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本編
3-1 〜 白蛇ヴァイス
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「この国を出るの?」
「そう。尊き御方と夫君が庇護する、ここよりもう少し安全な国があってね。そちらに移動しておいでとのことだ」
ヴァイスに抱きかかえられているマキは困惑した様子であった。
確かに暴徒と化した民衆に襲われ大怪我を負ったものの、それが起こったのは王都であって、大瘴気を除去したユーゲン領の領民たちはとても優しくしてくれていたからだろう。
でも、と戸惑うマキにヴァイスは苦笑いを浮かべる。
「決定事項なんだよ、マキ。夫君が封印され、尊き御方がかの神に軟禁され、あまつさえ君が襲われた原因がかの神で、その神を国の主神に含めようと民衆が求めているのだから」
「…そうなんだ。ユーゲン領の皆さんはこれからどうなるのかな。復興もまだだったのに…」
「尊き御方と夫君の神託が昨日、公示された。あとはそれぞれの心次第だ」
マオとエリスを信仰する心をもつ者であれば、あの神託が「山岳の神マオと治水の女神エリスはこの国の庇護を辞める」と読み取れる。
グエルナフを信仰する心をもつ者であれば、あの神託は「二柱はグエルナフと共に加護を続ける」と読み取れる。
グエルナフはエリスたちとの共同庇護を望んでいるから、グエルナフの信者はそのように解釈する。
要するに、選別だ。
従来通りマオとエリスを信仰する者と、そうでない者の。
今、ヴァイスはまだ動けないマキを抱きかかえて神殿内を移動している。
すでにマキが神殿を出ることは周知しているためか、グエルナフを迎える準備を進めている神官たちは特に気にしていないようだった。
一部、マオとエリスへの信仰心をもつ者たちは別の準備を進めているが、そちらも気にしていないだろう。
マキへの対応で内部分裂が起きていたぐらいだ。出ていくのだな、という感想しか持たれない。
ここ大神殿にある転移陣は、マオが直々に力を込めた代物だ。
人間が開発した転移の魔道具よりも遠く、安全に人や物を運ぶことができる。ただし利用できるのは神が許可したときだけ。
二柱は神託を聞き、来るものを受け容れると言った。
各地にある小神殿から大神殿に転移し、大神殿から二柱が庇護する地へ移動する者たちのために転移陣は残しておくつもりのようだ。
…最も、鞍替えした者共が改心したとしても使えないだろうが。
かつん、と転移陣がある部屋に足を踏み入れる。
そこには少なくない数の神官たちと、この国の第二王子であるリーンハルトとその側近であるヴェルナール、それからバチス枢機卿がいた。
第二王子までいるとは思わなかったのだろう。マキは目を丸くした。
「え、第二王子殿下まで…?」
「私は敬虔なマオ様とエリス様の信徒だよ、マキ殿。残念ながら父王たちは違ったようだが。眷属様、私も後ほど参ります」
「王族のくせに民を見捨てるのか?」
「ヴァイス!」
「いいえ。二柱に従う民たちのために。残る民は父王が導くでしょう」
「…転移先は別の国だ。そこにももちろん王がいるが?」
「従いましょう。この身に王族の血は流れていますが、国を捨てる身ですから。向こうではただの人ですよ」
以前、白蛇の姿でマキと共にリーンハルトに会ったことがあるが、その頃と変わりないようでヴァイスは安心した。
この王子は現実を見ていて、移動することが最善なのを理解している。
ヴァイスは眷属として様々な国を訪問して様々な王族を見てきたが、最善を見極められる王族は少ない。
こういった聡明な人間は大抵が政争に巻き込まれ、命を落とすことが多いから。
「マキ様」
