僕らの恋愛経過記録

藤宮りつか

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Season 2

    世界で一番特別な日(2)

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 Abyssの番組にゲスト出演したのは楽しかった。みんなトークが上手だし、場の盛り上げ方も知っていて、バラエティースキルがまだまだ未熟な俺達にはいい勉強になったとも思う。
 今度、俺達のやっているバラエティー番組でもゲストを呼んでみようかな? ゲストがいると、また違ったものに挑戦できそうだし、できる企画の幅も広がりそうだよね。ゲストを楽しませなきゃいけないから、対人スキルやトークスキルも上がりそうだし。
 それはさておき――。
「悠那。お風呂空いたって」
「うん」
 まずは司の誕生日をどうするかが最優先。俺はスマホを弄りながら、司の誕生日プレゼントは何にしようかと検索中だった。
 司ってプレゼントに何を貰ったら喜ぶんだろう。何をあげても喜びそうだけど、できれば司が本当に喜ぶものを選んであげたい。
 俺の誕生日の時は、何が欲しいのかを俺に直接聞いてきた司だけど、それは付き合う前の話だし。司は俺の欲しがりそうな物なんて本当にわからなかったんだと思う。加えて、のんびりしているところのある司は、俺の誕生日を忘れていたような節があり、忘れてしまっていたぶん、俺が欲しい物を買ってあげようと思ったのかもしれない。
 でも、今は恋人同士になったんだから、直接本人に聞かなくても、欲しがりそうな物をわかるようになっていたいものだよね。
 なんだけど、司って全然物欲がなくて、服とかも適当に選んじゃう。持ち物に対する拘りもあんまりなくて、付き合い始めて五ヶ月が経とうというのに、俺は司が欲しがりそうなものが全然わからなかった。
「熱心に何見てるの?」
 せっかくお風呂に呼んでくれたのに、なかなかスマホの画面から目を離さない俺に倣って、司が俺のスマホを覗き込んでこようとした。
「ダメっ! 見ちゃダメっ!」
 俺は慌ててスマホを裏返すと、司の視界からスマホの画面を隠した。
 ショッピングサイトをあちこち見てるだけだったから、見られて不味いようなものでもないけれど。でも、プレゼント選びに苦戦していると思われるのは嫌だった。
「何? 隠し事?」
「隠し事って言ったら隠し事だけど、疚しい隠し事じゃないもん」
 俺はスマホを手から離すと、ちょっと不満そうな顔になる司の手を握った。
「お風呂入る。司も一緒に入ろ」
 俺が笑顔になってそう言うと、すぐに機嫌を直してくれる司だった。





