僕らの恋愛経過記録

藤宮りつか

文字の大きさ
上 下
51 / 286
Season 2

    離れない(4)

しおりを挟む



 俺と律が連れて来られたのはBREAKの楽屋――ではなく、どっかの倉庫らしきところだった。
 なんでこんなところに連れて来られたんだろう。俺達、ここで何されるの?
 しかも、どこから持ってきたのか知らないけど――多分、倉庫内にあったと思われる――、俺も律も両手を背中の後ろでロープで縛られ、身体の自由を奪われてしまっている。
 拉致というより最早誘拐。俺と律、BREAKのメンバーに誘拐されてるんだけど。
「こんなとこに連れて来てどうしたいの⁈ いい加減俺達を返してよっ!」
 幸い口は自由になるから、身体で抵抗できないのであれば、口で抵抗するしかない。
 四方をコンクリートの壁に囲まれた室内だと、ちょっと騒いだくらいじゃ外に声も漏れないだろうな。扉も鉄仕様だったし。おまけに、ドーム内の通路は大音量のライブ音源が響いてて、ただでさえ声が聞き取りにくくなっている。よっぽど耳を澄ませない限り、俺達の声に気付く人間なんていないだろうな。
「言ったじゃん。お兄さん達と遊ぼうってさ」
 樹さんの顔を精一杯怖い顔で睨み付ける俺を、樹さんの意地悪な笑い顔が見下ろしてくる。あからさまに馬鹿にされてる感じがして、俺はますます腹が立った。
「ってか、なんで俺らが3組目で、新人のお前らが23組目なの? やっぱり事務所の力がデカいのか、それとも……」
「っ……」
「お偉いさんに媚びでも売った? その女みてーな顔と身体で」
 骨張った大きな手に頬を触られ、俺はビクッとなって身体を縮めた。
 嫌だ。司以外の人間に触られたくない。
「ここ、ほんとに誰も来ない?」
「大丈夫だろ。中から鍵は掛けたし。少なくとも、ライブ放送中には用がなさそうな倉庫だ」
「連れて来たのはいいけど、どうすんの? こいつら」
「そうだな。このまま閉じ込めておいて、出演すっぽかさせるってのもありだけど」
「一気に評判ガタ落ちだな」
 最低。BREAKの評判がどんなものかは知らないけど――少なくとも、BREAKを知っている人間からは良くないという認識だ――、俺達を道連れにしないでよね。そもそも、俺達にこんなことしたってバレたら、自分達の評判っていうか立場が、もっと悪くなるってわからないの?
「とりあえず、ほんとに男かどうか調べてみる? 特にこいつ、男がどうか怪しいし」
「いいね~」
「ついでに犯してみるのもいいかもな。女には飽き飽きしてきたところだし。男とヤるのがどんなものか、試してみるのも面白そうじゃん」
「マジで? 男相手じゃ勃たねーだろ」
「でも、こいつら陽平のグループだぜ? こいつは朔夜のお気に入りでもあるし。こいつら犯すと、あの二人、絶対ショック受けると思わね?」
「確かに。そう考えると、別の意味で興奮できそ」
 ちょっと……嘘でしょ? この人達、俺や律とエッチするつもり? それも、陽平や朔夜さんを傷つけるためだけに?
 どうしてそこまで二人を敵対する必要があるわけ? あの二人に何されたっていうんだよ。
「どっちから行く? やっぱ朔夜のお気に入り?」
「いや。お楽しみは後に取っとこうぜ。先にあっちの奴からにしよう」
「オッケー」
 どうやら冗談とかではないらしい。三人はターゲットを律に絞ると、ゆっくりと律に歩み寄って行く。
 さすがにしっかり者の律も恐怖のあまり絶句して、身体をカタカタ震わせている。
 恋人の海とだってエッチする準備ができていないのに。いきなり会ったばかりの男に襲われるとなれば、律が恐怖で声も出せなくなるのは当然だ。俺だって、律に手を出されたくない。
「ま……待って!」
 俺は身体を滑らすようにして律の前に割り込むと
「俺が相手するからっ! だから律には手を出さないでっ! お願いっ!」