バチス枢機卿が歩み寄ってきたのを見て、ヴァイスはマキをゆっくりと下ろした。
マキは両手を伸ばし、バチス枢機卿を抱擁した。そっと、バチス枢機卿も返す。
バチス枢機卿は、マキにとって祖父のような存在だ。
まだマキはこの世界に来て日は浅いが、それでも親身になって味方になってくれた男。
二柱への信仰もさることながら、この男についてヴァイスは信頼を置いていた。
「私は、引き継ぎを終えた後に必ず参ります。どうかご無事で」
「はい。お待ちしています」
「来てもらわなければ困るぞ。尊き御方と夫君も心待ちにしておられる」
「はい。必ず」
バチス枢機卿からマキを受け取り、再びマキを抱きかかえる。
恥ずかしそうに頬を染めるマキにヴァイスはふと微笑んだ。ヴァイスの見た目は整っていることもあって、間近でそれを見てしまったマキはボッと顔を赤くしてしまう。
その様子に何とも言えぬ、けれど不快ではない感情を抱きながらヴァイスは「行こうか」と告げた。
マキは恐る恐る、頷いた。
最初にヴァイス、マキ、マクス上級神官とルミナ上級神官、その他数名の上級神官が転移陣に乗った。
マクス上級神官が呪文を述べる。
「山岳の神マオよ、治水の女神エリスよ、迷いし我らをどうか導きたまえ。迷いし我らの安住の地を指し示したまえ ―― 我ら二柱を望む者なり」
転移陣から眩い光が発せられる。
その眩さに目を閉じ、開いたときにはもう別の場所だった。
足元に転移陣があるのは同じ。しかし、転移陣があった部屋の意匠が異なっていた。
ギルディア王国は石造りの神殿であったが、ここは木で作られた神殿のようだ。
ぽかんとするマキに、柔らかな女性の声がかかる。
「ようこそおいでくださいました、エリス様の眷属様、マキ様。それからギルディア王国の神官方。わたくしはここヒノモト公国大神殿にてマオ様、エリス様を信仰しております、マリア・スメラギと申します。位は枢機卿を務めております」
黒髪に金の瞳を持った妙齢の女性が微笑み、跪拝した。
彼女の側近であろうヒノモト公国の上級神官たちも同様に跪拝する。
こういった手合いに慣れていないマキがおろおろとしている中、ヴァイスは「直れ」とだけ告げた。
ヴァイスからの許可があり、マリア枢機卿がスッと姿勢を正した。
「こ、こんな格好ですみません…マキです。よろしくお願いします」
「受け入れ感謝する。まずは聖女マキの療養場所に案内してくれ」
「承知いたしました。ミカ」
「はい。こちらへどうぞ」
「行くぞルミナ」
「はい!」
「スメラギ枢機卿、私はマクス・スカーチェと申します。位は上級神官を務めております。バチス・ガムエル枢機卿の先遣として参りました」
「ようこそ、スカーチェ上級神官。これから更にいらっしゃるのですね」
「はい。我が神殿からはこちらのリストに…」
マリア枢機卿とマクス上級神官のやり取りが遠くなっていく。
神殿の作りはギルディア王国とは異なるようで、ギルディアの大神殿では転移陣があった部屋は本殿内にあったが、ヒノモト公国の場合は本殿とは別に建てられた棟にあったようだ。
外に出た瞬間の眩さにマキが思わず目を細める。
その眩さの正体は、太陽に照らされた海だった。
正確には高台の上に大神殿が建てられており、神殿よりも少し下った場所に街が広がっている。
その更に先に、砂浜と海が広がっていた。
思わず感嘆の声を零したマキとルミナに、案内のミカは歩きながら嬉しそうに話し始める。
「ヒノモト公国は海に囲まれ、大小4つの島で構成されています。島によって気候が異なるので、特産品も島によってバラバラなんですよ」
「へぇ……あれ?ヒノモトって…」
「由来は遥か遠い宇宙の果てにあるという地球の、ニホンという国だそうです。この国は約900年前に建国されたのですが、初代公主はニホン人だったそうですよ」
