していた独占欲は一気に悠那への愛しさへと変わっていった。
男の嫉妬はみっともない、と言うし、俺自身、些細なことですぐやきもちを焼いてしまう自分を格好悪いと思っている。だけど、悠那は俺がやきもちを焼く姿に一度も嫌な顔をしたことがなかった。むしろ、俺がやきもちを焼く姿を喜んでくれる。
悠那は悠那でやきもち焼きだから、お互いにやきもちを焼き合える関係が嬉しいのかもしれない。俺だって、悠那がやきもちを焼いてくれるのは嫌じゃない。“こんなことでやきもち焼くなんて可愛いな”って思う。
「そりゃやきもちも焼くよ。悠那は俺だけの可愛い悠那でいて欲しいもん」
「心配しなくても、俺の全ては司のものだよ。誰にもあげないもん。司こそ、俺以外の女の子に靡いたりしないでよ?」
「そんなことあるわけないでしょ?」
ドラマを見終わった後からテンション低めだった俺は、お風呂から出て――もちろん、悠那と一緒に入った――、悠那と二人っきりになった途端にこれである。
悠那が俺の機嫌を直すのが天才的に上手いのと、悠那との二人っきりの時間を誰にも邪魔されなくて済むという環境が、俺の心を落ち着かせてくれるからだろう。
「俺だって、この前の司のドラマではいっぱいやきもち焼かされたんだから。おあいこだよ」
「そうだね」
すっかりイチャイチャモードに突入してしまった俺達は、どちらからともなく唇を重ね、戯れのようなキスをしながら笑い合った。
じゃれ合いみたいなキスに笑う悠那は、俺からのキスを躱してみたり、寸止めされたキスに唇を寄せてきたりしながら、恋人同士の時間を堪能していた。
そのうち、悠那の身体が俺の上に乗り掛かってきて、俺をベッドの上に押し倒すと、今度は舌を絡ませる深いキスを交わした。
「ん……ぁんん……」
さっきまでの遊びのキスとは違うキスに、悠那の身体はすぐに熱を帯びていく。悠那のその気スイッチは簡単にオンになってくれるから、俺はあまり欲求不満にならなくて済むし、すぐにやきもちを妬いてしまう嫉妬心も、長引かなくて済んでいる。
「ぁ……やぁん……」
俺の上に覆い被さる悠那にキスしながら、悠那のパジャマのズボンに手を差し込んだ俺は、ぷりんっとした可愛い悠那のお尻を両手で揉みながら、お尻を揉まれるたびに腰が揺れてしまう悠那の反応を楽しんだ。
朔夜さんが悠那のお尻を揉みたがる気持ちがわからなくもない。悠那のお尻って柔らかいし弾力があって、凄くいい揉み心地。ちょっとだけ大きくなったお尻は揉み応え充分だし、随分エッチなお尻に育ってくれた。
「ゃん……お尻揉まないでよぉ……」
「なんで? 可愛いお尻だからいっぱい揉みたい」
「だって……司がいっぱい揉むからお尻大きくなっちゃうんだもん……」
「そうだね。俺にいっぱい揉まれてエッチなお尻になっちゃったよね」
「んんっ……」
俺が両手を突っ込んだことにより、ずり下がってしまったズボンからは、悠那の可愛いお尻が少しだけ見えてしまっている。丸みを帯びた形のいい双丘は、CMに出してもいいくらい綺麗だった。絶対出させないけど。
「ん? お尻揉まれてるだけで気持ち良くなってきちゃった?」
「だ……だってぇ……」
俺の手が執拗に悠那のお尻を揉みしだいているうちに、俺の下腹あたりに押し付けられている悠那のナニがちょっとずつ大きくなってきた。
お尻を揉まれるのが気持ち良くて勃っちゃうなんて、ほんと可愛い。
明日の悠那のスケジュールがどうなっているのかを確認するのを忘れたけど、こうなってしまった以上、何もしないわけにはいかないよね。悠那だって、この流れからお預けを喰らうのは耐えられないだろうし。
「悠那……いいよね?」
それでも、一応は確認を取ってみると
「聞かなくたっていいに決まってるでしょ……我慢する方が無理……」
感じることで潤んでしまう瞳の悠那が、すっかり欲情した目でそう言ってきた。
こんな顔はさすがにテレビでは見られないだろう。俺とエッチなことする時の悠那だけは、紛れもなく俺だけが見れる悠那の顔だ。
絶対に俺だけしか見られない悠那の顔を間近で見詰める俺は、俺だけが見られる悠那の姿に優越感を覚えた。
どんなに可愛い悠那の姿を見られたとしても、その悠那でどんな妄想をしたとしても、こうして実際に悠那に触れることができるのは俺だけだ。それがこの上なく誇らしい。
「司……」
込み上げてくる欲望に抑えが利かない悠那は、俺の股間に手を伸ばしてきて、緩く頭を持ち上げかけている俺を、根元から先端に向かって撫で上げてきたりする。
「っ……」
そのいやらしい手つきに息を詰めてしまった俺だけど、主導権は俺にある。悠那のズボンを引き下げて、お尻を丸出しにしてしまうと、もっと大胆に悠那のお尻を揉みしだいた。
「ぁん……ゃっ、ぁ…んん……」
すぐさま可愛い声で喘ぎ始める悠那に満足しながら、俺にお尻を揉まれて身体を震わせる悠那にいっぱいキスしてあげた。
きっとこの揉まれているお尻の奥では、可愛いお口がパクパクしてて、「早く、早く」って催促してるんだろうな。
容姿、性格、身体までもが余すところなく全て可愛い悠那は、老若男女問わず、どんな人間でも虜にしてしまう魅力がある。
世の中には可愛い子なんて五万といるだろうけど、こんなに全身から可愛いが滲み出ている人間はそういないだろう。悠那はどこに行っても「可愛い」と言われるし、無邪気で天真爛漫な性格は可愛がられもする。悠那に会った人間はみんな悠那を可愛がり、これでもかってくらいに甘やかす。
その悠那が俺を選び、俺だけを愛してくれているとい事実は、俺にとって最大の自信になる。俺がアイドルとして問題なく過ごせていられるのも、悠那が俺を好きでいてくれるからだと思っている。
自分からオーディションを受けたものの、俺にはこれといって特技はないし、自分のどういうところに自信を持っていいのかがわからなかった。もし、俺が悠那と恋人同士になっていなかったら、今頃アイドルになったことを後悔していたかもしれない。
「司……好き……大好き……。俺の全部あげるから、司も俺に全部ちょうだい……」
「ん……あげるよ……。俺の全ては悠那のものだよ……」
やきもちを焼いた後ということもあって、今日は特に悠那を欲しがる俺に、悠那は全て応えてくれたし、俺をいっぱい満たしてくれた。
これからドラマの放送が終わるまでの約三ヶ月。俺はドラマを見るたびにやきもちを焼くことになるんだろうけど、そのたびに、悠那はこうして俺の心を満たしてくれるんだろうな。
そして、このドラマの放送自体が、俺が今抱えている問題を解決に導く鍵になることを、この時の俺はまだ知らなかった。
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