僕らの恋愛経過記録

藤宮りつか

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Season 2

最終話 また来年!

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「はぁ~……今年はほんと色々あったねぇ~……」
 なんて。今年一年を振り返った時、出てくる言葉はそれくらいしかなかった。
 だって、ほんとに色々あったんだもん。2月にFive Sとしてデビューしてからは、目まぐるしい日々の連続だったりもした。まだ不慣れなところはあるにせよ、最近ではだんだん仕事の仕方がわかってきて、ちょっとだけ余裕みたいなものも出てきたんじゃないかな。芸能界での仕事に戸惑うばかりだった日々が、遠い昔のようにも思える。
 プライベートでは悠那と付き合い始めたし、律と海が付き合っていることも知った。陽平と湊さんのびっくり展開なんかもあったりして、それはもう、毎日が盛り沢山って感じだった。
 もちろん、全部が全部いい思い出ってわけじゃないし、忘れてしまいたい思い出もあるけれど、その全て諸々をひっくるめて振り返ってみれば、トータル的には
『いい一年だった』
 と言えるのではないだろうか。
「最後の最後に新人賞を取れたのは良かったですね。一年をいい形で締め括れたって感じですし」
「ほんとそれ。新人賞なんてデビューした年にしか取れないから、その新人賞を取れたのは嬉しいよね」
 今日、年に一度の音楽授賞式に出席した俺達Five Sは、今年の新人賞を見事受賞して、今年最後の仕事を終えて帰ってきたばかりだったりする。
 年内の仕事は今日が最後で、明日からは五日間のオフをもらっている。去年はデビュー前の準備で年末年始もなかったけれど、こうして年末年始に休みをもらえるのは嬉しい。
 マネージャーが言うには
『今年と来年くらいね。年末年始にお休みがあげられるのも。再来年からはカウントダウンコンサートとかするわよ』
 とのこと。
 まだ高校生が三人いるFive Sは、22時以降の仕事はNGになっているので、最年少の律と海が高校を卒業するまでは、カウントダウンコンサートなんかにも出演ができないのである。
「みんな明日から帰省するんですよね?」
「うん。こっちに来てから全然実家に帰る機会がなかったから。こういう時は家族に顔見せに帰らなきゃね」
「家族に会うのも凄く久し振り。なんかちょっと照れ臭いね」
「司さんのお姉さんは一回ここに来ましたよね。学校から帰ってきたら、知らない女の人がいてびっくりしましたよ」
「あの時はごめんね。まさか姉ちゃんが来るとは思わなかったんだよ」
「でも、楽しかったですよ。また会いたいです」
「またいつかね」
 そして、明日から五日ほど貰えるオフを利用して、俺達は久し振りに実家に帰ることになっている。
 正直、俺は家族に会いたいって気持ちがそこまで強くないんだけど、みんなが帰るのに俺一人ここに残っててもしょうがないし。
『今度はいつ帰れるかわかんねーんだから、たまには帰って親孝行でもしろ』
 って陽平にも言われたから、みんなと一緒に帰省することにした。
 家族に会いたくないわけじゃないんだけど、五日も悠那と離れ離れになるのがちょっと嫌かな。
 でも
「帰省中に司の実家に遊びにでも行こうかな。そんなに遠くないし」
 って悠那が言ってくれたから
「だったら俺も悠那の家に遊びに行く」
 と返した。
 そんな俺達の会話に
「いやいや。やめとけよ。お前ら家族の前でも平気でイチャイチャしそうじゃん。自分の息子に男の恋人ができたなんて知ったら、親泣くぞ?」
 陽平がすかさず突っ込みを入れてきた。
 こういうやり取りも明日からの五日間はできないのかと思うとちょっと寂しい。最初はどうなるかと思っていた共同生活も、すっかり居心地いいものになっているんだな。
 一年以上も共に生活しているFive Sのメンバーは最早家族同然。第二の家族と言っても過言ではないってことなんだろう。
「律と海は家近いんでしょ?」