ぱ、とマキがヴァイスを見上げると、ヴァイスは頷いてみせた。
ミカが言う通り、ヒノモト公国の初代公主は日本人だ。時間軸は地球もここも同じなので、現代から900年遡った時代の人物である。
ヴァイスはこう見えてもエリスに千年仕えた身だ。
初代公主とも面識はあった。
「マキの療養中は暇そうだからな。当時の話をしよう」
「本当?」
「ああ。聞くだけなら、あとふたりは増えてもいい」
さらりとミカにそう伝えると、ミカは嬉しそうに「ありがとうございます!」と礼を述べた。
文献でしかわからない初代についての話が聞けるのは貴重だ。
おそらく、厳選された人物がマキと一緒にヴァイスの話を聞くことになるのだろう。
「ヴァイス様優しいですねぇ、マキ様」
「うん、いつもありがとう、ヴァイス」
「…礼を言われるほどじゃない」
ヴァイスの頬がやや赤らんで、ふいとマキから視線が外れた。
その先でルミナがによにこしているのを見て、思わず睨みつければ彼女はわざとらしく明後日の方向を向く。
(ルミナめ)
あとで絞めよう。そう考えながら、ヴァイスはミカを追いかけた。
ミカに案内された部屋に備え付けられていたベッドにそっとマキを下ろす。
布団をかけてやればマキは「ありがとうございます」とはにかんだ。
調度品や食堂の場所、トイレ、バスルームなどの説明をルミナとヴァイスが受けている間にマキはまた眠ってしまったようだった。
まだ体力が回復していないのだろう。
ルミナが神殿内の案内をミカに頼み、ふたりが退室したあと、ヴァイスは眠るマキの頬にそっと触れた。
(…マオ様には笑われるだろうな)
エリスの夫であるマオとは、仲が良い方だった。
若干子供扱いされるのは苛つくが、ヴァイスはマオも慕っている。
マオはきっと、今のヴァイスを見れば笑うだろう。
だが、ヴァイスは笑うなら笑えと思っている。
まさか自分だって聖女に惚れ込むとは思わなかったのだから。
「そう。尊き御方と夫君が庇護する、ここよりもう少し安全な国があってね。そちらに移動しておいでとのことだ」
ヴァイスに抱きかかえられているマキは困惑した様子であった。
確かに暴徒と化した民衆に襲われ大怪我を負ったものの、それが起こったのは王都であって、大瘴気を除去したユーゲン領の領民たちはとても優しくしてくれていたからだろう。
でも、と戸惑うマキにヴァイスは苦笑いを浮かべる。
「決定事項なんだよ、マキ。夫君が封印され、尊き御方がかの神に軟禁され、あまつさえ君が襲われた原因がかの神で、その神を国の主神に含めようと民衆が求めているのだから」
「…そうなんだ。ユーゲン領の皆さんはこれからどうなるのかな。復興もまだだったのに…」
「尊き御方と夫君の神託が昨日、公示された。あとはそれぞれの心次第だ」
マオとエリスを信仰する心をもつ者であれば、あの神託が「山岳の神マオと治水の女神エリスはこの国の庇護を辞める」と読み取れる。
グエルナフを信仰する心をもつ者であれば、あの神託は「二柱はグエルナフと共に加護を続ける」と読み取れる。
グエルナフはエリスたちとの共同庇護を望んでいるから、グエルナフの信者はそのように解釈する。
要するに、選別だ。
従来通りマオとエリスを信仰する者と、そうでない者の。
今、ヴァイスはまだ動けないマキを抱きかかえて神殿内を移動している。
すでにマキが神殿を出ることは周知しているためか、グエルナフを迎える準備を進めている神官たちは特に気にしていないようだった。
一部、マオとエリスへの信仰心をもつ者たちは別の準備を進めているが、そちらも気にしていないだろう。
マキへの対応で内部分裂が起きていたぐらいだ。出ていくのだな、という感想しか持たれない。
