僕らの恋愛経過記録

藤宮りつか

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Season 2

    先輩カップルにご教授を⁈(5)

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「んっ……んっ……」
 僕の動かす手の動きに合わせて腰が揺れる律は、気持ちいい感覚を必死に耐えているのがとてもいやらしく見えた。
 そもそも、無駄なお肉なんてまるでなく、洗礼されたしなやかな肉体が既に煽情的で、僕の目にはとても官能的に見える。
 この綺麗な身体が汚されることを想像したら、それだけで充分興奮できてしまう僕は、少し危ない奴なのかもしれない。
 少しずつ、手の動きを強く、速くしていくと、僕の手の中の律がピクピクとしてきた。そのうち指先が濡れてきて、くちゅくちゅと粘ついた音が聞こえてくるようになる。
「気持ちいい?」
 できるだけ反応をしないように頑張る律に聞いてみると、律はちょっとだけ恨めしそうな目を僕に向けてきた。
 僕と会話する余裕なんてないようだから、話し掛けられたくないのかもしれない。
 でも、僕の手の中の律の反応は素直だから、答えは聞けなくても別にいい。
「こんな時まで強情なんだね、律は」
 律を右手で扱きながら、左手で律のシャツを捲り上げると
「なっ……何するの⁈」
 律はギョッとなって、シャツの裾を引き下ろそうとした。
 今更恥ずかしがることなんてないのに。むしろ、そうやって隠そうとされる方がそそられてしまうし、もっとエッチなことしたくなるってものだ。
「悠那君も言ってたでしょ? 律はもっと僕にいろんなところ触ってもらった方がいいって」
「そうだけど……」
 そもそも、今回の事の発端は律にある。律が僕に対し、セックスをした方がいいのかと聞いてきたのはもちろんだし、僕達の邪魔に入ってきた悠那君に、司さんとはどういう流れでセックスするのかを聞いたりと、珍しく性に積極的な律がいけなかった。
 それは律も自覚しているようで、自分から言い出したことなので、僕に少しでも諭されようものなら、急に何も言い返せなくなってしまうのである。
「せっかくこうして律に触れられてるんだから、僕だって律に気持ち良くなって欲しいんだよ」
 なかなかシャツから手を離してくれない律のおでこにキスすると、シャツを握る律の手が少し緩んだ。その隙を衝いて、律のシャツを胸の上まで捲り上げてしまうと、滑らかな律の胸の上で、ピンと突き出ている突起に舌を這わせてみた。
「んんっ……!」
 律は背中をしならせながら、身体を小さく捩った。
 そのちょっとした仕草も可愛いしエッチに見えてしまう僕は、律を手で追い詰めながら、胸の小さな膨らみを舌で愛撫した。
「ふっ……んんっ……」
 同時に二カ所から与えられる刺激に、律の目尻には涙が滲んだりする。
 きっと感じてしまうことが怖いんだろう。律にとっては、僕にされることの全部が初めてで、体験したことのない快感だと思うし。
 もう充分に濡れそぼった律の先端に指でくるくる撫でたあと、先端を覆っている包皮をくりゅんと剥くと
「痛っ……」
 律は小さく呻いて、涙の滲む瞳で僕を見詰めてきた。
「ごめん。痛かった? でも、すぐ気持ち良くなるから」
 露わになった先端を優しく撫でながら謝ると、律が小さく頷いたように見えた。
 暴かれた律の先端を何度も優しく撫でてあげているうちに、小さな窪みから透明な蜜がどんどん溢れてくるようになる。
 もう痛みを感じなくなったと思ったところで、少し強く擦ってあげると、律は一瞬ハッとした顔になり
「んっ……」
 思わず出てしまいそうになる声を、自分の腕を噛むことで堪えようとした。
「ダメだよ、律。そんなことしたら、律の腕が傷ついちゃう」
 そこまでして声を出したがらないのも律らしいけど、せっかく綺麗な律の身体に傷がつくのは見過ごせない。律の口から腕を引き離すと
「もっと違う方法で口を塞いであげるから」
 律の乳首を愛撫するのを諦めて、律の唇をキスで塞いであげた。
「んっ……んんっ……」
 口を塞いでくれるのならなんでもいいのか、律は必死になって僕の唇に自分の唇を押し付けてくる。ちょっとでも唇が離れてしまうのが嫌なのか、僕の首に腕を回してきたりもして、僕の顔を自分の方にグッと引き寄せたりする。
 まるで律が積極的に僕とキスしてくれているみたいで、僕はついつい嬉しくなってしまう。
「ぁっ……んんっ……」
 僕の手の動きに急き立てられていく律は、それでも微かな声をキスの合間に零しながら、どんどんと高みへと昇り詰めていった。
(イきそうなのかな?)
 腰がガクガクと揺れ始める律に小さく微笑むと、僕は一気に律を攻め立ててやった。
「んっ、んんっ……んんっ!」
 ビクンっと大きく律の身体が跳ねたかと思ったら、手のひらに温かい迸りを感じた。
 律、人生初の射精の瞬間だった。
「ぁ……はぁっ……」
 射精したあとも何度か手を動かし、残滓を全て搾り取ってから唇を離してあげると、律は荒い呼吸を何度も繰り返し
「ん……」
 まるで気を失ったかのように、急にくたっと全身の力を失った。
「律?」
 そして、そのまま指の一本もピクリとも動かさない律が心配になり、律の顔を覗き込んだ僕は――。
「え……嘘でしょ?」
 本当に気を失ってしまったのか、それとも、射精後の倦怠感から急激な眠気に襲われたのか、完全に意識を手放してしまっている律に呆然とした。
「えー……」
 これも、律らしいと言えば律らしいのかもしれないけれど、僕としては残念な気持ちにならずにはいられなかった。
 もっとこう……初めての感想とか聞かせて欲しかったし、初めての経験に戸惑う律を甘やかしてあげたりしたかったのに。なんなら、すっかり勃ち上がってる僕を、律になんとかしてもらおうとさえ思っていた。
「ほんと……律ってまだまだお子様だなぁ……」
 うっすらと目尻に滲む涙を指先で拭ってあげながら、すっかりおとなしい顔になって眠る律が、僕は愛しいやらもどかしいやらだ。
 でも、付き合って一年が過ぎてようやく、僕と律はキス以上の関係に進むことができた。そこはもう、悠那君と司さんに感謝なのかもしれない。