 必死になって律を守ろうとした。
 こんなことで律の初めてが奪われるなんて絶対にダメ。
「悠那さんっ⁈ そんな……ダメですよっ! 僕のために犠牲になろうとしないでくださいっ! だって悠那さん……」
 俺の言葉に律は目を丸くして驚いたし、必死に俺を止めようとしたけど
「いいから律は黙っててっ! 俺が絶対に嫌なんだからっ!」
 俺は頑として譲らなかった。強引に律を黙らせると、再び樹さんを睨み上げ
「それに、律はそっち方面は全然だよ? きっと気持ち良くないと思う。それに比べたら、俺は馴れてるよ。お兄さん達を気持ち良くさせてあげられると思う」
 三人を挑発するようなことまで言ってやった。
 ほんとは怖くて仕方ないし、今すぐにでも泣いちゃいたいくらいに嫌だけど。
 でも、ここで俺が律を守れなかったら、年上として格好がつかないし、海にも申し訳ない。いつも律に呆れられてばっかりの俺だけど、俺の方が律より年上だもん。律のことは守ってあげたい。
「ってことは、やっぱお前、男知ってんだ。ふーん」
「律に手を出さないって約束してくれるなら、おとなしくするし、いっぱいサービスもしてあげるよ。俺、エッチ大好きだし」
 こんな時、普通はもっと怖がって怯えるのが正解なんだろうけど、どうやら俺の性格はそこまでヤワじゃないらしい。
「上等だ。そんなに言うなら、お前の望み通りにしてやるよ。そっちの奴にも手を出さないって約束してやる」
 俺の挑発にまんまと乗った樹さんが言うなり、あとの二人もそれに従うことにしたようだ。ターゲットを律から俺に変えた三人は、律の前から俺を引き離し、俺の身体を押さえつけてきた。
 乱暴に掴まれる部分が痛いけど、これで律の身の安全は確保できた。
「ダメ……やめてくださいっ! 悠那さんっ!」
 衣装に手を掛けられる俺を見て、律が泣きそうな声を上げる。
「平気平気。律も俺がエッチ大好きなの知ってるでしょ?」
「そういう問題じゃないですっ!」
 律の顔が綺麗に歪み、ギュッと目を閉じた瞬間、その大きな目からは涙が零れた。
 俺だって諦めたわけじゃない。どうにかして、この状況から抜け出す方法を考えないと。
「おいおい。こいつキスマとか付いてんじゃん」
「マジでセックス好きなんじゃん? 誰に抱かれてんのか知らねーけど」
「どうせ、そのへんの奴と片っ端からヤってんだろ。それなら、こっちも遠慮しなくていいってもんだ」
 衣装の前を乱暴に開かれた俺は、一瞬泣きそうな顔になったけど、そこをグッと堪えてみせる。
 俺が司以外の人間に犯されちゃったら、司は凄く傷つくんだろうな。
 でも、わかって欲しい。俺は律を守りたい。司にいっぱい愛してもらって、司とするセックスが大切で幸せってことを知っているから、律の初めてを海以外の人間に奪わせたくない。律の中に一生残る傷になっちゃうよ。
「言っとくけど、お兄さん達もちゃんと俺を満足させてよね? 俺、下手くそな人とはシたくないよ?」
「言ってくれるじゃん」
 これはちょっとした時間稼ぎ。こうやって余計なことを言うことで、少しでも実際の行為を遅らせようとする作戦だ。
 ここに連れて来られてどれくらい経ったかわからないけど、なかなか楽屋に戻ってこない俺達に、そろそろメンバーも不審に思い始めている頃だと思う。なんとか時間稼ぎをして、手遅れになる前に見つけ出してもらうことができれば、俺達の誰も傷つかずに済むんだけど……。
 まさか倉庫に連れ込まれてるなんて思わないだろうから、俺達を見つけるのにも時間が掛かるだろうな。きっと。
「んじゃま、まずは勃たせてもらおうか。やっぱ女じゃないとそう簡単に興奮できないからさ。物理的な刺激でも与えてもらおうか。その口で」
 きた。さすがにいきなり突っ込んでくるとは思ってなかったけど。やっぱりそうなるよね。
「い……いいよ」
