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本編
エピローグ ~ ヒノモト公国外交官リーンハルト
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マキがヒノモト公国の聖女としてお披露目されてから、5年後。
治水の女神エリスの眷属ヴァイスが、眷属の座を辞してマキの隣にいることを望んだことは広く公表された。
他国にはエリスとマオが伝えたらしく、時折やってくる他国の商人や神官がふたりの様子を見て「本当だったのか」と驚いていた。
それはそうだろう。
人の言葉を話す白蛇と聖女が恋人だなんて、どの国にだっていない。
けれど、眷属時代のヴァイスと聖女マキの様子を知っていれば当然の結末だと思える。
当然の結末といえば、とリーンハルトは目の前にいる、人の背丈ほどの大きさになっている白蛇のヴァイスに声をかけた。
「かの国の王権が失墜したらしい。内乱が起きているそうだ」
「ふん、当然だろう」
不機嫌そうに応えたヴァイスにリーンハルトは苦笑いを浮かべた。
まあ、リーンハルト自身もこれを聞いたときは「そうなるだろうな」と思っていたから。
聖女オレリアは大瘴気を払える存在ということもあって、そこまで大した被害は受けていないそうだがそれでも酷使され続けているらしい。
最近になって、グエルナフの眷属がやってきたようだが、初めから眷属を派遣していればこんなことにはならなかっただろう。
(いや、そもそもグエルナフ様がエリス様へ横恋慕しなければという「たられば」の話だな)
神の世界も、人の世界と大差はないらしい。
太陽の神グエルナフはある日、治水の女神エリスに恋をした。
だがそのときにはもうすでに山岳の神マオと共に祀られることが多く、マオとエリスは夫婦神として扱われていた。
最初は、可愛らしいちょっかいを出す程度だった。
だからマオとエリスはわざと見逃していた。
ところが、グエルナフの行動は段々とエスカレートしていき、そろそろ止めさせるかと思った頃合いにあの事件が起きた。
太陽の神グエルナフによる、山岳の神マオの封印と治水の女神エリスの軟禁。
その余波をモロに受けたのがギルディア王国だったが、他にも夫婦神を崇拝する国々にも影響は出た。
もちろん、ヒノモト公国もそのうちの一国だ。
不幸にもそのタイミングで大雨が降ってしまい、治水の加護が薄れた箇所にあった村が予告なく沈んでしまった。
さらには、グエルナフが加護を与えた聖女オレリアの扇動によって、聖女マキに危害が加えられた。
裁判の神である最高神はこの事態を重く見た。
そうして、前代未聞の「加護の破棄」を認めたのだ。
もちろん、民たちがグエルナフを求めていたのもある。
「渇水も起こるようになったらしいな」
「エリス様とマオ様の加護と知恵によってダムが築かれていたというのに、それを放棄した者共が悪い」
「引き継ぎも何もない状態だったからなぁ」
「自業自得だ…ところでリーンハルト殿。頼みがあって来たのだが」
「ああ、そういえばそうだった。なんだい?」
ヴァイスがリーンハルトの執務室に来るときは、大体買い物の代行のときだ。
人の姿が取れないヴァイスは買い物ができないため、マキのためになにか贈りたいときにリーンハルトを頼る。
聖女マキと一緒にいるときは特に怖がられることはないが、やはりヴァイスひとりだけだと、ただの白蛇でも恐ろしく感じられてしまうようだ。
金銭に関しては、リーンハルトはヴァイスたちが普段暮らしている山に自生している、採集が難しい薬草を金銭代わりにもらうことにしているため、特に問題はない。
今度は何を頼まれるのか、とリーンハルトが頬杖をつきながら聞けば、隻眼の瞳を細めてヴァイスは告げた。
「一週間後、宴をすることにしたんだ。君も来てほしい」
「…宴?」
「そう。僕と、マキが夫婦になる宴だ」
がくん、と頬杖から頭がずり落ちた。
驚きで目を丸くするリーンハルトだったが、無理もない。
蛇と人間が夫婦になるのだ。
さすがにそこまでは想像していなかった。恋人止まりだと思っていたのだ。
「さすがに子は作れないよ。僕に種がないからね」
「そ…うだったのか」
「エリス様に確認してもらったから間違いないだろう」
「…おめでとう、ヴァイス。結婚祝い楽しみにしていてくれ」
「ああ。楽しみにしている。ふふ、君が驚く姿を見たくて来たんだ。伝えられてよかったよ。詳細は手紙で送る」
次はミズチに伝えなければ、とヴァイスはするすると執務室から出ていった。
ひとり、部屋に残されたリーンハルトは背もたれに寄りかかると「結婚か」と呟いた。
「めでたいこと続きだな、本当に」