 翌朝――。
「37.3度。風邪か?」
 今度は風邪を引いたのか、それとも知恵熱でも出したのかはわからないけど、朝起きたら真っ赤な顔をしていた律に、僕はまたしても驚かされたのであった。
 律の脇から体温計を取り出した陽平さんは、心配そうな顔になり
「とりあえず、今日は学校休みな。連絡しといてやるから」
 律の頭をポンポンと撫で
「風邪薬あったっけ?」
 と、部屋から出て行った。
「えー? 律、風邪引いちゃったの? 俺も学校休んで律の看病する」
 部屋の外からそんな悠那君の声が聞こえてきたけど
「ダメ。お前に看病なんてできないだろ。ちゃんと学校行け。今日は俺も司も家にいるから、律の看病は俺達でするし」
 陽平さんにピシャリと断られていた。
 この様子じゃ、僕が学校を休みたいと言っても、休ませてもらえないんだろうな。
「律。大丈夫?」
 理由はよくわからないものの、律が熱を出したのは僕のせいであることに間違いない。布団の中で真っ赤な顔をしている律の顔を覗き込むと
「うん。多分、風邪とかじゃないと思う」
 律は真っ赤な顔のまま、気怠そうにそう答えた。
 風邪じゃないってことは、やっぱり知恵熱でも出したのかな? この歳になっても知恵熱って出るものなんだ。
「海が帰って来る頃には元気になってると思うから。帰ってきたら話しよう」
「わかった」
 昨日はいきなり意識を手放してしまい、事が尻切れトンボに終わってしまった感は律も感じているようだ。おかげで今朝はなんだかお互い気まずくて、一刻も早く話をしたいという気持ちはある。
「僕は学校行ってくるから。律はゆっくり休んでね」
「うん」
 こんな状態の律を置いて学校に行くのも気が進まないけど、そこは我慢するしかない。律の傍を離れたくない、という理由じゃ、誰も学校を休ませてくれないだろうし。律本人も、僕がそんな理由で学校を休むなんて許さないだろう。
 支度を済ませ、朝御飯を食べ終わった僕は
「じゃあ、律のことお願いしますね」
 陽平さんと司さんに律のことをお願いしてから、悠那君と一緒に家を出た。
「むぅ……陽平の石頭。こんな時くらい、学校休ませてくれてもいいじゃん。ね? 海も心配だよね?」
「ええ、まあ……」
 学校にはおとなしく行くことにした悠那君だけど、学校を休めなかったのはやはり不満の様子だった。
 悠那君の場合、律が心配というのももちろんあるけれど、今日はオフの司さんと一緒にいたかったというのもあるのだろう。どちらにせよ、僕や悠那君がいない方が、律もゆっくり休めるんじゃないかと思う。
 僕は律の傍を離れたがらないから、律を休ませてあげられないかもしれないし、悠那君は何かと騒がしいから、律の休息を邪魔しかねない。陽平さんもそれがわかっているから、僕達を学校に追いやろうとしたのだろう。
「でも、こんなことも珍しいね。うちのグループってみんな元気じゃん。これまで誰も体調崩したことなんかなかったよね?」
「そう言われてみると……。確かにそうですね」
 共同生活が始まって一年以上経つけれど、僕達の誰かが体調を崩して寝込む……なんてことは、今回が初めてだった。
「風邪じゃなくて知恵熱でも出たのかな?」
「え?」
 昨日まで普通に元気だった律が、いきなり体調を崩したとは思っていないのかもしれない。昨日のこともあるから、悠那君はにやにやしながらそんなことを言ってきた。
「ねえ。昨日はどうだった? 律とエッチなことした?」
 もしかしたら、学校を休みたがった理由の一つに、そこを僕達に聞きたいというのもあったのかもしれない。悠那君って、こういう話がわりと好きみたいだし。
「えっと……」
「してないの?」
「いや。その……ちょっとだけ……」
 朝っぱらからこんな話……と思ったけれど、一応協力はしてもらったから、報告ぐらいはしてもいいかと。
「良かったね。二人が進展してくれたなら、俺も身体を張った甲斐があったよ」
「え⁈」
 僕からの答えに満足そうな悠那君に、僕は思わず目を丸くした。
 身体を張った甲斐があったって? ひょっとして悠那君、昨日わざと僕と律の前で司さんとキスしたの?
「律って口で説明するより、実際に体験したり、目で見る方が理解が早いと思うんだよね。僕も司も口で説明するのって苦手だし」
 どうやらそうらしい。僕も、あの時は随分と強引な行動に出るなって不思議に思ったけど。
「律とどんなことしたのか、あとでちゃんと聞かせてね」
 断ることを許されないような笑顔でにっこりと言われ、僕は
(頼るところを絶対に間違ったと思う……)
 そう思わずにはいられなかった。



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