 いきなり中に挿入はいってこられるよりはマシだ。司以外のモノを咥えるなんて死ぬほど嫌で仕方ないけど、これも時間稼ぎにはなるわけだし。
「誰のからシてあげればいいの? 早く出してよ」
 ここでビビったり怖気づいたりしたら、逆にあっという間に犯されかねない。
 そう思った俺は、あえて気丈に振る舞うのである。
「俺からだ。でも、わざわざ俺から差し出したりなんかしないぜ? あくまでお前がやるんだ。全部口でな」
「わかったよ」
 これはある意味ラッキー。いきなりアレを口許に持ってこられて、「舐めろ」って言われるより時間が稼げる。
 俺が間に入れるくらいの隙間を開けて脚を開く樹さんの前に、俺は手を縛られたまま覆い被さった。
 ぴったりとした黒のズボンは、口で脱がすとなると時間が掛かりそうだった。
 全く……何プレーなの? こういうの、エッチなビデオとかだとよくあるの? 俺は見たことないけど。
「ちょっとでも変な真似したら容赦しないからな」
「はいはい」
 俺はズボンのボタン部分を咥えると、しっかりと留まっているボタンをまずは外しに掛った。
「なかなかいい眺めじゃん」
「ほんとにやるんだ。エッロ」
 俺が樹さんのズボンを咥えると、周りの二人が冷やかしてくる。
 黙って見物してて欲しい。こっちは上手く時間稼ぎするための演技とかしなきゃいけないんだから。気が散る。
 実際、口だけでズボンのボタンを外すのは難しかったけど、あんまりもたもたしてるとわざとだと疑われそう。
 俺は頑張っている振りをしながら、そこそこ時間を掛けてズボンのボタンを外した。
「次はファスナー下ろせ」
「わかってるよ。いちいち言わないで」
 ボタンを外すのに比べると、ファスナーを下ろす作業は一気に難易度が下がる。
 ステージを終えた後だからか、少し汗臭い匂いがする。
(嫌だなぁ……)
 司の汗のにおいは全然気にならないし、そもそも汗臭いとも思わないけど。他の人だとここまで不快に感じるんだ。気持ち悪くなっちゃいそう。
 ボタンの時同様、わざとらしくならないように、ファスナーの摘まみを咥えた俺は、そのままゆっくりファスナーを下に引き下げていった。
 ファスナーを下げるとパンツが見えてきて、その下にあるものを想像しただけで吐き気を感じた。
 こんな時、何を考えてやり過ごせばいいんだろう。全然エッチな気分になれないから困る。
「それにしても、お兄さん達も物好きだよね。興奮しない俺を犯したいの?」
「興奮するかどうかはお前次第だろ。いいから早く咥えろよ」
 こういう時まで感じ悪いんだ。少しは俺をその気にさせてみろって話だよ。こっちは全然その気になれなくて困ってるのにさ。
 なんとかズボンをずり下ろすことに成功した俺は、いよいよパンツを引き下ろすことに取り掛かるわけだけど……。
 やっぱり嫌だ。司以内のモノを咥えるなんて。
 でも、今更やめるなんて言えないし、そんなことを言って、律に襲い掛かられても困る。
 悩んだ俺は苦肉の策として、パンツの上から樹さんを舌でなぞった。
 前に司にパンツの上から舐められた時、それはそれで気持ち良かったし。
「っ……! おいっ! 生でしろよっ!」
「何? せっかちだね。これもサービスだよ。こういうのも逆に興奮するでしょ?」
 俺は樹さんの言葉を無視すると、まだ眠っている樹さんの形がわかるように、ねっとりと舌を這わせてやった。
 パンツの上からでも充分に不快だ。
 俺がパンツ越しに与える刺激に、樹さんの形が少しずつ変わってくる。
 あんまり早く勃たせないで欲しいのに。堪え性がないな。
「樹。お前勃ちかけてんじゃん。そんなにいいの? こいつのフェラ」
「まあ……悪くはない。舌遣いもなんかやらしいし」
「へー」
 感心しなくてもいいし。別に舌這わせてるだけで、特にいやらしい舌遣いもしてないよ。