昨年はヒノモト公主のミズチと、リーンハルトの元側近ヴェルナールが結婚した。
今年は聖女マキと元眷属ヴァイスの結婚。
机上の書類の山に、目を向ける。
当面はまだ結婚どころか、恋人も作れないなとリーンハルトは苦笑いを浮かべた。
一週間後。
山にあるヴァイスとマキの家で、関係者だけを集めたささやかな結婚式が行われた。
計画を知っていたらしいルミナが針仕事が得意な神官たちとともに作り上げた花嫁衣装を着たマキはすでに30代後半に差し掛かっていたが、リーンハルトから見ても美しかった。
年に一度だけ人の姿を取れるヴァイスも花婿衣装に身を包み、ふたりで愛を誓う。
「死がふたりを分かつまで、ずっと一緒にいようねヴァイス」
「ああ、そのために僕は、君のそばにいることを願ったのだから」
彼が選んだ結末は、結果的にふたりの幸せへと繋がった。
きっと眷属のままでいることを選んでいたら、ふたりは幸せになれなかっただろうと容易に想像がつく。
―― ふと、リーンハルトの視界の隅に白いものがよぎった。
それに気づいたのはリーンハルトだけのようだ。
木々の間にぽつんと立っている、白い角を持った牡鹿とその頭に乗った白蛇。
しばらく2匹はヴァイスとマキを眺めていたようだったが、やがてふいと踵を返して森の奥へと消えていく。
「リーンハルト殿?どうした?」
「…マオ様とエリス様も来られていたようだよ。白い角の牡鹿と、白蛇がいらっしゃっていた」
「なにっ!?」
「もう帰られたようだ」
「くぅっ…!この世に降りられた際に牡鹿に変身されることがあると聞いていたが、見逃すとは何たる不覚…!」
「えぇ!エリス様いらってたんですか!?あああ白蛇姿のエリス様を一目だけでも拝見したかったぁー!」
相変わらずマオとエリスの狂信者であるふたりに苦笑いを浮かべながら、リーンハルトはヴァイスとマキへと視線を戻す。
「幸せに」
リーンハルトが知る限り、元眷属ヴァイスと聖女マキは生涯仲睦まじく暮らした。
たったひとり、身寄りのない子どもを引き取って家族となり、その子は後年マリア枢機卿の後継となるほどの実力者となった。
蛇といっても元眷属ということもあり、ヴァイスも人間並みの寿命があったようだ。
マキが老衰で亡くなった数日後、ヴァイスも後を追うようにして亡くなった。
風のうわさでは。
ギルディア王国は内乱により滅亡し、聖女オレリアは人気がなくなった亡国に溜まる瘴気を払い続けたという。
Fin.
治水の女神エリスの眷属ヴァイスが、眷属の座を辞してマキの隣にいることを望んだことは広く公表された。
他国にはエリスとマオが伝えたらしく、時折やってくる他国の商人や神官がふたりの様子を見て「本当だったのか」と驚いていた。
それはそうだろう。
人の言葉を話す白蛇と聖女が恋人だなんて、どの国にだっていない。
けれど、眷属時代のヴァイスと聖女マキの様子を知っていれば当然の結末だと思える。
当然の結末といえば、とリーンハルトは目の前にいる、人の背丈ほどの大きさになっている白蛇のヴァイスに声をかけた。
「かの国の王権が失墜したらしい。内乱が起きているそうだ」
「ふん、当然だろう」
不機嫌そうに応えたヴァイスにリーンハルトは苦笑いを浮かべた。
まあ、リーンハルト自身もこれを聞いたときは「そうなるだろうな」と思っていたから。
聖女オレリアは大瘴気を払える存在ということもあって、そこまで大した被害は受けていないそうだがそれでも酷使され続けているらしい。
最近になって、グエルナフの眷属がやってきたようだが、初めから眷属を派遣していればこんなことにはならなかっただろう。
(いや、そもそもグエルナフ様がエリス様へ横恋慕しなければという「たられば」の話だな)
神の世界も、人の世界と大差はないらしい。
太陽の神グエルナフはある日、治水の女神エリスに恋をした。
だがそのときにはもうすでに山岳の神マオと共に祀られることが多く、マオとエリスは夫婦神として扱われていた。
最初は、可愛らしいちょっかいを出す程度だった。
だからマオとエリスはわざと見逃していた。
ところが、グエルナフの行動は段々とエスカレートしていき、そろそろ止めさせるかと思った頃合いにあの事件が起きた。
太陽の神グエルナフによる、山岳の神マオの封印と治水の女神エリスの軟禁。
その余波をモロに受けたのがギルディア王国だったが、他にも夫婦神を崇拝する国々にも影響は出た。
もちろん、ヒノモト公国もそのうちの一国だ。
不幸にもそのタイミングで大雨が降ってしまい、治水の加護が薄れた箇所にあった村が予告なく沈んでしまった。
さらには、グエルナフが加護を与えた聖女オレリアの扇動によって、聖女マキに危害が加えられた。
