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Season 2
イチャラブライフを取り戻せ!(3)
しおりを挟む「えー。ダメだったの?」
「うん。ごめんね。努力はしたつもりなんだけど……」
俺と陽平が話をしたと知った悠那は、やはり、その内容よりも結果を知りたがった。結果が思わしくないと知り、あからさまに残念そうな顔をした。
「結局、原因はなんですか? 湊さんにまた好き好き攻撃されただけですか?」
9月から単独の仕事が入った陽平は、今日はその撮影で留守だった。陽平がいないから、久し振りにリビングで俺とベタベタできる悠那は、俺の努力が空振りに終わったことは残念そうだけど、心置きなく俺とイチャイチャできることにはご満悦だった。
陽平と違って、俺達のイチャイチャに最早何も感じない海に聞かれた俺は
「んん……。まあそんなところかな? 湊さんに付き合ってってしつこくされてイラついてるみたい」
とだけ言っておいた。別に嘘ではない。
陽平が湊さんに襲われたという事実は俺でもびっくりしたし、にわかには信じられないとも思った。高校生組の三人には更なる驚きと衝撃を与えるだろう。陽平が湊さんから告白された話を聞いた時でさえ、三人は驚きを隠せず、狼狽えたくらいだったんだから。
強いて言えば、海は若干想像していた節があったけど、それでも、実際そんなことが起こったと知ったら驚いてはいた。
うちのグループの最年長で、何かと面倒見のいい兄貴肌の陽平は、うちの中では“頼れるお兄ちゃん”というイメージが強い。まさかお酒に酔ってへべれけになったところを、湊さんに美味しく頂かれたなんて思ってもいないはずだ。
「いっそのこと付き合ってあげればいいのに。好きって言われた後も会ってるんだから、陽平も湊さんが嫌いってわけじゃないんでしょ?」
「うーん……」
陽平と湊さんが付き合ってくれれば、自分達のイチャイチャに文句を言われないと思っている悠那は、陽平が聞いたら確実に怒るだろうことを口にした。
「そういうわけにもいかないでしょ。陽平さんにその気がないのに付き合うなんて無理ですよ。それに、僕達だって陽平さんと湊さんが付き合うってなったら、なんかちょっと……。変な気がしちゃいます」
「確かに。それはちょっと嫌かも……」
陽平のことは尊敬しているし、頼りにもしている律は、無責任にも取られがちな悠那の発言にやんわりと反論し、後半の言葉を聞いた悠那も考えを少し改めた。
小柄で可愛らしい自分達とはタイプの違う陽平が、同性と付き合うことに違和感があるらしい。
陽平の相手が悠那や律のように小柄で、可愛い系だというならまだわかる。同じ男相手でも、陽平が彼氏役だというなら理解もできるんだよね。
でも、実際はその逆。湊さんと付き合うことになったら、陽平が彼女役というのが俺も違和感を覚えずにはいられない。
だって、陽平ってSっ気強いじゃん。攻められるより攻める側の人間でしょ? って思ってしまう。
「でもさ、万が一にも二人が付き合ことになったら、どっちがどっちになるんだろう。湊さんは陽平が好きって言ってるらしいけど、それって陽平に抱かれたいってこと?」
二人が付き合うことには違和感を覚えるが、そこは気になる悠那だった。悠那的には、陽平が受け身に回る可能性はあまり考えていないらしい。
逆だと知っている俺は苦笑いになり、想像もつかない律はしかめっ面になったりする。
唯一、海だけが
「逆じゃないですか? 僕達の前では男らしくてしっかり者の陽平さんですけど、あれで陽平さんには結構可愛いところもありますし。普段Sっ気強い人って恋人の前では案外ドMだったりするじゃないですか」
と、陽平が彼女役だと推測した。
ドM……。陽平がドM? さすがにそれはないだろ。
でも、海の観察眼はあながち間違いでもないのかもしれない。陽平には確かに可愛いところがあるし、ドMとまでは言わないが、意外と人に尽くすところがある。言葉遣いは荒くて乱暴だったりするけれど、性格面では繊細なところがあるし、気にしやすいタイプでもある。