 司の舐める時はもっと頑張る。それはもう、“いっぱい気持ち良くなって”って思いながら、愛情込めて舐めてあげるもん。司の舐めてるだけで俺も気持ち良くなっちゃって、舐めてるだけでもイっちゃいそうになるんだから。
 それに比べたら、これは単なる作業って感覚。やらなきゃいけないから仕方なくやってるって感じで、全然気持ち良くならない。
 でも、このままいつまでもパンツの上から舌を這わせているわけにもいかない。パンツの上からでもハッキリ形がわかるようになった樹さんは、いい加減直接舐めろって顔で俺を見てきたりする。
 仕方ない。これ以上引っ張るのも危険だ。
「お前、いい加減に……」
 樹さんに言われる前に、パンツのゴム部分を咥えた俺は、一瞬だけ躊躇ったものの、そのままパンツを下に引き下ろした。勃ち上がった樹さんが勢いよく飛び出してきて、俺の顔にペチンと当たった。
 クソ……不愉快なちんこめ。樹さん同様、礼儀がなってないよ。いきなり人の顔叩いてくるとか何事なの?
 さっきから不満しかない俺だけど
「しゃぶれ」
 樹さんに急かされて、覚悟を決めることにした。
(ごめんね、司……)
 俺は心の中に司に謝りながら、口を開け、ゆっくりと樹さんを咥え込んでいった。
 樹さんの舐めるくらいなんだ。司のなんかもっといっぱい舐めてるもん。無理矢理強制されて舐めてるんだから、数のうちに入らないよ。ってか、入れてあげないもん。
 なんとか自分に言い聞かせながら咥えた樹さんは、汗のせいで少ししょっぱかった。
 覚悟は決めたけど、司以外のモノを咥えてしまったことも悔しくて、涙が出てきそうだった。
「うわ……マジで咥えた」
「さすがに目の前でこんなの見たら興奮するな」
「樹。俺もこいつに悪戯していい?」
「いいぜ。。でも、まだれんなよ」
「わかってるって」
 え……ちょっと待って。悪戯って? 何するつもりなの?
 好ましくない流れに動揺してしまう。それでも、それを悟られないよう、必死に平静を装いながら樹さんを口で扱いていると、龍一さんが俺の上にし掛かってきた。
「んっ……」
 上からの衝撃に顎が落ち、思わず歯を食いしばりそうになってしまうのを堪えていると、龍一さんの手がはだけた衣装の中に滑り込んできて、胸の小さな突起を摘んできた。
「んんっ……!」
 いつも司にたくさん可愛がってもらっている部分に触れられると、身体は嫌でも反応しそうになる。
 でも、司の手じゃないと思うと、やっぱり気持ちいいとは思わなかった。
「ははっ。こいつスゲー。ちょっと摘んだだけですぐ硬くなるんだけど? 乳首弄られて感じんの?」
「んんっ……んっ……」
 触るなって言いたいけど、背中の上から押さえ付けられて身動きが取れないし
「ほらほら。もっとこっちに集中しろよ」
 樹さんからは頭を掴まれ、顔を上げることもできない。
 これ、もう完全にレイプ状態じゃん。こんなのが許されると思ってんの?
「えー。俺はどうしよっかな。中でも解しといてやるか?」
 残った雄斗さんのにやついた声が頭の上から聞こえてきて、俺の背中がゾクッとした。
 ダメ……そこは触れられたくない。そこだけは絶対に嫌……。
 樹さんの手に無理矢理頭を上下に動かされ、龍一さんの手には乳首を弄ばれ、雄斗さんの手は俺のズボンに伸びてくる。
 まさに万事休す。絶体絶命の危機に陥ったその時――。
 ガンッ ガンッ
 室内に大きな音が響き、全員が音のする方に視線を向けると、いつの間にか扉の前まで移動していた律が、必死になってドアに体当たりしている姿が見えた。
「あのガキ……こっち連れて来いっ!」
「わかった」
 俺のズボンを脱がせようとしていた雄斗さんが俺から離れ、体当たりをやめない律の元に向かう。
「せっかくお前はそのままにしてやろうと思ったのによ。おとなしくしてないってんなら話は別だ」
「嫌だっ! 離せっ!」
 律の身体をドアの前から引き離し、俺の隣りに押し倒すと