裁判の神である最高神はこの事態を重く見た。
そうして、前代未聞の「加護の破棄」を認めたのだ。
もちろん、民たちがグエルナフを求めていたのもある。
「渇水も起こるようになったらしいな」
「エリス様とマオ様の加護と知恵によってダムが築かれていたというのに、それを放棄した者共が悪い」
「引き継ぎも何もない状態だったからなぁ」
「自業自得だ…ところでリーンハルト殿。頼みがあって来たのだが」
「ああ、そういえばそうだった。なんだい?」
ヴァイスがリーンハルトの執務室に来るときは、大体買い物の代行のときだ。
人の姿が取れないヴァイスは買い物ができないため、マキのためになにか贈りたいときにリーンハルトを頼る。
聖女マキと一緒にいるときは特に怖がられることはないが、やはりヴァイスひとりだけだと、ただの白蛇でも恐ろしく感じられてしまうようだ。
金銭に関しては、リーンハルトはヴァイスたちが普段暮らしている山に自生している、採集が難しい薬草を金銭代わりにもらうことにしているため、特に問題はない。
今度は何を頼まれるのか、とリーンハルトが頬杖をつきながら聞けば、隻眼の瞳を細めてヴァイスは告げた。
「一週間後、宴をすることにしたんだ。君も来てほしい」
「…宴?」
「そう。僕と、マキが夫婦になる宴だ」
がくん、と頬杖から頭がずり落ちた。
驚きで目を丸くするリーンハルトだったが、無理もない。
蛇と人間が夫婦になるのだ。
さすがにそこまでは想像していなかった。恋人止まりだと思っていたのだ。
「さすがに子は作れないよ。僕に種がないからね」
「そ…うだったのか」
「エリス様に確認してもらったから間違いないだろう」
「…おめでとう、ヴァイス。結婚祝い楽しみにしていてくれ」
「ああ。楽しみにしている。ふふ、君が驚く姿を見たくて来たんだ。伝えられてよかったよ。詳細は手紙で送る」
次はミズチに伝えなければ、とヴァイスはするすると執務室から出ていった。
ひとり、部屋に残されたリーンハルトは背もたれに寄りかかると「結婚か」と呟いた。
「めでたいこと続きだな、本当に」
昨年はヒノモト公主のミズチと、リーンハルトの元側近ヴェルナールが結婚した。
今年は聖女マキと元眷属ヴァイスの結婚。
机上の書類の山に、目を向ける。
当面はまだ結婚どころか、恋人も作れないなとリーンハルトは苦笑いを浮かべた。
一週間後。
山にあるヴァイスとマキの家で、関係者だけを集めたささやかな結婚式が行われた。
計画を知っていたらしいルミナが針仕事が得意な神官たちとともに作り上げた花嫁衣装を着たマキはすでに30代後半に差し掛かっていたが、リーンハルトから見ても美しかった。
年に一度だけ人の姿を取れるヴァイスも花婿衣装に身を包み、ふたりで愛を誓う。
「死がふたりを分かつまで、ずっと一緒にいようねヴァイス」
「ああ、そのために僕は、君のそばにいることを願ったのだから」
彼が選んだ結末は、結果的にふたりの幸せへと繋がった。
きっと眷属のままでいることを選んでいたら、ふたりは幸せになれなかっただろうと容易に想像がつく。
―― ふと、リーンハルトの視界の隅に白いものがよぎった。
それに気づいたのはリーンハルトだけのようだ。
木々の間にぽつんと立っている、白い角を持った牡鹿とその頭に乗った白蛇。
しばらく2匹はヴァイスとマキを眺めていたようだったが、やがてふいと踵を返して森の奥へと消えていく。
「リーンハルト殿?どうした?」
「…マオ様とエリス様も来られていたようだよ。白い角の牡鹿と、白蛇がいらっしゃっていた」
「なにっ!?」
「もう帰られたようだ」
「くぅっ…!この世に降りられた際に牡鹿に変身されることがあると聞いていたが、見逃すとは何たる不覚…!」
「えぇ!エリス様いらってたんですか!?あああ白蛇姿のエリス様を一目だけでも拝見したかったぁー!」
相変わらずマオとエリスの狂信者であるふたりに苦笑いを浮かべながら、リーンハルトはヴァイスとマキへと視線を戻す。
「幸せに」
リーンハルトが知る限り、元眷属ヴァイスと聖女マキは生涯仲睦まじく暮らした。
たったひとり、身寄りのない子どもを引き取って家族となり、その子は後年マリア枢機卿の後継となるほどの実力者となった。
蛇といっても元眷属ということもあり、ヴァイスも人間並みの寿命があったようだ。
マキが老衰で亡くなった数日後、ヴァイスも後を追うようにして亡くなった。
風のうわさでは。
ギルディア王国は内乱により滅亡し、聖女オレリアは人気がなくなった亡国に溜まる瘴気を払い続けたという。
Fin.
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