僕らの恋愛経過記録

藤宮りつか

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Season 2

    先輩カップルにご教授を⁈(2)

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 一体自分が何を言っているのかわかっているんだろうか。と言うより、そこに教えてもらって大丈夫? 律もわかってると思うけど、司さんと悠那君ってラブラブエロエロカップルだよ? 律の常識を悉く粉砕してくると思うんだけど。
「恋人同士のいろは?」
 律の必死な顔に、司さんと悠那君は揃って首を傾げたりする。
 そのシンクロする動きを可愛いとは思うけど、僕としてはやっぱり不安だし、律のことが心配になってしまう。
 っていうか、司さんと悠那君より、僕と律の方が恋人歴は長いのに、どうしてここの二人が先輩扱いになるんだろうか。年齢的には確かに二人の方が先輩だけど、恋人としては僕達の方が先輩だよね?
 付き合い始めて一年以上の僕達と、付き合い始めて二ヶ月足らずの司さんと悠那君で、圧倒的な経験値の差があるのは認めるけど。
「具体的にどういうことが知りたいの?」
 ぽやーっとしている司さんの隣りで、悠那君が先に口を開いた。
 こういう時、積極性を見せるのは司さんより悠那君の方である。悠那君が積極的になると、あまりいいことが起こらないイメージが強い。
「えっと……その……性交へ至るまでの流れと言いますか……。どのようにしてそこに至るのかを知りたくて……」
「律っ⁈」
 悠那君からの質問に、消え入りそうな声で答える律に、僕は益々ギョッとした。
 え? いきなりそこ聞くの? 
 おそらく、この二人に恋愛相談的なものをするのは初めてになる律は、初っ端の質問がいきなり過激だった。
「何々? 律もついにその気になったの?」
 真っ赤な顔の律に対し、悠那君がとても嬉しそうである。
 どうも悠那君は、僕や律のことを弟分として大変可愛く思ってくれているようなのだけど、特に律のことは可愛く思っているような節がある。律に頼られた悠那君は、今にも律に抱き付かんばかりの勢いである。
 自分と同じような立場だからだろうか。悠那君が律を可愛がってくれるのはありがたいけれど。
「その気になったと言いますか……努力し、改善すべきだと思いまして……」
 緊張から、普段よりもより丁寧な口調になってしまう律である。とても恋愛相談をしている人間には見えない。
「そういうことなら、喜んで協力してあげるよっ! ね、司っ!」
「え? うん」
 悠那君はすっかり乗り気だけど、司さんはまだよくわかっていないような顔だった。
 考えてみれば、この四人の組み合わせも少し珍しい。悠那君、律、僕の組み合わせは結構多いけど、陽平さんや司さんは年上組ということもあって、高校生達の戯れにはあまり混ざってこないことが多い。それは、仲が良くないということではなく、ただ単に、保護者として見守る立場に回っているだけの話だ。
 だから司さんは、僕達三人のノリや流れをいまいち理解していないのかもしれない。
 見ているがいい。自分の恋人が、僕や律にとってどれだけ危険な人物かを。
「悠那さんは、司さんとどういう流れでその……性交をしたのでしょうか」
 司さんと悠那君の前だと、“セックス”という言葉を遣うのさえ恥ずかしい律に、僕はもうハラハラしてしまう。
「どういう流れでと言われても……。ねえ? 司」
「悠那が誘ってきたんでしょ? 付き合う前にエッチなことした時も、初エッチした時も。俺はまさかメイド服着た悠那と初エッチするとは思ってなかったのに」
「だってぇ……司がなかなかちゃんとしたエッチしてくれないんだもん。だから、メイド服着たついでに、朔夜さんに薦められた方法を試してみようかなって」
「全くもう。変な入れ知恵されないでよ」
「えへへ」
 もう……なんなの? この二人。普通の会話ですらイチャつくじゃん。っていうか、初エッチでコスプレ? とてもじゃないけど真似できないよ。
 悠那君がAbyssの朔夜さんと共演した初ドラマの撮影日の夜に、司さんと初エッチしたことは知っているけれど、それがまさかコスプレしていただなんて事実は初めて知った。ほんと、何やってるの?
「律にも貸してあげようか? メイド服」
「いえ。遠慮します」
 まるで、それを着たらセックスできるよ、みたいな感じで言う悠那君だけど、そこは律も丁重にお断りするのだった。
 律のメイド服姿は可愛いだろうし見てみたいから、いつか借りようと思ってしまう僕だった。
「そもそも、何をしていたらそういう流れになるのでしょうか?」
「俺、司と一緒にいるだけでもシたくなるけど?」
 性欲の塊である。一緒にいるだけでもシたくなるんなら、そりゃほぼ毎日スるだろうな。悠那君は素直で自由奔放だ。
 でも、さっきから聞き手に回り気味な司さんだって、結局そんな悠那君を抱くわけだから、司さんも司さんでかなりの性欲をお持ちのようである。