「はい。近所ですよ。なので、実家に帰っても海とは毎日会うと思います」
「昔から、律の家にはしょっちゅう遊びに行ってますからね。律の家族とも仲良しなんですよ」
「いいなぁ~」
 俺達と出会う前からの幼馴染みである律と海は、実家に帰ったからといって、会えない寂しさを感じる必要はないようだ。悠那はそれを普通に羨ましがった。
「陽平は一人っ子なんだよね? 帰ったら凄く甘やかされそう」
「うーん……どうかな? もう子供ってわけでもないし。もともと俺の親は子供を甘やかすタイプでもないんだよな。最近は友達みたいな感覚で接してくるし」
「楽しそうですね。親に友達感覚で接してもらえるなんて」
「まあ楽しいよ。うちの親、明るいのが取り柄みたいなもんだし」
 ここに来て以来、全然会っていない家族の話を始めると、自然と会話が盛り上がってしまうらしい。
「んなことより、俺が一番気になってるのは悠那の兄貴だけどな。顔は見たことないけど、しょっちゅう悠那に荷物送ってくるじゃん。どういう兄貴なの?」
 自分の家の話はもういいと言わんばかりに、今度は悠那の家族の話へと話題を移す陽平に、俺は思わずハッとなってしまう。
 そうだった。悠那の家に遊びに行く、なんて言ったけど、悠那の実家には悠那を溺愛している兄ちゃんがいるんだった。悠那と一緒にいるとイチャイチャが止まらなくなる俺は、悠那の実家に遊びに行っても大丈夫なんだろうか。
「どんなって言われても……普通に優しいお兄ちゃんだよ? 俺のこと、物凄く可愛がってくれるよ」
「僕が思うに、悠那さんのお兄さんはあまり普通じゃないと思います」
 悠那にとっては自慢の兄なのだろうが、傍目にはあまりそうは思われていないようである。常識についてはこの中で一番まともな感覚を持っている律でさえ、悠那の兄ちゃんには些かの疑問、異常さを感じているようだ。
「そうかなぁ? 普通だと思うけど……」
 悠那の常識が一般的な感覚からズレているとは思わないけど、兄ちゃんに対する感覚だけはズレていると思う。
 もし、悠那の兄ちゃんが俺と悠那が付き合っていることを知り、俺が悠那に手を出したと知ってしまったら……。俺は休み明けにここに帰って来られない身となってしまうかもしれない。
「家族にはもちろん会いたいんですけど、ここを離れるのもちょっと寂しい気がしますね」
 時計の針は刻一刻と進んでいき、今日という日が終わろうとしている。明日の朝にはみんな揃ってここを出て、一時だけアイドルの自分から解放される時間を過ごすことになる。
 それはリフレッシュのためにも必要なことだろうし、忙しい毎日の中での癒しにもなると思うけど、一年以上も一緒に生活していた場所から離れるのは、やっぱり寂しく感じるもののようである。
「そうだな。なんだかんだとここでの生活も当たり前になってるもんな。最初は不安しかなかったのに」
「住めば都。とはよく言ったものですよね。でも、休みはたったの五日間ですから。五日後にはまた元気な顔で会いましょう」
「そうだね」
 今は寂しく感じているけれど、五日なんて多分あっという間だ。年を跨いでリフレッシュした後は、また新しい一年をこのメンバーと一緒に作っていくことになる。そして、それを何年も積み重ねていくことになるんだと思う。
 俺達が一緒に歩む道はまだ始まったばかりで、今まで歩いてきた道よりも、これから歩んでいく道の方が長くて、大変なこともいっぱいあるだろう。
 だから、また来年。ここでちょっと一息吐いて、また来年一緒に歩いて行こう。そして、来年は今年よりももっともっといい一年にしよう。
 なんて。ちょっと真面目に思ってしまう俺だった。




                         ~Fin~

                      番外編 Go Home
                          &   
                       Season3へ続く
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