「髪、だいぶ伸びたね。伸ばすの?」
 司と一緒に湯船に浸かった俺は、もうすぐ肩につきそうな後ろ髪を司の指に摘まれて
「うーん……」
 悩むように浴室の天井を見上げた。
 湯気の立ち籠る室内では、天井の明かりが少しぼやけて見えるから、それを見ているとこっちまでぼやけた気分になってしまいそう。
「防寒のために伸ばしてたんだけど、ちょっと伸ばし過ぎたから、切ろうかどうしようか悩んでるところ」
 毎年、寒くなってくると髪の毛を長めに伸ばして寒さを凌いでいる俺。去年の今頃も少し伸ばしていたけれど、今年はちょっと伸ばし過ぎてしまった感がある。耳も首も隠れてくれるから、防寒にはちょうどいいんだけど。
「切らないで欲しい。今くらいの長さが好き。可愛い」
 もう少し切ったら? って言われるかと思ったのに。司は今の髪型がお気に入りらしい。
 実は、俺がちょっと長すぎるかな? と思っているこの髪型は、周りの人間からはわりと好評で、俺が今まで切ろうと思いながら切らなかった理由の一つだったりする。
「もともと悠那は中性的な顔だけど、髪の毛伸ばすとそれが更に際立って見えるよ。ちょっと大人っぽく見えるし、可愛いに美人が増す感じだよ」
「ほんと?」
「うん。だから、俺は今の髪型が好き」
 美人に見られたいわけじゃないけれど、大人っぽく見えるっていうのは嬉しい。高校生活もあと少しになったけど、背が低いままで、実年齢より幼く見られがちな俺は、ちょっとでも大人っぽく見られたいお年頃なのだ。
「じゃあ切らない。この長さをキープする」
 司に髪型を褒められたのが嬉しくて上機嫌になってしまう俺を、司が後ろからギュって抱き締めてくる。
 司と一緒にお風呂に入る時は、俺が司の脚の間に座って、司の胸に背中を預けている状態だ。だから、もともと司に包まれているような感覚はあるわけだけど……。
「司……」
 素っ裸のまま密着すると、どうしてもそういう気分になりやすいし、後ろから抱き締められようものなら、司ともっとくっつきたいって気持ちが抑えられなくなっちゃうよ。
「またそんな顔して。お風呂でもシたくなっちゃうの?」
 上半身を捻って司を振り返ると、全身水気を含んだ色っぽい司がいて、俺の胸はどうしようもなく高鳴ってしまうのだった。
「だって……よくよく考えたら、一緒にお風呂に入るのもエッチだよね?」
「今更? いつも一緒に入ってるのに」
「そうなんだけど……」
 司と一緒にお風呂に入るのは最早日常になっているけれど、不思議とお風呂でエッチなことをしたことはなかった。
 わざわざ狭いお風呂でシなくても、部屋に戻ればいくらでもエッチなことできるし。お風呂はのんびりまったりするものだっていう意識が強かったからだと思う。
 と言うより何より、お風呂は身体を綺麗にするところなわけだから、そこでエッチなことしなくても……って話だよね。
 あと、これは関係あるのかどうかわからないけど、司とエッチなことする前までは、お風呂で一人エッチしてたから、お風呂で司とエッチなことするのに後ろめたさを感じてしまうのかも。
「急に司とエッチなことしたい気分になっちゃった」
 俺は完全に身体を反転させて司に抱き付くと、蒸気で湿った司の唇にキスをした。
 お互い水気を含んだ唇は、いつもよりしっとりと吸い付いて、そのぴったり吸い付く唇の感触が気持ちいい。
「悠那……」
「ん……んんっ……」
 俺のキスにすぐ応えてくれる司に、身体の熱がどんどん上がっていく。キスの合間に吐く吐息も熱くて、深く絡み合う舌の感触に、頭の芯がジンと痺れてしまう。
 角度を変えて何度も唇を貪り合い、それだけじゃ足りなくなった俺が司の首に腕を回して縋り付くと、司の手に腰を掴まれ持ち上げられた。
「つ……司?」
 突然のことにびっくりしていると、そのまま身体を引き寄せられ、司の膝の上に乗り上げるような体勢を取らされた。
 身体は更に密着し、キスしている間にすっかり勃ち上がってしまった俺は、司の下腹部に先っぽが押し付けられ、司に擦れる刺激が全身に響いた。
「実は一回シてみたかったんだよね。お風呂でエッチ」
 俺だけエッチな気分になっているのかと思ったら、司も充分その気になっていたみたい。その証拠に、俺に当たる司も既に張り詰めていて、凶暴なほどに猛っていた。
「なんか、凄い……」
 いつもは電気を消した部屋でエッチしてるから、こんなに煌々と電気が点いているお風呂場だと、全部が丸見えって感じで恥ずかしくもなる。
 思わず顔が赤くなってしまうのと同時に、ゴクッて喉を鳴らしてしまう俺は、ちょっとだけ引いてしまった腰をすぐに引き戻され、いやらしい手つきでお尻を撫でられてしまった。
「ゃ、んんっ……」
「誘ってきたのは悠那でしょ? 恥ずかしがらないで」
「んん……でもぉ……」
 耳元で囁かれる声がやたらと響いて聞こえてくるから、俺の鼓膜が蕩けそうになる。司の声にも感じてしまう俺がキュッと唇と目を閉じてしまうと、司の指が俺の入り口に触れてきた。
「ぁっ、ん……ゃっ……ぁ」
 そのままお尻の窄まりをゆるゆる撫でられると、自然とくぐもった声が零れ始める。
「んっ、んんっ……あ、んんっ……」
 少しずつ中に押し込まれてくる指に、俺はちょっと戸惑ってしまう。お湯の中だといつもと感覚が違ってて、慣らすものもないからか、埋め込まれる指に皮膚が引き攣るような感じがした。
 痛くはないんだけど、ちゃんと受け入れられていないような感じがするから、一生懸命力を抜こうとするんだけど、俺の中は勝手に司の指を締め付け、司の指を拒もうとする。
「司……上手く力抜けない……」