「こいつは俺がヤっていい?」
 どこか興奮した目の雄斗さんが言った。
「ダメっ! 律には手を出さないって約束したじゃんっ!」
 律の身体を床に押し付けながら、律の衣装を脱がそうとする雄斗さんに、俺は全力を振り絞って顔を上げる。
 でも
「誰が離していいって言った。お前はこっちしゃぶってろよ」
「んんっ!」
 すぐに樹さんの手で顔を掴まれてしまい、再び樹さんのを咥えさせられてしまう。
(このままじゃ律が……律が海以外の奴にヤられちゃうっ!)
 どうにかしてこの状況を打ち砕きたい俺は、さっきまでのおとなしさから一転し、全力の抵抗を試みる。でも、もともと身体が小さいうえ、二人掛かりで身体を押さえ付けられてしまっては打つ手がない。
(このまま俺と律、BREAKのメンバーにヤられちゃうの?)
 悔しくて声を上げて泣きそうになった時だった。
「ここ、開けてもらえます? さっき大きな音がしましたよね?」
「はい。すぐに」
 外から聞き憶えのある声が聞こえたと思ったら、鍵束の揺れる音が微かに聞こえてきた後、倉庫のドアが開かれた。
「悠那っ! 律っ!」
 ドアが開いたと同時に、司と海の二人が飛び込んで来た。
 良かった……最悪なことになる前に、二人が助けに来てくれた。
 俺達を助けに来たのは司と海の二人だけじゃなかった。
「いやさ……馬鹿だ馬鹿だとは思ってたけど。まさかここまで馬鹿だとは思ってなかったわ。お前ら、自分のしたことわかってるんだろうな」
「今回ばかりは目を瞑るわけにはいかないよ。やり過ぎも限度を超えたら犯罪だからね」
 司や海と一緒になって俺達を探してくれたのか、葵さんと朔夜さんも倉庫の中に入ってきた。
 さっきドアの前でしたのは朔夜さんの声だったんだ。
「悠那っ! ああもう、ほんと……」
「司……」
 俺を樹さんから引き剥がした司は、俺をぎゅぅっと抱き締めてくると、泣きそうな顔になって俺の胸に顔を埋めてきた。
 一方、海は
「汚い手で律に触るなっ!」
 律の上に覆い被さっている雄斗さんを、まさかの足で蹴り飛ばすと、律をサッと抱き上げた。
「司……司ぁ……」
 司が来てくれたことに安心した俺は、それまで我慢していた恐怖が一気に溢れてきて、顔をクシャクシャにして泣いてしまった。
「怖かったよね、悠那。ごめん。助けに来るの遅くなって」
「司ぁ……」
 司は俺の手を縛っているロープを解くと、改めて俺をぎゅぅっと抱き締めてくれた。俺を抱き締める手が少し震えている。
 やっと自由になった手で、俺も司に抱き付くと、司の胸に顔を埋め、司の温もりを必死になって感じようとした。
「朔夜。一真さんに連絡して。二人とも見つかったって」
「わかった」
「あと、社長にも連絡してくれる?」
「了解」
 朔夜さんに指示を出した葵さんは
「さてと……。当然、覚悟はできてるんだよね?」
 BREAKの三人に向かって、怖いくらいに柔らかい笑顔でにっこり微笑むのだった。
 世間では“地上に舞い降りた天使”とも言われている葵さんだけど、Abyssの中で怒ると一番怖いのは、この天使と謳われている葵さんなのかもしれない。



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

父のチンポが気になって仕方ない息子の夜這い!

ミクリ21
BL
父に夜這いする息子の話。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

見ぃつけた。

茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは… 他サイトにも公開しています

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

処理中です...