ここ大神殿にある転移陣は、マオが直々に力を込めた代物だ。
人間が開発した転移の魔道具よりも遠く、安全に人や物を運ぶことができる。ただし利用できるのは神が許可したときだけ。
二柱は神託を聞き、来るものを受け容れると言った。
各地にある小神殿から大神殿に転移し、大神殿から二柱が庇護する地へ移動する者たちのために転移陣は残しておくつもりのようだ。
…最も、鞍替えした者共が改心したとしても使えないだろうが。
かつん、と転移陣がある部屋に足を踏み入れる。
そこには少なくない数の神官たちと、この国の第二王子であるリーンハルトとその側近であるヴェルナール、それからバチス枢機卿がいた。
第二王子までいるとは思わなかったのだろう。マキは目を丸くした。
「え、第二王子殿下まで…?」
「私は敬虔なマオ様とエリス様の信徒だよ、マキ殿。残念ながら父王たちは違ったようだが。眷属様、私も後ほど参ります」
「王族のくせに民を見捨てるのか?」
「ヴァイス!」
「いいえ。二柱に従う民たちのために。残る民は父王が導くでしょう」
「…転移先は別の国だ。そこにももちろん王がいるが?」
「従いましょう。この身に王族の血は流れていますが、国を捨てる身ですから。向こうではただの人ですよ」
以前、白蛇の姿でマキと共にリーンハルトに会ったことがあるが、その頃と変わりないようでヴァイスは安心した。
この王子は現実を見ていて、移動することが最善なのを理解している。
ヴァイスは眷属として様々な国を訪問して様々な王族を見てきたが、最善を見極められる王族は少ない。
こういった聡明な人間は大抵が政争に巻き込まれ、命を落とすことが多いから。
「マキ様」
バチス枢機卿が歩み寄ってきたのを見て、ヴァイスはマキをゆっくりと下ろした。
マキは両手を伸ばし、バチス枢機卿を抱擁した。そっと、バチス枢機卿も返す。
バチス枢機卿は、マキにとって祖父のような存在だ。
まだマキはこの世界に来て日は浅いが、それでも親身になって味方になってくれた男。
二柱への信仰もさることながら、この男についてヴァイスは信頼を置いていた。
「私は、引き継ぎを終えた後に必ず参ります。どうかご無事で」
「はい。お待ちしています」
「来てもらわなければ困るぞ。尊き御方と夫君も心待ちにしておられる」
「はい。必ず」
バチス枢機卿からマキを受け取り、再びマキを抱きかかえる。
恥ずかしそうに頬を染めるマキにヴァイスはふと微笑んだ。ヴァイスの見た目は整っていることもあって、間近でそれを見てしまったマキはボッと顔を赤くしてしまう。
その様子に何とも言えぬ、けれど不快ではない感情を抱きながらヴァイスは「行こうか」と告げた。
マキは恐る恐る、頷いた。
最初にヴァイス、マキ、マクス上級神官とルミナ上級神官、その他数名の上級神官が転移陣に乗った。
マクス上級神官が呪文を述べる。
「山岳の神マオよ、治水の女神エリスよ、迷いし我らをどうか導きたまえ。迷いし我らの安住の地を指し示したまえ ―― 我ら二柱を望む者なり」
転移陣から眩い光が発せられる。
その眩さに目を閉じ、開いたときにはもう別の場所だった。
足元に転移陣があるのは同じ。しかし、転移陣があった部屋の意匠が異なっていた。
ギルディア王国は石造りの神殿であったが、ここは木で作られた神殿のようだ。
ぽかんとするマキに、柔らかな女性の声がかかる。
「ようこそおいでくださいました、エリス様の眷属様、マキ様。それからギルディア王国の神官方。わたくしはここヒノモト公国大神殿にてマオ様、エリス様を信仰しております、マリア・スメラギと申します。位は枢機卿を務めております」
黒髪に金の瞳を持った妙齢の女性が微笑み、跪拝した。
彼女の側近であろうヒノモト公国の上級神官たちも同様に跪拝する。