「大丈夫。ゆっくりするから」
 司は俺の中を優しく解しながら、俺の唇に何度もキスをしてくれた。そして、俺の唇をたっぷり可愛がってくれた後は首筋に舌を這わせ、俺の感じやすい部分を舌でなぞってみたり、吸い付いたりしてきた。
「んぁ……ゃんっ……んっ……」
 熱く火照る身体はお風呂で逆上せてしまっているのか、司の愛撫のせいなのかがわからない。身体の感覚が少しずつ失われていくのと同時に、与えられる刺激を感じる感覚だけは過敏になってくる感じがする。
 徐々に身体の力が抜けていく俺の一瞬の隙を衝き、司は浅い部分を解し続けていた指を、一気に奥へと押し込んできた。
「やぁんっ! んんっ……」
「キツい? 痛かったら言ってね?」
「大丈夫……痛くない……」
 司は第二関節あたりまで埋め込んだ指で中を掻き回し始めると、強張った筋肉を揉み解し、司の指を締め付ける内側を、指の腹で押すようにしてきた。司の指にそうされると、俺の中はヒクヒクッって痙攣してしまう。
「んぁ……ぁっ、ん……ん……っ」
 少しずつ中が緩んできたのがわかる。まだ異物感は感じてしまうけど、痛みはなかった。
「司……司ぁ……」
 早く司が欲しいのに、身体の準備が間に合わないことがもどかしい。それでも、司は焦ることなく俺の中を丹念に掻き回し、俺が一番感じるところを何度も指で突き上げてきたりした。
「ぁんっ、やっ……ダメっ……あぁんっ……」
 俺のイイところを狙い撃ちにされると、ようやく司の指を受け入れて、司の指を取り込むような動きをするようになった。
「もうれても大丈夫そうだね。声も随分甘くなってきた」
 言いながら、司は俺の中から指を引き抜くと、代わりに熱く猛った自分を押し付けてきた。俺は司にぎゅぅっと抱き付くと、司に何度もキスをした。
 司は俺からのキスに応えながら、ゆっくりと俺の中に挿入はいってくる。指より太くて大きい司に、一瞬身体が強張ってしまったけれど、司の手が俺のお尻を掴んで左右に広げてくれたおかげで、ちょっとずつ司を呑み込んでいくことができた。
「あ……あー……司ぁ……」
「悠那の中……一生懸命俺に絡み付いてくる……」
 どうにか司を根元まで呑み込むことができた俺は、いつもよりハッキリわかる司の形に、浅い呼吸を繰り返した。滑るのもが何もないと、こんなにも司をハッキリ感じられるものなんだ。
「痛くない? 平気?」
「ぅん……平気……」
 俺の中が司の形になってる感じがする。中をいっぱいにする司がちょっと苦しいんだけど、それはそれで嬉しくなってしまう。
「いつもよりキツく締め付けられてる感じがする。こんなに締め付けられたら、すぐイっちゃいそう」
「俺も……中が司でいっぱいって感じがして嬉しい……」
 司が掴んだ俺の腰をゆっくり上下に揺らし始めると、浴槽のお湯がパシャパシャって音を立て、俺の必死に堪えようとする嬌声と混ざり合った。
「あぁっ…ん……あっ、やっ……」
 始めはゆっくりだった動きを徐々に激しくされると、頭の中までぐちゃぐちゃに掻き回されているみたいで、何も考えられなくなっちゃいそう。
「身体の動きが制限されるのももどかしいね」
 司は少し息を弾ませながらそんなことを言ったけど、そのわりにはあまり苦戦している様子はないし、俺を着実に追い詰めてくる。
 ギリギリまで引き抜かれた司が奥まで突き進んでくるたびに、強い快感に襲われる俺は、喉の奥から上がってくる声を抑えられなくなってしまう。
「ぁん……んー……ゃあっ……」
 いつもより熱く感じる身体は、もうどこからどこまでが自分の身体なのかわからなくなるほどで、司に与えられる刺激だけが全てだった。
「イきそ?」
「ぅんっ……イきそ……イっちゃいそぅ……」
 こくこくと頷いてみせると、司が俺を追い上げる速さを増してきた。一際強く突き上げられた瞬間、俺の頭の中は真っ白になっちゃって……。
「あ、や、やぁあんっ……!」
 身体がドクンッ、って脈打ったのと一緒に、俺は湯船の中で射精をしてしまっていた。その直後、俺の中でも司が弾けて、中がじんわりと温かくなる。
「あ……んん……」
 ぐったりとした俺が、身体を預けるように司に抱き付くと、司の腕が俺の身体をしっかり抱き締めてくれた。
「大丈夫?」
「ぅん……」
 朦朧とした顔の俺に何度もキスしながら聞いてくる司に頷く俺は、体力をすっかり消耗してしまい、指一本動かすのも億劫に感じてしまった。





 その後の記憶はぼんやりしているんだけど、完全に逆上せた俺の身体を司が綺麗に洗ってくれて、お風呂から上がった後はちゃんとパジャマも着させてくれた。逆上せて真っ赤な顔になった俺の世話を、せっせと焼いてくれたのだった。
「やっぱりお風呂でスるのはよくないね。逆上せちゃうもんね」
 お風呂から出た後は、俺をリビングのソファーに寝かせ、おでこに冷たいタオルまで乗せてくれる司を見た陽平が
「ちょっと待て。俺、風呂まだなんだけど?」
 一目で何があったのかを悟り、怖い顔になって司を睨んだ。
「え? そうだったの?」
「そうだったの? じゃねーんだよっ! お前、風呂は入れ直したんだろうな?」
「入れ直してないけど……」
「入れ直してこいっ! 浴槽もちゃんと綺麗に洗ってこいっ!」
「えー……」
 陽平に怒られて渋々立ち上がる司。やっぱりお風呂はのんびりまったりするもので、エッチをするような場所じゃないよね。
 司の誕生日のことを色々考えなきゃいけないのに。今日はもう何も考えられそうにないや。



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