「えー。そうかなぁ? 陽平って意地悪だし、好きな子とか絶対虐めるタイプだと思うんだけど」
過去に何度も陽平から意地悪なことを言われたり、されたりした悠那は、海の言葉には納得しなかった。
共同生活を送っているとはいえ、個人的な関係や付き合い方はそれぞれだから、陽平に対するイメージもバラバラで、それぞれ違ってしまうのかもしれない。
「だから、相手によるんだと思います。女の子相手なら僕達の知る陽平さんなんでしょうけど、湊さん相手だと変わるって話ですよ」
「想像できない。っていうか、想像したくないかも」
「僕も。陽平さんのイメージが凄く変わっちゃう」
陽平がいないのをいいことに、普段は口にできない湊さんの話題をここぞとばかりに出す俺達は、ここで話しても意味がなさそうな内容で物議を醸していた。
陽平を心配する気持ち半分。陽平と湊さんの今後が気になる気持ち半分……といったところか。
「そうだ。律と海ってCROWNのメンバーと同じクラスなんだよね? ちょっと聞いてみてよ。そっちのグループのリーダーがうちの陽平にご執心なんだけど、陽平をどうしたいの? って」
律と海がCROWNの最年少組、水瀬陸と成宮京介とクラスメートだと思い出した悠那が、二人にそんな無茶振りをし
「そんなこと聞けるわけないじゃないですかっ! 何言い出すんですかっ⁈」
「CROWNは僕達みたいに一緒に住んだりしてませんから。陸や京介もプライベートなことまでは知らないと思いますよ?」
それを受けた律と海の二人はおおいに戸惑った。
好奇心旺盛な悠那は、一度気になり出したら止まらないのか
「じゃあ俺が聞く。明日二人の教室行くね」
とか言っている。
湊さんが同じグループのメンバーに、何をどこまで話しているのかがわからないから、悠那の行動がCROWNのメンバー同士の関係を気まずくさせてしまう可能性がある。それはあまり好ましくないし、Five Sのリーダーとして止めるべきところだろう。
「悠那? いきなりそんな話をされたら、水瀬君も成宮君もびっくりすると思うよ? 二人が何も知らなかったら、自分達のリーダーが男の人にご執心ってことにショックを受けるかもしれないでしょ?」
「あ、そっか。それもそうだね」
うちはグループ内恋愛に寛容だし、男同士の恋愛も当たり前になってしまっているところがあるから、よそのグループも同じ感覚に陥ってしまうのかもしれない。
行動派の悠那をやんわり制止する俺に、悠那はあっさり従ってくれるようだった。陽平には生意気で我儘な悠那も、俺には素直で従順な可愛い彼女なのだ。
後でよしよししてあげよう。よしよしして、いっぱいちゅーもしてあげよう。
「聞けそうだったら聞いてみますから。それまで待っててください」
後ではなく、既に俺の手に頭をなでなでされている悠那に向かってそう言ったのは海だった。
悠那ほどではないにしろ、海も好奇心は旺盛な方で、この手の話もわりと興味津々な子だった。
「やめときなよ。そんなこと聞いて、僕達や司さん達のことがバレたらどうするの?」
一方、好奇心には消極的な律は、興味より自分達の身の安全を守る方が優先って感じである。
俺達のグループ内事情がどうなっているのか、湊さんは知っているみたいだけど、後のメンバーは知らないはずだ。律の言うように、余計なちょっかいを出して、こっちの事情が筒抜けになるのも好ましくないな。
「そうそう。そういうことは陽平に聞けばいいじゃん。同じグループのメンバーだし、本人の口から直接聞くのが一番でしょ?」
今回は全面的に律の意見に賛成したい俺は
「その陽平に聞けないのが問題なんじゃん」
「そうですよ。陽平さんの前で湊さんの名前が出せないから、他のところから聞くしかないんじゃないですか」
悠那と海の二人に揃って反論された。
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