 如何にも、“悠那君に誘われたからヤった”みたいな言い方をしたけれど、司さんが悠那君にベタ惚れなのはメンバー全員が知っている。最初はそうだったのかもしれないけれど、今はどうだかわかったものじゃない。
 自分の恋人がエッチ好きというのも、男としては喜ばしいことなんだろうな。
「律も海とキスはしてるんだよね?」
「まあ……時々は」
「ベロチューはもうしたの?」
「い……一応……」
 質問するのも恥ずかしそうなのに、質問される側になると、より一層恥ずかしがる律に、悠那君はにこにこである。
 きっと心の中で“可愛いっ!”って思ってるんだろう。悠那君の中で、律はすっかり子供扱いされているようだ。
「その時なんか感じなかった? もっとシて欲しいとか、他のとこ触って欲しいとか」
「そんな余裕はちょっと……」
「ふーん……」
 どんどん身体が小さくなっていく律は、そのまま消えてなくなってしまうんじゃないかと思わせられるほどだった。対する悠那君は堂々としたもので、この時だけは、律より悠那君の方が大きく見えてしまう。
「ちょっとやってみてよ。今ここで」
「へ?」
 出た。この、“とりあえずやってみよう!”のスタンス。このせいで、僕は前に律を泣かせてしまったし、悠那君も陽平さんに手痛いお仕置きをされたのでは?
 律は驚いた顔になり悠那君を見て、僕は助けを求めるように司さんを見た。
 ――が。
「だって、実際の二人を見てみないと、どこを改善するべきかわからないじゃん」
 悠那君は至極当然顔をしているし
「……………………」
 司さんは黙って悠那君を見ているだけだった。
 ダメだ。どうやら司さんはなんの役にも立たないらしい。むしろ、悠那君を見詰めることに忙しいみたいだ。
「でっ…でも、人に見られながらするものでは……」
 律が力ない抵抗を試みると
「じゃあ見ない。俺は司とちゅーしてる」
 悠那君は徐に立ち上がり、胡坐をかいて座っている司さんの膝の上に座った。そして――。
「っ⁈」
 なんの躊躇いもなく、僕達の目の前で司さんにキスしたのだった。
 いやいやいや。人の部屋で何してるんだよ。そりゃ司さんと悠那君がキスしてるところは何回も見たことあるけど……。
「んんっ……」
 さすがに本格的なキスしてるとこは見たことないよっ! 律の教育上、非常によろしくない光景なんですけどっ!
 っていうか、今の今までぽけーっとしていた司さんが、悠那君にキスされた途端に本気モード出してくるのなんなの⁈ この人の頭の中、悠那君とスることしか考えてなかったりする⁈
「ぁ、んっ……んっ」
 目の前で繰り広げられる司さんと悠那君のキスシーンに、僕と律は呆然として、ただ二人のキスシーンを眺めることしかできなかった。
 二人の大胆さに圧倒されることはもちろんだけど、二人の豹変ぶりにも驚かされてしまう。
 いつも無邪気で可愛らしい悠那君が、司さんとキスしてる時は物凄く色っぽくていやらしく見えるし、司さんも、さっきのぼーっとしていた人間とは別人みたいな男を感じさせられる。
 ここが僕達の部屋であることを忘れているかのように、何度も唇を重ねる二人は、そのままここでおっぱじめるくらいの勢いだ。司さんの手が悠那君のシャツの中へと進入すると、悠那君の胸元を愛撫し始めた。
「あんんっ! ゃっ……ちょっ……待って、司っ……やり過ぎぃっ!」
「あ……」
 どうやら我に返ってくれたらしい。ここが僕達の部屋で、すぐ傍に僕達がいることを思い出した悠那君は、慌てて司さんの身体を押し返してくれた。
 それでも、完全にスイッチは入ってしまったようで
「続きは部屋でシよ」
 とか言っている。
 一体何を見せられているというんだ。
「ごめんごめん。でもま、こんな感じでいつもエッチしてるんだよ」
 最初は僕達に目の前でキスしろと言っていた悠那君だったけど、結果は二人の実演講義みたいになってしまった。
 確かに、実際の流れを見せてもらい、参考にはなったと思うけど……。
「~……」
 律には刺激が強すぎたようで、顔だけでなく、全身がもう真っ赤になってしまっている。
「キスより先のことすれば、自然とエッチする流れになると思うよ」
「キスより先……ですか?」
「うん。律ももっと海にいろんなところ触ってもらってみなよ」
「はあ……」
 司さんに抱き締められたまま言う悠那君に、律は自信なさそうに頷くのであった。
 自分が今の悠那君と同じようなことをされるのが、今一つ理解できないし、信じられないといった様子である。
 僕としても、律にいきなりあんなに乱れられてしまっては、正直戸惑ってしまう気がする。きっと、律はああはならないと思う。もっと控えめで、恥じらいながら感じてくれると信じている。
「それじゃ、俺達は部屋に戻って続きするから。律と海もごゆっくり」
 最後にそんな言葉を残して部屋を出て行く悠那君と司さんを、僕と律は黙って見送ることしかできなかった。



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