こういった手合いに慣れていないマキがおろおろとしている中、ヴァイスは「直れ」とだけ告げた。
ヴァイスからの許可があり、マリア枢機卿がスッと姿勢を正した。
「こ、こんな格好ですみません…マキです。よろしくお願いします」
「受け入れ感謝する。まずは聖女マキの療養場所に案内してくれ」
「承知いたしました。ミカ」
「はい。こちらへどうぞ」
「行くぞルミナ」
「はい!」
「スメラギ枢機卿、私はマクス・スカーチェと申します。位は上級神官を務めております。バチス・ガムエル枢機卿の先遣として参りました」
「ようこそ、スカーチェ上級神官。これから更にいらっしゃるのですね」
「はい。我が神殿からはこちらのリストに…」
マリア枢機卿とマクス上級神官のやり取りが遠くなっていく。
神殿の作りはギルディア王国とは異なるようで、ギルディアの大神殿では転移陣があった部屋は本殿内にあったが、ヒノモト公国の場合は本殿とは別に建てられた棟にあったようだ。
外に出た瞬間の眩さにマキが思わず目を細める。
その眩さの正体は、太陽に照らされた海だった。
正確には高台の上に大神殿が建てられており、神殿よりも少し下った場所に街が広がっている。
その更に先に、砂浜と海が広がっていた。
思わず感嘆の声を零したマキとルミナに、案内のミカは歩きながら嬉しそうに話し始める。
「ヒノモト公国は海に囲まれ、大小4つの島で構成されています。島によって気候が異なるので、特産品も島によってバラバラなんですよ」
「へぇ……あれ?ヒノモトって…」
「由来は遥か遠い宇宙の果てにあるという地球の、ニホンという国だそうです。この国は約900年前に建国されたのですが、初代公主はニホン人だったそうですよ」
ぱ、とマキがヴァイスを見上げると、ヴァイスは頷いてみせた。
ミカが言う通り、ヒノモト公国の初代公主は日本人だ。時間軸は地球もここも同じなので、現代から900年遡った時代の人物である。
ヴァイスはこう見えてもエリスに千年仕えた身だ。
初代公主とも面識はあった。
「マキの療養中は暇そうだからな。当時の話をしよう」
「本当?」
「ああ。聞くだけなら、あとふたりは増えてもいい」
さらりとミカにそう伝えると、ミカは嬉しそうに「ありがとうございます!」と礼を述べた。
文献でしかわからない初代についての話が聞けるのは貴重だ。
おそらく、厳選された人物がマキと一緒にヴァイスの話を聞くことになるのだろう。
「ヴァイス様優しいですねぇ、マキ様」
「うん、いつもありがとう、ヴァイス」
「…礼を言われるほどじゃない」
ヴァイスの頬がやや赤らんで、ふいとマキから視線が外れた。
その先でルミナがによにこしているのを見て、思わず睨みつければ彼女はわざとらしく明後日の方向を向く。
(ルミナめ)
あとで絞めよう。そう考えながら、ヴァイスはミカを追いかけた。
ミカに案内された部屋に備え付けられていたベッドにそっとマキを下ろす。
布団をかけてやればマキは「ありがとうございます」とはにかんだ。
調度品や食堂の場所、トイレ、バスルームなどの説明をルミナとヴァイスが受けている間にマキはまた眠ってしまったようだった。
まだ体力が回復していないのだろう。
ルミナが神殿内の案内をミカに頼み、ふたりが退室したあと、ヴァイスは眠るマキの頬にそっと触れた。
(…マオ様には笑われるだろうな)
エリスの夫であるマオとは、仲が良い方だった。
若干子供扱いされるのは苛つくが、ヴァイスはマオも慕っている。
マオはきっと、今のヴァイスを見れば笑うだろう。
だが、ヴァイスは笑うなら笑えと思っている。
まさか自分だって聖女に惚れ込むとは思わなかったのだから。
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